『鉄拳7』300万本突破記念アートワーク
© Bandai Namco
Gaming

『鉄拳8』を予想する:Anakin & たぬかなが最新作に求めること

バンダイナムコの3D対戦格闘ゲームシリーズ最新作には大きな変化が加えられることが予想されるが、プロプレイヤーたちは何を求めているのだろうか? レッドブル・アスリート2人に話を聞いた。
Written by Dom Peppiatt
公開日:
『鉄拳7』は同シリーズの基準から判断しても “大成功” であり、この世界的人気を誇るゲームシリーズの初期作品群以来となる純粋な『鉄拳』作品のひとつに数えられている。
『鉄拳7』は、日本国内のアーケードでデビューしたあと、ロケテストを経て家庭用ゲーム機版がリリースされたが、この流れから分かる通り、近年の3D格闘ゲームの大半よりも “対戦” に重きを置いている。また、PS4・Xbox One・PCで家庭用ゲーム機版がリリースされたあとも、『鉄拳7』のストーリーは終わっていない。本原稿執筆時点で家庭用ゲーム機版リリースから4年弱が経っているが、その人気は右肩上がりで伸び続けていると言える。
一方、『鉄拳7』はこれまでの『鉄拳』とは違う作品でもある。全世界600万本以上を売り上げ、シーズン4までアップデートされている豊富なコンテンツを備え、公式トーナメント “THE KING OF IRON FIST” は世界に大きな印象を与えている他、サービス化(GAAS:Game As A Service)されたシリーズ初の作品でもあり、バンダイナムコがPS5Xbox Series S/Xでリリースする予定のシリーズ最新作へのファンからの期待を生み出す要因となっている。
2021年3月現在、バンダイナムコはその最新作の開発について公式発表をしていないが、下に紹介している『鉄拳』シリーズの顔、原田勝弘のツイートが示唆している通り、本人と彼のチームは『鉄拳』シリーズやその他のゲームに関連するアクションを起こしているようだ。
しかし、『鉄拳』シリーズはこの先どこへ向かうのだろうか? 『鉄拳7』は様々な意味で正統進化の作品だったと世界から評価されている。ロースターを彩るバラエティ豊かなゲストキャラクター陣やバンダイナムコがリズミカルに更新を続けている丁寧なアップデートを確認すれば、『鉄拳7』が3D対戦格闘ゲームにおける“ハイクオリティ” の新基準を定めていることと、次の作品が多くの期待に応えなければならなくなることが理解できる。
同族の『ストリートファイター』シリーズとは異なり、『鉄拳』シリーズのチームは主要メンバーが維持されており、原田が『鉄拳』シリーズから去る可能性は非常に低いように思われる(本人は新たなポケモン系格闘ゲームをいつか開発したいと思っているようだが)。では、親殺し、家庭内抗争、デビルの化身などの定番の設定はさておき、『鉄拳』シリーズの忠実なファンたちは最新作を含めたこのシリーズの未来に何を求めているのだろうか?

ローンチ

『鉄拳7』の公式発表は手際の悪さが目立った。いくつかの情報リークや原田による直前の予定変更があったため、2014年の公式発表は勢いが大きく削がれてしまった。コスプレアイドル的キャラクターのラッキー・クロエをフィーチャーしたゲームプレイトレーラーの発表は賛否両論となり、サウジアラビア出身の新キャラクター、シャヒーンも誹謗中傷の対象となった。
家庭用ゲーム機版『鉄拳7』は大きな成功を収めた
家庭用ゲーム機版『鉄拳7』は大きな成功を収めた
しかし、家庭用ゲーム機版が正規リリースされると、すべてが順調に進んでいった。様々なレビューで高得点を獲得したこの作品は、比較的安定していたネットコードとアクセシビリティが高いが奥深いゲームシステムを備えていたことで、プレイヤーたちは多くの時間を注ぎ込むことになった。
PS4 / Xbox One世代にリリースされた格闘ゲームの中で、『鉄拳7』はヒットだった。そのため、『鉄拳7』と同じ路線(コンテンツは少ないが全体的に安定している状態でローンチ)を取ることが、『鉄拳8』に好結果をもたらす可能性が考えられる。
「実は『鉄拳8』については、コンテンツが少ない状態で早めにリリースされても、コンテンツが充実した状態で遅めにリリースされても構わない」と話を始めるのはレッドブル・アスリートとして活躍する『鉄拳7』のトッププレイヤーのひとり、Hoa “Anakin” Luuだ。「でも、『鉄拳7』では、できる限り早くリリースしてからコンテンツを順次追加していくアプローチが上手く機能していたように思う」
ワールドクラスのリン・シャオユウ使いとして有名な日本人プロプレイヤーで同じくレッドブル・アスリートのたぬかなは異なる意見を持っている。
「個人的には『鉄拳8』はもう少し完全に近い形でリリースしてもらえたら嬉しいですね。コンテンツ不足のままリリースされてしまうと、プレイヤーが早くに諦めてしまい、格闘ゲームそのものをプレイしなくなってしまうことが考えられます。現在はシーズン制が導入されていますが、『鉄拳8』がリリースされるのであれば、コンテンツが充実している状態からプレイを始めたいですね」
この意見の違いは非常に興味深い。他の格闘ゲームは、コンテンツが少ない状態でリリースしたあと、シーズンパスや無料アップデートを通じてロースターとステージを増やしており、『ストリートファイターV』、『グランブルーファンタジー ヴァーサス』、『Mortal Kombat 11』などがこのアプローチで成功を収めているが、バンダイナムコが取るべきアプローチについて『鉄拳』プロプレイヤー2人の意見は割れている。
リリース時のロースターが充実していれば、その作品の魅力は増すが、ロースターの数が最初から多ければ、その分だけ長期的にコンテンツを追加していくことが難しくなっていく(理論上は)。これは開発側が解決しなければならない興味深い問題になるだろう。しかし、たぬかなが最低限求めているのは安定したネットコードだ。
「2020年11月の大型アップデートは長い間待っていたものでした。キャラクターの調整とシステムの変更が含まれていましたが、日本人プレイヤーの間で最も話題になったアップデートのひとつが、ネットコードの改善でした。日本だけではなく、アジア諸国のプレイヤーたちがトーナメントレベルでプレイできるようになりました。おかげで、今は新たな強豪プレイヤーたちと対戦しながら学べています」
『鉄拳7』のネットコードはいくつかの問題を抱えていたが、シーズン4のアップデートのあと、格闘ゲームコミュニティ内では、それらの大半が解消されたという意見でほぼ一致している。バンダイナムコが『鉄拳8』でこのネットコードマジックを再び使用することに期待したい。たぬかなは、カジュアルプレイヤーとトーナメントプレイヤーの両方にとって安定したネットコードは不可欠だと信じている。
「今後はオンラインの需要がさらに高まっていくと思います。将来的には、さらに遠くのプレイヤーたちと対戦できるようになれば嬉しいですね。夢のような話かもしれません。ですが、シーズン4のアップデートは多くのプレイヤーの期待を大きく上回っていたので、この夢が現実になれば最高ですね」

キャラクター

新規参戦キャラクターの一部が賛否両論だったことはさておき、『鉄拳7』のキャラクターロースターはとにかく豊富だ。すべての正規ナンバリングタイトル(およびスピンオフタイトル)に参戦している『鉄拳』シリーズの主人公クラスから、『ストリートファイター』シリーズからのゲストキャラクター、格闘ロボット、イタリア人マジシャンまで、『鉄拳』シリーズのキャラクターデザイナーたちはバラエティに富んだテイストを好んでいるようだ。
『鉄拳7』300万本突破記念アートワーク
『鉄拳7』300万本突破記念アートワーク
原田と開発チームは、ありとあらゆる職業や地位、出身国のキャラクターを生み出すことに長けている(もちろん、失敗と言えるキャラクターもいくつか存在してきたが)。では、プロプレイヤーたちは、開発チームがこの路線を維持してさらに多様な国や背景を持つキャラクターが登場することを望んでいるのだろうか?
「もちろんだよ」とAnakinは回答し、次のように続けている。「開発チームは様々な格闘スタイルやカルチャーを表現するのが昔から上手い。長年このシリーズをプレイしているひとりとして言わせてもらうと、新キャラクターが追加されれば興奮が増すんだ」
Anakinは、ロースターに加えられたら面白いと思う新キャラクターについて次のように説明している。
「キャラクターと技の数がかなり多いゲームだから、キャラクター間で同じ技や似た技が生まれてしまうのは仕方がない。でも、技の出し方、そして他の技との組み合わせ方が違いになるんだ。だから、他のキャラクターと同じような技を備えているのに完全に新しい印象を持てるキャラクターだったら、新キャラクターと言えるね」
Hoa 'Anakin' Luu competes at the Red Bull Conquest Qualifier held at The Garage at Tech Square in Atlanta, Georgia, USA on September 8, 2018.
Hoa 'Anakin' Luu as seen in Conquest Road Trip
一方、たぬかなは「『鉄拳』シリーズのオリジナルキャラクターを用意してもらいたいですね。デザインが本当に好きなので。具体的に言うと、リロイ・スミスとファーカムラムのキャラクターデザインは最高だと思っています」と語っている。
この意見は、ローンチ時に発表する代わりに後半に追加することでキャラクターへの評価を高めた『鉄拳7』のシーズンパスの成功ぶりを物語っている。これは、バンダイナムコがファンの意見に注意深く耳を傾けていることを示している。
ゲストキャラクターは『鉄拳』シリーズの常識だ。1990年代には『鉄拳3』にゴンがゲスト参戦を果たしたが、『鉄拳7』のゲスト参戦はネクストレベルに進化しており、『ストリートファイター』シリーズ、『ファイナルファンタジーXV』、『ウォーキングデッド』、『餓狼伝説』シリーズからゲストキャラクターが参戦している。
たぬかな
たぬかな
これらのキャラクターはカジュアルプレイヤーたちの間で人気が高いが、トーナメントプレイヤーたちは強く思い入れないように気を付けているようだ。Anakinは次のように語っている。
「ゲストキャラクターたちには満足しているよ。最初はゲームに上手くフィットするのか疑問に思っていたけれど、僕の予想を上回るクオリティだった。だから、次作でまたゲストキャラクターが追加されてもまったく問題ないね」
「トーナメントシーンは最強キャラクターを使うためにキャラクターランキングを用意しているんだけど、ゲストキャラクターたちはそのランキングで上位に入らないからトーナメントではあまり使われていない。でも、そういうキャラクターこそ危険な存在になりえるんだ。トーナメントでは特にね。だから、弱キャラクターという評価にもある種のアドバンテージがあるのさ」
たぬかなは、バンダイナムコが次作でもゲストキャラクターを積極的に採用することを望んでいる。
「ゲストキャラクターは良いと思います。なぜなら、『鉄拳』シーンだけではなく、他のゲームのトッププレイヤーやカジュアルプレイヤーからも注目されるからです」と語るたぬかなは、ゲストキャラクターはカジュアルプレイヤーたちを増やすために非常に有用だと考えている。
Anakinは、カンガルーのロジャーと木人が次作で復帰することを大いに望んでいると付け加えている。

システム

『鉄拳』シリーズは基本的には1v1の対戦だが、開発シリーズはシリーズを通じて、(小規模と言わざるを得ない)3D対戦格闘ゲームシーンで自分たちを差別化し、自分たちの対戦を面白くするための様々なシステムを用意してきた。
州光の追加はベテランプレイヤーたちから好評だった
州光の追加はベテランプレイヤーたちから好評だった
過去には【バウンド】のようなコンボ派生を目的としたシステムなどが用意されてきたが、『鉄拳7』では体力が残り20%になると自動発動される【レイジシステム】が “レイジアーツ&レイジドライブ” として用意され、体力が減ってゲージが赤い状態になると攻撃力が上昇し特殊技が使用できるようになった。
『鉄拳6』で初登場した、一発逆転を狙える【レイジシステム】は、『鉄拳』シリーズを大きく変えた。現在、対戦の多くは “ワンサイド” ではなくなっており、トップレベルの対戦の展開が読みにくくなっているため、観戦がより面白くなっている。効果を数値化するのは難しいが、このような変更が『鉄拳』シリーズの近年の人気爆発の大きな理由となっている可能性は高い。プロプレイヤーたちも、次作以降でもこのようなシステムが導入されることを望んでいる。
「3D対戦格闘ゲームには2D対戦格闘ゲームよりも長く苦しんできたんだ」とAnakinは語る。「個人的には、『鉄拳7』は多くの人から興味を集めたシリーズ初の大ヒット作品だと思っている。3D格闘は2D格闘よりも学ぶのが難しいように感じられるけれど、『鉄拳7』はここに上手く対応して、初心者でもある程度簡単に学べるようにしていた。この変更は3D対戦格闘ゲームの成長を大きく助けた要因のひとつだったね」
アークシステムワークスやNetherRealmのような格闘ゲームデベロッパーは、数年前からチュートリアルシステムを改良することで自分たちの作品群の人気を伸ばしてきたが、一部の『鉄拳』プロプレイヤーはバンダイナムコもここから学んで欲しいと感じている。Anakinは『鉄拳7』の充実しているトレーニングモードを称賛しているものの、たぬかなは “オンライン対応のトレーニングモード” が次作で用意されても良いだろうと考えている。
たぬかなは「『鉄拳7』はそれまでのシステムを上手く改良することで、シンプルですが奥深い3D対戦格闘ゲームになったと思います。プレイヤーのスキルと努力によって変わっていくので、シンプルすぎませんし、この作品ならではの達成感も得られます」とコメントしている。
今後、より統合されたトレーニングモードでより効果的に新規プレイヤーとコミュニケーションを取ることができればプレイヤー数を増やす助けになるはずだが、Anakinとたぬかなは現行のシステムで具体的に追加・削除して欲しい部分はないとしている。この事実は、現在の『鉄拳』が非常に良好な状態にあることを物語っている。

サポート

プロプレイヤーとして『鉄拳』の次作に何を求めるかという質問に対し、Anakinは「デベロッパーからのコミュニティサポートがなければ、ゲームは早くに終わってしまう」と回答し、次のように続けている。
鉄拳ボウルのようなボーナスモードはカジュアルプレイヤーたちに好評
鉄拳ボウルのようなボーナスモードはカジュアルプレイヤーたちに好評
「個人的には、バンダイナムコはもう少しこの部分に注力すべきだと思っている。他のジャンルのeスポーツタイトルは、プレイヤーやファンと積極的にコミュニケーションを取って自分たちのゲームをプロモートしている。そのようなタイトルと同じように、バンダイナムコもゲーム内にトーナメントシーン関連のニュースやプロモーションを取り入れていって欲しいね。トーナメントシーンがこれまで以上に盛り上がると思うから」
とはいえ、Anakinがこれまでのバンダイナムコのサポーツを不満に思っているわけではない。むしろ、Anakinは『鉄拳7』のコミュニティサポートは次作以降のテンプレートになるべきもので、トーナメントシーンを再活性化してくれたと感じている。
「個人的に『鉄拳7』はゲームに様々な変更を加えた点が高く評価できる。システムに数多くの変更が加えられた。このような動きはこれまでになかった。『鉄拳8』は、プレイヤーたちの意見を取り入れながら調整しながらさらに良くなっていけると思う」
「実は、プロプレイヤーとしての自分にとって最大のチャレンジとなっているのは、『鉄拳7』のライフスパンを通じてトーナメントシーンがレベルアップしたことなんだ。『鉄拳』シリーズは過去と比べると10倍以上は認知度が高まっているから、トーナメントに参加するハイレベルで危険なプレイヤーの数が増えている」
「これまではトーナメントで勝ち上がっていくのがもっと簡単だったんだ。勝つのが難しくなってきた今も何とか自分のステータスを維持できていることに驚いているよ」
『鉄拳7 』でのシーズン制導入は好評だった
『鉄拳7 』でのシーズン制導入は好評だった
これは、『鉄拳7』に時間的猶予を与え、修正パッチやシーズンアップデートでシーンをサポートしていくというバンダイナムコの判断が生んだ結果だ。たぬかなは、『鉄拳7』の勢いを保とうという彼らの努力を称賛している。
「シーズン制の導入は、そのゲームならとにかく上手いというプレイヤーの数を増やすと思います。やり込むプレイヤーが増えたことで『鉄拳7』は本当のスポーツになっているのです。ですが、シーズン制は新鮮さに欠けてしまうので、大型アップデートが行われるタイミングでレイジドライブやステージギミックのような斬新なアイディアがもっと追加されるようになれば良いなと思っています」
ここまでをまとめると、プロプレイヤーたちは、これまでと変わらないレベルのeスポーツによりフォーカスしたサポートと時間経過と共に追加される斬新なシステムを『鉄拳8』に求めているようだ。『鉄拳7』で基盤が作れているので、『鉄拳8』でそこまで多くに取り込む必要はないだろう。
たぬかなは「各キャラクターのストーリーも気になりますね。『鉄拳』シリーズの映画のようなストーリーは、コアプレイヤーだけではなく、カジュアルプレイヤーにも愛されると思いますよ」と付け加えている。

まとめ

『鉄拳』シリーズが現在過去最高レベルの健康状態にあることは間違いないだろう。多くの新規カジュアルプレイヤーたちがプレイしており、プロプレイヤーたちがトーナメントシーンを盛り上げてその勢いを維持している。
『鉄拳8』はどうなるのだろうか?
『鉄拳8』はどうなるのだろうか?
カジュアルプレイヤーたちは、より充実しているシングルプレイヤーモードで荒唐無稽だが魅力的で謎めいたソープオペラ的ストーリーを楽しみたいと思うかもしれないが、『鉄拳』シリーズのプロプレイヤーたちは、次作のシステムや機能にこれまで以上に興味を持っているようだ。
豪鬼によって持ち込まれた2D対戦格闘ゲーム的システムが今後さらに増えるのだろうか? それともバンダイナムコは【レイジシステム】や【バウンド】をさらに進化させて、『鉄拳』シリーズをさらにユニークなゲームにするつもりなのだろうか?
現時点では何も明らかになっていないが、少なくとも『鉄拳』シリーズが非常に良好な状態にあるということは分かっている。世界の未来はそこまで明るくないのかもしれないが、『鉄拳』の未来は明るい。
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