F1
F1史に残る人気リバリー ベスト10
F1マシンのリバリーはただのデザインではない。優秀なリバリーはチームの歴史とファンの記憶の一部になっていく。ファンに愛されてきたリバリーの中からベスト10をピックアップ!
F1マシンは直接的・間接的に世界へメッセージを発信している。F1マシンは世界最高峰のエンジニアリングの結果として私たちを魅了してきたが、同時にサーキットでのルックスと印象も私たちには重要だ。
F1マシンのリバリー(カラーリング)は、グランプリのサーキットや【Red Bull Showrun】などのイベントでファンが驚異的なスピードで疾走するマシンを見分けるのに役立つ。
しかし、F1マシンのリバリーの意義はそれだけではない。リバリーはチームのアイデンティティを高め、ファンエンゲージメントを深める。そして何より、優れたリバリーデザインはマシンパフォーマンスの優劣を問わず、F1の歴史で確固たる地位を得ることになる。
F1リバリー略史
現代のF1ファンが知っているリバリーは、F1黎明期には存在していなかった。F1世界選手権が創設された1950年から1960年代にかけての各チームはシンプルな意匠を採用し、自国を象徴するカラーを選んでいた。イタリア系チームのマシンは “ロッソ・コルサ” と呼ばれる鮮やかなレッドに塗られ、フランス系チームのマシンはフレンチブルーを纏っていた。
ただし、英国は例外だった。ユニオンジャックを占めるレッド、ブルー、ホワイトをすでに他国が採用していたため、英国系チームはのちに “ブリティッシュ・レーシンググリーン” として知られるカラーを採用した。
1968年になると、いわゆるナショナルカラーのリバリーは少数派となり、F1スポンサーシップリバリーとして知られる広告リバリーが大多数となった。
マールボロやガルフなどの企業が初めてスポンサードしたマシン群にはこれらのブランドにインスパイアされた斬新なカラースキームが採用され、様々なクリエイティビティが発揮される新たな扉が開かれた。たとえば、タバコブランドのジョン・プレイヤー・スペシャルは、F1史に残るロータス72のブラック&ゴールドリバリーに直接関わっている。
1980年代にマシンデザインがさらに進化したあとも、広告主たちはクリエイティビティを維持し続けた。近年では、アストンマーティンのブリティッシュ・レーシンググリーンやメルセデスのシルバーなど、クラシックカラーへの回帰も確認できる。
F1の歴史を振り返り、F1が続く限り永遠に語り継がれるであろう傑作リバリーのトップ10を紹介しよう。
01
オラクル・レッドブル・レーシングRB21
2分
2025 Japan Livery, Unveiled.
2025シーズン 日本GPに向けて、オラクル・レッドブル・レーシングは母国レースを迎えるエンジンパートナーのホンダへのトリビュートとなるリバリーを用意した。
F1史上屈指の成功を収めたパートナーシップの最終シーズンを記念し、オラクル・レッドブル・レーシングはこの日本のビッグブランドにF1初優勝をもたらしたホンダRA272にインスパイアされたスペシャルリバリーをデザインしたのだ。
2025シーズンはホンダF1初優勝60周年にあたるため、米国人ドライバーのリッチー・ギンサーの手によって1965シーズンのメキシコGPでホンダにF1初優勝をもたらしたRA272へのトリビュートというデザインコンセプトが採用された。
RB21のスペシャルリバリーはRA272のアイコニックな日の丸モチーフを再現しており、ノーズには “H” マーク、そしてボディワーク後部にはシンプルなHONDAロゴが描かれた。また、日本GPのグリッドに並んだレッドブル系マシン4台すべてに、ホンダF1初優勝60周年を記念するスペシャルロゴも掲示された。
02
ルノーR26
2006シーズンのドライバーズタイトルを獲得したフェルナンド・アロンソが駆ったルノーR26は、鮮やかなブルーとイエローのデザインが特徴で、有名なルノーイエローがフロントからサイドにかけて伸び、残りは日本のタバコブランドであるマイルドセブンのブルーで覆われていた。
マシン本体のデザインでは幅広ノーズが採用され、先代マシンR25と同じレッドに塗られたノーズ先端が残された。ルノーR26の大胆さは、ルノーに2年連続となるF1タイトルをもたらしたこのシーズンにおけるアロンソの圧倒的な強さを反映している。
03
レッドブル・レーシングRB15
ホンダ製エンジンを搭載したレッドブル・レーシングのF1マシンの “初代” に相当するRB15は、特別な1回限りのローンチ用リバリーを纏ってデビューした。アストンマーティンがスポンサーとなっていたディープブルーのボディは、瞬時に判別できるレッド&イエローのレッドブルロゴがアクセントとなっていた。
マックス・フェルスタッペン、ピエール・ガスリー、そしてシーズン途中からガスリーと交代したアレックス・アルボンがドライブしたRB15は、メルボルンでの開幕戦オーストラリアGPで初戦を迎えた。2019シーズンを通して、レッドブル・レーシングはRB15と共に重要な勝利や表彰台の数々を手に入れた。
ローンチ当時、フェルスタッペンは次のようなコメントを残している。
「マシンに乗り込むのは本当に興奮しました。感触は良好でしたし、問題も一切なく、リバリーは実に美しいです」
また、RB15はホンダエンジン搭載マシン13年ぶりの優勝を記録し、2019シーズンを通じて優勝3回・表彰台6回を積み上げた。また、レッドブル・レーシングをコンストラクターズ3位に押し上げた他、ポールポジション2回・ファステストラップ5回もマークして歴史に名を残した。
04
ロータス98T
英国のチームだったロータスの1986シーズン用マシン98TはスペインGPとデトロイトGPで2勝を記録したに過ぎないが、そのリバリーは今なおF1の歴史で最も記憶に残っているリバリーのひとつに数えられている。ジョン・プレイヤー・スペシャルがスポンサードした煌めくゴールドがアクセントのブラックボディは、その美麗さによってファンのお気に入りとなった。
1986シーズンにデビューした98Tは、当時の新たな燃費規制にもかかわらず、そのパフォーマンスで名を馳せた。偉大なる故アイルトン・セナがステアリングを握った98Tは、1986シーズンのコンストラクターズ選手権を総合4位で終え、2位4回・3位2回・ポールポジション8回を記録した。
05
マクラーレンMP4-23
マクラーレンMP4-23は、2008シーズン ブラジルGPでルイス・ハミルトンがキャリア初のワールドチャンピオンを獲得したときのマシンとして有名だ。
しかし、このマシンが傑出している理由はそれだけではない。なぜなら、MP4-23の近未来的なシルバーボディも多くの称賛を集めたからだ。スポンサーだったボーダフォンを象徴する鮮やかなレッドがMP4-23のフロント / スポイラー / サイドのアクセントとなっていた。
このマシンの開発では、フェラーリをF1界のリーダーの座から引きずり下ろすべく、エアロダイナミクスの改善に重点が置かれた。より高くなったノーズコーン、Tウイング、そして最適化されたホイールベースは入念に作り込まれた特徴で、MP4-23をライバルたちよりも先にフィニッシュラインへ導くのに貢献した。
06
スクーデリア・トロ・ロッソSTR12
レッドのアクセントが映える印象的なメタリックブルーにシルバーのブルが複数描かれていたスクーデリア・トロ・ロッソSTR12のリバリーは、このチームがレッドブルにスポンサードされていることを明確に示していた。
しかしながら、そのメタリックブルーはレッドブルのブルーよりも幾分明るく、このアレンジがSTR12全体のルックスを際立たせていた。また、同系のレッドとシルバーをベースにしたヘルメットも用意されていた。
マシンのボディスペースを上手く活用していたこのリバリーは、STR12を最も印象的なF1マシンのひとつに押し上げ、リバリーでチームとブランドのアイデンティティをまとめて表現できることを証明した。
このマシンを駆ったカルロス・サインツは2017シーズンのチームをコンストラクターズ7位へ引き上げる原動力となり、同シーズンのシンガポールGPでは4位入賞を飾った。
3分
Carlos Sainz's first STR12 lap
Ride along with Carlos Sainz as he takes the new Toro Rosso STR12 F1 race car out for a first spin.
07
ジョーダン191
ジョーダン191は多くの理由からF1史に残る名リバリーのひとつに数えられている。
このエメラルドグリーンとブルーのマシンは、1991シーズンのベルギーGPでミハエル・シューマッハがF1デビューを飾った記念すべきマシンであると同時に、2025年に逝去した故エディ・ジョーダンが設立したF1チーム、ジョーダン・グランプリ初のF1マシンでもあった。
メインスポンサーだった7UPのコーポレートカラーが反映されたエメラルドグリーンのリバリーは、当時最も美しいF1マシンのひとつという評価を勝ち取ったが、その評価は今も変わらない。
08
メルセデスW10
2019シーズンを圧倒したパフォーマンスとユニークなリバリーで有名なメルセデスW10は、サーキットで大きな印象を残した。
ブラックとシルバーを基調に、ティールとオレンジがアクセントとして加えられていた大胆なリバリーは、このマシンがサーキットで残した結果に相応しかった。ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスがドライブしたW10は、メルセデスにシーズン勝率71.4%という驚異の数値をもたらした。
09
フェラーリF2004
ミハエル・シューマッハとルーベンス・バリチェロがドライブしたフェラーリF2004は、フェラーリ伝統の赤いリバリーを纏っていたが、このマシンの圧倒的なパフォーマンスは、他のフェラーリマシンと完全に異なっている。
2004シーズン全18戦で15勝を挙げ、シューマッハに最後のドライバーズタイトルをもたらしたF2004は重心が下げられ、重量配分が改善されていた他、それまでのマシンより軽量に仕上げられていた。また、空力性能も他を寄せ付けない高さを誇っており、これらすべての特徴がシューマッハの連勝に寄与した。
10
レッドブル・レーシングRB16B
2021シーズンのトルコGPでホンダとのパートナーシップを讃えるスペシャルリバリーが公開された。マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスがドライブしたこのホワイトのリバリーは、ホンダRA272からインスピレーションを得ており、この名車の1965シーズンのF1初勝利を讃えていた。
F1リバリーのデザインとインパクト
F1マシンが各チームの国を表現するカラーリングから離れたあとは、そのデザインとカラーリングは、各チームの資金面を支援するスポンサーブランドの影響を受けるようになった。
レッドブル・エナジードリンクのネイビー、イエロー、レッド、7UPのエメラルドグリーン、さらにはジョン・プレイヤー・スペシャルのブラックとゴールドなど、近代F1マシンの創意工夫に富んだスポンサーリバリーは世界中のファンを喜ばせてきた。
その中で、特にアイコニックなリバリーのデザインは何十年も愛され続けており、チームのアイデンティティの一部になっている。2015シーズンのレッドブル・レーシングがテスト用に用意した “カモ・ブル” はその好例だ。
ファンたちは、ダニエル・リカルドとダニール・クビアトがプレシーズンテスト期間に披露したモノクロのカモフラージュパターンのリバリーから “ブル” を発見することを楽しんだ。
最終的にこのリバリーが実戦投入されることはなかったが、その優れたデザインはファンの間で高く評価され、リバリーのカラーリングやデザインの変更は、シャシーや空力コンポーネントのデザイン変更と同じくらい私たちに与える影響が大きいことをあらためて思い出させた。
また、マシンのリバリーには、ファンの関連グッズの購入意欲に影響する側面もある。たとえば、歴史に残る美しいリバリーを纏ったクラシックF1マシンの8分の1スケールモデルは、F1ファンのコレクターズアイテムとして非常に人気が高く、そのようなF1マシンをモチーフにしたアパレルやアクセサリーも同じように人気がある。
F1マシンのリバリーはデザインやルックスを超越し、チームの歴史・成功・野望のシンボルとして機能する。フェラーリのレッドから印象的なネオンカラー、またはファンの予想を裏切る1回限りの限定ラッピングまで、リバリーはF1マシンだけではなく、モータースポーツ全体の歴史の一部でもあるのだ。
▶︎RedBull.comでは世界から発信される記事を毎週更新中! トップページからチェック!