スケートボード界に実在する“珍・トリック名” を厳選 【part2】
© Sophie Odelberg / Red Bull Content Pool
スケートボード

スケートボード界に実在する(珍)トリック名を知ってますか ? -part2-

いかにもスケーターらしい言葉遊びで誕生した驚きのトリック名を紹介する、マニア必見の特別企画・第二弾! スケートカルチャーの魅力がギッシリ詰まってます!
Written by Matsui Hiroki
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🛹 Manual(マニュアル)

どうしてウィーリーをマニュアルと呼ぶの?
ノーズを浮かせてバランスを保つテール・マニュアル、テールを浮かせてバランスを保つノーズ・マニュアル。スケーターにとって馴染み深いこのトリック“マニュアル”はどうしてウィーリーではなく“マニュアル”と呼ばれるようになったのだろうか。
歴史を遡り1960年代、当時のフリースタイルスケートシーンではテールやノーズを上げバランスを保つトリックを“テール・ウィーリー”や“ノーズ・ウィーリー”と呼んでいた。
そして時は流れ1970年代後半、スケーターでアーティストのパット・ノーホーがウィーリーを応用したトリックを考案。
それは、ボウルからロールアウトをしてそのままウィーリー、そしてまたボウルにロールインするというもの。フラットで行うウィーリーとは違い高度な技術を要するため、ボードを“自力で(マニュアルで)”コントロールしなければならなかった。その様子から“ウィーリー”ではなく“マニュアル”と呼ばれはじめ、今となってはフラットで行うウィーリーもすべてマニュアルという名前で定着している。
  • レッドブルで行われたマニュアルトリック限定のコンテストRed Bull Manny Mania。世界中から集まったスケーターが繰り広げる超絶マニュアルは必見!
02

🛹 SAD PLANT(サッドプラント)

華のあるトリックなのに“悲しい”理由!
サッド・プラントとは、トランジションでデッキをフロント側から前の手でグラブし、後ろの手はコーピングを掴みハンドプラントのピーク時に前足の膝を伸ばすトリック。
「スタイリッシュで華のあるトリックのどこがSAD(悲しい)なのか?」と疑問に思う人も多いはず。でも実は、サッド・プラントのサッドは“悲しい”を意味するサッドに由来するわけではないのだ。
この名前は、スケート・スポットとしても知られるアメリカ合衆国ロサンゼルスのアナハイムにあるブルックハスト・パーク、通称:SADLANDS(サッドランズ)が関係してくる。
1972年に建設されたサッドランズは、正式なスケートパークではないものの、月面のクレーターをイメージして建設された数多くのセクションが点在しており、1989年にスケート禁止(セクション破壊)となるまで数多くのスケーターに愛されたレジェンダリー・スポットだ。
サッドランズでスキルを磨いたと公言するプロスケーターも多く、伝説のスケートチーム、ボーンズ・ブリゲードのランス・マウンテンもその一人。彼が前足を伸ばした独特なハンドプラントを発案、その様子を撮影していたニール・ブレンダー(※1)が撮影されたスポットの愛称にちなんで“サッド・プラント”と名づけたという逸話が残っている。
なおサッドランドが失われてしまったことを惜しんだローカルスケーターたちは現在、サッドランド復活プロジェクトを立ち上げ、誰でも楽しめるスケートパークをアナハイムに取り戻そうと活動を開始している。
  • 故ジェフ・グロッソがホストするビデオシリーズ『Love letters to Skateboard』で行われたサッドランズ特集。レジェンドスケーターであるレスター・カサイやサッド・プラントの生みの親であるランス・マウンテンも登場し、サッドランズがいかにスケーターに影響を与えた場所だったかを語る。
(※1 )ニール・ブレンダー/スケート史には欠かせないレジェンド・スケーター。リーン・エアーなどの考案者でもある。
03

🛹 METHOD AIR(メソッド・エアー)

高く飛ぶための“メソッド”は空中で膝を……
トランジションなどでバックサイドグラブをしながら空中で体を反らせるトリックのメソッド・エアー。このトリックの誕生にも前述のニール・ブレンダーが関係しているといわれている。
1970~80年代のスケートボードシーンを席巻したシムス・スケートボードのチームライダーであったレジェンドスケーターのデイブ・アンドレクトによる高さのあるバックサイドエアー・バックサイドグラブを目の当たりにしたニール・ブレンダーは、「空中で膝を曲げることが高く飛ぶための“メソッド”ではないか」と考え、このトリックに“メソッド・エアー”と名づけたという説がある。
クリエイティブなライディングで世界を驚かせたニール・ブレンダーだが、トリック命名でもクリエイティビティを存分に発揮し、数多くの珍トリック名を残しているのだ。
Danny León tweaks a method air in Marseille during the Red Bull Bowl Rippers contest at the du Prado bowl.

ダニー・レオン:メソッドエア

© Teddy Morellec

04

🛹 SLAPPY(スラッピー)

縁石を平手打ちする技ってこと!?
カーブ(=縁石)などでグラインドするトリックがスラッピー。
スケートボード界に実在する(珍)トリック名を知ってますか ? -part2-

スケートボード界に実在する(珍)トリック名を知ってますか ? -part2-

© Jonathan Mehring : Red Bull Content Pool

オーリーを必要としないので、低い縁石であれば、初心者でもある程度プッシュに慣れた状態でトライできる。また、トリックバリエーションが豊富な点も魅力的な技である。
気になるのはこの“スラッピー(平手打ち)”というキャッチーな名前がどこからきたのかだ。リサーチをしたとこと、どうやらその名前はスケーターがセクションへ激しくアプローチする様子に由来するようだ。対象セクションに対してスピードをつけてぶつかるようにグラインドをかけることから、“平手打ち”や“ひっ叩く”の意味を持つ“Slap”転じて“Slappy”と呼ばれるようになったという説が残っている。
このトリックの考案者は、ブラックレーベル・スケートボードの設立者、ジョン・ルセロであることが広く知られている。しかし、ルセロ本人は「70年代後半にカリフォルニアの有名ショップ"Nor Cal"のローカル達が既にやっているのを見たことがある」とも話しており、トリック誕生の真相は未だ謎である。
  • スラッピーと言えばエース・ペルカ。こちらはそんな彼による世にも珍しいスラッピーオンリー(オーリーなし)のスケートビデオ。スラッピー愛もここまでいけばアーティスティック。スラッピーの魅力がぎっしり詰まってます。
05

🛹 EGGPLANT(エッグプラント)

日本語に直訳するとあの野菜の名前に!
トランジションでインディーエアー(※2)をしながらハンドプラントするトリック、エッグプラント。エッグプラントを日本語に直訳すれば野菜の「ナス」のこと。なぜこのような珍トリック名が生まれたのか紐解いていこう。
エッグプラントはランス・マウンテンがスケートセッション中に考案し、それを目撃したのはまたもや珍トリック名界ではお馴染みとなったニール・ブレンダー。彼は「そのトリックはstankすぎる! 腐った卵みたいだ! (※直訳すれば臭すぎる! だが、当時のスラングでヤバすぎる! の意味)」と言ったとのこと。これがスケート界きっての珍トリック名“エッグプラント”が生まれたビハインドストーリーだ。
【ヤバい→臭い→腐った卵】という連想ゲームのような紆余曲折を経て、野菜のナスを意味するエッグプラントという単語に着地するのは、いかにもスケーターらしい言葉遊び。奥が深いのか適当なのか、スケーターの無駄に高いクリエイティビティは一体どこからやってくるのだろうか……。
  • 故ジェフ・グロッソがホストするビデオシリーズ『Love letters to Skateboard』のハンドプラント特集。1:00~ にエッグプラントを見ることができる。ハンドプラントの歴史やそのバリエーションをマニアックに解説しており見応え十分。
(※2) インディーエアー/バックサイドエアーをしてフロントサイドグラブをするトリック。フロントで行ったものはフロンサイド・インディーエアーとは呼ばず、単にフロントサイドエアーと呼ばれる。
06

🛹 BENIHANA(ベニハナ)

行きつけの店の名前をトリック名に採用!?
オーリーをして前足でノーズを突き出しながら後ろ足をデッキから離し、後ろの手でテールをグラブするトリックのベニハナは、80年代にバーチカルのプロとして活躍した日系人プロスケーター、レスター・カサイが考案したトリック。日本語のようなトリック名だが、実はそのまま日本語の“紅花(ベニハナ)”がその由来。
このトリックの名前を考えていたレスターは、当時トニー・ホークとよく訪れていたお気に入りのジャパニーズ・レストランチェーン店、ベニハナの屋号をそのままトリック名に採用した。マドンナといいベニハナといい、レスターとトニーのコンビの絶妙なトリックの名付けセンスは面白い。
  • レッドブル・アスリートであるマックス・クルグロフによるベニハナの解説。
07

🛹 GHETTO BIRD(ゲットーバード)

体の動きが連想させたあるものがきっかけで命名!
ハードフリップ(※3)にレイト・バックサイド180(※4)を複合させたトリックのゲットーバード。
直訳すれば“ゲットー地区の鳥”という意味だが、実は“ゲットーエリアの上空を旋回する警察のヘリコプター”を指すスラングのこと。このトリックの考案者はシューズブランドのアクションやシティースターズ スケートボードを立ち上げたことで知られるプロスケーター、カリーム・キャンベルだ。
カリームがこのトリックを行う時に両腕を広げて回転する姿がヘリコプターに似ていたことからゲットーバードと命名されたと言われている。
  • カリーム・キャンベルによるゲットーバード。
(※3)ハードフリップ/フロントサイドにデッキを180度回すフロントサイドポップショービットにキックフリップを加えたトリック。
(※4)レイト・バックサイド180/デッキを空中でキャッチしたあとにバックサイド180を行うトリック。
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