スイス有数の観光地サンモリッツ(St. Moritz)は、サーマルスパ、カーリング、アイスポロ、スキーが良く知られているが、その看板の裏側には、世界中のMTBライダーが訪れるべき、非常にパワフルなワールドクラス・トレイル群が隠されている。
サンモリッツは、イタリア側からスイスに入ってマローヤ峠(Maloja Pass)を越えると見えてくるエンガディン地方標高1,856mに位置する観光地で、標高3,059mのピッツ・ネイル(Piz Nair)とピッツ・ベルニナ(Piz Bernina)などが周囲を取り囲んでいる。
共通のリフトパスで乗ることができる7本のケーブルカーと登山列車を利用すれば、ピッツ・ネイルの麓と近隣の峡谷を縦横に走っている全長数百キロメートルのトレイルネットワークにアクセスできる。
サンモリッツは過去10年をMTBトレイル群の整備に投資してきたが、その努力はコルヴィリア(Corviglia)を中心とする活気と、標識が整備されているフロー・トレイルとナチュラル・シングルトラックで構成される広大なトレイルネットワークから感じることができる。このネットワークを利用すれば、ビッグアドベンチャーライドとスピーディなダウンヒルの両方が楽しめる。
サンモリッツに数日滞在すれば、美しい山々、広大な氷河、ローム層の森、そして現実とは思えない美しい建築物(『007』シリーズのロケ地にも選ばれている)などを観ながらライディングが心ゆくまで楽しめる。ひと言にまとめれば、サンモリッツは非常にユニークなロケーションだ。
ライディング
サンモリッツのホームトレイル群はコルヴィリア、ピッツ・ネイル、ラ・トレ・フルオール(Las Trais Flours)など、いくつもの山にまたがっている。そのメインハブが標高2,486mのコルヴィリアで、ここへは中腹駅で乗り換える登山列車でアクセスできる。尚、この登山列車は車両の半分がバイクラックになっている。コルヴィリアからは、3本のバームのフロー・トレイルにアクセス可能で、それぞれが異なったキャラクターとフィーリングを持ち合わせている。その中の1本、WMフロー・トレイルから急斜面のバームセクションを抜け、トラバース経由でフォッペタス(Foppettas)フロー・トレイルに入りサンモリッツの街へ戻れば、全長11kmのライディングになる。
3分
POV Clip WM Flow Trail
POV clip of St Moritz's WM Flow Trail
また、コルヴィリア(Corviglia)フロー・トレイルを選べば、全長4kmのダウンヒル・パンプトラックが待っており、標高差480mを下って中腹駅チャンタレッラ(Chantarella)に戻ることができる。この駅には有名なAlto Barがある。このトレイルは強烈なレイアウトを誇っており、そのツイスト&ターンで目まいを覚えるライダーもいるだろう。
3分
Corviglia Flow Trail
POV Clip of the Corviglia Flow Trail above St Moritz.
オールマウンテンライドが楽しみたい人は、ケーブルカーに乗ってピッツ・ネイルの頂上へ向かえば、数本のエンデューロ・トレイルが待っている。どれも曲がりくねった歴史あるシングルトラックで、ピッツ・ネイルを旋回するように下ってエンガディンの谷底に到着する。
3分
POV Clip Piz Nair ridge footpath
POV Clip of the Piz Nair ridge footpath.
その中の1本、IIトレイルは全長20kmの壮大なシングルトラックで、ピッツ・ネイルから月面のような風景を楽しみながらラ・トレ・フルオールの頂上を経由して、サメダン(Samedan)の村へ向かう。谷底へ到着してからイージーライドでサンモリッツまで戻れば、400mのクライムと1,600m超のダウンヒルを体験したことになる。
ピッツ・ネイルからは、IIトレイルからコルヴィリア・フロー・トレイルへ下るダウンヒルルートや、バックカントリーライドでパス・スヴレッタ(Pass Sveretta)まで下り、スヴレッタ・ダ・サメダン(Suvretta da Samedan)の人里離れたワイルドな景色を堪能できるルートも楽しめる。尚、パス・スヴレッタから左に折れれば、スヴレッタ・ダ・サン・ムレッツァン(Suvretta da San Murezzan)トレイル経由でチャンプフェール(Champfèr)へ向かうナチュラル・シングルトラックが楽しめる。サンモリッツ付近まで戻れるこのルートも壮大で愉快なライディングだ。
2分
Suvretta San Murezzan Trail
POV clip of the Suvretta San Murezzan Trail outside St Moritz.
アドベンチャーライドを楽しみたい人は、世界遺産に登録されている107年の歴史を誇るパノラマ列車、ベルニナ急行(Bernina Express)に乗り、標高2,253mのベルニナ峠(Bernina Pass)で降りて、日々進化を続けているシングルトラックを走りながらポントレジーナ(Pontresina)へ向かおう。
この全長15kmのダウンヒルトラックでは、高地シングルトラック、新設のフローセクション、森を抜けるロックガーデンなどが揃っており、あらゆるMTBライドが楽しめる。また、ベルニナ峠からヴァル・ポスキアーヴォ(Val Poschiavo)まで下り、そこからまた列車に乗って峠まで戻ったあと、ポントレジーナまでライディングすることもできる。
2分
Bernina Express Trail
POV Clip of the Bernina Express Trail outside St Moritz.
ピッツ・ネイルからスヴレッタ・ダ・サメダンまでのルートと同じようなダウンヒルになっているベルニナ峠からのルートは、それぞれがユニークな特徴を持つMTBロングサーキット3本で形成されている。標識が整備されているこの3本は合計60km以上にも及ぶため、ビッグライドを楽しみたい人に最適なルートと言えるだろう。
サンモリッツでのライディングはリッチでなくても楽しめるが、どのルートを選んでもリッチなライディングエクスペリエンスが得られるはずだ。
リフト
コルヴィリアのリフトは、毎年6月24日から10月22日まで、毎日午前8時20分から午後5時20分まで20分おきに運行している。夏期の隔週金曜日に限り、午後9時(7月) / 午後8時(8月)まで運行しているため、フロー・トレイルを数ラップしたあと、Alto Barでバーベキューとビールを楽しむことができる。
リフトの1日券(バイク料金込み)は69スイスフラン(約7,800円)で、最長6日券(342スイスフラン / 約36,700円)まで揃っている。これらのリフト券は鉄道とバスにも利用できる(ベルニナ急行はバイク料金を追加で払う必要がある)。また、大半のホテルが2泊以上の宿泊客に無料のリフト券を提供している。
アクセス
サンモリッツはスイス・チューリッヒから200km、イタリア・ミラノから175km、オーストリア・インスブルックから190kmの距離にある。スイスは公共交通機関が揃っているため、サンモリッツまで車を運転する必要はない。ベネチア、ミラノ、ルガーノ、フリードリヒスハーフェンなどから公共交通機関を利用して向かうことができる。また、サンモリッツの鉄道駅はスイス国内の大半の主要駅と繋がっているので、たとえば、チューリッヒ駅からも3時間で到着できる。
宿泊先
サンモリッツは世界的に有名な観光地なので、当然ながら高級ホテルが多く、手頃な料金のホテルは少ない。しかし、2泊以上すれば無料のリフト券が付いてくることを踏まえると、予算は他の観光地とそこまで変わらないだろう。我々は3つ星ホテルでタイレストランが備わっているHotel Laudinellaに宿泊した。バイクホテルやユースホテル(1泊41スイスフラン / 約4,700円~)、外れにあるキャンプサイトを利用しても良いだろう。
ベストシーズン
サンモリッツは高地にあるため、マウンテントレイルは6月まで雪に覆われており、10月には冬が訪れる。よって、コルヴィリアのリフトの運行期間、6月から10月までがベストシーズンと言えるだろう。しかし、バックカントリー・トレイル群とベルニナ急行からアクセスできるルートは、雪と自分のスタミナが許す限りいつでも自由にライディングが楽しめる。
取材協力:www.stmoritz.ch
