フォーミュラレーシング

SUPER FORMULA完全ガイド:マシン編

レーシングドライバーの岩佐歩夢、レッドブル、Motorsport.comがタッグを組んで届けるSUPER FORMULA完全ガイド。ルール、マシン、戦略、ドライバーの見どころを基礎から分かりやすく解説。
Written by Kenichiro Ebii (Motorsport.com日本版)
読み終わるまで:9分Published on
岩佐歩夢
© Dutch Photo Agency / Red Bull Content Pool
日本最高峰のフォーミュラカーレース『SUPER FORMULA(スーパーフォーミュラ)』。そこで使われているマシン『SF23』とは? 2025年のスーパーフォーミュラ年間チャンピオン、岩佐歩夢の解説も交えながら紐解いていく。
岩佐歩夢

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© Getty Images / Red Bull Content Pool

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記事の内容まとめ

Q&A

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スーパーフォーミュラではどんなクルマが使われている?

スーパーフォーミュラでは2023年より、『SF23』と呼ばれる車両が使われています。車体はイタリアの著名なレーシングカー製造社ダラーラが手掛け、タイヤは日本の横浜ゴムが供給しています。
エンジンは直列4気筒ターボで、ホンダ製とトヨタ製の2種類がありますが、スーパーフォーミュラにおいては性能の統一が図られています。F1では車体もエンジンも開発競争が行われているためチームごとにマシン性能に差がある一方、スーパーフォーミュラは全車が基本的に同じ車両パッケージでレースを戦います。
岩佐歩夢

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© Ayumu Iwasa / Red Bull Content Pool

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普通のクルマとは違った形をしているのはなぜ?

この形状は、とにかく速く、そして安全にサーキットを走るための工夫の賜物です。
例えば車体前後にある翼のようなパーツ(ウイング)は、飛行機の翼を上下逆さまにしたような構造となっており、走行中に空気の流れを活かして車体を地面に押し付ける力(ダウンフォース)を生み出します。このダウンフォースは非常に強力であり、100km/hや200km/hといった猛スピードでコーナーに突っ込んでも、遠心力でコースアウトすることなく曲がることができるのです。
SUPER FORMULA

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岩佐歩夢

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コックピット周辺には下駄の鼻緒のようなパーツが付いていますが、これは“HALO(ヘイロー)”と呼ばれるチタン製の安全装備。理論上は大型バスや大型トラックにのしかかられても耐えられるようになっており、他の車両やタイヤの直撃からドライバーの頭部を守ります。既に数々のレースでドライバーの命を救ってきたHALOは、スーパーフォーミュラでも2019年から装着されています。
岩佐歩夢

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なお、スーパーフォーミュラのマシン「SF23」は、数あるレーシングカーの中でも「フォーミュラカー」と呼ばれるカテゴリーに分類されます。フォーミュラカーとは、一般的にタイヤがむき出しになった、屋根のない1人乗りのレーシングカーのこと。空力性能を追求した、流線型の車体が特徴です。

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スーパーフォーミュラのマシンはどのくらい速い?

スーパーフォーミュラのマシンは最高速度300km/hオーバーで、最も直線が長い富士スピードウェイで行われるレースでは、320km/h近い最高速が記録されます。
岩佐歩夢

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例えば鈴鹿サーキットを市販のスポーツカーで走った場合の1周のおおよそのタイムは、マツダロードスターで2分40秒、トヨタGR86で2分30秒といったところ。しかしスーパーフォーミュラは1分40秒以内で1周を走ることができます。50秒〜1分のハンデを負ってスタートしても、1周回ってくるまでにスポーツカーを追い抜いてしまうということになります。

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これは最高速の速さだけではなく、前述の“ダウンフォース”による驚異的なコーナリングスピードが関係しています。
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スーパーフォーミュラのマシンは初心者でも運転できる?

世界屈指の速さを誇るスーパーフォーミュラのマシンを操るのは、技術的にも体力的にもかなりの難易度。もしあなたがレース経験なしでいきなりスーパーフォーミュラのマシンに乗ったら、スピンさせずに走らせることすら苦労することでしょう。
岩佐歩夢

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実は一般車には、安全のためにドライバーの運転操作を補助する様々な電子制御システムが働いており、よほどのことがなければスリップすることはないんです。しかしスーパーフォーミュラのマシンにはそういったシステムはなく、少しでもアクセルを踏みすぎると強烈なパワーにより後輪が空転してスピンしてしまいます。
そして体力的にも見た目以上に過酷です。スピードが乗れば乗るほど、加速や減速、コーナリング中にかかるGが強烈になってきます。前に、後ろに、左右に吹き飛ばされそうになる感覚に耐えながら集中力を維持することは簡単ではありません。ブレーキペダルも一般車より格段に重く、レーシングドライバーは壁を蹴るような勢いでブレーキをかけています。

岩佐 歩夢: 「普通に一般車を走らせる感覚で100km/h〜120km/hくらいで走らせる分には、皆さんでもスーパーフォーミュラを簡単に運転できると思いますよ! ただ、コース上で速く走らせるとなると別の話になります。もちろん乱暴に運転したらスピンしてしまいますし、フィジカル的にも不可能な領域に入ってくると思います」

「これはスーパーフォーミュラではなくF2という車両に乗っていた時の話ですが、ブレーキも重いしハンドルも重いし首も辛いしで、クルマを正常に運転できなくなる怖さを感じたことがありました」

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全車同じマシンを使うスーパーフォーミュラは、ドライバーの腕で勝敗が決まる?

車両の性能はセッティング、つまり調整作業によって変わります。スーパーフォーミュラに参戦するドライバーのスキルは非常に高いレベルで拮抗しており、そのスキル差よりも調整されたマシンの仕上がり具合が予選・決勝の順位を大きく左右することが多いです。
スーパーフォーミュラのマシンは全車同じ車体とタイヤ、そして同等性能の2種のエンジンで構成されているため、「あとはドライバーの腕次第」と考えられがちです。しかし、やはり自動車という道具を使うスポーツである以上、この“道具”の性能をいかに引き出せるかが非常に重要となってきます。
どこをどのように調整するのかを、データやドライバーとのディスカッションを基に決めていくのがエンジニア、そして実際に作業を行うのがメカニックです。彼らが高いクオリティの仕事をすることによって、“速いマシン”が出来上がるのです。
岩佐歩夢

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岩佐 歩夢: 「もちろんクルマを速く走らせる能力は大前提です。ただ、レースの世界は複合的な要素が多く、ドライバーの運転技術が高ければ早く走れるかというとそうではありません」

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具体的にどのようなセッティングをする?

セッティングの世界は非常に奥が深く、ここでは紹介しきれないほどですが、基本的にセッティングには絶対的な正解は存在せず、常にトレードオフ(一方を追求すればもう一方が犠牲になる、両立しない様)が生じます。
岩佐歩夢

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例えば車体の空気抵抗を減らして直線スピードを上げようとすると、ダウンフォースが下がってコーナーで遅くなってしまうことも。コーナーで機敏に曲がるマシンに仕上がったと思えば、その分曲がる際に暴れやすくなったり、コーナーでどっしりと安定して曲がれるマシンに仕上げたら、今度はキビキビと曲がれなくなったり……。
エンジニアはこういったトレードオフと向き合い、開催サーキットのレイアウトや、路面の状況、ドライバーのドライビングスタイルなど、様々な要素を考慮しながら、車高やサスペンションなどに微調整を繰り返し、最適な妥協点を見つけていくのです。
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速いマシンに調整できるかはエンジニアの腕次第?

良いセッティングが見つかるかはエンジニアだけの手にかかっているわけではありません。実際に走行したドライバーが、マシンの挙動を適切に言語化してエンジニアに伝えることができなければ、セッティング作業は順調には進みません。
そしてメカニックの工場での車体組み立て作業にほんの少しの狂いがあるだけでも、ミリ単位(もしくはコンマ数ミリ単位)の計算が合わなくなり、セッティングを変えても想定していたパフォーマンスが出せないこともあります。ドライバー、エンジニア、メカニック……彼ら全員が良い仕事をしなければ、速いマシンは出来上がりません。
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これらを高級レストランに例えるなら、美味しさを追求したレシピを考案するのがエンジニアで、完璧な仕込みで食材の良さを引き出すのがメカニック、そしてそれを実際に調理してひとつの料理として形にするのがドライバー、といったところでしょうか。例えレシピが同じでも、食材の下処理次第で味は変わってきますし、逆に食材の状態に合わせて調理工程も調整する必要があるでしょう。

岩佐 歩夢: 「例えば人間の身体も、どんな運動をするかによって必要な筋力、体力などが変わってきますよね。例えば同じ長距離走でも、平地を走るのか山を走るのかでも、それぞれに対して最大限のパフォーマンスを発揮するために身体をアジャストさせる必要があります。それと同じことをクルマでやっているイメージです」

「スーパーフォーミュラでは基本的に全車ほとんど同じパーツが使われていますが、パーツ自体にも若干の個体差は必ずあるものですし、メカニックさんの組み上げ方にもそれぞれ個性があります。そういった本当に細かい違いや変化が影響するので、各車に最適なセットアップはそれぞれ違ってくるんです」

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スーパーフォーミュラのマシンの価格は?

スーパーフォーミュラの車両価格は公表されていませんが、エンジンやタイヤを除いた車体のパーツを一式揃えるだけでも1億円を超えると言われています。コックピット部分(モノコック)だけでも数千万円、ウイングも前後でそれぞれ約500万円とのことで、ウイングを買うお金だけでグレードの高い乗用車が新車で買えてしまいます!
このように非常に高価な車体を扱うこともあり、チームの年間の活動費用は億単位に及ぶとか。そのため様々な企業のスポンサーによって支えられているチームも少なくありません。そのため、各チームのマシンには、様々な企業のスポンサーロゴが見られます。
岩佐歩夢

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監修/協力

岩佐歩夢: 世界を舞台に活躍するレーシングドライバー。2020年にフランスF4選手権を制し、翌2021年にレッドブル・ジュニアチームに加入。FIA F3、FIA F2を経て、2024年からスーパーフォーミュラに参戦。2025年にはシリーズチャンピオンに輝いた。F1のリザーブドライバーとしても経験を積み、さらなる高みを目指して挑戦を続けている。
Motorsport.com 日本版: 世界規模で展開するモータースポーツ専門メディアの日本版(2016年配信開始)。F1をはじめ、MotoGP、スーパーGT、スーパーフォーミュラ、WECなど、国内外のさまざまなレースカテゴリーを網羅。世界各地のジャーナリストによる現地取材や独自の分析を通じて、最新ニュースからレース解説、ドライバーインタビューまで、モータースポーツの魅力を幅広く発信している。

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