マラソンまたはウルトラマラソンのレースでは、控えめに言っても自分自身の能力すべてを振り絞ることが要求される。しかも、それをマイナス40℃もの極寒環境で走らなければならないとしたら? その環境はまさしく極限と呼ぶにふさわしい。
今回はまつ毛も凍るほどの極寒の地で戦われるマラソンレースを紹介する。
防寒用のアンダーシャツを着込んで、これらの極寒かつ極限のレースを走ることを想像してみてほしい。
なお、この記事を読んでマラソンへの意欲を書き立てられたという読者の方は、脊髄損傷の治療法発見を目指すWings For Life財団を支援するランニングイベントで『Wings For Life World Run』についてもチェックしてみて欲しい。
01
North Pole Marathon
世界最北の地を走る
場所:そのレース名が示す通り、北極
気温:マイナス25℃~マイナス40℃、風が吹けば体感気温はマイナス60℃まで下がる
開催時期:2017年4月開催へ向けた参加登録が開始されたばかり
寒さ指数:9
北極の地を走るには、多くのことに注意する必要がある。ホッキョクグマに襲われる危険、容赦なく吹き付ける風などをはじめ、ランナーの行く手には大小さまざまな障害が潜んでいるのだ。本大会のオーガナイザーで、第1回North Pole Marathonに参加したリチャード・ドノヴァンは次のように説明する。「参加者にとって最大のチャレンジとなるのは、足元のコンディションと極寒への対応です。オーガナイザーとしては、参加者の皆さんがホッキョクグマの襲撃を受ける脅威を考慮しなければなりませんし、もしそうした事態が起きた時のために武装した警備担当者を各地に配備します。彼らはホッキョクグマたちを脅かして遠ざけてくれます。また、北極は大陸ではなく分厚い氷の集合体ですから、参加者は海に浮かぶ氷の上を走ることになります。ですので、氷の裂け目などによってランナーが海中に落下しないよう、入念なコース設定が必要となります」
02
Antarctic Ice Marathon
世界最南の地を走る
場所:南緯80度/南極からわずか数百マイルの場所
気温:マイナス20℃、南極特有の強い滑降風に注意
開催時期:2017年11月開催へ向けた参加登録が開始されたばかり
寒さ指数:8
11月に開催されるこの南極マラソンには、フルマラソンとハーフマラソンの2種類が用意されている。どちらにせよ、南極圏で行われる世界唯一のマラソンレースであることに間違いない。したがって、世界の各大陸で行われるマラソンレースをすべて制覇するという目標を持つランナーは、スノーゴーグルを用意した上で、チリから南極のユニオン・グラシアまで飛ぶプライベートジェットをチャーターしなければいけない。
03
6633 Ultra
北極圏でのウルトラマラソン
名称:6633 Ultra
場所:カナダ・ユーコンのイーグル・プレインから北極海のトゥクトヤクトゥクまで
気温:平均的にはマイナス30℃からマイナス40℃だが、これまでに記録された最低気温はマイナス52℃で、2008年で風が吹いた際はマイナス78℃まで下がった
開催時期:2016年3月
寒さ指数:8
強風のコンディションのもと行われる、地球上で最も寒いウルトラマラソンだ。この北極圏をまたぐノンストップレースの走行距離は120マイル(約193.1km)から350マイル(約563.2km)の間でランナー自身が決められる。とはいえ、ウルトラマラソンはただ走ることだけに集中すれば良いというわけではなく、参加者は必要な食糧や調理器具、衣服などすべてを積載したソリを曵きながらレースを戦わなければならない。気温はマイナス30℃からマイナス40℃の極寒で、場所によってはさらに気温が下がることもある。このレースのオーガナイザーによると、過去7年間に行われたこのレースで記録された最低気温はイヌビックで記録したマイナス52℃で、さらにライト・パスで風が吹いた際にはマイナス78℃にまで下がったらしい。
04
The Hypothermic Half Marathon
世界で最も寒い町を走る
場所:カナダ全土、最も寒いのはマニトバ州ウィニペグ
気温:昨年大会で風が吹いた際はマイナス47℃まで下がった
開催時期:2016年2月7日(マニトバ)(尚、レースは1月~3月の期間にわたって開催される)
寒さ指数:8
昨年この大会では最低気温マイナス47℃を記録したが、それでも500名のランナーがこの身も凍るハーフマラソンに参加した。この大会は世界で最も寒い町として知られるマニトバ州ウィニペグを舞台に開催される。ウィニペグが火星と同じ気温にまで下がる寒さを記録した際、NASAはこの町にちなんだ名前を火星の岩石片に付けた。
05
The Antarctic Ice Ultra
南極で100km走破
場所:南極
気温:マイナス20℃
開催時期:2017年1月に開催される100kmマラソンは現在受付中
寒さ指数:10
南極で行われる100km級のウルトラマラソンとしては唯一となるこの大会は、タフな長距離アスリートのためのレースだ。2007年にこのレースを優勝したクリスチャン・シースター(写真)は19時間58分14秒のタイムを記録。太陽が沈むことのない、見渡すかぎり何もない広大な南極大陸を100kmも走ることは心底タフな苦行だ。
06
Siberian Ice Marathon
シベリアの地を走る
場所:シベリア
気温:過去最低記録マイナス32℃
開催時期:2016年1月7日にハーフマラソンが実施済み。今後の開催日程に付いてはこちらをチェック
寒さ指数:8
ハーフマラソンとフルマラソンの2カテゴリで行われるこのレースのディレクター、インナ・チェルノブラブスカヤのコメントを紹介しよう。「このレースには、世界中から800名から900名のランナーが参加します。このレースへの準備はランナーによって千差万別ですが、最も興味深いのは業務用の大型冷蔵庫の中でトレーニングです。スイスから参加したランナーのグループは、まさにこの方法でこの大会に備えたそうです!」
07
Tough Guy
凍えるような気温と障害物
場所:英国
気温:氷点下。しかし、濡れた際の体感気温はさらに下がる
開催時期:2016年1月31日
寒さ指数:9
これは、凍えるような気温のもとで戦われる障害物レースで、Tough Guyという大会名は決して伊達や酔狂ではない。参加者は冷たい水たまりを含む計200もの障害物と格闘しながら自分自身の精神力と低体温症への抵抗力を試す。こんなタフなレースに600名ものランナーが参加するというから驚きだ!