トライアルバイク
トップライダーが相棒(トライアルバイク)の秘密を暴露|超マニアックな話
常人には不可能なアクロバット的な動きから“忍者ライダー”の異名を持つ西窪友海が、愛車へのこだわりを初めて明かす。好きな人にはたまらない、好きな人にしか全く伝わらない、かなりマニアックなバイク話をどうぞ!
「トライアルにはバイクトライアルとストリートトライアルがあって、僕の活動はその後者にあたるストリートトライアルです。得意技は“ノーズトリック”で、このバイクはソレが最もやりやすい仕様になってます。
言葉で説明するよりも早いと思うので、まずは挨拶がわりに下の映像作品をチェックしてください!
🎬西窪友海がメキシコのジャングルで壮絶なアクションにチャレンジする最新作は《こちら》
以上が簡単な自己紹介! それでは、僕のバイクのこだわり(ほんの一部)を厳選してご紹介します」
01
【ディスクブレーキ】
トライアルバイク(MTBも含む)がBMXやピストなど、他の自転車競技に使われるバイクと最も大きく異なるルックスが、こちらのディスクブレーキと呼ばれるパーツが存在すること。
西窪が主戦場とするストリートトライアルでは、ピッと静止して繰り広げられる華麗&豪快トリックが多く、ブレーキに体の全てを預けることから、制動力が極めて強いディスクブレーキが必要不可欠になってくる。まさにここが命ともいうべき存在だ!
「ディスクブレーキには“機械式”と“油圧式”があって、僕は油圧タイプ派。オイルの力を使ってるから機械式より遥かに制動力が強いし、軽い力でもしっかりと効くんですよ」
さらにディスクローター(写真の丸い部分)についてのポイントを解説してくれた。
「ディスクローターは、大きければ大きいほど制動力が増すって言われてるんです。要は熱問題。車のブレーキと一緒でずっとブレーキを使っていると熱がこもって効き目が悪くなるんです。でも面積が大きくなるとその分、放熱してくれるから効きやすくなる。
一般的には160から203くらいのサイズが展開されていますが、いま僕が使ってるのは180ミリ。真ん中のレンジくらいですね」
そこまで言っておいて、じゃあなぜ西窪はサイズの大きい203を使わないのか? という疑問が浮かび上がるのだが、そこには彼のトリックスタイルが関係してくるそう。
「大きければ大きいほど、トリックをする時にちょっとした段差などに当たっちゃうんですよ。ディスクは鉄製なんですけど、とはいえトリックは見た目以上に激しいもの。軽く当たっただけでもすぐに曲がってしまうんです。ちょっとでも曲がると使えなくなる。180ミリを選ぶ理由は、“トリックのしやすさ”と“制動力”の両方のいいとこ取りをした結果、僕にとって一番しっくりくる中間点だからです」
もちろん、一生に一回も曲げない人もいるそうだが、常にアグレッシブに攻めてばっかりの西窪は1日で3枚曲げたこともあるのだとか(苦笑)。
02
【ケーブル処理】
続いて紹介してくれたのが、ステムと呼ばれるパーツのヘッドキャップ部分からフロントフォークにかけてケーブルを内装した、いわゆる“中通し”と言われる部分だ。
通常の自転車だと、ブレーキケーブルが邪魔をしてハンドルをクルクルと回すことができない(半回転で限界。もしイメージできなければお近くにあるママチャリでチャレンジ!)が、このアレンジでハンドルをクルクルと回すバースピンというトリックができるようになるそう。
「BMXだとジャイロという特殊なパーツ【ジャイロの解説はこちら】を取り付けることで可能なんですけど、トライアルバイクには、先ほど話した油圧式のブレーキを採用している関係で付けられないんです。
だけどハンドルをクルクルと回したい。だからこの中通しが必要となってくるんです。このアレンジをすることで4回転くらいはできる。トライアルのトリックだと4回転まわせれば十分なんです」
その他にも、ケーブルを内蔵することで見た目の印象がスッキリとしたり、担いだ時に邪魔になりにくいというメリットもあるそう。
この仕様は西窪のようなライダーにとってはごくポピュラーなセッティングのようなのだが、彼の場合は一味違う工夫がある。
「普通はフロントフォークのもっと上の方でホースを出してるんですけどそれだとダサい。なので僕はフォークのギリギリまでケーブルを中に入れて、最後のギリギリの場所で出してるんです。これで、よりスマートな見た目を演出できるんです」
03
【チューブレスタイヤ】
「世の中に最も普及しているタイヤは、チューブド(クリンチャー)というもの。これは簡単に説明すると、タイヤの内側にチューブが入っている構造です。僕が愛用しているのはチューブレスというタイヤ」
文字通り(タイヤの内側に)チューブがないタイヤのこと。昨今のトライアルシーンではまだまだチューブド派が多いそうなのだが、西窪は断然、チューブレス推奨派なのだとか。
「岩の角にジャンプをしたり、角でタイヤを潰してその反発で飛んだりするトライアル競技にとって、一番の天敵がタイヤのパンク。チューブレスはチューブドに比べると耐パンク性能が高いのでパンクがしづらい。もちろんパンクはしますよ。だけど、チューブドみたいに一気に空気が抜ける心配は少ないし、シーラントという特殊な液が入っているので、ごく小さな穴くらいなら塞いでくれます」
それほど魅力的なタイヤであるにもかかわらず、昨今のトライアルシーンにはそこまで浸透していないのは一体なぜだろうか。
「MTBダウンヒルとかだと、レース中に石を踏んでパンクをしても少しは走れるようにチューブレスを選ぶ人が多いんですけど、僕みたいなストリートトライアルだとまだ8割くらいがチューブド。以下の工程がすごく面倒なんですよ」
- まずチューブレス専用のホイールとタイヤが必要。
- その中にインサートって言って発泡スチロールのような素材をいれる。
- そこにシーラントという液体を入れる。
「このインサートというものがかなり特殊で、タイヤがバーンって当たった時に衝撃でリムが曲がらんようにするクッション材のようなもの。例えば、タイヤに釘が刺さった時に空気がシューーーーーって抜ける時などにシーラントがそれを塞いでくれるんです。ただ、これを入れる手間がめちゃくちゃ大変で。
あとは、ちょっとタイヤがブレただけでもこの液体が飛び出したりもするんです。面倒なのでやりたがらないんですけど、僕はタイヤを石の角にぶつけて登るトリックが好きだし、少しでも高く飛びたいのでチューブレスを選んでいます」
チューブレスにはまだまだデメリットがあるのだとか。
「縦のジャンプだといいんですけど横にジャンプすると着地でタイヤが横にブレることがあるんです。そうするとタイヤが外れたりしてシーラントが飛び出て液体まみれになったりもする。そうなると、それ直すだけで僕の場合は2時間くらいかかる。チューブドだと10分で交換できる。ここがみんながチューブレスを敬遠しがちな理由です」
04
【ブレーキの角度】
「普通のバイクはハンドルと平行に取り付けられていたりするけど、それと比べるとかなり下に向けてセッティングしています」
これは西窪が187cmと高身長であることが関係する。
「もちろん好みもあるんですけど、僕の場合は、上から覆い被さるような姿勢でチャリに乗るんです。手が自然とまっすぐな角度になるためにはこの下向きのセッティングが丁度いい! この下向きの角度だと腕をまっすぐ突っ張れるから、自分が最も得意とするノーズトリック系がやりやすいんですよ」
05
【リアハブ】
続いて紹介するのは、リアハブ【ハブの解説はこちら】のパーツ部分。ここでは、ノッチ(歯が噛み合う数)と呼ばれる数字が重要になってくるらしい。
「ノッチが多い=コマが小さいので抵抗が少なくてめちゃくちゃ回ってくれるんです。これを説明するとかなり複雑で長くなるので割愛しますが、僕たちの周りでは120ノッチくらいが定番だと言われてたんです。で、今僕が使用しているのが690ノッチのもの」
この数字は、この辺りの知識に詳しい方なら驚愕するような、とにかくありえない数字らしい。
「僕らの競技ってグングングンって細かくペダルを漕ぐ。その時にノッチが少ないと引っ掛かりが少ないので引っかかるまでにタイムラグがあるんです。それですごく負担がかかって歯が飛んじゃったりするんですけど、ノッチが多いと漕ぎ出した瞬間に引っかかるのでノンストレスだし負担も少ないし、なによりレスポンスがめっちゃいい! それと、タイヤの転がりもすごくいいんです」
このハブが鳴らす音にも魅力があるという。
「ハブ特有の“シャーーーーーー”って音は自転車好きの人にはたまらないものなんです。良いものになればなるほど、すごく心地いい音を奏でるわけなんですけど、このブランドは最高に気持ちのいい音を鳴らすんです」
MTB界ではかなりの高級ブランド。なんと、この部分だけで8万前後もするそう。
06
【カーボンフレーム】
西窪の愛機は、トライアルバイクのフレームにしてはかなり珍しいカーボン製。実はこれもかなりのポイントなのだとか。
「ロードバイクだと強度は劣るが軽量に特化したカーボン製が多いんですが、トライアルは失敗したらチャリンコが遠くに吹っ飛んだり、その拍子で石などに当たっちゃったりしてフレームに強い負担がかかる。だからスチールやアルミ製のものが一般的です。
だけど最近は、カーボンのクオリティがどんどん上がってきています。このフレームに使われているものは、衝撃吸収材みたいなものを練り込んで作られた最新素材。カーボン特有の軽さを誇りながら強度も抜群! 僕たちが待ち望んだ夢のような素材なんです」
本人曰く、このカーボンを使ったストリートトライアルバイクは世界的に見てもかなり稀なようで、現在だと2社くらいからしかリリースされていないのだとか。また、話はさらに続き、素材だけでなくフレームのデザインにもこだわりがあるそう。
「キャニオンの工場でバイクに負荷をかけるテストをひたすら行なって、僕自身も1年以上テストライドを繰り返した納得のいく最終形態」
このフレームのデザインこそ、メーカーと西窪とが幾度となく繰り返した試行錯誤から生まれた、最強の強度を誇る黄金比というわけだ!
07
【ペダル】
「ストリートトライアルのトリックは、BMXなどとは違って、ペダルから足を外すことが少ないんです。オン・ザ・ペダルが基本。なのでスチール製のピンが付いたものを選びます。このトゲトゲのおかげでグリップ力が増すんですが、踏み外したらもう最悪! めちゃくちゃ脛を削られちゃいます。まさにライド・オア・ダイな一品となっております(笑)」
そんな西窪が特にお気に入りだというのがクランクブラザーズとうメーカーのもの。
「僕はこのメーカーのStamp 11 Largeというモデルを純正のまんまで使ってますが、人によってはピンの一部を抜いたり、削って高さを変えたりして自分仕様にカスタムする人もいるんですよ。つまりそれくらい、ペダルの靴への食いつきは僕たちにとって重要なんです」
08
【Spec list】
- フレーム:Canyon Stitched Trial
- フォーク:Canyon Stitched Trial
- タイヤ前後:Continental Air King 24x2.35
- ハブ前後:Industry9Hydra Classic
- ステム:SQlab 80X Trial
- ハンドル:SQlab 30X Trial
- グリップ:SQlab 70X S
- サドル:SQlab 6OX Trial
- ペダル:Crankbrothers Stamp 11 Large
- ブレーキ前後:Shimano XTR
- ディスクローター前後:180mm
- シーラント:Muc-off No Puncture Hassle Tubeless Sealant
- インサート:RIMPACT
- チェーン:KMC K1
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