時間を少し巻き戻そう。2013年、 『アサシン クリード 4 ブラックフラッグ』 でユービーアイソフトは人気のアサシンシリーズの舞台を海賊の黄金時代に据えて、ゲーム内にスケールの大きな海戦を取り入れた。
その後、同社では 『ブラックフラッグ インフィニット』 という仮称でMMOエキスパンションの開発が続けられ、それがやがて独立タイトル 『スカル アンド ボーンズ』 へと変わっていった。ここから長い旅が始まった。
E3 2017での発表後、この海賊MMOを取り巻く動きは鈍化し、2019年以降は延期の報告が続いた。しかし、『ブラックフラッグ』から約10年が経過したあと、ついにゲームが完成した。果たして『スカル アンド ボーンズ』には 約10年待たされた価値 があるのだろうか? 早速レビューしていこう。
複数回の延期と長期に渡る開発のあと、『スカル アンド ボーンズ』がついに完成した。長い旅の間に何回も変更されてきたこのゲームは、最終的にどのような内容に仕上がったのだろうか?
『スカル アンド ボーンズ』は、基本的には リアルな海賊アドベンチャー で、 ビッグスケールの海戦 に RPG 、 クラフト 、 MMO要素 を組み合わせている。単独または仲間と一緒に航海に出て、複数のタスクを完了させながら、船とクルーを拡大していく。
『スカル アンド ボーンズ』の魅力が最大限発揮されるのは Co-opプレイ だ。最大2人までのプレイヤーと協力しながら、プレイヤーは船団として大海原を旅することができる。また、 クロスプレイ対応 のためPC・PS5・Xbox Serie X|S間でも楽しめる。当然ながら、このゲームの最終目標は 「海の覇者になる」 だ。
『スカル アンド ボーンズ』では多くの時間を自分の船の上で過ごすことになる。当然、プレイヤーは海賊船のキャプテンになるわけだが、自分のキャラクリが終わったあとはいちから船を準備することになる。
プレイヤーはタスクを完了し、素材を集めながら、より大きな船を得ていく。プレイヤーが乗れる船には 複数の種類 があり、それぞれ独自の特徴を備えている。たとえば、小型船の 《ベダー》 は操舵しやすいが、大砲をはじめとする装備を搭載できるスペースが小さく、破壊されやすい。
中型船の 《ブリガンティン》 はスピードが高く、頑強で、船倉も大きく、他の船に衝突したときの与ダメージも大きい。敵船を燃やすのが好きなら、 《サンブーク》 が良いだろう。そこまで頑強ではないが、敵船を炎上させることを得意としている。他にも様々な船が存在するため、Co-opでは特にだが、 自分の船についてしっかりと考える必要 がある。
船ごとに異なる特徴が備わっている © Ubisoft
これらの船を手に入れるためには、 悪名を高める ことと 素材を集める ことが必要だ。また、強力な船を手に入れるためには 設計図 も必要になる。
悪名・素材・設計図がすべて揃ったら、あとは サント・アン など各地にいる 船大工 に頼んで建造してもらう。尚、建造してもらうためには上陸中に小さなタスクを完了させたり、海からアイテムを集めたりする必要がある。
すべての船に アップグレード や 装飾品 を追加可能で、クルーやキャラクターの衣装も替えられる。これらの豊富な機能は『スカル アンド ボーンズ』の大きな魅力のひとつだ。通常ならば 40〜50時間 はプレイを楽しめるだけのコンテンツが豊富に用意されている。
『ブラックフラッグ』とは異なり、『スカル アンド ボーンズ』は 海戦にフォーカス している。船対船、船員対船員、大砲対大砲など、プレイヤーたちはあらゆる手を尽くして敵と戦わなければならない。
また、クラシックなRPGのように、 アタッカー 、 サポート 、 タンク などのロールが船の種類ごとにアサインされているため、様々な戦い方ができる。このゲームでは、どのロールのどのサイズの船に乗っているかがゲームプレイに大きな影響を与えることになる。
『ブラックフラッグ』をプレイしたことがあるプレイヤーは、すぐに海戦で上手く立ち回れるようになるだろう。敵船と戦うときは 側面 につけて、自分の船の特長を活かしつつ、敵船の弱点を攻めていく。
海の上には様々な危険が待ち構える © Ubisoft
敵船の弱点は 視認できる ため、その弱点を攻撃しやすい向きに操舵していく必要がある。海戦はそこまで複雑ではないが、迫力があって爽快だ。 風向き も計算に入れることと船員たちのための 食料 と 水 を備えておくことも重要になる。もちろん、海で相手にするのは敵船だけではない。 怪獣 や様々な ボス戦 も待っている。
しかし、残念ながらある程度プレイしていると海戦が ワンパターン に感じられてしまう。今後アップデートされてもう少しタクティカルな要素が加わることに期待したい。
『スカル アンド ボーンズ』では広大なオープンワールドを自由に旅することができる。他のプレイヤーやAIが操作する船に遭遇したときに 掠奪 を狙うかどうかはプレイヤー次第だが、プレイヤーの行動範囲は海の上だけではない。 すべての島も上陸できる 。
しかし、上陸を続けていると、やはり『スカル アンド ボーンズ』のフォーカスは海にあることが理解できるようになる。
陸の探索も楽しいが、奥深さに欠ける © Ubisoft
停泊地では様々な依頼を受けられるが、そのような依頼や物資調達を除けば、 陸でできることはほとんど存在しない 。多くの島で何かしらの宝物を手に入れることができるが、そこまで大きなモチベーションにはなってこない。やがてすぐに錨を上げて洋上に出たくなるだろう。
『スカル アンド ボーンズ』は海の上でその魅力を最大限発揮してくれるが、残念ながら 中長期で楽しめるアクティビティが少ない ように感じられる。実際、シーズン1のロードマップではすでにエキサイティングなボス戦とゲームプレイの アップデートが加えられる ことが明らかになっている。
開発期間が長期だったのにもかかわらず、これらがリリース時に収録されなかった理由はおそらくユービーアイソフトしか分からないだろう。
海戦にフォーカスしている『スカル アンド ボーンズ』は 海賊ゲームファンには好まれる はずだ。船をアップグレードしていくシステムも完成度は高い。しかし、長期的に楽しめない、あるいは “今” のゲームファンが楽しめない要素も少なくない。