ウルトラランニングにいつか挑戦したいと思いながら近所の公園やお気に入りの5kmルートを走っているなら、本気で目指してみるのはどうだろう?
トム・エヴァンスは世界トップレベルのウルトラランニングイベントに出場した経験を持つウルトラランナーだ。
ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)、ウェスタンステイツ100、サハラマラソンなどを走ってきたエヴァンスは、どんなランナーでもその気になればウルトラランニングを完走できるとしている。
「まずは強い意志が必要になる。超長距離をなぜ走るのか、その理由が自分の中で用意できれば完走できる。さすがに3ヶ月で5kmから160kmまで走れるようになるのは無理だけど、考えすぎてプロセスを複雑にし過ぎてしまっている人がいる」
このように語るエリートウルトラランナーのエヴァンスは、自身には細かいトレーニングスケジュールを用意しているが、一般ランナーなら「シンプルなスケジュール」を意識するべきだとアドバイスを送っている。
エヴァンスが用意した4ステップをチェックして、ウルトラランナーを目指してみよう。
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《ステップ1:クロスカントリーレースを目指す》
エヴァンスは、一般道やトレイルの5km~8kmを約45分のペースで定期的に走っている人には、ランニングクラブや仲間を見つけてクロスカントリーレースに出場するのがファーストステップになるとしている。
「クロスカントリーレースは楽しいし、ちゃんと競い合えるし、近所の公園や一般道とは完全に異なる環境が体験できる。また、ぬかるんでいるセクションやヒルクライムも用意されているから、自分のウルトラランナーレベルを確認するには最適だ」
「クロスカントリーレース用トレーニングも簡単だ。走れる芝生を見つけて、自分が狙っているレースペースで1kmランを6セットこなそう。ヒルクライムセクションもシミュレートしておきたいね。5kmランを日常的にこなしている人なら4~6週間トレーニングを積めばレースに出られるようになるはずだ」
02
《ステップ2:50kmウルトラマラソンを目指す》
エヴァンスは、クロスカントリーが走れるようになったあとは一般道のフルマラソンに出場して、その先の50kmウルトラマラソンに向けたトレーニングに身体を慣らしていくべきだとしている。ただし、これは彼の経験とは異なる。
「僕は普通のフルマラソンよりも先に100kmウルトラを走ったんだよ。でも、一般道のマラソンを目指せば、長距離用スタミナが手に入るようになる。あとは、トレーニングを “ブロック” に分けるアイディアも理解できるようになるはずだ」
ポイント2-1:段階的に距離を延ばしてバーンアウトを防ぐ
「ウルトラランニング挑戦を決めたあと、いきなりトレイルで長距離を走ろうとする人がいる。でも、これでは上手くいかないんだ。早い段階で長距離を走ろうとすると、すべてが台無しになってしまう」
「トレーニングは段階的に負荷を強めていく必要があるし、基本的には12週間をいくつかのブロックに分けて進めていくべきだ。テーパリングは最短で10日は用意したい」
「トレーニングの終盤に長距離を走る必要があるけれど、最初の数週間は8km~10kmを設定して、そこから徐々に延ばしていこう」
「最初のトレーニングブロックの最後に出場を予定しているレースの半分か3分の2の距離のレースに出場してみよう。自分がどの程度できるのかが確認できるし、トレーニングの集中とモチベーションを保つのにも良い」
「僕としては、出場を予定しているレースの4~5週間前に本番と同じ距離を走っておくことを薦めたい。でも、中級クラスまでのランナーなら、半分の距離で良いと思う」
ポイント2-2:ストレングスを鍛える
「超長距離のトレイルを走るためには頑強なフィジカルを手に入れる必要がある。岩が多くて、足首が取られるからね。トレーニング初期段階からジムでストレングスと足首の可動性を鍛えておけば、のちのち大きな助けになる」
超長距離を走るためには頑強なフィジカルを手に入れる必要がある
ポイント2-3:これまでとは異なる栄養補給方法を考える
「ウルトラマラソンの栄養補給はマラソンのそれとは大きく異なる。走る時間は長いけれど、運動強度は低いから、エナジー消費のプロセスが違うんだ。この点を意識しておく必要がある」
03
《ステップ3:100マイルイベントを目指す》
50kmが走れるようになったあとは、超長距離イベントに向けたトレーニングは各イベントに特化したメニューになっていく。また、距離よりも時間を重視したメニューになる。
「ウルトラランニングでは、同じ距離のイベントでも地形やコンディションは大きく異なるんだ」と説明するエヴァンスは、ウェスタンステイツ100とUTMBで同じ距離を走って優勝したが、タイムは5時間も異なる。
ポイント3-1:コースのシミュレーションをする
「トレーニングブロックに沿いながら、出場する予定のレースのコースをチェックして距離と獲得標高の比率を計算しよう。それが終わったら、その数値をトレーニングランでシミュレートして、より具体的に準備を進めよう」
「ウェスタンステイツ100のような高速の100マイル(160km)イベントにはダウンヒルセクションが含まれているし走りやすい。だから、こういうレースに出場する時はペースを意識したトレーニングを組んで、長距離を比較的速いペースで走るようにしよう。距離を延ばしたマラソントレーニングのような感じだね」
「UTMBのようなヒルクライムが多めのイベントは、ウェスタンステイツ100のようなダウンヒルが含まれているイベントよりも時間がかかる。だからトレーニングではペースを落として、山を走るのが理想的だ。走る距離は前者と変わらないけれど、スローペースで走るようにしよう」
「また、UTMBでは95%の出場ランナーがポールを使っているけれど、使い方を知らないなら持っていても意味がない。トレーニングで使って、どれだけの効果があるのかを実感しておこう」
ポイント3-2:ジムで調整する
「レースの最初の1時間と最後の1時間では自分の走りが大きく異なる。後半にフィットネスが崩れてくれば、怪我をして完走できなくなってしまう可能性もある。これを避けるために、ジムでコンディショニングをしておく必要がある」
「ヒルクライムのために臀部とハムストリングを鍛えておこう。グルートブリッジ、シングルレッグ・ヒップスラスト、シングルレッグ・デッドリフトなどが助けになるけれど、高めのボックス・ステップアップがベストだね。これはレース本番に一番近いエクササイズだ。6レップ・4セットを片脚ずつ行おう」
「ダウンヒルでは頑強な足首、優秀な大腿四頭筋、柔らかい臀部が必要になる。そのためには、バランス系ドリル、体幹エクササイズ、ウエイトありのウォーキングランジ、壁を使った空気椅子に取り組みたい。これらのメニューをこなしておけば、疲れていてもダウンヒルを下り続けることができる」
「より具体的なトレーニングをしたいなら、トレッドミルに傾斜をつけよう。僕はレース本番のヒルクライムをチェックしたあとトレッドミルでそれをシミュレートしてトレーニングした」
「トレッドミルは優秀なトレーニングツールだと思うけれど、やはり外のトレイルを走るのがベストトレーニングだね」
ポイント3-4:レースコンディションをシミュレートする
「それまでとは違うタイプのレースを目指す時の一番の問題は、レースコンディションのシミュレーションだ。つまり、フィジカルを慣らしておくことが不可欠になるんだけど、このようなシミュレーションは数週間あれば終わらせることができる」
それまでとは違うタイプのレースを目指す時の一番の問題は、レースコンディションのシミュレーションだ
「高温のレースならサウナだけでは不十分だ。トレーニングで基礎体温を上げておく必要がある。加熱室にアクセスできるなら、加熱室でトレーニングしよう。それができない人は、ヒーターやエアコンをつけてトレーニングしよう」
「あとは、ハイドレーションタブレット(経口補水塩タブレット)が自分に合うか試しておこう」
ポイント3-5:夜に慣れる
「25~35時間連続で走り続けるということは、夜中も走ることを意味する。ヘッドライトに慣れておこう。本番で上手く使えるようにトレーニングからヘッドライトを使おう」
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《ステップ4:マルチステージレースを目指す》
「理路整然としたプランを用意する必要がある。SWOT分析(Strength / 強み・Weakness / 弱み・Opportunity / 機会・Threat / 脅威の4項目で物事を分析する戦略策定アプローチ)を活用して、本番で何が問題になりそうなのかを把握しておこう」
「基本的にウルトラランニングイベントで問題になるのは、現地の気温、湿度、食事、水など自分ではコントロールできない部分だ」
ポイント4-1:トレーニングを続ける
「超長距離のマルチステージレースでは、ハードワーク、リカバリー、自己管理が重要だ。タイムを軽視しているわけではない。でも、6日間続くレースでは強靭なフィジカルを手に入れておくことがとても重要だということを知っておく必要がある」
「マルチステージレースに向けたトレーニングではロングランを連日こなすことになる。これはかなり厳しい。普通にオフィスで仕事をしている人は、平日を調整に充てて、土日両方でスローペースで低強度なロングランをこなしていこう」
「マルチステージレースでは荷物を自分で背負って走るから、トレーニングでもバックパックを背負って走ろう。ただし、フィジカルへの負荷が大きいから毎回そうする必要はない」
「本番のバックパックの中身の大半は食料になるから、色々試しながら、軽くて高カロリーで栄養価が高い食料を見つけていこう」
ポイント4-2:空腹・脱水症状・栄養補給をシミュレートする
「トレーニング中にある程度の空腹と脱水症状を経験しておいて、本番に向けてフィジカルを慣らしておきたい。“ある程度” に留まるように注意しよう。これらはマルチステージレースで必ず直面する問題だからね」
「あとは、自分が好きな食料を持ち込むようにしよう。家族がいるなら、色々な種類のフリーズドライフードを揃えたあと、週1回のペースで全員で交換しながら味見してみよう」
「複数人いれば1ヶ月もあれば十分テストできる。好きじゃない食料を持ち込んでしまうとかなり厳しいレースになってしまう」
ポイント4-3:メンタルの戦いを覚悟しておく
「突き詰めて言えば、マルチステージレースの99%はメンタルの戦いだ。強いフィジカルではなくて、強いメンタルを持っているランナーが完走しているんだよ。最高のフィジカルトレーニングを用意して準備しても、最後はメンタルの強さが必要になる」
(了)
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