Trash Free Trailsを率いるドム・フェリス© Paul Box
MTB
【マウンテンバイク / ランニング / ハイキング】トレイルのゴミ問題を学ぶ
英国でトレイルのゴミ問題に取り組んでいる非営利団体の主催者が、現状や解決方法などについて語ってくれた。
Written by Joe Ellison
公開日:
トレイルのゴミ問題について熟知している人物、それがドム・フェリスだ。
今や世界的にその存在を知られる英国の海洋保全基金《Surfers Against Sewage / SAS》の海岸清掃プログラムを担当していたウェールズ出身のフェリスは、“ブループラネット・エフェクト”(編注:BBCの海洋ドキュメンタリー番組『ブループラネット』がきっかけとなって始まった環境意識・ライフスタイルの世界的な変革)を目の当たりにすることになった。しかし、フェリスは2017年から活動範囲を内陸に変更した。
マウンテンバイクファンのドム・フェリス
マウンテンバイクファンのドム・フェリス
《Surfers Against Sewage》を去ったフェリスは、英国のトレイル保護に取り組み始め、ライダー、ランナー、ハイカーを集めて自然保護活動を展開する非営利団体《Trash Free Trails》を共同で立ち上げた。
小さなことからで構いません。一歩外へ踏み出して、自然を保護する取り組みに参加すれば、良い気分になれるでしょう
ドム・フェリス
若い頃にNational XC Seriesなど英国のクロスカントリーレースに出場した経験を持つマウンテンバイクファンのフェリスは、海岸汚染に取り組んだ経験が現在悪化の一途を辿っている「トレイルのゴミ問題」に注目するきっかけになったとしている。
これまで《Trash Free Trails》での4年間の活動で、数万人が【Trash Mob / トラッシュモブ】と呼ばれる “自然の守人” となり、2,500km分のトレイルを清掃して1万個以上のゴミを拾ってきた。今回はフェリスをキャッチして、トレイルのゴミ問題の現状や我々にできることなどについて語ってもらった。
− 《Trash Free Trails》の活動理念を教えてください。
目的のあるアドベンチャーと健康維持活動を通じて人間と自然を再び結びつけていくことが私たちの目標です。私には健康状態が悪化した経験が何回かありますが、それらは自然との繋がりが失われていたタイミングと重なります。
2017年に《Trash Free Trails》を立ち上げたフェリス
2017年に《Trash Free Trails》を立ち上げたフェリス
20代の私は無秩序な生活を送っており、エナジーとスタミナのすべてを間違った対象に注いでいました。30代になってから、《Surfers Against Sewage》と出会ったのです。
多くの人が不安定を感じており、意味のあることなどできないと思っています。ですが、小さなことからで構いません。一歩外へ踏み出して、自然を保護する取り組みに参加すれば、良い気分になれるでしょう。
− 【トラッシュモブ】と呼ばれる参加者について紹介してもらえますか?
【トラッシュモブ】のコミュニティは多様性に富んでいます。各地域の現状について逐次報告してくれる半永久アンバサダー “Aチーム” には、サウスウェールズ出身の元総合格闘家、アフガニスタンに2度従軍したあと深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされた経験を持つ元英国陸軍大尉、ウェイクフィールドの代替教育機関(Pupil Referral Unit)で働く教師などが含まれています。
英国各地で活動する【トラッシュモブ】
英国各地で活動する【トラッシュモブ】
また、アンバサダーの約半数が女性ですのでジェンダーバランスも良いですね。【トラッシュモブ】のメンバーはネイチャーコネクター(Nature Connector:自然に関する知識や情報を提供し、自然との結びつきを促す)であり、皆さんにきっかけを与えることを最優先しています。環境保護はあくまでその延長上です。
− どのようにトレイルのゴミ問題に取り組んでいるのでしょう?
“結びつき” が失われていることが問題の根源です。現代社会では、環境、自然、コミュニティ、自分自身との結びつきが希薄になっており、結果的に多くの人が自信を失っています。私の目には、何かを非難・糾弾するゴミ問題活動の多くは、そのような結びつきをさらに弱めているように映ります。このような活動は機能していません。
私たちのような団体がレッドブルのような企業と組んで解決法を探っていくことは非常に重要だと感じています
ドム・フェリス
私たちが注力しているのは、非難、怒り、恥、罪の意識ではなくゴミ問題そのものにフォーカスすることです。そのあとで具体的な解決法を探っていくようにしています。また、私たちのような団体がレッドブルのような企業と組んで解決法を探っていくことは非常に重要だと感じています。
− いわゆる “ポイ捨て” が自然環境に与える影響について教えてください。
スイスの自然保護区の地面の90%でマイクロプラスティックゴミが確認できたという研究結果が出ています。また、Keep Britain Tidyの研究では、英国・ノーフォークで捨てられていたペットボトル8本中1本に動物の死体が入っていたという結果も出ています。私たちが手にする情報の多くが恐ろしい内容ですが、明らかになっていない部分もまだ多く残っています。
内陸部におけるプラスティック汚染については未知の部分が多い
内陸部におけるプラスティック汚染については未知の部分が多い
内陸部に流入しているプラスティック汚染は海洋のそれよりも4〜23倍進んでいると言われていますが、プラスティック汚染が内陸部の生態系に与える影響についてはほとんど理解が進んでいないのが現状です。
− 《Trash Free Trails》として特に力を入れて取り組んでいる部分はありますか?
私たちはバンガー大学と協働して「ポイ捨ての影響」をテーマにした5年間の研究プロジェクトを進めています。4年をかけて4つの森林を調査し、使い捨てプラスティックが与える影響を計測しています。
− 《Trash Free Trails》の目標を教えてください。
2025年までに英国内のトレイルのゴミを最大75%削減しようとしています。《Surfers Against Sewage》での海岸清掃プログラムでは、10年の活動でボランティアを1,000人から90,000人まで増やせたので、不可能はないことは分かっています。世間で言われている “ブループラネット・エフェクト” は実在し、数値化も可能なのです。必要なのは気付くことです。
フェリスは海洋に続き内陸部でも “ブループラネット・エフェクト” が起きることを願っている
フェリスは海洋に続き内陸部でも “ブループラネット・エフェクト” が起きることを願っている
− 現在トレイルのゴミは増加傾向にあるのでしょうか?
増えています。まず、2020年の世界的衛生環境の変化で6月までに英国では自転車が130万台も売れました。異常とも言える数字ですよね。また、世界的衛生環境の変化にともない使い捨て製品による汚染率が上昇したというデータも存在します。
− トレイルのインフラ整備が進めばゴミ問題は解消されていくのでしょうか?
それはどうでしょう。標識や警告はもはや意味がないということを示す研究結果が出ています。また、英国では逆にナショナル・トラストが管理するすべての自然公園からゴミ箱が撤去されています。個人的にはこれは良い取り組みだと思っています。
フェリスは英国内をバンで移動しながら全国でゴミ集めイベントを開催している
フェリスは英国内をバンで移動しながら全国でゴミ集めイベントを開催している
なぜなら、自然の中に置かれているゴミ箱は自然を人工に変えてしまうからです。ゴミ箱が置かれていれば、テーマパークにいるような感覚を得てしまうのです。《Trash Free Trails》では「持ち込んだら持ち帰る」をモットーにしています。
自然の中に置かれているゴミ箱は自然を人工に変えてしまいます。テーマパークにいるような感覚を生み出してしまうのです
ドム・フェリス
− ペットボトルや缶の他にも自然に悪影響を与える物はあるのでしょうか?
トレイルでエナジージェルの空き容器を拾ったら、細部までチェックしてみましょう。動物が中身を食べようとして噛みついた跡が見つかる時があります。このようにして動物の体内にプラスティックが溜まっていくのです。
トレイルで見かけるもうひとつの問題は、ヘリウムガスの風船など、木に引っかかる廃棄物です。移動しながら森を覆っていくため、自然にとても大きなダメージを与えます。
ペットボトルや缶の他にも自然に悪影響を与える物がある
ペットボトルや缶の他にも自然に悪影響を与える物がある
− 《Trash Free Trails》のような団体に参加したいと思っている人たちに何かアドバイスはありますか?
《Trash Free Trails》のような団体を完ぺきだと思わないようにしてください。また、完ぺきな人間でなければ活動には参加できないと思うのもやめましょう。私たちは非常にシンプルな存在です。健康な生態系に棲息するプランクトンのようなものです。
“DIO”(Do It Ourselves / 自分たちでやる)精神で自然環境を守り、ポジティブな足跡を残してください。
− 自然環境を守る活動をしたいと思っているライダーやランナー、ハイカーにアドバイスをお願いします。
廃棄されている使い捨てプラスティック製品を1個持ち帰れるだけのスペースをポケットやバックパック、バイクに用意しましょう。そして、自らインフルエンサーとなって自分のトレイル清掃活動について語り、誰でも簡単に始められることを仲間や友人に教えましょう。
《Trash Free Trails》では、そのような活動を投稿できるフォームを用意しています。いきなり大きく取り組む必要はありません。できることから始めましょう。