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ビデオゲーム温故知新:『Skate』シリーズ
スケートボードゲームの一時代を築き上げたEAの人気シリーズの歴史を紐解く。
EAの『Skate』が2007年にリリースされた瞬間、長期に渡って展開されていた『Tony Hawk’s Pro Skater』シリーズを眠りにつかせる棺桶に最後の釘が打ち込まれた。素晴らしいトリックと最高のサウンドトラックが特徴の『Tony Hawk’s Pro Skater』シリーズの第1作がスケートボードゲームの新時代を切り拓いたのは1999年であり、このシリーズは10年近くの歴史を誇っていたが、EA Black Boxが開発した『Skate』シリーズはそのもう一歩先を行っていた。
『Skate』は操作性とゲームプレイをネクストレベルに引き上げ、スケートボードゲームをよりリアルにしたことで『Tony Hawk’s 』シリーズのアーケード的なアプローチをスケートパークの外へ放り出したこのゲームはその後、数本の続編も生み出された。しかし、『Skate』シリーズが最後にリリースされてから既に4年が経過している。そこで今回は、EAが開発したこの最高のスケートボードシリーズを振り返り、このシリーズがビデオゲームの歴史に何を残してきたのかを振り返っていくと共に、シリーズの未来についても考察していく。
ActivisionとNeversoftが生み出した『Tony Hawk’s』シリーズは『Skate』がリリースされる2007年までの8年間で実に11本のシリーズがリリースされており、当時のスケートボードゲームの定番として扱われていた。しかし、このシリーズはリリースごとに強烈さとおバカぶりが増しており、後期はもはや昔の面影が一切感じられないオリジナルとは完全に異なるゲームになっていた。2006年にリリースされた『Tony Hawk’s Project 8』は、当時の “次世代機” だったPlayStation 3とXbox 360でのシリーズ初タイトルであり、このシリーズのターニングポイントになるはずだったが、世間からの評価はパッとしないものだった。そして、続く2007年にリリースされた『Tony Hawk’s Proving Grounds』も同程度の中庸な評価に終わった。そして、その『Proving Grounds』のライバルとしてデビューしたのがEAの『Skate』で、このゲームは『Proving Grounds』に対して売上本数で約2倍の差をつける圧倒的な勝利を収め、“次世代機のスケートボードゲーム” の称号がEAの手に渡ることが予見された。
その後、『Skate 2』が2009年にリリースされた。前作のストーリーラインをなぞりつつ、ゲームプレイが改良され、新しい要素も加えられていたこの続編を、ウェブサイト『Game Informer』は「既存のゲームプレイをフレッシュに感じさせるという不可能を可能にしたゲーム」と高く評価した。改良された部分の中にはいくつか奇妙なものもあったが(たとえば、足での移動はフラフラとおぼつかないものだった)、ランプ、レール、ベンチなどでのライディングは素晴らしく、自分だけのスケートスポットの作成も可能で、ビデオ編集機能のSkate Reelでは、自分のライディングを美しいエディットにまとめることもできた。こうして『Skate』シリーズはこの作品でひとつの頂点を迎えた。
しかし、『Skate』シリーズはこれで終わったわけではなかった。『Skate 2』からわずか1年後に『Skate 3』がリリースされたのだ(悲しいことに、このハイペースは往々にして “やっつけ仕事” の兆候だ)。この3作目は楽しいゲームだったが、「取り急ぎ」感が強かった。『Skate 2』の美しく流れるようなゲームプレイは保たれていたものの、どこかがずれており、完ぺきなゲームではなかった。『Skate 3』の物理演算と、このゲームを最高のスケートボードシミュレーションゲームではなくただのバグ祭りとして扱っているYouTube上の複数の動画をチェックするだけで、このゲームがどのようなものだったのかはすぐに理解できるだろう。尚、『Skate 3』がリリースされてから長年が経過した今も、世界的に有名なYouTuber、PewDiePieがこのゲームの物理演算をからかう動画を多数投稿している。
では、『Skate 4』はどうなったのだろう? 開発を担当してきたEA Black Boxは残念ながらもう存在しない。『Skate 3』のリリース後、EA Black Boxは『Need for Speed: The Run』の開発を任されることになった。しかし、それよりも前の段階で、EAは既にEA Black Boxが使用していたバンクーバーのスタジオを閉鎖し、彼らをEA Canadaに移していた。EA Black BoxはEA傘下のスタジオとしてその後も存続したが、2012年にEA CanadaとBlack Boxのスタッフが大量に解雇され、同年7月にEA Black BoxがQuicklime Gamesに名称を変えると、2013年4月にこのチームは完全に解体された。そしてこれと同時に、彼らによる続編がリリースされるチャンスもなくなった。
しかし、EAは現在も『Skate』ブランドを維持しているため、同社が抱える他の多くのシリーズと同じく、他のデベロッパーに続編の開発を任せる可能性は残されている。そして今こそ、その続編のリリースにふさわしいタイミングだろうと我々は考えている。オリジナルの魅力が再現されない可能性はあるが、Xbox OneとPlayStation 4がリリースされてからある程度時間が経っており、世界各地のデベロッパーはこの2機種の性能を最大限まで引き出せるようになっている。また、PlayStation VRもリリースされたため、VRの世界に進出する可能性も残されている。VR対応になれば、シリーズの特徴であるアナログスティック2本の操作性はそのままに、現実世界そのままのヴィジュアルとフィーリングを提供するファーストパーソン視点でのライティングが楽しめるようになる。
また、誰もが知っていることだが、予想外の形ではあったものの2015年に『Tony Hawk’s』シリーズ最新作がXbox OneとPlayStation 4向けにリリースされ、スケートボードゲームはまだ終わっていないことを匂わせた。
しかし、残念なことにその最新作『Tony Hawk’s Pro Skater 5』は最悪の仕上がりで、むしろ『Skate 3』よりもバグが多く、プレイ不可能になる時さえもあった。また、情報通のファンが、Tony HawkとActivisionの契約がこのゲームのリリースと同時に終了する予定だったことを突き止め、このゲームは開発発表時に多くのスケートボードゲームファンに夢と希望を与えたにも関わらず、実は最後の作品として開発されたゲームだったのではないかという推測も生まれた。
しかし、EAの『Skate』シリーズのファンは非常に情熱的であり、先日にEAのコミュニティマネージャーのひとりのTwitterの投稿に「#skate4」とハッシュタグが付けられていたことだけでも、大いに盛り上がり、多くがシリーズの復活を予想した。
しかし、その直後、EAは収支報告会の中で『Skate 4』の開発予定がないことを明言し、新作への期待で盛り上がるファンの気持ちをしぼませた。EAのCEO、Andrew Wilsonは「現時点では『Skate 4』の開発はありません」とコメントを発表していたが、我々は今こそ開発すべき時だと考えている。
『Skate 3』は現在Xbox Oneでプレイできるようになっており、またファンからのリクエストも多い(PewDiePieの動画は今でも高い人気を誇っており、ファンも独自のエディットの制作を続けている)。これを踏まえれば、今こそEAが生み出してきた様々なテクノロジーを最大限活用したシリーズ最新作がリリースされるべきタイミングだろう。『Battlefield 1』や『Mirror’s Edge Catalyst』と同じゲームエンジンFrostbite 3を使用した『Skate』シリーズの最新作は単純に素晴らしい内容になるはずだ。また、昨年リリースされたPS4 Proや、開発中のProject Scorpioなどのハイパワーマシン対応になれば、我々が待ち望んでいた最高のスケートボードゲームになる可能性もある。
EAは『Skate』シリーズ終了を明言していない。よって、『Skate 3』がリリースされてから7年近くが経過しており、前述したCEOの発言も残念だったが、まだ新作の可能性は残されている。何しろ、『Mirror’s Edge』の最新作も6年後にリリースされているのだ。我々は “パイプドリーム” をまだ諦めてはいない。『Skate』シリーズ最新作を待ち続けよう。


