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ときどが語る『V』の公平性と入力遅延
Capcom Cupに出場する日本人トッププレイヤーが『ストリートファイターV』の現状について語った。
Written by Anne Ellis
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勝利後に笑顔を見せるときど
勝利後に笑顔を見せるときど© Robert Paul/@tempusrob/rmpaul.com
先日開催されたRed Bull Battle Groundsには数人の日本人プレイヤーがサプライズ参戦をしていた。その中のひとりで、このトーナメントを完全にジャックしたのが、トーナメントの常連プレイヤーとして知られるときどだった。『ストリートファイターV』日本人プレイヤーの中でもトップレベルとされる彼はこのトーナメントを席巻し、オープン参加だった予選を悠々と突破すると、最終的には準優勝を勝ち取った(優勝はNuckleDu)。今回はトーナメント参戦中のときどに、現在の『V』についていくつかのコメントを残してもらった。

公平性

『IV』時代のときどは豪鬼をメインとして使っていた。当時の彼のプレイスタイルは時としてアンフェアだと言われるようなもので、日本では「ときど式」と呼ばれていた起き攻めループをフル活用して勝利を重ねていた。しかし、『V』では強制ダウンが制限されており、「ときど式」のような戦術は利用できなくなっている。容赦ない強制ダウンを中心としたゲームプレイで知られるようになったときどのようなプレイヤーにとって、この変更はゲームへの取り組み方を変えるきっかけとなり、その結果、現在のときどは、よりバランスが取られたトラディショナルなキャラクター、リュウをメインに据えている。
ときどはRed Bull Battle Groundsの初戦を終えたあと、次のように切り出す。「Capcomは『V』を開発した際に、プレイヤーが何を持って公平としているのかという点を再考したと思います。ですので、僕も自分のスタイルを変える必要があると感じました。そこをもっと磨いていく必要がありますね」
『IV』でのときどのキャリアが何をベースに築かれていったのかは別として、ときどが数多くの実績を誇るトッププレイヤーであることに変わりはなく、彼はプレイヤー同士の駆け引きや、練習すべきポイントについてしっかりと理解しており、『V』に関しては、このゲームで全面に押し出されている新しいシステムの把握により多くの力を割いているようだ。もちろん、その過程でプレイスタイルを変える必要はあったが、公平性についての彼の考え方は昔と変わらないように思える。
ときどは「リュウはちょっと強すぎるような気もするので、そういう意味では今も完全にフェアとは言えないかもしれないですね」と説明する。『IV』の豪鬼は「ときど式」だから強かった訳ではなく、基本的に強キャラのひとりとして考えられていた。そしてときどもまた長年に渡り格闘ゲームのトップランカーとして活躍してきた長い歴史を誇る。よって、『IV』での彼の活躍は当然と言えた。しかし、それがフェアかどうかという点については、強制ダウンやギミック、異常な強さの技などが関わってくるため、コミュニティの多くは「公平性は主観によって変わってくるもの」と考えている。『V』のリュウはギミック、ダウン、技などが突出しているわけではないが、それでも非常に強い。ときどは「でも、リュウは使うのが難しいので、そういう意味ではフェアなのかも知れませんね」と続ける。
“マーダーフェイス” が見せた安堵の表情
“マーダーフェイス” が見せた安堵の表情© Robert Paul/@tempusrob/rmpaul.com

バランスと入力遅延

さらにときどは「リュウは最強キャラになれる可能性を秘めていると思います」と続け、しばし考えたあと、次のように続ける。「春麗もそうですね。ですので、今は春麗対策を練っているところです」
しかし、2人のような強キャラクター以外でも、バランス調整が必要なキャラクターは存在する。ときどはザンギエフを例に挙げながら「勝つのが難しいキャラクターが数多く存在します」と説明すると、そのままバランス調整により直接的に関わってくる問題について触れる。
「Capcomが『V』の入力をどう変えたのかについては理解しています。これは個人的には凄く大きな変更点ですね」と説明するときどは、平均値以上と言われる『V』の入力遅延の大きさについて話を続ける。「最初の頃は、攻撃的なプレイヤー… すべてのプレイヤーなんですが… に勝利のチャンスがあったんです。非常にランダムなゲームでしたから。択攻めができれば、勝利できた部分がありました」
しかし、『V』のリリース後、Capcomは入力遅延について変更を加えている。ときどは例を出しながらその点について説明する。「たとえば、ララは接近戦が強いキャラクターですが、変更以前は遅延がかなり大きかった分、相手のふところに簡単に飛び込めていたんです。ですが、今は相手が反応できるようになっているので、そう簡単には飛び込めなくなっています」
ときどは『V』固有の入力遅延が原因で、以前は弱キャラが強くなっていたと指摘する。しかし、入力遅延が小さくなり、“強くなっていた” キャラクターに反応できるようになったため、“強くなっていた” キャラクターは苦しむようになっている。ときどは「Capcomは『V』をもう少し変えることができるかもしれません。彼らが変更したのは入力遅延の部分だけです。他の部分をもう少し変えても良いかも知れませんね」と提案する。ときどから入力遅延に関してこのような発言がされたことに驚く人もいるかも知れないが、過去数ヶ月で、入力遅延がより小さいPC版がトーナメントで使用されるようになっており、ときどもこの問題から派生する戦略の変更についてしっかりと考えているように見える。
ときどは最後に、Capcomが上記のような部分を将来的に改良することに期待しているとし、また、予想していた人もいるかも知れないが、豪鬼の復活も楽しみにしていると続けた。『V』が彼の願うような形に変化していくかどうかは、時が教えてくれるだろう。
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