焼き鳥とスケートボード© Takaki Iwata
スケートボード
vol.11【長田大輔】焼き鳥とスケートボードで国際交流を企む実業家!?
人物写真のない人物インタビュー企画。スケーターの「創造力」にフォーカスする異色の連載『The Another Story』。第11回目に登場するのは、居酒屋《天下一 焼きとん 焼き鳥 なぎ屋》のオーナー・長田大輔さん。
Written by alex shu nissen / Edited by Hisanori Kato
公開日:
焼き鳥とスケートボード
焼き鳥とスケートボード
今回の主役となる長田大輔さんは、居酒屋『天下一 焼きとん 焼き鳥 なぎ屋』のオーナー。1店舗目を2005年、東京・方南町にオープンし、現在は系列店を含め、国内に8店舗、そしてタイに9店舗を構えるという、なかなかのやり手実業家だ
しかし会ってみれば、当の本人は、ビジネスマンというよりも、明らかに生粋のスケーター
そう、備長炭で丁寧に焼き上げた焼き鳥は絶品であるが、ここはただの居酒屋とはひと味違う。
なぎ屋の面白いところは、スタッフにスケーターを数多くリクルートしており、タイの店舗のバックヤードには仲間たちと手がけたアジア屈指のスポットとも言えるボウルが併設されている点
お店の手伝いを兼ねて、日本からタイへ、タイから日本へスケーターたちをアテンドし、面倒を見ているんだとか。話を聞くと、飲食店で働いた経験はアルバイトくらいなのにも関わらず、32歳でお店をスタートしたというから驚きである。やはりこの男、ただ者ではなさそうだ。

海外に行きたくて脱サラ

焼き鳥とスケートボード
焼き鳥とスケートボード
彼がスケートボードを始めたのは、中学の頃。友だちから使わなくなったデッキをもらったことがきっかけだった。単純に“面白そう”という理由で始めた趣味だったが、成長するにつれて、いつしか自分のライフスタイルの中心になっていく。
「もともと経歴で言うと、20歳の時に専門学校を卒業して、デザイン会社でサラリーマンをやってたんですよ。コンピューターで絵を描くのがメインの仕事でした。その頃もずっと滑ってたんですけど、会社員だとなかなか海外もいけないし、もっと自分の時間が作りたいという理由で22歳の時に会社を辞めました。それからは、フリーランスでコンピューターグラフィックをやりながらがっつりスケートボードをするようになりましたね」
仕事に自由が効くようになってからは、スケートボード三昧の生活で、時間を見つけては海外へ旅に出ていたそうだ。スケートボードを通して知り合った仲間を訪ね、アメリカ横断、ヨーロッパ縦断など、様々な旅の経験が、なぎ屋を始める理由に繋がったという。
「お店を始めたきっかけは、ありきたりなんですけど、しばらく外国に居ると日本食が無性に食べたくなるじゃないですか。でも実際、おいしいところってないし、なんちゃって日本料理ばっかりだな~ってずっと思ってて。じゃあ、自分が外国でやろう!って発想でした。日本に戻ったらすぐに動き始めて、まずは、当時焼き鳥屋で働いていた学生時代のスケートボード仲間にも声をかけたんです」
こうして、“本物の味を伝える”というなぎ屋のコンセプトが生まれる。そして、海外出店を前提に、東京のストリートスタイルを発信する為、昔ながらの大衆的居酒屋を基調とした焼き鳥専門店をオープンした。
なぎ屋の焼き鳥
なぎ屋の焼き鳥

タイは世界のスケーターの交錯地点だった

焼き鳥とスケートボード
焼き鳥とスケートボード
数年後、日本での経営が軌道に乗り、満を持しての海外進出に選んだ先はタイ。しかし、スケーターならば、順当に行けばアメリカに憧れを抱きそうなものだが、一体なぜタイなのだろう?
「NYはもちろん他にも何ヵ国か視察に行ったんですが、ピンときたのがタイだったんですよね。タイのシーンについては日本に情報が入って来ないから意外かもしれないですけど、実は世界のスケーターが集まる場所なんですよ。バンコクって西洋人のスケーターのバカンス先として人気で、ヒッピーにとって世界のハブになってるんです。大きい空港があったりとか、プーケットはビーチが楽しいし、世界を旅して歩く中で、必ずバンコクに寄るって人が多いんですよ
焼き鳥とスケートボード
焼き鳥とスケートボード
スケーターの楽園を見つけた長田さんは、タイにお店を開くと同時に、当時国内に本格的なパークやトランジションがなかったという理由から、現地のスケーターなどの協力を借りながらバックヤードにDIYでボウルを作った
すると世界中からスケーターが集まるように。さらに、お店もタイの地元民に愛され大繁盛。最初は日本人のお客さんがほとんどだったが、今では半分以上はタイ人だという。そんな“当たる”物件探しにも、スケーターらしいこだわりがあった
知らない街で土地勘を得たい時は、必ずスケートボードを使うんです。街で滑ってると友達ができて、知らない土地が面白くなるし、ローカルならではの情報が手に入る。物件を探すのもスポットチェックと同じなんですよね。人の流れがあって、集まる場所が見えて来る。最初は失敗もしましたけど、コツが掴めてからは、場所を移したら、売り上げ5倍になっちゃったってこともありました」

スケーター社長の成功の秘訣

長田大輔さんのスケート写真
長田大輔さんのスケート写真
飲食店の生存率については、2年後で50%、10年後には5%とよく言われている。そんな時代において成功を収める秘訣とは何なのか? かなり気になるところだ。取材の中で、長田さんにビジネス的なノウハウの話を引き出そうとしてみるが、
「当たり前のことをやりつつ、ちょいちょい面白い技を入れていく感じですかね?」
と、何も特別なことはしていないと語った。もしかしたら、わかりやすい必勝方や近道なんてものは、移り変わりの激しいこの現代に、そもそも存在しないのかもしれない。
しかし、ヒントとなるようなエピソードをひとつ紹介しよう
お店のバックヤードにボウルを作った時に悩んだことがあって。それは管理をどうするかってこと。でも、結論から言うと鍵をつけるのをやめました。自分が居なくても、いつでも誰でも来れるような形にしたんです。というのも、コペンハーゲンにALIS WONDERLANDって有名なボウルがあるんです。そこが24時間オープンなんですけど、管理されているって感覚が全くないんです。それにスケートボードをしない人も自由に出入りできる。とにかく、日本の価値観ではひと言で説明しきれない場所で初めて行った時に感動したんです。その光景を見て“あっ、そもそも管理なんてする必要なんてないんじゃないか”って思ったんです。スケートボードが好きな奴らが集まって、出会いが生まれればいいんじゃないかなって。いろんなやつが来て盛り上がった方が面白いじゃないですか。それはルールや、お金で買えないことなんで。それに、僕、管理向いてないんですよ。むしろされるの嫌だって思っていたスケーター側の人間ですからね(笑)
そんな、粋な計らいが功を奏して、世界中からやんちゃなスケーターが集まっても、トラブルは未だにないという。国によって、常識や考え方も違うからこそ、規則を押しつけずフリーでオープンなスペースを提供することで、ピースな空間が生まれたというわけだ。そんな、スケーターのポジティブなマインドが店づくりにも息づいているのだろう。
最後に、そんな彼にスケートボードから学んだことを訪ねてみた。
「言われて気がついたんですけど、何事もボーダレスに考えるようになったことですかね。会社員辞めて以来、縛りがないので、仕事も遊びも分け隔てなくやっちゃってます。スケートボードも上手いとか下手だけじゃないし、国籍・年齢関係なく遊べて楽しいじゃないですか。だから、これを読んでくれた人たちも、タイに遊びに来てくれたら嬉しいですね! 現地の友達も紹介したいし、僕のボウルで滑ったり、ご飯食べたり、一緒に盛り上がりたいですね。もう、タイのことは、なんでも俺に聞いてくれ! ってね(笑)
焼き鳥とスケートボード
焼き鳥とスケートボード
【了】
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