若きドラマーを迎えたスリーピース、全編日本語のリリック、新たに獲得したときに黒く躍動するグルーヴ。
すべてにおいて新しいアプローチを注いだロックンロールがここにある。
──WHITE ASHの解散が決定した直後から、次のアクションに向けた曲作りをしていたんですよね。
のび太 そうですね。前のバンドは言ってしまえば強制終了に近いような感じだったんですけど、でも、ベースの彩さんとは自然な流れで一緒に新しいバンドを組もうってなって。
──ラストライブは松山だったんですよね。HAWAIIAN6とLONGMANの3マンで。
のび太 そうなんです。ツアーでもワンマンでもなく。
ライブをキャンセルというのも一つの選択肢としてあったんですけど、すでにチケットを買ってくれてるファンのみんなのためにライブをやろうと。
──そういう意識があったからこそ、次のアクションに向けて早々に動き出せたところもあったのかなと。
のび太 普通だったら前のバンドを解散してからしばらく間を空けて次のバンドを始動すると思うんですけど、たしか解散を発表してから1週間も経たないうちに新メンバーを募集したんですよ。
──正式メンバーとなるドラマーの公募というのも新バンドを知らしめるアイデアの一つだったんですか?
のび太 僕がもともとバンドを始めたときのロールモデルになったのが、アークティック・モンキーズなので、やっぱり一塊としてのバンドに対する愛着がすごくあって。
彩さんと2人で新しくバンドを始動するにあたって、ドラマーがパッと思い浮かばなくて。素晴らしいドラマーはいっぱいいるけど、そうなるとサポートというカタチになっちゃいがちだし、一塊感が薄れるなと思って。
だったら、まだ会ったことのない人で、なおかつ僕らと一緒にバンドをやりたいという人がいるのであれば、その人とやったほうが楽しめるんじゃないかと思ったんです。それで、Twitterで公募してみようかってなったんですよね。
──応募は何人くらいきたんですか?
のび太 100人ちょいですね。しかも応募してくださった方とスタジオで全員に会ったんです。8日くらいかけて。
前もって演奏動画を送ってもらってはいたんだけど、やっぱり直接会って目の前で叩いてもらってから判断したほうがお互いにとっていいかなと思ったから。
そこからバンドとして3人で並んだときの画面なども加味したうえで、だいたい3ヶ月くらいかけて4次審査までやったのかな。最終的にマットを選ばせてもらいました。
──彼はまだ若いんですよね?
のび太 若いですね。今、22歳とかで。高校を卒業したあとに1年間アメリカにドラム留学に行って。その後、帰国していろんなシンガーのサポートをやっていたんですけど、ちゃんと自分のバンドが欲しいなと思っていたらしくて。
──黒さも感じさせるドラムプレイですよね。
のび太 そう、得意なのはヒップホップとかR&Bとか、ブラックミュージックなんですよ。
僕らとしてもドラマーを選ぶポイントとして、全くロックがルーツにないドラマーと一緒にやったほうが面白い違和感が生まれるかなと思って。
だから、マットのようにブラックミュージックが得意なドラマーと3ピースのガレージロックンロールをやると、どこかにちょっと黒っぽいリズムだったりフィルだったりが入る。それがこのバンドの大きな個性や強みになるなと思ってます。
このバンドでは僕が一番リズムに対して甘いところがあるんですよ。練習の録音をみんなで聴くとマットが「ここはのび太さん(の演奏)が走ってますよね」ってしごかれます(笑)。だから、リズム感は僕もだいぶ鍛えられてるんです。
──差別化という意味では、バンド名もそうですよね。WHITEに対するBLACKという。
のび太 そうですね。全く関係のないバンド名にするよりは、ある程度、地続きになっていたほうがわかりやすいかなと。「あ、WHITEからBLACKなんだ」ってその響きと字面を大事にして。
──あとは、THE LITTLE BLACKでは全曲のリリックを日本語で書いていることもそう。
のび太 前のバンドでも後期は意味の通る英語だったり日本語で歌詞を書くようになっていたんですけど、WHITE ASHが登場したときの「響きだけで歌詞を書いてるので意味はないです」という印象を強く持ってる人が多いと思うんですよね。
せっかく新しいバンドを始めるのであれば、そこも違うということを最初からハッキリさせておいたほうがいいと思って。
──この1stミニアルバム『THE LITTLE BLACK』は、また新たにロックンロールバンドを転がしていくという意志や熱量をダイレクトに表現してますよね。
のび太 そうですね。前のバンドでは自分がカッコいいと思うかどうかが一番の基準だったんですよ。曲のタイトルにしても曲調にしても。
──その基準はムードとも言えますよね。
のび太 うん。カッコいいと思うことをやるとこういう感じになるんだなって前のバンドである程度わかったところがあって。だったらTHE LITTLE BLACKでは違うベクトルを試したいと思ったし、それでメロディに無理のない日本語を歌うことを意識して。
3曲目の「受け入れろ!」も連呼している〈受け入れろ〉がけっこう英語っぽく聴こえるように意識したり。
──そうそう、これ〈Get it on〉に聴こえる。
のび太 そうなんですよね(笑)。英語っぽい響きだけど、ちゃんと日本語で、なおかつ意味が通るという。これ、僕の得意技だなと思って。
──基本的に1曲目から3曲目までフレーズはリフレインが多いし、それはジャストな感情をそのままロックンロールで転がしているという感じですよね。
のび太 デビューミニアルバムだし、バンドの自己紹介をかねてわかりやすく所信表明したいという思いがあって。
今まで自分がやってないことにチャレンジすると、どうしてもがむしゃらな感じになるというのもありますね。だって、今の時代は一人でもなんでもできる時代じゃないですか。
──世界的にもトラックメイカーとラッパーが台頭しているしね。
のび太 そういう時代と向き合ったときになんで今バンドをやるのか、なんで今ロックをやるのか考えなければいけないなと思って。
あくまでバンドサウンドで今できる一番カッコいい音を鳴らす──海外でもヒップホップがメインストリームになったけど、あの人たちもライブをやるときは生ドラムを入れてたりするじゃないですか。
──そうですね。たとえば今夏、フジロックで来日したケンドリック・ラマーも、サマソニで来日したチャンス・ザ・ラッパーも生ドラムを入れていて。
のび太 それってやっぱり人が演奏することの可能性であり肉体的なライブをする醍醐味があるからだと思うし、それは僕もロックバンドで追求したいなと思っていて。
でも、純粋に好きだからバンドをやり続けるんだと思うんですよね。
──いや、本当にこういうロックンロールを待っていたという人は多いと思う。
のび太 ありがとうございます。今の時代はもうメジャーとかインディーズとか関係なく自分たちで自己プロデュースできなかったらどんどん埋もれていくと思うし、そういうバンドが人を惹きつけられると思うので。
自分たちが好きでやっている表現でありロックバンドをやっている意義をしっかり自分たちで提示していきたいですね。