スケートボード
スケートカルチャーを斜め45度の視点で切り取る(マジメな)コラム。今回は、ジャッキー・チェンのアクション映画とストリートスケートに相通じる、ストリート観察力の重要性について語る。
ジャッキー・チェンといえば、言わずと知れたアクション映画のスーパースター。香港出身というお国柄ならではの、カンフーをテーマにした彼の作品は1980年代から日本でも絶大な人気を集め、その後ハリウッド進出も果たし、今や世界的にアクションスターの代名詞とされている人物。よく先代のカンフースターであるブルース・リーと比較されることがあるけど、大抵の人々が抱いてる両者のイメージといえば、ブルース・リーは、クールで作品もシリアス。お家芸のヌンチャクを武器に真剣勝負を繰り広げる緊張感がなんともカッコいい作風が特徴。
一方、ジャッキー・チェンは、劇中のキャラクターも三枚目気質で作風も笑いありのコミカルな描写が多い。そして、ジャッキー映画最大の魅力といえば、奇想天外といえるアクションシーン。ブルース・リーのような十八番の殺陣はなく、物語の時代設定を問わず、シーンやシチュエーションに応じて、いかなるものでも武器にして繰り広げるアクションがジャッキームービーの十八番芸。カンフーの師匠がキセルや扇子で護身したり、ユンピョウが持ち歩く長椅子が武器になったり、自転車でヒッピージャンプをかましたり、殴られたジャッキーがラウンドしたハンドレールを滑りおりたり、などなど、日常的に存在する物・場所を巧みに利用したオリジナリティ溢れるアクションこそジャッキー映画の真骨頂だ。
その独特の着眼点は、ガードレールやら歩道の縁石やら、隆起した地面や階段の手すりなど、公共物を利用することで進化を遂げてきたストリートスケートの世界と相通じるものを感じてならない。ジャッキー映画もストリートスケートも、場面(ストリート)での独創的な着眼点で物事を観察できることが不可欠。1つの場面をメイクするためには、スキルと修行が必要で、NGのリスクは常にあれど、それ故にメイクシーンは賞賛を浴びる。そんな映像にすっかり感化され、ジャッキー映画を観た翌日、学校の休み時間には、早速友達同士で蛇拳とかやっていた覚えのあるアラフォースケーターも多いだろう。スケートボードにおいても同じことで、スケートビデオ/DVDを観た後に、しびれんばかりにボードを手に取りストリートに駆け出したい衝動がそれだ。
まぁ、ジャッキー映画はあくまでもフィクションの世界だが、スケートボードはたった1枚のボードがあるだけで、ストリートでの視点と表現の可能性を広げることができる。しかもリアルな世界で、そしていつでも無料で楽しめる。それがストリートスケートがもたらした最大の価値なんだと、思う。
機会があれば是非、ジャッキー映画で垣間見えるクリエイティブな視点を、(吹替えや本人たちがスケートボードしちゃってるシーンもありますが、あえてそこではなく)ストリートスケートの精神をもって再確認して頂きたい。1990年代にリリースされたスケートビデオと見比べて頂くのも面白いのではないだろうか。ストリートでの斬新なアイディアやスラムパート、ユーモアのセンスなど、多くの共通点を見いだすことができるはずだ。その取りかかりとして『プロジェクトA』と『プランB』の2本立てなどいかがだろうか。
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