「音楽とダンス、そしてゲームを愛する全ての人へ」というキャッチコピーのもと、ミレニアムイヤーを控えた1999年12月、セガ(現:セガゲームス)のゲーム機"ドリームキャスト"にて発売されたミュージカルアクションゲームだ。
そこで、リリースから20年も経過した本作が、なぜ現在まで多くのファンに愛され、また新作の制作が大いに歓迎されているのか? その理由をピックアップし、ここに紹介していく。
20年まえに発売されたドリームキャスト版『スペースチャンネル5』のパッケージ。© SEGA
◆【愛されポイント1】音楽とビジュアルを連動させた、直感的に楽しめる"ミュージカルアクション"!
"ミュージカルアクション"という独自のジャンルを銘打ち、1999年12月16日にドリームキャストにてリリースされた『スペースチャンネル5』は、未来の宇宙放送局の新米リポーター"うらら"が、突如地球に襲来した謎の"モロ星人"によって踊らされてしまった人達を救出するというストーリーだ。
本作は、当時ゲームセンターなどを中心にブームとなっていた、いわゆる"音楽ゲーム"に該当する作品である。
ノリのいいBGMをバックに、主人公のうららがリポートをする道中には、遭遇するモロ星人とのダンスバトルが展開。
リズムに合わせて踊るモロ星人の踊りをお手本に、正しくキー入力ができれば"シチョーリツ(視聴率)"(スコア)がグングン上昇し、バトルに勝利すれば踊らされている人々を救出できるというゲームシステムだ。
救出した人々は彼女のバックダンサー的な存在として共に行動するので、たくさん救出することで画面はより賑やかになっていく。
セリフ、歌、音楽、ダンスが組み合わさってストーリーを形作っていくミュージカルの気持ちよさに、ダンスバトルとしてデザインされた直感的なゲームの融合。
誰にでもわかりやすく、なおかつそれまであまり存在しなかった独自のルールが、音楽ゲームにあまり興味を持っていなかったプレイヤーをも振り向かせ、虜にしたのだ。
救出した人々が一緒にダンスをしながら後をついてくる、ミュージカル的な演出が楽しい。© SEGA
5分『スペースチャンネル5』のゲーム動画 (C)SEGA
◆【愛されポイント2】レトロフューチャーを強く意識したビジュアルデザイン
曲線を主体に構築されたそのデザインはレトロフューチャー的なSFを強く意識しており懐かしくも新しい情景が次々と登場する。
キャラクターの衣装や小物まで、全てにおいて統一感を持たせていて、今見ても色あせた様子はない。
2001年に発売された続編『スペースチャンネル5 パート2』では、演出やゲーム画面のインターフェイスなども含めてデザイン周りはさらに洗練され、前作以上の高い評価を得ている。
『スペースチャンネル5 パート2』では、演出もより派手に進化した。© SEGA
そして物語を盛り上げるキャラクター達は、この世界観に負けない個性派揃いだ。
主人公のうららは宇宙放送局スペースチャンネル5のリポーターで、キレのあるダンスと少し初々しさも残るリポートでプレイヤーを楽しませてくれる。
彼女の「踊りで勝負よ!」、「あらかた救出しました!」、「怪しい気配がぎゅんぎゅんします!」、「チャンネルは、そのまま!」などのセリフは、ファンの間でのキーワードとなった。
うららのメイン衣装は、初代がオレンジ、『パート2』では白となった。© SEGA
また彼女を取り巻くキャラクターたちも個性派揃いで、ライバルリポーターの"プリン"や"ジャガー"をはじめ、かの“King of Pop”ことマイケル・ジャクソン本人がモデルとなった"スペースマイケル"も登場。彼は『パート2』では、スペースチャンネル5の局長となった
そして、対する敵キャラクターは、1作目が宇宙人の"モロ星人"、2作目は謎の男"シャドー"率いる"踊り団"である。
なかでもモロ星人は、敵ながら本作のマスコット的な存在でもあり、語尾に「モロ」をつけてしゃべるのが特徴。
ある意味、うららよりも知名度が高いかもしれないモロ星人。© SEGA
◆【愛されポイント3】ジャズの名盤『メキシカン・フライヤー』をメインBGMに起用したサウンド
"ミュージカルアクション"を銘打って制作された本作の主役となるのは、音楽といっても過言ではない。
本作では、ジャズ、ロック、ディスコ、クラシックなどさまざまなジャンルのBGMがシーンに合わせて演奏される。
その中でも、『スペースチャンネル5』を象徴する楽曲と呼べるのが、よくCMなどでも耳にするジャズの名盤『メキシカン・フライヤー』だ。
ジャズトランペッターのケン・ウッドマンが1966年にリリースした楽曲で、本作のタイトル画面や最初のステージ、エンディングなどで使用されている。
近年ではホンダのステップワゴンのCMのBGMに使われたほか、映画『スウィングガールズ』(2004年公開)の中で演奏された曲としても知られ、そのフレーズに聞き覚えがある人も多いはず。ちなみに同映画の中では、『スペースチャンネル5 パート2』をプレイするシーンがあったりしたのだが、気づいた人はいるだろうか。
なお、『メキシカン・フライヤー』は、最新作の『スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー』(のプロモーション動画)でも使われている(下記動画)。
◆【愛されポイント4】『スペースチャンネル5』が渋谷の街をジャックした破天荒なプロモーション戦略
1999年当時、『スペースチャンネル5』が行ったプロモーションは、当時雑誌がメインだったゲームメディアだけに限定せず、多方面に向けて展開された。
本作の開発を手がけた部署(当時、セガの子会社であったユナイテッド・ゲーム・アーティスツ)が渋谷に在ったことをきっかけに、渋谷東急のビルボードへの広告掲示や、道玄坂商店街のイベント"渋谷パラダイス"とのコラボレーション、渋谷センター街のQ-FRONTの大型ビジョンにゲーム画面を映し出す体験会など、渋谷駅を中心とした大々的かつインパクトのあるプロモーションを行った。
当時、東急東横店のビルボードに掲示された広告(写真提供:『スペースチャンネル5』過去シリーズ・デザインチーフ宮部由美子氏)。© SEGA
また、うらら役の声優をテレビ番組のオーディションで募集したり、朝日新聞の号外広告を出したりと、多岐にわたるプロモーションにより、多くの人の目にとまる結果となった。
当時の朝日新聞の号外広告(写真提供:『スペースチャンネル5』過去シリーズ・デザインチーフ宮部由美子氏)。© SEGA
◆【愛されポイント5】『スペースチャンネル5』はついにVRの世界へ
VR専用タイトルで、プレイヤーは『スペースチャンネル5』の世界へと入り込み、自身の体を使って実際にモロ星人とのダンスバトルを繰り広げるのだ。
面白いのは、本作のプレイヤーはうらら本人ではないということ。彼女は新米リポーターであるプレイヤーの目の前に現れ、頼れる先輩リポーターとして一緒にダンスを繰り広げるという、粋な設定が施されている。
過去シリーズでおなじみのモロ星人らしきキャラも登場。© SEGA ©Grounding Inc.
今年(2019年)9月の東京ゲームショウ2019をはじめとしたいくつかのイベントには本作の体験版が出展されていて、読者の中には既に体験した人もいるかもしれない。
VRヘッドセットの中に広がるのは、20年前にも見たレトロフューチャーな世界。うららをはじめとする懐かしいキャラクターに加えて新キャラクターも登場し、まったく新しいストーリーを楽しめる仕様になっている。
ゲームショウでの試遊の様子。ゲームはPlayStation VRのほかに、VIVE cosmosやOculus QuestなどのVR機器に対応予定。© SEGA ©Grounding Inc.
下の動画は、『スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー』を体験プレイしている様子<プレイヤー:うらら(Sally Vocal)>。
1分『スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー』プレイ動画 (C)SEGA (C)Grounding Inc.
今回開発および販売を担うグランディングは、20年前に『スペースチャンネル5』を手がけたスタッフが多く在籍していて、セガゲームスからは過去シリーズのゲームデザインやシナリオを手がけた吉永匠氏が参加し、オリジナルのノリや世界観を大事にした最新作として開発が進められている。
●ますます活躍の幅がひろがる『スペースチャンネル5』!
発売から20年が経過するも、未だ色あせない魅力的なゲームデザインが高く評価される『スペースチャンネル5』。
なお近々では、20周年記念ベストセレクションアルバム『スペースチャンネル5★20th anniversary「ぎゅんぎゅんセレクション」』(CD2枚組)が12月18日に全世界発売されるのをはじめ、Vtuberと未来体験の交流ができるライブ配信アプリ"REALITY"とコラボし、うららが人気Vtuberたちと一緒に生出演する特別番組の配信が予定されていたり、また来年(2020年)初めには『スペースチャンネル5』20周年と『スペースチャンネル5 VR』のリリースを記念した音楽イベントも計画されているという。 ますます活躍の幅がひろがる、うらら(と『スペースチャンネル5』)。
じつはまだ未体験という人も、VRで新しい体験をするチャンスなので、ぜひこの20周年を『スペースチャンネル5 VR あらかた★ダンシングショー』で、一緒に盛り上がりたい。