ニューヨーク? ディズニーワールド? クライマーならどちらもやめた方が良い。というのも、ユタ州の砂漠の中にある岩山、アスペンの高地、メイン州の海に面した断崖絶壁など、米国は正真正銘のクライミングパラダイスだからだ。しかも、そのほとんどがまだ観光地化していない。
米国の多様な気候は、年間を通して必ずどこかでクライミングが楽しめることを意味している。また、アリゾナのような場所では、40kmも車を走らせれば、メキシコのような砂漠とカナダのような森林の両方を味わえる。
何よりも嬉しいのは、クライミングジムで培ったスキルをアウトドアアドベンチャーに応用して楽しめるという点だ。
もちろん、トラディショナルなルートの中には必ずガイドを同伴しなければならないものや、ギアの装着やアンカースキルを事前に学ばなければならないものもあるが、とにもかくにも、米国には以下に紹介するような素晴らしいクライミングスポットが豊富に存在する。
1. インディペンデンス・パス(コロラド州)
スキースロープが世界的に有名なアスペンは、全米屈指の花崗岩ロッククライミングへの入り口としても知られている。
インディペンデンス・パス沿いの岩山が黄金色の日差しを浴びる中、蛇行する山岳路のはるか上をトラバースするトラッドなマルチピッチルート「グロット・ウォール」のコーナーや岩石層をクライマーたちが力強く登っていく。本格的なアドベンチャーだが、ロープクライミングの基礎さえあれば、Aspen Alpine Guidesのガイドが案内してくれる。
スポーツクライミング的なルートが好みなら、ターミガン・クリークのような岩壁で起伏やクラックに満ちた登り甲斐のあるシングルピッチルートが楽しめる。山肌に生い茂る松の木に囲まれたハイクオリティな花崗岩だけでもここへ向かう理由になる。
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チョークを洗い落としたら、アートギャラリーやアドベンチャーストアを備えたアスペンの高級リゾートタウンへ向かおう。
カウンターカルチャーのアイコン、ハンター・S・トンプソン(『ラスベガスをやっつけろ』などの著作を手がけた米国ニュージャーナリズムの旗手)が愛した名店J-Bar (Hotel Jerome内)でビールを飲んだあとは、少し歩いて中心部へ向かい、Limelight Hotelで疲れを癒そう。
2. レッドロック・キャニオン(ネバダ州)
ラスベガス周辺に広がる砂漠に隠されているのはギャングの死体だけではないと聞けば、驚く人もいるだろう。
カジノの儲けでレンタカーを借りて、“悪の街” から郊外へ40分車を走らせれば、レッドロック・キャニオン国立保護区が姿を現す。
この赤き砂岩群は数千のロッククライミングルートを有しており、その中には「ザ・ギャラリー」のようなスポーツクライミング向きのショートルートから、峡谷から突き出た20ピッチのロングルートまで揃っている。
1月にTシャツ1枚でボルダーを登りたいなら、「キャリコ・バシン」や、超ハイクオリティな黒い砂岩を誇る「ブラックベルベット・キャニオン」がオススメだ。
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ラスベガスとくればラスベガス・ストリップしかない。予算が余っているなら、一分の隙もないサービスとワールドクラスのカジノを誇るAriaが良いだろう。
予算がほどほどなら、市内にいくつかあるSky Suitesも悪くない。こちらは自動開閉のヒーター付き便座が自慢だ。
Ariaは中心部にあるためハイウェイにも近いが、砂漠に昇る朝日を眺めながら目覚めたいのなら、Red Rock Canyon Campgroundでキャンプしよう。キャンプ場予約はRecreation.govで受け付けている。
3. デビルズ・タワー(ワイオミング州)
低い地平線にそびえ立つデビルズ・タワーが視界に飛び込んでくるやいなや、クライマーの指が疼き始める。火山岩の縦筋に覆われた神秘的な天然要塞とも言えるデビルズ・タワーの奇妙に並ぶ六角形の柱状節理は、クラックを好むクライマーのパラダイスだ。
また、デビルズ・タワーは周辺の14部族から聖なる場所として扱われており、岩肌が熊が爪を立てたような形状をしていることから、ラコタ族からは「グリズリーベアの小屋(Grizzly Bear’s Lodge)」と呼ばれている。
標高1,558mの岩肌には縦方向のクラックが無数に入っており、人間がすっぽり入ってしまうサイズがあれば、指をかけたりハンドジャミング(岩の隙間に手や足をねじ込んで固定するテクニック)したりするのに最適なサイズもある。最長クラスは約122mもある。
言うまでもないが、長く続くルートの大半にはボルトが設置されていないため、ここでの登攀にはカミングデバイス(クライミングチョック)かガイドが必要だ。アブセイリング(懸垂下降)用のロープ2本も必要になる。
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Devil’s Tower Lodgeの朝の眺めは最高だ。この “ランチハウス” 風の宿はクライマーの常宿だが、スティーブン・スピルバーグ監督のファンにもお馴染みだ(デビルズ・タワーは『未知との遭遇』で宇宙船が降下する場所)。
ここから森を直進するだけでスポットに到着できるので、クライミングの時間を最大限確保できるが、毎年6月は先住民の文化行事が行われるので避けよう。
4. ヨセミテ渓谷(カリフォルニア州)
全米で最も有名な国立公園の中にあるヨセミテ渓谷の谷床から約1,000mの高さでそびえ立つ、目も眩むような花崗岩のモノリス「エル・キャピタン」を知らないクライマーは完全なもぐりだ。
ヨセミテ渓谷は、「スワン・スラブ」をはじめとするシングル&マルチピッチルート、ローアングルなショートピッチルート、そして「クッキー・クリフ」のような1&2ピッチルートなど、多彩なルートで満たされている。また、谷床にはエル・キャピタンのクライミングを少し味わえるルートもある。
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ダートバッグ系クライマーなら気取らないホテルを好むはずだが、ハーフドームの麓に近接して建つThe Majestic Yosemite Hotelはラグジュアリーを求めるクライマーにオススメできるオプションだ。
ハーフドームの西側、エル・キャピタンの東側の谷底深くにあるCamp 4でテントを設営すれば1泊わずか6ドル(約670円)でヨセミテの大自然を満喫できる。このキャンプサイトは先着順だが、ヨセミテの名クライミングスポット群を巡るための絶好の拠点となっている。
5. モアブ(ユタ州)
ユタ州の小さな街モアブ周辺の砂漠を見渡して、火星にいるような感覚を得るのは仕方がない。
この街の周辺には、巨大なボウル、ハチの巣状の崖、ひだ状の峡谷、砂漠にぽつりと立つ尖塔など、長年の風化によって形作られた赤い砂岩群が広がっている。
独立した岩柱としては全米で最も高い約274mを誇る「ザ・タイタン」、ロードサイドにあるシングルピッチのスポーツクライミング用スポット、クライミングに適した硬い岩質(ウインゲート・サンドストーン)が特徴の世界的に有名な大クラックを有する「インディアン・クリーク」など、クライミングの選択肢が豊富に用意されている。
クライミングガイドの多くはモアブを拠点にしているため、パートナー探しに苦労することはない。ポーキュパイン・リム・トレイルでMTBを体験してみるのも楽しい。
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混雑を避けて、Whisperin Oaks Ranchでマウンテンロッジ体験を楽しもう。ラ・サル・マウンテン周回道に近いこのロッジは、赤い砂岩群のパノラマが楽しめる。
ハイウェイ191号線沿いで、モアブ中心部へも徒歩数分の距離にあるArchway Innも便利だ。
6. アカディア(メイン州)
アカディア国立公園のピンク色の花崗岩の岩壁では、素晴らしいムードの中でのクリフクライミングが楽しめる。トラッドなクライミングギアを持ち運びながら「オッター・クリフ」や「グレートヘッド」を登攀していると、その足下では波が岩に当たって砕けている。
嬉しいことに、メイン州の大西洋岸に面した島々でのクライミンググレードはビギナーからプロまでと幅広く、一部のローアングルスラブは実にクライミングしやすい。いずれにせよ、夕暮れ時にピンク色に染め上げられる花崗岩を目にすれば、はるばる来た価値があったと思えるはずだ。
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海のすぐそばにあるBar Harbour Innなら海のコンディションに慣れることができる。ここは湾の奥まで運んでくれるはしけ船を所有しているので、ボートを係留してクライミングスポットにアクセスできる。メイン州名物のロブスターに舌鼓を打つのも一興だ。
7. レモン山(アリゾナ州)
アリゾナ州のカタリナ・ハイウェイはサンタカタリナ山脈を縦貫しており、標高差1,615mを登りながら、北米に7つある生物分布帯の5つを通過する。たった27マイル(約43km)でサボテンとガラガラヘビの “荒れ地” から山岳の森林地帯へ抜けることになるこのエリアでは、1年を通じてクライミングを楽しめる。
レモン山にはチェックする価値のあるボルト設置済みルートが数多く存在する。高さ約762mの山腹にある、ひだ状の岩を持つピンヘッド・ウォールのような崖には、急峻な壁と素晴らしい岩質を誇る高さ約24m・難度5.10+ / 6a+のクラシックルート「ゴー・スピードレーサー」などのルートがある。
ただし、毒を持つトカゲやヘビ、サソリなどが生息するアリゾナのアドベンチャースポットだけに、サンダルは家に置いてきた方が良さそうだ。
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レモン山周辺はキャンプ場ならあるが、ホテルはない。ただし、山頂から車で1時間15分ほどの距離にツーソンがあるので、砂漠の砂にまみれた身体をジャグジーで洗い流したいならLowes Ventana Canyon Resortが最も近いホテルになる。
協力:Aspenalpine.com(コロラド)