フィットネス
トップアスリートたちから学ぶ "フィットネスの定義とトレーニング方法"
フィットネスとは何だろうか? 有酸素トレーニングからストレングストレーニングまでの多様なルーティンでその調整に取り組んでいるトップアスリートたちに話を聞いた。
フィットネスとは実に多様で、競技や目標ごとに定義と内容が異なってくる。プロアスリートたちを見れば、それぞれの競技の要求ごとにフィットネスがどのように異なってくるのかが分かるはずだ。
このような差異が存在する一方、すべてのアスリートは「フィットネスを最大限まで高めたい」という意欲を共有している。しかし、その定義はそれぞれのパフォーマンス要件に影響される。
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25分
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01
アルマンド・デュプランティス
フィットネス=スピード・テクニック・精度のバランス
棒高跳びがあらゆるスポーツの中で技巧的に最も複雑なのは確かだが、アルマンド・“モンド”・デュプランティスは誰もが認めるこの競技の達人だ。彼のトレーニングは、フィットネスとは単一の領域で卓越することではなく、多様な領域を極めることを示す好例だ。
デュプランティスは、棒高跳びの世界でトップに立つためには「短距離走選手・走り幅跳び選手・体操選手」の資質を兼ね備える必要があるとしている。
デュプランティスが週数回集中して取り組んでいるスプリントトレーニングは、トレーニング全体の重要な構成要素だ。棒高跳びでは助走路でのスピードが不可欠なため、彼はここでアドバンテージを得るべく短距離走選手さながらのトレーニングに取り組んでいる。
デュプランティスは、400mスペシャリストのカールステン・ワーホルムとの100m走対決で勝利したこともある。しかし、彼にとって重要なのはスピードだけではない。彼が定義する “最高のフィットネス” を手に入れるためには、技術面の取り組みも不可欠だ。
すでに棒高跳びの世界でトップに立っているデュプランティスだが、さらなる高みを目指して絶えずテクニックを磨いている。彼のフィットネスプログラムは、アジリティ・ストレングス・精度の細やかなバランスで成立しており、頂点に立っていても常に向上の余地が存在することを示している。
02
レティシア・ブフォーニ
フィットネス=怪我の予防と長いキャリアの実現に不可欠
「ジムでのワークアウト」と聞いて、人々が最初に思い浮かべるアスリートはスケートボーダーではないかもしれない。しかし、レティシア・ブフォーニは、スケートボードにはストレングストレーニングが不可欠であることを証明している。
ブフォーニはジムを長年活用しており、ラテラルプルダウンやオーバーヘッドプレス、ハンギングアブクランチなどのエクササイズを含む高強度ワークアウトに取り組む様子をソーシャルメディアへ頻繁に投稿している。
ブフォーニにとって、ジムでのワークアウトはフィジカルとメンタルで強度を得るためのものだ。
「スケートボードは身体に大きな負荷がかかります」と語るブフォーニは、フィットネストレーニングが必ずしもオーリーの高さが繋がるわけではないことを認めつつも、そのおかげでライディングできる時間が延び、より多くのトリックを学べるようになり、さらには身体が受けた衝撃からより早くリカバリーできるようになったとしている。
ブフォーニの定義するフィットネスとは、目先のゲインだけではなく、耐久性と怪我に屈せず最高の自分を保つためのものだ。とりわけ強い衝撃がかかるスケートボードというスポーツで、彼女の存在は、怪我の予防と長いキャリアにおけるフィットネスの高い貢献度を強調している。
03
マルク・マルケス
フィットネス=フィジカルとメンタルの両立
MotoGPのスターであるマルク・マルケスは、フィットネストレーニングの目的にはフィジカルの持久力強化だけではなく、メンタルのリフレッシュも含まれることを示してきた。
オフシーズントレーニングでのマルケスは、飽きないようにバラエティを重視している。「ルーティンを避けて楽しむこと」をモットーにしている彼は、トレーニングが反復に感じてしまうと、心身ともに集中できなくなると考えている。
この豊富なバラエティのおかげで、マルケスは心肺持久力や筋力を含むフィジカルのあらゆる領域で高いレベルを維持できている。
マルケスの楽しさと多様性の重視は、フィットネストレーニングが単調になる必要はないことを思い出させてくれる。すべてのスポーツと日常生活において、“長寿” のカギは心身を多様なアクティビティに触れさせることなのだ。
04
ローラ・ホルヴァート
フィットネス=リラックスと栄養管理を含む包括的な健康
CrossFit Games優勝によって2023年の “Fittest Woman on Earth(地球で最もフィットしている女性)” に選ばれたローラ・ホルヴァートは、競技フィットネスシーンの頂点に立っている。
トライアスリートやエリートレベルの重量挙げ選手たちとの高強度のトラックセッションからスイミングまで、彼女のフィットネストレーニングは実に多様だ。ホルヴァートは、持久力 / ストレングス / 可動性のバランスを取りながら、1日2〜3回のセッションを週6日行なっている。
しかし、ホルヴァートが際立っているのは、メンタルの強靭さだ。「身体でできるだけではなく、心でもできることが重要なのです」と彼女は語り、身体的な強さだけでは厳しい大会を乗り越えられないことを強調する。
ホルヴァートの定義するフットネスには、ジムの中だけでなく、リカバリーや栄養摂取、マインドセットも含まれている。
ストレッチや休息を含むリカバリーと可動性への彼女の強い意識は、フィットネスが最高レベルでも、リラックスすることがベストパフォーマンスに不可欠であることを示している。ホルヴァートの包括的な視点によって彼女のフィットネスはバランスが重視されており、彼女は休息するタイミングを理解しながら限界をプッシュしている。
05
フィットネス基本用語
フィットネスの世界で迷子になってしまわないように、非常に役立つ用語集を用意した。頻出するフィットネス用語とそれらの意味を紹介しよう。
- レップ:“レペティション”、つまり反復の略で、エクササイズの1セットにおける回数を指す。したがって、「スクワットを10レップ」は単純にスクワット10回ということになる。
- セット:休息を挟んで行われる一連のレップを指す。「スクワット10レップを2セット」は、「スクワット10回1セットを2回」を意味する。
- スクワット:背中を伸ばしながら膝を曲げて腰を下げ、脚と体幹の筋肉を鍛えるストレングスエクササイズ。自重スクワットやゴブレットスクワット、バーベルスクワットなど、フィットネストレーニングにはスクワットのバリエーションがいくつも存在しており、それぞれが異なる筋群に働きかけ、独自のチャレンジを提供する。
- プランク:プランクは腕立て伏せの姿勢を取り、前腕と爪先でバランスを取りながら身体を直線に保つ体幹強化エクササイズだ。サイドプランクやフォアアームプランク、プランクジャックなどのバリエーションがあり、それぞれが異なる体幹の筋肉に働きかけ、安定性を高める。
- バーピー:バーピーはスクワット、プッシュアップ、ジャンプをシームレスに組み合わせた全身エクササイズだ。スクワットから始まり、プランクへ移行してからプッシュアップを行い、そこから一気にジャンプして最初のポジションに戻る。ハーフバーピーやバーピータックなどのバリエーションがあり、強度や重点を調整できる。
- カーディオ:カーディオ(有酸素)トレーニング、またはカーディオバスキュラー(心血管)エクササイズとは、心拍数と血流循環を増加させて心肺の効率を向上させるあらゆるアクティビティを指す。ランニング、サイクリング、スイミング、ダンスが一般的な例で、いずれも持久力と心臓血管系の健康を高めることを目的としている。カーディオトレーニングには、最小限の休息を間に設けながら多様なトレーニングを順番にこなしていくサーキットトレーニングも含まれる。
06
フィットネスはスポーツの一種なのか?
フィットネスは独立したスポーツとしては扱われていない。むしろ、フィットネスには、健康と身体パフォーマンスの向上を目的とするあらゆるアクティビティやトレーニング方法も含まれる。
HYROXのような一部のフィットネス競技はフィットネスとスポーツを融合しているが、フィットネスのより広範なコンセプトは、グループでの競争ではなく、個人の健康と幸福を重視している。
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