クライミング
ツリークライミングの魅力
20階建てのビルに相当する巨木を登る方法とは？ ツリークライミング界のエキスパートがエクストリームな木登りの魅力について語った。
ツリークライミングは実在するアクティビティで、デイブ・カッツはこの分野の第一人者だ。
Cornell Tree Climbing Institute（コーネルツリークライミング協会）の設立メンバーでもあるデイブは、世界中のあらゆる巨木に登ってきた経験を持ち、多くの後進たちにその専門的スキルを伝授してきた。
我々は、デイブにツリークライミングの入門方法、そして巨木に立ち向かう際の最大の危険について話を聞いた。
ツリークライミングに熱中するようになったきっかけは？
子供の頃から自宅の裏庭にある木に登っていたんだ。そのあと、ロッククライミングやアイスクライミングを学んでいくうちに、「このテクニックは巨木を登る時にも応用できるんじゃないか」と考えるようになった。
ニューヨークの自宅付近の森からスタートして、より大きくてチャレンジングな木に挑戦するようになったのさ。
巨木に登る際はどんな方法で取り組むのですか？
クロスボウ（弓）と釣り用リールを使うんだ！ まず木の上に向けて矢を放ち、それが枝に引っかかって落ちてくるとクライミングロープを引き上げて結束する。あとはロープを伝って少しずつ登っていくんだ。
バオバブの木を登るのは興味深い体験になる
© Dave Katz
通常のクライミングから応用できるテクニックには主にどんなものがあるのでしょうか？
アッセンダー（ロープに装着してハーネスと連結するための器具）とロープテクニックに関しては、ビッグウォールや氷原でのクライミングと似ているね。
ロープに2個のアッセンダーを装着して、1個は自分のハーネス、もう1個は足に連結する。そして “テキサスキック”（YouTube映像参照）という方法でロープ伝いに登攀するんだ。
幹の太い巨木を登るには、これ以外の方法はない。
なんという幹の太さ！
© Dave Katz
通常のロッククライミングとの最大の違いは？
ロッククライミングには、たとえば、50種類の雪質や40種類の氷質、50種類の岩質などが存在するよね。
一方、ツリークライミングでは、本当に沢山の木の種類があって、どの木もそれぞれ性質が異なるんだ。木はそれぞれ異なる構造を持っているからね。だからこそ、ツリークライミングは実に魅力的でチャレンジングなんだ。
ヤシの木を登るには異なるアプローチが必要
© Chandan Kumar
ツリークライミングで最も難しい部分は？
クライミング能力はそこまで関係ないんだ。クライミングする木を理解する能力が難易度を左右する。高さ、樹齢、枝の構造、途中にあるものなど、実際に木に登る前に知っておくべき要素が沢山あるんだ。
木の上で休むシャーマ
© Keith Ladzinski/Red Bull Content Pool
ツリークライミング最大の危険は？
通常は、枝にロープを引っ掛けただけで登攀するから、何か間違いがあれば、滑落して命を落としてしまう。だから、極めて慎重でいなければならないし、瞬時の反応より予防が重要なんだ。
上から何かが落ちてきたり、コンディションが急速に変化したりと、予測不能な危険が待っている。だから、クイックに登攀を行う必要があるんだ。
でも、大抵は地上に戻ってくることができる。ビッグウォールでのクライミングのように、地上に戻るのが困難になって岩の上で何日もビバークするようなことはない。
木が高くなればそれだけリスクも増す
© Dave Katz
ツリークライミングでの最悪の経験は？
ワスプ（カリバチ）の群れに刺された経験があるし、上から枝が落ちてきて僕に直撃したこともある。誤ってロープを外してしまったこともあるよ！
あれは15時間勤務のあとセコイアの木へ登った時だった。何かの拍子にクリップが外れてしまってね。
「待てよ… 今の僕の身体はどこにも繋がっていないのか… こりゃまずいな」って感じだった。
巨木の中では小さく見えるシャーマ
© Marv Watson/Red Bull Content Pool
最も攻略が難しかった木は？
熱帯地域の木だね。なぜなら、熱帯雨林の木は大きくて、枝がないものも多いんだ。しかも、途中にはトビヘビや奇妙なアリ、ハチ、ワスプ、マムシなどたくさんの危険が潜んでいるんだ。
熱帯雨林の木を登るのはチャレンジング
© James Aldred
木の最上部に到達した時の気分は？
登りきった時は木への敬意で胸が一杯になる。基本的に “木を征服する” という気持ちは持っていない。確認や探索の気持ちの方が強い。登る木によっては、登りきれない時もあるね。
木の最上部に到達して周囲に広がる森を眺める時の気分は、山の山頂に到達して眼下の山並みを見ている時の気分に似ているよ。
木に登る前はどんな部分をチェックしますか？
数日間、写真を撮ったり、リサーチしたり、色々動き回ったりしながら木の上で過ごすことがある。
必要な道具を持って地上100m地点まで登っているなら、地上に戻るよりもそこで一夜を過ごす方が簡単なんだ。ハンモックと食料だけを持って上がり、木の上で一夜を過ごすってわけさ。
ハンモックで一夜を過ごす
© James Aldred
ツリークライミングを始めるにはどうすれば良いでしょう？
僕たちがCornell Tree Climbing Instituteで実施しているような、ツリークライミングのテクニックを指導するプログラムが数多く存在するよ。
僕たちは、研究者・教育者向けのクラス、若年層グループのためのプログラム、さらにはバースデーパーティなども実施している。
木に登ってみたいという気持ちを持っている人なら誰でもサポートするよ！
外国でツリークライミングを体験してみたい人はどうすれば良いでしょう？
どこでも好き勝手に登れるわけではないんだ。事前準備が必要だし、登攀許可を得なければならないケースもある。大抵の場合、僕たちは全てを問題なくクリアしているよ。
僕たちは毎年コスタリカでコースを開催しているんだけど、これはホリデーツアーに近いね。あと、年に数回、遠くの国へツリークライミングに出かける遠征ツアーもコーディネートしている。
いつかツリークライミングしてみたい国は？
マダガスカルやボルネオ、インドなどでは素晴らしいツリークライミングが楽しめるだろうね。これらの国には素晴らしい木がある。マダガスカルとボルネオ、インドを一気に回ったら最高の旅になるだろうな！
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