Tom Pidcock has honed his riding skills in offroad racing.
© Matt Ford/Twila Federica Muzzi/Red Bull Content Pool
サイクリング

トム・ピドコック:ツール・ド・フランス2022で活躍できた12の要因

現在22歳の英国人ライダーがツール初出場で初ステージ優勝を飾った裏には、クロスカントリー・マウンテンバイクとシクロクロスで得た様々なスキルがあった。
Written by Charlie Allenby (illustrations by Matt Ford)
読み終わるまで:8分公開日:
プロライダーの多くは、ツール・ド・フランス出場をキャリアハイライトのひとつとして考えている。しかし、トム・ピドコックはそのようなライダーには含まれない。
英国・ヨークシャー出身の22歳は、3週間に及ぶアイコニックなグラン・ツールの2022年版にイネオス・グレナディアスのメンバーとして出場した。しかし、ピドコックはただ出場して経験を積めれば良いと考えていたわけではなく、ツール・ド・フランス2018総合優勝のゲラント・トーマスとツール・ド・フランス2016ヤングライダー賞のアダム・イェーツが率いるアタッカー陣のサポート役として活躍した。
クロスカントリー ワールドカップ 2022シーズンに参戦中のピドコック
クロスカントリー ワールドカップ 2022シーズンに参戦中のピドコック
最終的にピドコックは総合優勝には届かなかったが、それでもロードレースシーン最大のイベントで実力を証明した。ピドコックはステージ12で他のライダー(ツール・ド・フランス総合優勝4回のクリス・フルームを含む)を完全に振り切り、猛スピードで山を駆け下り、21のつづら折りを抜けてラルプ・デュエズの頂点に誰よりも早く到達。ステージ優勝を記録してメディアを沸かせた。
プロフェッショナルなペロトンの中では比較的新人だが、クロスカントリーとシクロクロスにおけるピドコックの活躍を知っているファンにとっては、今回のパフォーマンスは特別驚くものではないだろう。
今回はピドコックがツール・ド・フランス2022で活躍できた要因を明らかにしていこう。
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要因1:マウンテンバイクで得たダウンヒルスキル

ステージ12(ブリアンソン〜ラルプ・デュエズ)は厳しい登坂が特徴だが、ピドコックがここで記録したステージ優勝はヒルクライムスキルと同じくらい優れているダウンヒルスキルによってもたらされた。
ステージ12での圧倒的な下りがメディアから注目された
ステージ12での圧倒的な下りがメディアから注目された
ピドコックはツール・ド・フランス2022のステージ12を制した
ピドコックはツール・ド・フランス2022のステージ12を制した
UCIクロスカントリー マウンテンバイク ワールドカップのコースで鍛えられたハンドリングスキルが、スピードとエナジーを維持しながらブレーキを使わずにコーナーをクリアする自信を彼に授けていた。
オフロードで過ごした時間は、ピドコックにシックスセンスのようなものを与えており、コーナーの先を読んで自分をパーフェクトなラインに乗せることで、時速100kmを超えるスピードで他のライダーたちを次々と抜いていった。
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要因2:クロスカントリーで得たヒルクライムスキル

ステージ12のピドコックが逃げ集団に加われた理由はダウンヒルスキルだったが、彼がラルプ・デュエズの登坂で他の4名のライダーとトップ争いを演じられた理由は、クロスカントリーで得たヒルクライムスキルだった。
ステージ12の登坂でも素晴らしい走りを見せた
ステージ12の登坂でも素晴らしい走りを見せた
超級ラルプ・デュエズを攻め切ったピドコック
超級ラルプ・デュエズを攻め切ったピドコック
残りの体力を絞り出して他のライダーたちとギャップを築いたあと、速いリズムのライディングをキープして彼らを寄せ付けないピドコックの戦い方は、クロスカントリー / シクロクロスの典型的なレーシングスキルで、彼は高強度のエフォートとリカバリーを同時進行させることで両競技で優勝を重ねてきた。
また、全長13.8kmのラルプ・デュエズの平均勾配は8.1%(最も厳しい勾配は13%)だったが、クロスカントリーコースの登坂セクションの勾配は20%を超えるときもあり、しかもレースを通じて複数回走らなければならないため、ピドコックにとってはさほど難しくなかった。
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要因3:シクロクロスで得た強靭なメンタル

ツール・ド・フランス2022のオープニングステージでピドコックは素晴らしいパフォーマンスを見せ、個人タイムトライアルで15位に入った。
ピドコックは2017年にタイムトライアルジュニアチャンピオンを獲得しているため、この結果はビッグサプライズではなかったが、凹凸の激しいオフロードライディングでの経験が、空気抵抗を限りなく減らしてスムーズに走ることが重要なタイムトライアルに役立った。
オープニングステージのタイムトライアルでも健闘
オープニングステージのタイムトライアルでも健闘
クロスカントリーとシクロクロスで高強度エフォートに慣れている
クロスカントリーとシクロクロスで高強度エフォートに慣れている
これらすべては強靭なメンタルの賜物と言える。タイムトライアルでは限界(もしくはその先)でのライディングが求められるが、ピドコックのメンタルはシクロクロスとクロスカントリーの高強度のエフォートの積み重ねによってかなり鍛えられている。つまり、勝負に出るべきときに躊躇しないのだ。
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要因4:パヴェもクリアできるマウンテンバイクスキル

フランスとベルギーの北部で見られるパヴェ(石畳)はスプリングクラシックスの難所のひとつとして知られている。ツール・ド・フランス2022のステージ5にも全11セクターのパヴェが含まれていたが、ピドコックがこれらに苦労することはなかった。なぜなら、UCIクロスカントリー マウンテンバイク ワールドカップの木の根や轍に慣れているからだ。
テクニカルなパヴェも問題なくクリアしたピドコック
テクニカルなパヴェも問題なくクリアしたピドコック
クロスカントリーコースの木の根や轍に慣れている
クロスカントリーコースの木の根や轍に慣れている
メインプロトンの中で走り続けてこのステージを36位でフィニッシュした彼は、バイクスキルを駆使してあらゆる穴を回避し、ツール・ド・フランスで最もテクニカルな地形のひとつを難なくクリアした。
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要因5:クロスカントリーで得たスプリント能力

トップ集団に食らいついてフィニッシュするだけで素晴らしいが、4時間半以上もレースを続けてきたあとスプリント勝負を仕掛けるパワーを絞り出すためには、もはや超能力に近い何かが必要になる。
シクロクロスでの経験がスプリント勝負に活かされている
シクロクロスでの経験がスプリント勝負に活かされている
マイヨ・ジョーヌ候補たちと互角の勝負を繰り広げた
マイヨ・ジョーヌ候補たちと互角の勝負を繰り広げた
マイヨ・ヴェールを獲得したワウト・ファンアールト(元シクロクロス世界王者)と同じように、ピドコックもステージ6でシクロクロスがその助けになっていることを証明した。マイヨ・ジョーヌ候補のタデイ・ポガチャルヨナス・ヴィンゲゴーと互角のスプリント勝負を展開したピドコックはこのステージを4位でフィニッシュした。
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要因6:クロスカントリーで得た高ケイデンス

ツール・ド・フランスでは、ペダルを高ケイデンスで回転させられる能力が逃げられるか否かを分けることになる。幸運なことに、ピドコックは最も高いギアでペダルを高回転させて平地での高速ライディングを実現しなければならないMTBクロスカントリーで十分な経験を積んでいた。
ペダルの回転数はクロスカントリーでも重要
ペダルの回転数はクロスカントリーでも重要
ローギア勝負の経験が豊富
ローギア勝負の経験が豊富
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要因7:あらゆるコンディションを経験済み

ツール・ド・フランス2022では気温が40度を超え、路面温度も60度を超えるときもあった。しかし、雪(シクロクロスは冬がシーズン)から高温多湿(東京2020のクロスカントリー)までのあらゆるコンディションを経験してきたピドコックは、どんな天候でも競争力を失うことがない。
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要因8:年齢を上回る経験と実績

ピドコックはツール・ド・フランス2022出場ライダーの中で3番目に若かったが、シクロクロスとクロスカントリーでも常に若手の枠組みに入れられてきた。2022シーズンのUCIシクロクロス世界選手権(2位に30秒差をつけて優勝)に出場したときも、彼は最年少ライダーだった。
しかし、ピドコックは年齢(そして比較的少ない経験値)が数字でしかないことを証明し続けており、2022シーズンのUCIクロスカントリー マウンテンバイク ワールドカップの前半戦では連勝も記録している。
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要因9:クロスカントリーで得たハンドリングスキル

100人以上のライダーが時速48kmを超えるスピードで一斉に一般道を走ろうとすれば、残念ながらクラッシュは頻繁に見られるシーンになる。しかし、ピドコックはシクロクロスで得た優れたハンドリングスキル空間認識能力でクラッシュを回避し、怪我のリスクを最小限に抑えた。
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要因10:シクロクロスで学んだ観客の扱い方

ラルプ・デュエズの光景は、ピドコックがまるで土曜日の晩に地元リーズの繁華街へ乗り込んだような印象を与えたかもしれない。しかし、酔っ払って盛り上がっているファンたちの間を縫うように走るのは、ピドコックにとって目新しいことではなかった。
シクロクロスのレースは熱狂的な観客たちが身を乗り出すように応援することで知られているため、コースを走っている自分の目の前で誰かが助けを叫ぶ様子はピドコックにとって特に珍しくなかった。
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要因11:シクロクロスで得た基礎体力

24日間で21ステージを走るツール・ド・フランスの強烈さには遠く及ばないが、ピドコックは連続でレースすることにある程度慣れている。
シクロクロスのシーズンは週末1回で2レースが開催されることがあり、さらにピドコックはクロスカントリーワールドカップデビューとなった2020シーズンに、たった8日間でU23カテゴリー2レースとeMTB世界選手権に出場するというハードスケジュールも経験している。
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要因12:上を目指し続ける姿勢

キャリア初のツール・ド・フランスでのステージ優勝を記録したあとも、ピドコックはレポーターたちに「もっと大きな目標があります」と語っていた。この常に上を目指す姿勢はシクロクロスとクロスカントリーで得たものだ。
常に上を目指しているピドコック
常に上を目指しているピドコック
ツール・ド・フランス初ステージ優勝を記録した
ツール・ド・フランス初ステージ優勝を記録した
彼の両競技における優勝と素晴らしいパフォーマンスは、複数の競技でレインボージャージメダルワールドチャンピオンを獲得するという長期的な目標に向けた足掛かりにすぎない。
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