『Total War』シリーズは様々な時代と大陸を舞台に展開されてきた。2000年にリリースされた第1作『トータルウォー:ショーグン』が、ターン制ストラテジー、複雑な戦術的判断、強烈な戦闘がブレンドされたこのシリーズ特有の魅力をプレイヤーたちに紹介し、舞台を日本から移したあとも、ローマ帝国やナポレオンをテーマにした作品が展開され、2016年にはファンタジー世界を舞台にした『Total War: Warhammer』がリリースされた。
このようなシリーズ展開を振り返ってみると、デベロッパーのCreative Assemblyは変化を恐れていないと言ってしまって良いだろう。しかし、過去作品がロケーション、時代、キャラクターを次々と変えてきた中で、最新作『Total War: ARENA』はさらに大きな変化を加えようとしている。このゲームはGaaS(ゲーム・アズ・ア・サービス)として展開されるのだ。
Creative Assemblyのデベロッパーコミュニケーションを担当するJoshua Williamsは今作を開発したきっかけについて次のように説明している。
「以前の『トータルウォー:ショーグン2』のアバターモードが今作の大きなインスピレーションになっています。アバターモードを通じて、私たちはシリーズに対戦要素を求める声が大きいことに初めて気が付き、このシリーズに相応しいマルチプレイヤーモードについて話し始めたのです」
「アグレッシブで魅力的で壮大なゲームプレイというシリーズの中心的な魅力は、今作の開発期間を通じて維持されていますし、パッチやアップデートをする際の基盤となっています。今作はシリーズ全体からインスピレーションを得ましたが、Wargamingのような基本プレイ無料の対戦ゲームも参考にしました。ですので、Wargamingと組んで開発を進めることを決定したのは、私たちにとってごく自然な流れでしたね」
シリーズ過去作品の多くがCo-Opキャンペーンの形でマルチプレイヤーを取り込んでいたが、『Total War: ARENA』はオンラインマルチプレイヤーを本格的に取り込んだ初めての作品となる。GaaSはゲーミング業界の最近のトレンドで、『Destiny 2』や『レインボーシックスシージ』などをはじめとする多くの人気タイトルで見られるようになっているが、Creative AssemblyはGaaS化に際していくつかの問題に対処しなければならなかった。Williamsが説明する。
「スタンドアロンからGaaSへの移行は最大のチャレンジのひとつになりました。全てを改良しなければなりませんでした。プレイヤーとのコミュニケーション、オンラインへの対応、パッチの開発プロセスなどを上手く機能させるにはしばらく時間がかかりました。ですが、今は全てが順調に機能しています」
全てが順調に機能している今、『Total War: ARENA』はシリーズ初の無料オンラインマルチプレイヤータイトルになる予定だ。Williamsは、この変更はプレイヤーの財布以外にも大きな影響を与えるとしている。ゲームのプレイ方法に大きな変化が生まれると考えているのだ。
Williamsは「『Total War: ARENA』はストラテジーとマルチプレイヤーの両ジャンルでユニークな存在と言えますし、他のシリーズ作品とはゲームプレイが大きく異なります。もちろん、共通部分もいくつかありますが、プレイスピードとチームワークへのフォーカスはシリーズ初の試みです。プレイヤーは、自分だけが生き残っても大きな目標をクリアできません。他のプレイヤーとの協力が必要です」
今作を過去作とは違うゲームにしている要素の中で特に目立っているように見えるのが、プレイスピードへのフォーカスだ。Williamsは、大半のストラテジーゲームではひとつのステージに1時間から半年かかるが、『Total War: ARENA』は数分でクリアできるようにデザインされているとしている。
「今作は、メタゲームとゲーム内の進捗を活用すれば、時間をかけて自分をアップグレードできるようになっていますが、戦闘自体は最長でも15分で終わります。つまり、伝統的なストラテジーゲームの奥深さをより手軽に楽しめるのです。また、Co-Opの要素も入れました。マルチプレイヤータイトルの多くでは、チームは自分と見知らぬ他人で構成されていて、自分がどうプレイしたいかを強く反映させることはできません」
チーム内のコミュニケーションを円滑にするためのツールを数多く用意しています。なぜなら、軍として協力し合うことが勝利のカギを握っているからです
「ですが、『Total War: ARENA』では、チーム編成後に戦術やプランについてプレイヤー同士で話し合うことができますし、チーム内のコミュニケーションを円滑にするためのツールを数多く用意しています。なぜなら、軍として協力し合うことが勝利のカギを握っているからです。チームメイトと協力して敵を誘い込んで奇襲を仕掛けたり、仲間の象ユニットを守りながらローマ軍を蹴散らしたりするのは、非常に満足度が高くてユニークなゲーミングエクスペリエンスです」
これはもちろん、デベロッパーの意図があって実現したことだ。たとえば、今作の彼らはAIへのフォーカスを弱め、その分ゲームプレイにフォーカスしている。なぜなら、このゲームはシングルプレイヤー用ではないからだ。
Williamsは「今作の我々は、AIのアクションやインタラクトについて考える必要がありません。その時間を使って、ゲームプレイのバランスやアビリティの調整を行っています」と説明している。
しかし、AIを相手に自分の知力を試したいと思っているプレイヤーがこのゲームを無視するのはまだ早い。Creative Assemblyはビギナー向けの学習用ツールとしてAIを用意しており、コミュニティからの要望を確認しながら、シングルプレイヤー用モードを追加する可能性も考えていきたいともしている。オフラインファンは完全に安心できるわけではないが、Williamsは次のように説明を続ける。
「先日、カスタムバトルを追加しました。1v1などがプレイできる機能です。フィードバックを見ながら、このモードにAIを加えるべきかどうかを判断していこうと思っています。追加されれば、オフラインのサンドボックスモードという立ち位置になるでしょう。ですが、オフライン専用モードを用意することは現時点では考えていません」
実装されている機能やモードを問わず、近年はストラテジーゲーム全体が勢いに乗っている。その意味で、『Total War: ARENA』はパーフェクトなタイミングでリリースされたと言えるだろう。最近は『They Are Billions』などは戦闘を好むストラテジーゲームファンから多大な支持を得ている。しかし、Williamsは、ストラテジーゲームの人気は昔も今も変わらないと考えている。
「ここ最近はストラテジーゲームのルネッサンスと呼べる状況ですが、個人的にはストラテジーゲームの人気は昔も今も変わらないと思っています。ここ最近の人気の高まりは、リマスター版が立て続けにリリースされて、ストラテジーゲームから距離を置いていた往年のファンがまた戻ってきて楽しんでいるからでしょう」
ここ数年、ストラテジーゲーム全体には様々な変化が起きているが、Creative Assemblyは、『Total War: ARENA』の開発はジャンル全体の変化に影響を受けていないとしている。Williamsが続ける。
「開発期間を通じて自分たちのゲームデザイン哲学を維持してきました。『Total War: ARENA』に似ているゲームはこの世にふたつと存在しませんし、外部から影響を受けて自分たちの哲学を曲げてしまうことがないように細心の注意を払ってきました」
自分たちらしさを維持したいというCreative Assemblyの強い意志は、家庭用ゲーム機版の開発をしないという彼らの計画にも通じている。『Total War: ARENA』はPC専用タイトルだ。
「今作『Total War: ARENA』を家庭用ゲーム機でリリースする予定はありません。ストレスのないコントロールスキームを見つけ出そうと努力しましたが、家庭用ゲーム機へ移植するためにゲームプレイを犠牲にしたくありませんでした。また、何かを犠牲にしない限り、移植は不可能だと思っています」
また、このタイトルはシリーズファンにとっては馴染み深いものかもしれないが、Williamsは、『Total War: ARENA』はプレイヤーに大きなサプライズを与えるだろうとし、次のようにまとめている。
「『Total War: ARENA』が素晴らしい長寿を誇るゲームになって欲しいと思っています。定期的なコンテンツの追加とバランス調整でゲームを新鮮に保ちつつ、シリーズの別作品もリリースしていきたいですね」
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