WSL は巨大だ。毎年世界中から約1,000のサーファーたちが ショートボード 、 ロングボード 、 ビッグウェーブツアー に分けられている各種イベントに出場している。
サーファーたちは 世界7地域 に設立されている ジュニア および QS(Qualifying Series = 予選シリーズ) からスタートしたあと、 CS(Challenger Series = チャレンジャーシリーズ) への昇格を経て、ワールドチャンピオンが決まる最高峰 CT(Championship Tour = チャンピオンシップツアー) を目指す。
今回はこの巨大なグローバルリーグの詳細を解説していこう。
WSLのショートボードは、 QS・CS・CTの3階層 で構成されている。WSLの年会費を払ったサーファーなら誰でもQSのイベントに参加できる。QSでは、出場者数50以下の比較的小規模なイベントから出場者数100超の大規模なイベントまでが開催されている。
また、 波のクオリティと賞金総額に応じてQS1000からQS5000までランク分け されており、より大きなイベントほどより多くのポイントが獲得できるようになっている。
各地域のQSシーズンで必要十分なポイントを獲得したサーファーは、翌シーズンに CS へ昇格する。CSは次に控える CTへの登竜門 、 あるいは2部リーグ的な位置づけ だ。
CTサーファーのレオナルド・フィオアラヴァンティ
© Ryan Miller
現在、 各CSイベントは男子80名・女子48名 で開催されている。このうち、男子49名と女子30名は7地域(オーストラリア・オセアニア | アジア | アフリカ | ヨーロッパ | ハワイ・タヒチ | 北米 | 南米)のQSから昇格したサーファーたちだ。
残りは、前シーズンのワールドジュニアチャンピオン2名、CTのシーズン前半で上位に残れず降格したサーファー、あるいはCSで上位に残ったサーファーたちで構成されている。
2019年のワールドチャンピオン、イタロ・フェレイラ
© WSL/Ed Sloane
男子CSでトップ10に入るか、女子CSでトップ5に入れば、 翌シーズンのCT出場権 が得られる。 CTは男子32名・女子16名 で構成されており、各イベントには 男子4名・女子3名のワイルドカード (シーズンワイルドカード / イベントワイルドカード)が追加出場する(2025シーズン)。
シーズンフィナーレとしてCSの男女トップ5が1日開催の WSLファイナルズ へ出場し、このイベントの優勝者がそのシーズンのワールドチャンピオンになる。
答えは「 イエス 」だ。 WSLには誰でも参加できる 。年会費を払えば世界中で開催されているQSイベントへの出場権が得られるが、CS昇格に必要なポイントは、登録地域(居住地域)で開催されるQSイベントでしか獲得できない。
世界7地域 の様々なロケーション(カナダ、インド、ペルー、韓国などでも開催されている)で開催されている QS には合計数千名が参加している。
毎シーズン 男子80名・女子48名 が、最高峰 CT を目指してQSから CS へ昇格している。
CTは男子32名・女子16名で構成 されており、全9戦のすべてでワイルドカードサーファーが追加招集される。
ケリー・スレーター が文句なしの 史上最強サーファー だ。ワールドチャンピオンに11回輝いている彼は、他にも無数のタイトルを獲得しており、その知名度と影響力はサーフシーンに留まらない。
革新的なサーフボードデザイン、ウェーブプールの建造、環境保護活動、1990年代のセレブリティ的ステータスなどで知られるスレーターは、 マイケル・ジョーダン (バスケットボール)、 タイガー・ウッズ (ゴルフ)、 トム・ブレイディ (アメリカンフットボール)のようなスポーツアイコンたちと同列で語られることも少なくないグローバルアスリートだ。
アンディ・アイアンズ は、そのスレーターを初めて脅かしたサーファーとして世界中にその名を知られている。 2002シーズンから2004シーズンまでワールドチャンピオン3連覇を達成 したアイアンズは、残念ながら若くしてこの世を去ってしまったが、ハワイ州知事がその功績を讃えて、2月13日をアンディ・アイアンズ・デイに制定した。
尚、史上初の女子ワールドタイトル5回を達成した カリッサ・ムーア も、同記録を達成した1月4日がカリッサ・ムーア・デイに制定されている。 2014シーズンにブラジル人初のワールドチャンピオンに輝いたあと、さらに同タイトルを2回獲得した ガブリエウ・メジーナ は、ブラジルの国民的英雄として崇められている。全国紙や雑誌の表紙を飾ることも多く、Instagramで140万人以上のフォロワーを誇る彼は、同国の有名サッカー選手たち( ネイマール は除外)と並ぶ人気を誇る。 トロフィー群とミック・ファニング
© Corey Wilson/Red Bull
ミック・ファニング は最も有名なオーストラリア人サーファーだ。家族の不幸を乗り越えて ワールドタイトルを3回 獲得した彼は、2015年にジェフリーズ・ベイでのイベント中にサメに襲われたことでも有名だ。 女子ワールドタイトル8回 を誇る ステファニー・ギルモア と 同タイトル7回 を誇る レイン・ビーチリー も同じく母国オーストラリアで高い人気を誇る。 また、日本出身の 五十嵐カノア とポルトガル出身の フレデリコ・モライス もそれぞれの母国で抜群の知名度を誇る。CTで活躍するモロッコ出身の ラムジ・ブキアム とインドネシア出身の リオ・ワイダ は、東京オリンピックで旗手を務めた。 QS と CS の各ヒートは サーファー4名 で構成され、 上位2名 が次のラウンドへ進出する。 ファイナル(決勝) で 1v1 になるまでこのフォーマットが維持される。
CT では最初のラウンドでは サーファー3名 ずつのヒートが行われ、 上位2名 が次のラウンドへ進出する。次のラウンドからは 1v1 のヒートがファイナルまで続く。各ヒートは 20〜30分 だが、コンディション次第で時間が追加される。
USオープンには大観衆が集まる
© Jimmy Wilson
波1本につき 10ポイント満点 で採点され、 ポイント上位2本の合計ポイントが当該ヒートの最終ポイント になる。同じヒートを戦うサーファーたちはプライオリティジャッジによって決められた順番で波に乗る。サーファーが乗れる波の本数に制限はない。
ヒート開始時はプライオリティ(優先権)が設定されていないため、一斉に波を待つことになる。最初に波に乗る選手が出た時点で、プライオリティが順番に決まっていく。自分より高いプラオリティのサーファー(先に波に乗れるサーファー)の邪魔をしてしまった場合は、ジャッジからインターフェアレンスルールがコールされ、スコアが半分またはゼロまで減点される可能性がある。
フィジーのジャッジタワー
© Ryan Miller
最初にプライオリティが与えられたサーファーは良い波を待てるが、彼(彼女)より低いプライオリティのサーファーたちは小さな波が良い波に変わることに期待しながら動き回ることになる。
波を読む力 に優れており、良い波をキャッチできるサーファーにとってプライオリティは非常に大きなアドバンテージになるが、 波を待ちすぎると、波に乗れずに終わってしまう可能性 がある。
通常、各イベントは 3〜5日間の日程 で開催できるが、波と天候が予測不可能なことから、 最長12日間 の開催日程が許可されている。
CTの1v1ヒートでは、2ヒートが半分重なって同時に行われるときがある(先行ヒートの後半と次のヒートの前半が重なる)。このようなケースでは、ヒートは最長46分間で行われる。ラインアップしたサーファー2名は、自分たちより先に海に入っていた2名に優先権を譲る。一方、ヒート後半では、自分たちよりあとに海に入ってきた次のヒートの2名に対して優先権を得る。
読んだだけでは複雑なフォーマットに思えるかもしれないが、これは より短時間により多くのヒートを消化する方法 として有効だ。ちなみに、このフォーマットはケリー・スレーターが考案した。
サーファーは、 WSLの採点対象となっている要素 をパフォーマンスして、得点確率を最大限まで引き上げる必要がある。
取り組み方・難易度
革新的 / 先進的マニューバ
メジャーマニューバのコンビネーション
マニューバーのバラエティ
スピード・パワー・フロウ
一部の要素の重要性は、 開催地 と 当日のコンディション 、そして コンディションの変化に よって変動する可能性があることに留意しなければならない。
ジャッジパネル は 5名 で構成され、各ジャッジが波1本に対して 10ポイント満点 で採点する。波が採点対象となった場合、最高ポイントと最低ポイントが削除され、残りのジャッジ3名分の平均ポイントがその波のポイントとして記録される。
どのラウンドでも、ポイント順で 上位2本の波の合計が当該ヒートの最終ポイント になる。波1本における最高ポイントは10ポイントのため、各ラウンド(ヒート)20ポイントが最大となる。
CTでは、これまでに 8回 の “パーフェクト20” が記録されている。ケリー・スレーターが単独首位の3回を記録しており、オーウェン・ライトが2位となる2回を記録している。また、2017年の南アフリカ(ジェフリーズ・ベイ)では、同国出身の ジョーディ・スミス が地元ファンの前で1回記録した。 しかし、特筆すべきは米国出身の シェーン・ベシェン だろう。彼は 波3本がヒートの最終ポイントだった1996年に “パーフェクト30” を達成 している。
サーファーのレベルが毎年上がっていることを受けて、近年のWSLは賛否両論のルールやフォーマットを次々と導入してきた。そのひとつが、 CTの出場サーファー数をシーズン中に減らすルール 、ミッドイヤーカットだ。
また、1日でワールドチャンピオンが決まる “一発勝負” のWSLファイナルズも近年追加されたフォーマットだ。
15分
モリー・ピクラム:What it Takes モリー・ピクラムのWSL CTデビューイヤー密着ドキュメンタリー(英語音声)
サーファーたちは ジャッジに対する視認性 を高めるために鮮やかな色のジャージを着用している。これは、ビーチの沖に出て、日光や霧で見えなくなるときもあるというサーフイベントの特性への対抗策だ。
近年のWSLでは、 CTの暫定首位に立っているサーファー が イエロージャージ を着用するルールが採用されている。首位のサーファー以外が戦うヒートでは、ランキング上位のサーファーがレッドジャージを着用している。
イエロージャージを着用したグリフィン・コラピント
© Aaron Hughes/World Surf League
CT 2025シーズンは 全11戦 が予定されており、そのあとで男女トップ5がシーズンフィナーレの WSLファイナルズ に進出する。
WSLファイナルズは、2021シーズンの導入以来、カリフォルニア州ロウワートレッスルズで開催されてきたが、2025シーズンは フィジー の クラウドブレイク で初開催される。この1日開催のイベントを制した男女サーファー1名ずつがワールドチャンピオンに輝く。
モリー・ピクラムとジャック・ロビンソン
© Tony Heff/World Surf League
1976年10月 、ハワイ出身の ランディ・ラリック と フレッド・ヘミングス が、世界各地で開催されているサーフイベントを管轄するために インターナショナル・プロフェッショナル・サーファーズ(IPS) を設立した。
そして、同年前半に開催済みの9イベントと開催予定の複数のイベントがシーズンとしてまとめられたあと、 1977年1月 に当時23歳だったオーストラリア出身の ピーター・タウンエンド が初のIPSワールドチャンピオンに輝いた。
翌シーズンには、ハワイ出身の マーゴ・オバーグ が女子初のワールドチャンピオンに輝き、男子が南アフリカ出身の ショーン・トムソン がワールドチャンピオンとなった。IPSでは1982年までタイトルが用意され、オーストラリア出身の マーク・リチャーズ が1979年から男子4連覇を達成し、女子はオバーグが最多となる合計3回のタイトル獲得を成し遂げた。
マーク・リチャーズ(1976年)
© John Witzig
1983年 、オーストラリア出身の イアン・ケアンズ が アソシエーション・オブ・サーフィン・プロフェッショナルズ(ASP) を設立すると、スポンサー活動を簡便化するために本部をカリフォルニア州に構えた。
その後、1980年代から1990年代にかけてイベント数と賞金総額の増加に伴う形でASPは大きく成長したが、他のスポーツと同じくアップダウンが激しく、リーグの構造やイベントフォーマットが目まぐるしく変わり続けた。
1986年に ASP初のロングボード部門ワールドチャンピオン が誕生し、1998年には初の ジュニアタイトル も設定された。
1992年になると、 ショートボードサーファーの増加 を受けてシーズンが階層化され、World Qualifying Series(WSL)から昇格しなければ、ワールドチャンピオンのタイトルが争われる最上位のWorld Championship Tour(WCT)に参戦できないようになった。
1999年、ASPはサーフブランドトップ3の Rip Curl 、 Quiksilver 、 Billabong に接近するために本部をオーストラリア・ゴールドコーストのクーランガッタへ移した。
そして、WCTのCEOに1978年のワールドチャンピオンだった ウェイン・バーソロミュー に据えると、“量より質” のアプローチを採用して Dream Tour を新たに創設。これによって世界のサーフシーンは黄金時代を迎えることになる。サーフブランドの流行も相まって、このイベントシリーズは急速に世界中のサーファーの憧れになった。
ケリー・スレーターとアンディ・アイアンズ
© Pat Stacy
同時に、1990年代はケリー・スレーターの時代でもあった。1992年に初のワールドタイトルを獲得したスレーターは、1993年から1998年まで 5連覇 を達成。マイケル・ジョーダンとバスケットボール、あるいはトニー・ホークとスケートボードのように、スレーターもサーフィンと同意語として扱われるようになった。
2000年代前半にはASPがサーフィン初の インターネット配信 を開始した。そして、世界中のあらゆるサーフファンが簡単にアクセスできるようになったことと、 ケリー・スレーターとハワイ出身のアイディ・アイアンズの激しいライバル関係 によって、ASPはさらなる成長を遂げた。
その後、2012年にスレーターのマネージメント会社を含む米国のコンソーシアムがASPを買収し、2015年にリブランディングされた。
ASPのリブランディングされた2015年からサーフシーンを統括しているのが、 ワールド・サーフ・リーグ(WSL) だ。本部はオーストラリアから米国カリフォルニア州サンタモニカへ再び移され、CTの自社放送をはじめとする様々な変化が起きていった。
しかし、その中の最大の変化は、 カリッサ・ムーア、ステファニー・ギルモア、タイラー・ライトによる三つ巴のタイトル争い 、 女子と男子の賞金額の均一化 、そしてケイトリン・シマーズとモリー・ピクラムの台頭をはじめとする、 女子サーフシーンの大きな発展 だろう。
ケイトリン・シマーズ
© Brent Bielmann/World Surf League
男子に目を向けると、 “ブラジリアン・ストーム” が勢いを増していった。過去10年で イタロ・フェレイラ 、 アドリアーノ・デ・スーザ 、 ガブリエウ・メジーナ 、 フェリペ・トレド のブラジル勢を上回ってタイトルを獲得したのは、ハワイ出身の ジョン・ジョン・フローレンス だけだ。 “ブラジリアン・ストーム”
© Renato Tinoco
次の数年は歴史に残るエキサイティングなシーズンが続くだろう。新世代サーファーたちが台頭し、女子サーファーたちがこれまで以上のハードプッシュを見せるようになっている今、WSLを見逃す手はない。
WSLのウェブサイトでは、すべてのQS・CS・CTがライブ配信されている。 視聴はこちら>>