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『ストリートファイター』シリーズの歴史

© Capcom
Written by Jamie Stevenson
Red Bull Kumite 2019開催を前に格闘ゲームの金字塔の黎明期を紐解いていこう。
世界最強のプレイヤー16人が激突する『ストリートファイターV』招待制トーナメントRed Bull Kumiteが今年は日本・愛知で開催される。
格闘ゲームコミュニティ全員がこの日本版 “金網デスマッチ” に注目しているが、今回は『ストリートファイター』シリーズのルーツを学んでみよう。アーケードから始まりファミコンを経由し、世界で最も良く知られている格闘ゲームとして成立するまでの歩みを振り返っていく。

アーケード時代

世代によって回答は異なるかもしれないが、『ストリートファイター』シリーズを初めてプレイした記憶として「昇龍拳!」と叫ぶより速くアーケード筐体に小銭をつぎ込んでいた日々を挙げる人は少なくないだろう。
1987年に稼働した初代ストリートファイター』は瞬く間にアーケードの人気筐体となった。このゲームはすでにリリースされていた他のアーケード格闘ゲームをベースにして開発されており、『スパルタンX』や『イー・アル・カンフー』の体力ゲージと中国風世界観などから影響を受けていた。
しかし、『ストリートファイター』はそれらの先輩作品群を丸々コピーした作品ではなかった。ヴィジュアルは非常に美しく、強烈な必殺技が用意されていた。また、何よりも重要なことにリュウまたはケンとしてシリアスな対戦が楽しめた。
しかし、格闘ゲームとしては革新的だったにもかかわらず、『ストリートファイター』は次作ほどのユビキタス性と成功は得られなかった。
『ストリートファイター』
『ストリートファイター』
不人気の原因のひとつが必殺技やコンボの出しにくさだった。その操作性の悪さは、アップライト筐体に用意されていた強く押せば押すほど大きなダメージが入るようになっていた気圧センサー式ボタンに起因していた。
この結果、当然ながら多くの対戦から繊細さが失われることになり、Capcomがテーブル筐体版でこのボタンを採用しなくなるまでボタンを激しく叩くプレイヤーが続出した。
テーブル筐体では今に続く6ボタンが採用され、この仕様により、プレイヤーたちがゲーム内のキャラクターのようにボロボロになるまで身体を痛めることがなくなった。

家庭用ゲーム機時代

家庭用ゲーム機版『ストリートファイター』とくれば、多くの人がこのシリーズを世界的に有名な存在にしたあの作品(言わなくても分かるだろう)を思い浮かべるはずだが、シリーズが今の人気を獲得する前にいくつかの失敗作・珍作と呼べる作品が存在した。
まず挙げられるのが、初代『ストリートファイター』のCD-ROM²移植版で、この作品はどういうわけか『Fighting Street / ファイティング・ストリート』という奇妙なタイトルに変えられてリリースされた。
そして、ファミコンには『ストリートファイター』シリーズの “珍作” が存在する。1990年にリリースされた『2010 ストリートファイター』だ。
タイトルこそ『ストリートファイター』シリーズのようだが、実際は横スクロールアクションでシリーズとはまったく関係ない
北米版に至っては『Street Fighter 2010: The Final Fight』とタイトルが変えられ、『ファイナルファイト』と『ストリートファイター』シリーズのハイブリッドのような打ち出し方をされていた(主人公の名前もケビンからケンに変更されている)。
こじつけ的作品に過ぎないが、『ストリートファイター』シリーズの遠い遠い親戚と言っても良いのかもしれない…。
そして運命の作品がリリースされる。
1991年に『ストリートファイターII -The World Warrior-』がアーケードで稼働すると、格闘ゲームというジャンルだけではなく、ビデオゲーム全体に大きな変化が訪れた。
それぞれ異なる格闘スタイルとムーブを備えている8人のキャラクターから自由に選んでプレイできた『ストリートファイターII -The World Warrior-』はそれまでの格闘ゲームでは見られなかった奥深さを誇っており、全キャラクターが非常に個性的で、前作から引き継がれた3人(リュウ、ケン、サガット)に華やかさを加えることになった。
このゲームは瞬く間に世界中で人気を獲得し、脚技が美しい春麗、巨躯のザンギエフ、そして異端児ブランカなどが高い知名度を誇るようになった。
30年の長い歴史を持つ
30年の長い歴史を持つ
破壊できる背景オブジェクト、キャラクター専用ステージ、そして西洋では珍しい血液型の設定などが特徴だった『ストリートファイターII -The World Warrior-』は、格闘ゲームの “できること・含めるべきこと” - 魅力的なキャラクター同士が激しいバトルを繰り広げる活き活きとした世界観 - を示す手本となった。
当時、ディレクターの西谷亮とデザイナーの安田朗は「そこそこのヒットになれば良い」と思っていたが(前作の失敗を踏まえれば賢い予想と言えた)、『ストリートファイターII -The World Warrior-』は見事に時代精神を捉えて前作の失敗を帳消しにし、この成功が家庭用ゲーム機への移植に繋がった。
家庭用ゲーム機版第1作はスーパーファミコン専用タイトルとしてリリースされたため、ビデオゲームカルチャーの記念碑的作品を逃したSEGAファンは大きな不満を抱えることになった( “スーパーファミコン独占” から「パーティに乗り遅れてはいけない」という教訓を得たSEGAは、『Mortal Kombat』をメガドライブでリリースした)。
しかし、最終的に『ストリートファイターII』はメガドライブでもリリースされ、同時に “格闘ゲームの王” という評価を確立した。全世界で約1,400万本を売り上げたこの作品はひとつの社会現象になった。
好機を逃さなかったCapcomはこの時代を通じてゲームプレイを改良したり、プレイアブルキャラクターを増やしたり、グラフィックスを向上させたりしながらいくつかの異なるバージョンをリリースした。
ストリートファイターII’ -Champion Edition-』、『ストリートファイターII’ TURBO -Hyper Fighting-』、『スーパーストリートファイターII -The New Challengers-』、『スーパーストリートファイターII X -Grand Master Challenge-』はそれぞれレジェンドタイトルになり、『ストリートファイターIII』を求める世間の声を大きくする助けになった。
しかし、『ストリートファイターIII』が実際にリリースされるまでは長い時間がかかることになる。

ヒット超え

『ストリートファイターII』の成功は続編の開発に影を落とすことになった。世界的大ヒットはCapcomに多大な利益をもたらし、さらには別の意味の影と言える “実写映画” の制作にも繋がったが、それゆえに正規続編の開発に大きなプレッシャーがかかった。
また、格闘ゲームというジャンル全体がこのゲームに刺激を受けたことでより面白くてより多様な作品が生まれるようになる中、プレイヤーたちは格闘面をさらに激しくした『Mortal Kombat』やシステムをさらに奥深くした『Guilty Gear』のような作品にも興味を持つようになり、さらには3D時代の幕開けも迫っていた。
時代は移り変わっていた。しかし、『ストリートファイター』シリーズの時間は止まっていた。
結局、Capcomが『ストリートファイターII』の正規続編的タイトルをリリースするまでは4年という長い時間がかかったが、1995年、ついに『ストリートファイターZERO』がリリースされた(これよりも先に『ストリートファイター ザ・ムービー』がリリースされているが、この作品は無視した方が良いだろう)。
4年という時間の流れの中で『ストリートファイターII』の開発チームからは主要メンバーが数人抜けていたが、『ストリートファイターZERO』はこのシリーズの “らしさ” が感じられる作品で、『I』と『II』のキャラクターのバックストーリーが語られる中、新キャラクターたち(豪鬼を含む)が紹介された。
(依然として2Dだったが)新しいルックスと異なるプレイスタイル、スーパーコンボシステムなどが採用されていた『ストリートファイターZERO』はPlayStation、SEGAサターン、PC、さらにはゲームボーイカラーにも移植され、メディアとファンの両方から高く評価された。
『3』まで開発され、後発の正規続編『ストリートファイターIII』(移植版はSEGAドリームキャストで独占リリースされた)よりもファンの間で人気が高い『ZERO』シリーズは、『ストリートファイター』シリーズ全体の人気を復活させると同時にシリーズを過去のしがらみから解放し、『ストリートファイターIV』と『ストリートファイターV』へ続く新たな道を示した。
Red Bull Kumite 2019は12月21日・22日に開催
Red Bull Kumite 2019は12月21日・22日に開催
時代と共に2Dヴィジュアルが改良され、新キャラクターが続々とデザインされ、新モードや新機能、新格闘スタイルが用意されてきたが、『ストリートファイター』シリーズ全作品のキック、パンチ、必殺技には開発チームの気配りと愛情が通底している。
Red Bull Kumite 2019に備えてトッププレイヤーたちが準備を進めているが、彼らの背中を支えているのは『ストリートファイターシリーズ』の30年の歴史明るい未来だ。
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