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Skrillex:ベストヒット20

ポップとダンスミュージックの垣根を壊し、ポップスターの定義さえも変えてしまった時代の寵児Skrillexがこれまで手掛けた名曲の数々を振り返ろう。
Written by Kat Bein
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Skrillex

Skrillex

© Bree Kristel Clarke/Red Bull Content Pool

Sonny Mooreは、決して恵まれた環境でキャリアをスタートさせたわけではない。後に時代を席巻することになる彼は、ロサンゼルス北西部の郊外に生まれ、サンフランシスコで育った。やがてモハーヴェ砂漠にある寄宿制学校へ入学するが、14歳の時に遭った深刻ないじめが原因で彼は自宅学習を選択することになった。2年後、いじめから立ち直ることができたと確信した彼はフロリダへと移住。18歳を迎える頃にはポストハードコアバンドFrom First to Lastのリードシンガーとなり、10代が抱える不安を激しく表現するようになった。
しかし、やがて彼はバンドを脱退し、ソロとしてのキャリアを進むことになる。生まれ故郷のLAへと戻った彼は、エレクトロニック・ミュージックに熱中し始め、ラップトップを使ってビートメイクをするようになる。定住する場所もなく放浪していた彼は、米国のダブステップシーンで活躍する12th Planetというプロデューサーの家に居候していたが、2008年にはSkrillexというステージネームを名乗ってクラブでのパフォーマンスを展開。その後一気に人気に火が付き、2012年にはEDMプロデューサーとして初のGrammyを受賞し、3部門を独占した。
Skrillex

Skrillex

© Cesar Sebastian

Skrillexはそのアグレッシブでグリッチーなスタイルで有名になったが、ファンやメディアが彼の音楽をひとつの枠に収めることはできない。わずか10年足らずで、Skrillexはダンスミュージックの世界から身を起こし、今やロック界やヒップホップ界にすら影響を与える人気プロデューサーにまで成長し、ポップミュージックの頂点に立っている。彼の人気を支えている理由はそのフレンドリーな性格もひとつではあるが、多彩なジャンルを横断する自主レーベルを立ち上げたり、Disneyの映画に出演したり、独自のヘアスタイルを流行させたりと、その多彩な魅力も無視できない。さらには、あのJustin Bieberでさえクールな存在に押し上げてみせるプロデュース能力の高さには脱帽と言うしかない。
個人的に彼を好きか嫌いかはさておき、Skrillexがここ10年の音楽シーンにおける最重要アイコンのひとりである事実は否定できない。今回、我々は彼が過去に手掛けた楽曲の中からベスト20を選出した。非常に多彩で様々な方向性を持った楽曲が並んでいるが、その中で唯一共通する点があるとすれば、どの楽曲も容赦のない重低音で支えられているという事実だ。
20:Skrillex「With You, Friends (Long Drive)」
初期の頃から、Skrillexはたまに彼自身のソフトな一面を覗かせてきた。この曲における「Please tell my lover I'm down on my knees / and I really really miss you / Oh, I love you.(僕が反省してるってことを彼女に伝えてくれないか/きみに会いたくてたまらない/ああ、きみを愛してるんだ)」というロマンチック全開の歌詞は、彼の内面に潜むソングライター的な資質が書かせているのだろう。もちろんこのヴォーカルは加工されてズタズタに切り刻まれており、エレクトロニックな要素として楽曲に組み込まれているところからSkrillexの高い技量がうかがえる。そのエモーショナルなインパクトは、柔らかなピアノのメロディやエネルギッシュなシンセブレイクに至るまで楽曲をしっかりと支えている。
19:Skrillex「Ruffneck (Full Flex)」
3作目のEP「More Monsters and Sprites」からのセカンドシングル。ここには、ファンみんなが愛する初期Skrillexらしいサウンドが詰まっていると言えるだろう。魅力的なストリングス、クレージーな電子ノイズ、浮き上がるピアノ、そして強烈な重低音は両親が腰を抜かすのに十分な威力を持っている。レザーフェイス(訳注:ホラー映画『悪魔のいけにえ』に登場する殺人鬼キャラクター)のように耳をつんざく鋭いドロップは、まさしく初期のSkrillexスタイルにおける特徴だ。
18:Skrillex & The Doors「Breakn' a Sweat」
かつて60年代に故Jim Morrisonは未来の音楽制作の手法はエレクトリックなものに移行するだろうと予測していたが、その40年後に彼のバンド(The Doors)のサウンドがSkrillexの手によってこれほどまでに大胆な変貌を遂げるとはまったく予測できなかったはずだ。元々これは2012年に製作されたドキュメンタリー映像『Re:GENERATION_music_project』のために作られた楽曲だったが、SkrillexのヒットEP「Bangarang」のリードトラックとして収録された。ここでもSkrillexはそのサウンドにおける多様性を見せつけ、時代を超えて脈々と受け継がれるインスピレーションの不変性を証明してみせている。
17:Skrillex「Weekends!!!」(with Sirah)
Skrillex名義のファーストリリースに収録された1曲で、この後も定期的に共作を手掛けることになるSirahとの初の共同作業にして両者のベストコラボレーションのひとつといえる作品。Skrillexの作品としてはハードさと複雑さが控えめだが、そのキャッチーさは群を抜いて際立っている。米国流のダブステップサウンドの先がけとなったこの作品は、その後多くの模倣作を生むことになった。このヴォーカルを耳にすると、1日中頭の中にこびりついて離れないだろう。
16:Skrillex & Wolfgang Gartner「Devil's Den」
Wolfgang Gartnerは「コンプレクストロ」(訳注:エレクトロ・ハウス/EDMから派生したサブ・ジャンルのひとつ)の達人として知られており、ロック的な要素を大胆に取り入れたエレクトロサウンドは彼の流麗なギターやピアノから生み出されている。Gartnerによるレーザービームのごとき疾走感は、Skrillexの強烈なベースドロップと一体となって危険きわまりないサウンドスケープを作り上げている。きわめて高い中毒性を誇る邪悪な1曲だ。
15:Skrillex「Summit」(with Ellie Goulding)
まるでビデオゲームのようなサウンド。実は、この曲は2012年にブラウザ・ベースのRPGゲームを手掛けるJohn Odaが制作した『Skrillex Quest』のためにSkrillex自身が提供した1曲。Skrillexらしいエッジを持ちながら、電子ノイズとどこまでも広がるメロディ、そして当時のSkrillexのガールフレンドであったEllie Gouldingによる天使のようなヴォーカルがフィーチャーされている。もちろん、Skrill自身による呻き声のようなヴォイスも含まれている。
14:Skrillex「Doompy Poomp」
2014年にリリースされたアルバム『Recess』の中で最も奇抜なこの曲には、Skrillexのクレージーな実験精神が最も際立った形で表現されている。いつものようなマッシブなドロップもなく、叫び声のようなサンプルもこの曲にはない。この「Doompy Poomp」はひたすらのろのろと傾きながら進行し、やがてホワイトノイズとダーティなテクスチャーが加速すると、唐突にコミカルなビートが落下してくる。Fleur & Manuが監督したこの曲のPVでは、映画『恋はデジャ・ブ』(原題『Groundhog Day』:1993年に製作されたビル・マーレー主演の米国映画。主人公は超常現象によって閉じた時間の中に取り残され、田舎町の退屈な祭事の日を際限なく繰り返すというファンタジー作品)のシーンが引用され、この曲が持つ非日常感を見事に表現した。
13:Skrillex & Mr. Bangladesh「El Chapo」(with The Game)
ここ数年のSkrillexはにわかにヒップホップ的マッチョイズムへ接近しつつあるが、彼の怪物のようなビートに載せてThe Gameがマイクを取るとこれほどまでに強烈な仕上がりとなってしまう。共作者としてクレジットされているMr. Bangladesh(Ludacris「What's Your Fantasy」を手掛けたプロデューサー)も、ダークで威勢の良いホーンを鳴らして存在感を誇示している。名うてのギャングスタラッパーとして知られるThe Gameにとってお誂え向きのアンセムと言えるこの曲は、SkrillexをBillboardのヒップホップシングルチャート7位のポジションにまで押し上げた。
12. A$AP Rocky「Wild For the Night」(with Skrillex and Birdy Nam Nam)
ヒットチャートでは時間をかけてじわじわと順位を上昇していくタイプの曲がたまに現れるが、これはその典型ともいえる1曲だ。本来はBirdy Nam Namというグループの「Goin' In」というタイトルの曲であったが、Skrillの立ち上げたレーベルOWSLAからリリースされるにあたり、跳ねたビーツととびきりクールなヴォーカルサンプルを加えて生まれ変わった。制作にはもちろんSkrillexが手を加えており、よりダークにベースを補強したヴァージョンが「Goin' Hard」リミックスとして発表された。さらに、彼はビートをより遅くしてA$AP Rockyによるピッチダウンヴォーカルを追加し、この曲のギャングスタ的なムードを最大限に活かした最終ヴァージョンがついに生まれることになったのだ。
11:Skrillex & Damian “Jr. Gong” Marley「Make it Bun Dem」
ダブステップというジャンル名に「ダブ」というレゲエ由来の名詞が入っている意味をSkrillexはこの曲によって周囲に再び思い起こさせた。世界中に存在するルードボーイたちに捧げられたこの曲には強烈なベースとシンセスタブが並べられ、レイドバックしたカリブ調リズムを加えてキラーな1曲に仕立て上げた。本場ジャマイカのサウンドボーイたちも真っ青の1曲。
10:Skrillex「First of the Year (Equinox)」
Skrillex史上最も壮大でドラマチックな世界観を持つこの曲は、2011年にリリースされたEP「More Monsters and Sprites」のリードシングルで、2012年の第54回Grammyにもノミネートされた。この曲単体での受賞は惜しくも逃したものの、Skrillexは同年のGrammyでノミネート5部門中3部門を受賞し、メインストリームシーンにおけるEDM時代の到来を印象づけた。
9:Benny Benassi「Cinema」(Skrillex Remix with Gary Go)
ときにリミックスヴァージョンの存在はそのオリジナル曲と同等かそれ以上のヒットを生む原動力となる。Benny Benassiのオリジナルを強烈な低音で料理してみせたSkrillexヴァージョンはより多くの人々の心に突き刺さり、結果としてこのリミックスはGrammyのベストリミックスレコーディング賞(ノンクラシカル部門)を受賞するまでに到った。ドロップ直前のブリッジ部分で現れる、ピッチを早めたラップが印象的。
8:Dog Blood「Next Order」
Diploとコラボレーションする前、Skrillexはもうひとりのエレクトロ界の才能ある人物とスタジオをシェアしていた。ドイツのテクノ界におけるビッグネームであり、また熱心なヒップホップマニアでもあるBoys Noizeはアナログ機材に関するその膨大な知識をSkrillexへ伝授し、コンピューターがメインだったSkrillexのビートメイクに大きな刺激を与え、2人はそのまま威勢の良いスペーシーなヴァイブに満ちた楽曲群を作り上げた。これらの楽曲群は2枚のEPおよびリミックスコレクションとしてリリースされ、さらに彼ら2人は2013年のUltra Music FestivalおよびCoachellaにおいて強烈なパフォーマンスを見せつけた。
7:Skrillex「My Name is Skrillex」
Skrillexの登場は、あたかも音楽そのものの歴史を永遠に変える新しいサウンドに世界がチューニングを合わせてしまったかのような印象を与えた。実質的なデビューEPに収録されたこの曲で、彼は既にSkrillexとしか言いようのないサウンドを確立している。また、この曲はおそらく彼の作品の中で最もクールな曲のひとつだ。Skrillex自身も刺激を受けたことを認めているフレンチ・デュオ、Justiceからの影響もうかがえるこの曲では、彼のハードコアバンドとしてのルーツを偲ばせるギターサウンドとディスコ的な未来主義がヘヴィなフィルター処理で鳴り響いている。紛れもない名曲であり、2010年以降に彼のファンになったリスナーたちは必ず聴いておくべき1曲だ。
6:Skrillex & Yogi「Burial」(with Pusha T, Moody Good, TrollPhace)
象が足を踏み鳴らすかのようなホーンは、まるで『ラリーのミッドライフ★クライシス』(米国の人気シットコム)のテーマ曲のサンプリングに思える。実際は違うのだが、もしそうだったらと考えてみるのは面白い。この神レベルのラップトラックは、すでにトラップ云々といったブームさえ飛び越えている。この「Burial」は、アグレッシブなノイズとハンドクラップが4分間に渡り繰り広げられるビーストとも言える1曲で、最後は中東風のバイオリンで壮大に締めくくられる。
5:Skrillex「Reason」
Skrillexは米国にダブステップブームを巻き起こした張本人だが、2013年1月にリリースされたEP「Leaving」での抑制されたサウンドはオーディエンスの度肝を抜いた。この作品は彼にとって過去のサウンドとの決別であり、メロディをより重視し、過去の彼の常套手段であったビルド&ドロップへの依存からの脱却を示し、アーティストとしての成熟を意味していた。このEP全体においてもこれまでのようなギミック性が減り、よりエモーショナルな内省が強まっている。その作品性を特に力強く象徴しているのがこの「Reason」だ。
4:Jack Ü「Take U There」(with Kiesza)
この不安定でありながらも耳にこびりついて離れない1曲こそ、SkrillexとDiploのスーパー・デュオによるコラボレーション第1弾だった。この曲の冒頭を飾る、無垢で軽やかでありながらパワフルな存在感を放つヴォーカルは後のスターとなるKieszaによるもの。しかし、真に世界中のリスナーを驚かせたのはその後に控えた強烈きわまりないトラップ調のドロップ。この曲は2015年のフェスティバルサーキットを席巻し、Skriploによる新時代の幕開けを強く印象づけた。
3:Skrillex「Bangarang」(with Sirah)
最高のパーティチューンといえるこのトラックはファンたちの一番のお気に入り。Skrillexの名声をさらなる高みに押し上げ、Billboardのノミネートと複数部門でのグラミー賞をもたらした文句なしのヒット作だ。商業的に最も成功した彼の楽曲であり、米国のロック系ラジオ局はもちろん、ヨーロッパさえも席巻した。更に言えば、この曲は映画『フック』(1991年公開。スティーブン・スピルバーグ監督 / ロビン・ウィルリアムス、ダスティン・ホフマン主演)へのオマージュ的意味合いもあり、Skrillexと同世代ならば誰もが共感するはずだ。
2:Skrillex「Scary Monsters and Nice Sprites」
彼のファンであるかどうかに関係なく、多くの人がSkrillexという名前を聞いてまず思い浮かべるのがこのサウンドだろう。この曲は、米国から出現した初めての本格的ダブステッププロデューサーとしての彼のポジションを確立させた1曲で、米国国内でダブステップを定着させたのみにとどまらず、その周辺で不安定に漂っていた無数のプロデューサーたちにも大きな影響を与えた。EDM、そして広義のダンスミュージックのスタイルにおいて決定的な役割を果たした1曲であり、この曲を抜きにしてSkrillexは語れない。尚、この曲のPVでカップスタッキングをしている女性がヴォーカルを担当している。
1:Jack Ü「Where Are U Now?」(with Justin Bieber)
ほんの少し昔には、最先端のダブステッププロデューサーとゴシップまみれのポップスターがコラボレーションするなど考えも及ばなかったことだ。実際、このコラボレーションが実現するとは、文字通り誰ひとりとして予測していなかった ― Justin Bieberのマネージャー、Scooter Braun以外は。ともあれ、Braunの慧眼には脱帽するほかない。というのも、Jack Üとの共演はBieberにとって世界中のラジオを席巻するアンセムとなったからだ。いまやダンスミュージックがポップミュージックであり、ポップミュージックはEDMを意味する時代だ。この状況を用意する大きな原動力となったのは、過去6年間におけるSkrillexのハードワークによるところが大きい。Bieberがイメージ一新を図った意欲作『Purpose』でもSkrillexはかなりの部分で制作に関わっており、このアルコール好きのプロデューサーがこれから数年先の音楽シーンを引っ張っていくべき主力になることは誰の目にも明らかだ。