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Red Bull KumiteはCapcom Cup 2019で活躍したPunkをはじめとするトッププレイヤー16人が優勝を目指して戦う『ストリートファイターV』の招待制トーナメントで、2015年から毎年開催されている。
フランス・パリで生まれ、今やトップトーナメントのひとつにまで成長したRed Bull Kumiteはその歴史の中でいくつかの素晴らしいモーメントを生み出してきたが、ギリギリまで追い詰められたプレイヤーたちが演出する逆転劇ほど心を震わせるものはなく、たとえば、ウメハラ vs. Justin Wongの “EVO Moment #37 / 背水の逆転劇” はシーンを超えた人気を誇る。
そこで今回は『ストリートファイター』トーナメントシーンとRed Bull Kumiteの歴史の中で記録されてきた最高の逆転劇の中からいくつかピックアップして紹介しよう。
01
ウメハラ vs. Problem X(Red Bull Kumite 2018)
Red Bull Kumite史上最高で、おそらくは『ストリートファイター』史上最高の逆転劇のひとつにも数えられるのが、Red Bull Kumite 2018のルーザーズファイナル、ウメハラ vs. Problem Xだ。
あの “背水の逆転劇” の張本人、ザ・レジェンドのウメハラとこの年のEVO王者のProblem Xによる総力戦は、数々の素晴らしいモーメントが生み出されたこのトーナメントのハイライトになった。
レジェンド相手に2-1とリードし、4ゲーム目もラウンド1を取ってリーチをかけたProblem Xはラウンド2もメインキャラクターのベガでウメハラのガイルを画面端に追い込み、流石のレジェンドも万事休すかに見えた。
しかし、ここで流れが一気に変わる。ウメハラは画面端を抜け出すと今度は逆にProblem Xを画面端に追い詰め、クラッシュカウンターなどを駆使して逆にリードを奪う。
しかし、ウメハラが逆転勝利を手にしたと誰もが思った瞬間、今度はProblem Xがサイコクラッシャーで画面端を抜け出し、またもどちらが勝つのか分からない状況になる。
そのサイコクラッシャーをウメハラに咎められてゼロドットまで追い込まれたProblem Xだったが、画面端から抜け出せたことでプレイの選択肢が増え、2発目のサイコクラッシャーをヒットさせる。さすがにこれで勝負がつくはずと全員が思ったが、このラウンドはまだ終わらなかった。
ギリギリで残ったウメハラはProblem Xのプレッシャーで逆サイドの画面端まで後退し、さらにはゼロドットまで追い込まれる。しかし、ここからウメハラが本領を発揮。レジェンドはProblem Xの怒濤の攻撃を凌ぐと “逆転の逆転の逆転” に成功してラウンドを取った。
次のラウンド3はProblem Xが取ったためウメハラはここで敗退となったが、パリの観客をハートを掴んだのはウメハラだった。
02
ウメハラ vs. Justin Wong(EVO 2004)
イントロ部分でも触れたが、この史上最高の逆転劇を語らずにして “格闘ゲーム逆転劇リスト” は完成しない。ウメハラとJustin Wongという “日米格ゲーレジェンド” 2人によって記録されたこの逆転劇は15年の時を経てもまだ鳥肌ものだ。
EVO 2004の『ストリートファイターIII:3rd STRIKE』トーナメントのセミファイナルでウメハラ(ケン)はWong(春麗)と対戦した。格闘ゲーム史に深く刻まれることになるこの対戦は、海外では “EVO Moment #37”、日本では “背水の逆転劇” として共にWikipediaページが存在するほど有名だ。
前掛かりのWongに押し込まれてあとがなくなったウメハラはWongの攻撃をひたすら凌いでチャンスを待つ。そのカウンター狙いのウメハラにしびれを切らしたWongがとどめを刺すために必殺技 "スーパーアーツ" を放った瞬間、ウメハラが牙を剥いた。
『ストリートファイターIII:3rd STRIKE』の春麗のスーパーアーツ “鳳翼扇” は連続キックの必殺技なのだが、ウメハラは素晴らしい反射神経とスキルでその16発すべてをガードではなく「入力タイミングはシビアだが成功すれば削りダメージを受けない」ブロッキングで防ぐと、春麗のスーパーアーツが終わるタイミングでケンのスーパーアーツをカウンターで発動させて逆転勝利を手にした。
この逆転劇の素晴らしさには負けたWongも感動しており、『ストリートファイター』トーナメントシーンの中で一番好きなモーメントとして挙げている。
03
キチパーム vs. trashbox(EVO 2019)
EVO Moment #37から15年後に開催されたEVO 2019でも素晴らしい逆転劇がいくつも確認できたが、その中のひとつに数えられるのがキチパームとtrashboxの対戦だった。この対戦の最終ラウンドでキチパームは23秒間ひとつもミスをしないプレイで大逆転勝利を手にした。
ザンギエフのキャラクタースペシャリストとして知られるキチパームはtrashboxのバーディーに敗れるだろうと予想されていた。しかし、キチパームはここで素晴らしいプレイを見せ、3連続スピニングパイルドライバーで大逆転勝利を手にした。
EVO 2019のキチパームは次の藤村戦でも3連続スピニングパイルドライバーに成功したが、キチパームのグローバルブレイクの嚆矢になったのはこの逆転劇だった。
04
Amjad “Angry Bird” Alshalabi vs. Benoit “Gunfight” Arquilla(Red Bull Kumite 2018)
"結果ではなく過程が大事"と言われる時がある。つまり逆転劇なら、必ず最後に勝利を掴まなくても良いのだ。最後まで諦めない姿勢が確認できるだけで十分に逆転劇になり得る。
あのロッキー・バルボアが良い例だろう。映画『ロッキー』の中で彼はアポロ・クリードに敗れたが、この映画のハイライトは最後まで諦めないロッキーの姿だ。
そして、映画ほど “劇” 的ではないかもしれないが、Red Bull Kumite 2018で記録されたAngry BirdとローカルプレイヤーGunfightの対戦でも、結果ではなく過程の素晴らしさを教えてくれる大逆転劇が確認できた。
トーナメントシーンではまずピックされないアレックスをメインに据え、中東を代表するトッププレイヤーのひとりAngry Birdと対戦したGunfightはAngry Birdの是空に畳みかけられるが、そこから見事な反撃を見せ、画面端から逆にプレッシャーをかけて押し返すと一気にスタンまで持ち込んで大逆転勝利を収めた。
この対戦は最後はAngry Birdが勝ち抜けたのだが、このラウンドはアレックス使い最高の逆転劇のひとつとして永遠に語り継がれるだろう。
05
Darryl “Snake Eyez” Lewis vs. Ricki “HelloKittyRicki” Ortiz(SoCal Regionals 2014)
5 vs. 1の状況では、その1人がどんなに強くても “まず勝てない” もしくは “負けは確実” と予想される。
しかし、SoCal Regionals 2014でSoCal(南カリフォルニア)チームのメンバーとしてNorCal(北カリフォルニア)チームとのエキシビションマッチに臨んだSnake Eyezはこの常識を知らなかった…。
今回のリストのテーマを考えれば、彼がここで何を起こしたのかは簡単に予想できるはずだ。
この逆転劇は、NorCalとSoCalの5 vs. 5の団体戦でNorCalに4-0とリードされ、ホームのプライドを守るという大きなタスクが大将のSnake Eyezに課せられた瞬間に生み出された。
4タテを食らってあとがなくなっていたSoCalチームは大将戦まで戻せれば御の字と考えていたが、Snake Eyezはその期待を大きく上回る大活躍を見せた。
今回紹介している4人目のRicki Ortiz戦は、この日のSnake Eyezの強さを凝縮している。この対戦でのSnake Eyezはスタンしてゼロドットにまで追い込まれたあとも冷静にスピニングパイルドライバーで逆転勝利を決めるなど、最高レベルのプレイを連発してRicki Ortizに勝利した。
SoCalとNorCalの強烈なライバル関係は格闘ゲームコミュニティ内で有名だが、これは彼らの歴史だけではなく格闘ゲームの歴史にも残る逆転劇のひとつだ。
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