ゲーミング
スパイダーマンは1980年代からビデオゲームに登場している。彼とビデオゲームの歴史の長さは、マリオとピーチ姫がキノコ王国周辺でイチャついてきた時間とほぼ同じなのだ。
その長い歴史にはイチャイチャとまでは言わずとも沢山の愛が注がれており、1990年代のスパイダーマンは横スクロールアクションファンに美しい悪夢を見せ、2000年代はオープンワールドの探索とピーター・パーカーのメイクオーバーの楽しさを繰り返し提供してくれた。
そして、2010年代に入ってもビデオゲーム化が順調に進められており、2018年9月7日にはInsomniac Gamesが開発したシリーズ最新作『Marvel's Spider-Man』がリリースされる。
そこで今回はこの最新作のリリースを記念して、 "親愛なる隣人" のビデオゲーム史を簡単(部分的)に振り返っていこう。
『Spider-Man』(1982年 / Atari 2600)
ウソではない。世界初の『スパイダーマン』ゲーム、世界初のマーベル・コミックスゲームは、Atari 2600でリリースされた。厚顔無恥だった1980年代にリリースされたこの作品は、あのダイエットコークと同じ年にParker Brothersがパブリッシャーを担当していた。
スパイダーマンが悪人を捕まえたり、ウェブを使ってビルを登ってグリーンゴブリンが仕掛けた爆発物を解除したりするだけという、プッシュ回線世代らしいシンプルなアイディアの作品だが、スパイダーマン本人にとっては希望に溢れるビデオゲームデビューだった。
『The Amazing Spider-Man』(1990年 / ゲームボーイ)
スパイダーマンは、RareとAcclaimの助けを借りて1990年代のスタートと同時にゲームボーイデビューを果たしたが、これはパーフェクトな作品だった。
というのも今作はキック、ダブルジャンプ、ハンバーガー、メリー・ジェーンが揃っている特濃アクションタイトルに仕上がっており、David Wise(『バトルトード 』、『スーパードンキーコング』など)による最高のサウンドトラックも収録されているからだ。
また、不思議なことに、今作のスパイダーマンは携帯電話や無線経由でスーパーヴィランと気の利いたトークも繰り広げていた。
残念ながらそのウィットのクオリティはそこまで高くないのだが、少なくともスコーピオンがかけてきた電話を受けて無言を貫くスパイダーマンのイメージを一変させることには成功していた。
『Spider-Man: Return Of The Sinister Six』(1992年 / NESなど)
スパイダーマンのNESデビューは、ドクター・オクトパスの仲良しグループ、二代目シニスター・シックス(ドクター・オクトパス / ミステリオ / エレクトロ / サンドマン / ヴァルチャー / ホブゴブリン)が暗躍したコミックス『The Amazing Spider-Man』#334~#339までがベースになっていた。
尚、ゲームプレイはシンプルな横スクロールアクションだが、不安定な操作と体力が復活する敵、そして “ワンライフ&ワンコンティニュー” のスパイダーマン自身の厳しい制限もあり、高難度となっている。
しかし、そのボックスアートは1990年代のマーベルを代表する作品のひとつで、今でもマーベルの謎を解明する貴重な資料として扱われている。
『Spider-Man and the X-Men in Arcade's Revenge』(1992年 / SNES)
スパイダーマンがX-メンと組んだこのSNES作品は、開発のもつれが原因で不完全な内容に終わってしまったが、無限に広がるコミックスの世界にカートリッジを組み込もうとしたマーベルの野心が感じられた。
『Uncanny X-Men』#123~#125からアイディアを拝借したこの作品は、ヴィランのアーケードによって生み出されたMurderworldに放り込まれたスパイダーマン、サイクロップス、ウルヴァリン、ストーム、ガンビットが打倒アーケードを目指すという内容だが、敵もオールスターが揃っており、ジャガーノート、ライノ、セレーネ、マスター・モールド、オブノシオ・ザ・クラウンなどが登場する。
また、想像している人も多いと思うが、これら全てがほぼランダムに出現する。ここ最近になってアーケードがコミックス『The Unbelievable Gwenpool』#12・#13で復活したのと同じだ。
『Maximum Carnage / スパイダーマン&ベノム カーネイジの逆襲』(1994年 / メガドライブ)
『Maximum Carnage / スパイダーマン&ベノム カーネイジの逆襲』の特徴は、「1990年代テイスト全開」、「ベノム(現ヴェノム)がプレイアブルキャラクター」、「Black Sabbath "The Mob Rules" のカバーを収録」の3点にある。
プレイを続けていると妹が持っている人形の頭を噛みちぎりたくなる気分になるのも特徴と言えるだろう。
『Maximum Carnage / スパイダーマン&ベノム カーネイジの逆襲』は今プレイしても鬼レベルの難度で、最も過小評価されているアメコミスーパーヒーロー系タイトルのひとつに数えられているが、『スパイダーマン リーサルフォーズ』(1995年)や『Venom/Spider-Man: Separation Anxiety』(1995年)などのスーパーファミコン / メガドライブ時代の強烈なタイトル群や、SEGAスーパー32Xの『The Amazing Spider-Man Web of Fire』などを生み出すきっかけとなった。
『Marvel vs. Capcom: Clash Of Super Heroes』(1999年 / アーケード・PS1・ドリームキャスト)
『Marvel vs. Capcom: Clash Of Super Heroes』は、Capcomの「リュウ x ウルヴァリンもの」という夢想を視覚化した数あるコラボレーションタイトルの3作目だ。
元々はアーケードタイトルだったこの作品は、PS1とドリームキャストユーザーにとっては新しい何かの始まりとなった。というのも、この作品は、いわゆる『マブカプ』の第1弾だったからだ。
素晴らしくクールな格闘ゲームキャラクターに仕上げられていたスパイダーマンは、この作品を通じて、すでに獲得していた世界的な知名度をさらに高めることに成功した。
また、今作は格ゲーキャラとしてのスパイダーマンお馴染みの "マキシマムスパイダー" 初登場作品でもある。
『スパイダーマン』(2001年 / PS1)
最高のクオリティを誇っていたこのPS1版『スパイダーマン』は、非常に興味深いパワーアップと1on1のバトルシステムを誇っており、さらにはバラエティ豊かなコスチュームやアイテムも備えていた。
また、欧米版はリノ・ロマノやジェニファー・へイルのような1990年代を代表する声優陣や、スタン・リー本人のナレーションも用意されており(日本版声優陣はこちら)、原作独特のシュール感も忠実に再現されていた。
尚、2002年の続編『スパイダーマン2 エンター・エレクトロ』では全てがレベルアップされており、自分好みのスパイダーマンが作成できるモードも収録されている。
『Spider-Man: The Movie』(2002年 / Xbox・PS2・GBAなど)
トビー・マグワイアの声優挑戦はややぎこちないが、PS2やXboxでリリースされた『Spider-Man: The Movie』は、無視できないスパイダーマンゲームだ。
この作品は、それまでの「ステージ制アクションゲーム」を当時の次世代機に求められていたレベルまでアップグレードするのに苦労したものの、ウェブスイングのメカニズムを重視しつつ、戦闘やストーリー、オープンワールドの探索などに関する様々な問題の解決に成功しており、デベロッパーのTreyarchは、この作品をきっかけに映画ベースのゲームを他に2本開発することになった。
尚、Treyarchが手掛けた『The Movie』3部作はサム・ライミ3部作のストーリーに完全に沿う必要がなく、これも彼らにとって、そして子供の頃にAcclaimが開発した『バットマン フォーエヴァー』や2004年の『Catwoman』をプレイしていたファンにとってはプラスに働いた。
『アルティメット スパイダーマン』(2005年 / ゲームキューブなど)
『The Movie』3部作が『スパイダーマン』(2001年)の直接的な後継作だとするなら、『アルティメット スパイダーマン』は『The Movie』3部作のオタクな中学生の従兄弟というところだろう。
このスピンオフは、ライターのブライアン・マイケル・ベンディスとアーティストのマーク・バグリーが先頭に立って開発され、そのストーリーは2008年にマーベルコミックスから出版された『Ultimate Spider-Man』#123~#128 “War of The Symbiotes” へと発展した。
『Spider-Man: The Movie 2』のマニュアルウェブシューティングのシステムを進化させ、ヴェノムも収録されているが、この作品を有名にしているのは原作コミックスとビデオゲームのギャップを見事に埋めている点で、自分らしいスタイルと美学を貫いて『コミックスゾーン』を超えたいと思っていたクリエイティブたちに刺激を与えることになった。
『Marvel Ultimate Alliance』(2006年 / PS3・Wii)
ウルヴァリンは「すぐに笑顔を作れるお兄さんタイプ」というよりは「すぐにキレるお父さんタイプ」なので、Raven Softwareが開発した『Marvel Ultimate Alliance』の顔役に “親愛なる隣人” のスパイダーマンが起用されたのは当然だった。
このチームアクションRPGは、マーベル・ユニバースのタイムレスなヒーローとヴィランを愛でる作品というよりは、安っぽい詰め合わせセット的なニュアンスが強かったため、大きな成功を収めることはできなかったが、ゲーミングシーンの片隅に生きるB級スーパーヒーロータイトルの基準となった。
この作品がなければ、知らない間に消えていた『Marvel Heroes』や、知らない間に時間が過ぎてしまう『Marvel Puzzle Quest』、そしてスクウェア・エニックスが開発中の『Marvel Ultimate Alliance』の要素が感じられる『アベンジャーズ・プロジェクト』もおそらく実現していなかっただろう。
ちなみにこの最新プロジェクトが実現するなら、ナレーションはデッドプールしか考えられない。我々ちゃんにはジョークが必要だ。
『Spider-Man: Web Of Shadows』(2008年 / PS3・Xbox 360など)
『Spider-Man: Web Of Shadows』は、PS2・Xbox 360・Wii世代のスパイダーマンファンに、ヴァノム、メリー・ジェーン、ブラックキャットなどのコミックスの人気キャラクターを前面に押し出したオリジナルストーリーを提供してくれた。
しかし同時に、いけてないカメラコントロールやプレイヤーが普通に確認できてしまうテクニカルグリッチ、そして独自の選択システムが、原作の雰囲気を台無しにしていた。
また、ヴィジュアルセンスも悪く、テクスチャやカラーパレットにセンスが感じられなかった。ダークな雰囲気を作り出そうとしたライティングもあらゆるファンからブーイングを浴びた。
『Spider-Man: Shattered Dimensions』(2010年 / PS3・Xbox 360など)
『Spider-Man: Shattered Dimensions』は少し変わった作品だ。
この作品は、コミックス『The Amazing Spider-Man』の脚本を担当しているダン・スロットが脚本を執筆し、ニール・パトリック・ハリスが声優を担当し、マダム・ウェブが様々な世界(『The Amazing』・『Noir』・『2099』・『Ultimate』など)に住むスパイダーマンに、 "秩序と混沌の石版" の奪還を命じるというストーリーが中心に据えられている。
そのため、この作品はプレイヤーが消化しなければならない部分が多い。また、このゲームのアートスタイル、各スパイダーマンの戦闘アプローチの違い、ゲームプレイシステムがその消化をさらに難しくしている。
しかし、このようないくつかの問題点があったにせよ、この作品は『スパイダーマン』シリーズを『アーカム』シリーズのような歯応えのある新シリーズへリブートさせる方向性を示すことになった。
『The Amazing Spider-Man』(2012年 / PS3・Xbox 360など)
ひとつ意見を言わせてもらおう。アンドリュー・ガーフィールド版スパイダーマンはかなり良かった。
彼は “スパイダーマンらしい” ルックスを備えていた。エマ・ストーン演じるグウェン・ステイシーとのロマンスも良く、観客の心の琴線に触れるシーンもいくつかあった。
Beenoxが開発した、そのガーフィールド版映画作品『アメイジング・スパイダーマン』をベースにした『The Amazing Spider-Man』は、ガーフィールドの演技とは一切関係ないが、両方とも素晴らしいクオリティなのにも関わらず、過小評価されてしまった…。
2012年にリリースされたこの作品は、ヴィジュアル的に特別優れているわけでもなく、AIやアニメーションも大きく進化していないが、サンドボックス型オープンワールドのマンハッタンを見事に表現しており、この特徴がプレイする楽しみを生み出している。
もちろん、映画の第2作に合わせた続編も開発されたが、この作品については誰も語ることを許されていない。
『LEGO®マーベル スーパー・ヒーローズ ザ・ゲーム』(2013年 / PS4・Xbox Oneなど)
Traveller’s Talesが開発した『LEGO®マーベル スーパー・ヒーローズ ザ・ゲーム』は、マーベルタイトルのオールタイムナンバーワン候補だ。その理由は、ピクサー的な明るく楽しいアプローチでマーベル・ユニバースを描いているところにある。
また、スケールも非常に大きく、155人超のキャラクターとレゴで再現されたマーベル版ニューヨークがフィーチャーされている。さらには、同じくプレイしがいのある2本の続編、『LEGO®マーベル アベンジャーズ』(2016年)と『LEGO®マーベル スーパー・ヒーローズ2』もリリースされている。
スパイダーマンに限った話をすると、この作品だけで、スパイダーウーマン、ヴェノム、カーネイジ、グリーンゴブリン、エレクトロ、ライノ、ヴァルチャー、ミステリオ、カート・コナーズ、グウェン・ステイシー、メリー・ジェーン・ワトソンなどの姿を確認することができる。
また、『LEGO®マーベル スーパー・ヒーローズ ザ・ゲーム』はS.H.I.E.L.Dヘリキャリアーの内部を動き回れる数少ないタイトルのひとつでもあり、スパイダーマンとして自由にきままに広大な敷地内を動き回れる。
『Marvel’s Spider-Man』(2018年 / PS4)
『Marvel’s Spider-Man』は数多くの疑問を生み出している。ミスター・ネガティブとは誰なのか? ピーター・パーカーのあのいじってくださいと言わんばかりの顔は何なのか? あの “メリー・ジェーン・ワトソンとの逆さまのキスシーン” がついに再現されるのだろうか?
Insomniac Gamesの『スパイダーマン』シリーズデビュー作についてはまだ分からないところが数多く存在するが、彼らの『RESISTANCE』シリーズや『ラチェット&クランク』シリーズの実績を踏まえると、この作品は、細部まで作り込まれた魅力的なアクションアドベンチャータイトルになりそうだ。
また、メインライター陣(Jon Paquette & Dan Slott)と音楽(John Paesano)が "没入感" という単語に新たな注釈を加えることになるだろう。
インターネットとコミュニティは、『Sunset Overdrive』を開発したチームがこの作品を担当するというニュースを聞いて以来、Insomniac Gamesに全幅の信頼を置いているが、実際のクオリティはリリースされれば明らかになるだろう。
たとえ全てが失敗に終わったとしても、フォトモードが収録されているので、少なくともヴァルチャーを新たな#selfiequeenに押し上げてくれるはずだ。
『Marvel’s Spider-Man / スパイダーマン』は9月7日にPS4でリリース予定。
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