パデル は、現在世界中で競技人口が急増しているスポーツのひとつだ。
このスポーツの統括組織、 国際パデル連盟(FIP) は、現在パデルの競技人口は 世界約2,500万人 で、メキシコ、アルゼンチン、スペインなどの国のプロアマ両シーンで高い人気を誇るとしている。また、FIPは、パデル用コートは90以上の国に置かれているともしている。
パデルはダブルスが通常フォーマット
© Sergi Penalba
Red Bull TV ではエリートプロツアー 《Premier Padel / プレミアパデル》 をシーズンを通じて配信しており、これを視聴すれば、パデルの高い人気が理解できるだろう。Red Bull TVでは全24戦をライブ配信予定で、全戦の準々決勝以降を視聴することができる。日本からも視聴が楽しめるので、興味がある人は今すぐこちらからチェックしてみよう。 しかし、パデルをよく知らないのに、いきなり視聴しても混乱してしまうかもしれない。そこで今回は、 パデルの起源や用具、ルール、トップアスリート など、初心者や興味を持っている人たちに役立つ基本情報をまとめてみた。
パデルはラケットスポーツのひとつで、 スカッシュとテニスのミックス と言っても良いだろう。スカッシュと同じように限定スペースでプレーするが、テニスとの共通点が多い。
まず、テニスに似たコートの中央に、テニスと同じようにネットが張られる。また、選手がラケットでボールを打ち、そのボールがネットを越えて相手陣内に入らなければならない点もテニスと同じだ。しかし、パデルでは コートの外側にウォール / フェンスが置かれている 点がテニスとは異なる。選手たちはこのウォール / フェンスで跳ね返ったボールも打つことができる。
パデルは ダブルス形式(2v2) でプレーされることが多いが、 1v1のシングルス形式 も存在する。ダブルス形式が多いのは、 社交用スポーツ だったこのスポーツの起源に由来する。
パデルは社交的要素が強いスポーツ
© Sergi Penalba
前述した通り、パデルは テニスとの共通点 が多く、パデルを観戦すれば、誰もがテニスと同じだと思うだろう。しかし、 異なる点 もいくつか存在する。そのひとつが、 閉ざされた空間でプレーする ことだ。また、以下の点も異なる。 コートサイズ: パデルコートはテニスコートよりも小さい。パデルコートはラインの引き方もテニスコートとは異なる。
ウォール / フェンス: ウォールまたはフェンスはコートの一部であり、プレー中に使用できる。
ラケット: パデルラケットはテニスラケットに似ているが、より小さく、ガットも張らない。
ボール: パデルボールはテニスボールと見た目は同じだが、より小さい。
サーブ: パデルのサーブはアンダーアーム(下打ち)で、テニスのように頭の上で振り抜くオーバーヘッドサーブは使用しない。
テクニック: パデルではテニスほどパワーが必要とされない。
メキシコ人の エンリケ・コルクエラ がパデルの考案者と言われている。コルクエラは、1960年代後半にメキシコ・アカプルコの自宅でテニスコートを設営しようとしたが、庭の面積が足りず、テニスコートよりも少し狭くなった。結果、テニスボールを強打すれば隣家に入ってしまう可能性も出てきたため、囲むように壁も4枚追加した。
また、通常のテニスラケットではボールが飛びすぎてしまうため、コルクエラは 木製パドル を使用するようになった。その後、壁をプレーで使用できるルールが追加され、今のパデルに近い形になっていった。
パデルがメキシコ国内で人気を獲得していった要因には、コルクエラと彼の友人たちが熱中してプレーしていたことが挙げられる。
その後、1974年には アルフォンソ・デ・ホーヘンローエ=ランゲンブルク皇太子 がスペインに、アルフォンソ皇太子の友人 フリオ・メンディテンギ がアルゼンチンにパデルを持ち込んだ。やがて両国のパデルはサッカーに次ぐ国内2位の人気スポーツとなった。
パデルは近年人気が急上昇している
© Jaime de Diego/Red Bull Content Pool
パデルコートの面積は20m x 10mで、10m x 10mがハーフコートになる。コートに引かれるすべてのラインは幅5cmで、コート中央に張られるネットは長さ10m、高さは中央88cm / 両端92cmとなっている。
通常、パデルコートは 風防ガラス(またはコンクリート)のウォールとワイヤーメッシュ(金網) で囲まれている。コート後方のウォールは高さ3mの風防ガラスが使用される必要がある。
これらのウォールの上に高さ1mのワイヤーメッシュが張られる。コート側面のウォールは風防ガラスまたはワイヤーメッシュの組み合わせで、高さは同じく3mに設定されている。
コート中央のネット両端の延長上に 入出用ゲート が設置される。 パデルではコート外でのプレーも認められている ため(後述)、プレー中はゲートが開けた状態で保たれる。コート表面は コンクリート や 人工芝 、あるいは カーペット が使用される。
風防ガラスのウォールとワイヤーメッシュに囲まれたパデルコート
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パデルではテニスのようなガットが張られている長尺のラケットは使用しない。そのため、ラケットの見た目は大きく異なる。パデルラケットは短く、フレーム素材はファイバーグラスやカーボンファイバー、グラフェンが採用されている。サイズは 長さ45.5cm・幅26cm以内・厚さ38mm以内 と規定されている。
パデルラケットのユニークな特徴のひとつが、 打面に無数の穴が開いている 点だ。これらの穴は ラケット軽量化 のために開けられている。また、パデルラケットには複数の形状が存在し、 ダイヤモンド型 (パワー重視)、 ティアドロップ型 (コントロールとパワーのバランスタイプ)、 ラウンド型 (コントロール重視)の3種類が存在する。
パデルラケット
© Jaime de Diego/Red Bull Content Pool
パデルボールは、テニスボールと見た目は同じだが、 より小径で弾力も弱い 。
国際パデル連盟(FIP)が設定しているレギュレーションでは、ボールは黄色または白のゴム製で、 直径 は 6.32cm〜6.77cm に収められる必要がある。また、重量は56g〜59g、内圧は4.6kg〜5.2kgに設定されている。
パデルのルールはテニスとの共通点が多いが、異なるルールもいくつか用意されている。
得点条件:ボールが相手側コートで2回バウンスした場合 / 相手がボールをネットに当てた場合 / 相手がプレーエリア外でボールを打った場合あるいは相手がボールをバウンスさせずに自分側のウォールあるいはフェンスにボールを当てた場合
テニスと同じように、試合は3セット制または5セット制で行われる。3セットでは2セット先取、5セットでは3セット先取した選手またはペアが勝者となる。
6ゲームを先取した選手またはチームがそのセットを取る。セットを取るためには2ゲーム以上の差を付けている必要がある。
プロレベルの試合では、両選手またはチームが6ゲームずつ取得した場合、タイブレークが行われる。タイブレークでは7ポイントを先取した選手またはチームが勝利する。
ゲームポイントもテニスと同じで、15 / 30 / 40 / ゲームと進んでいく。ポイントが40-40で並んだ場合はデュースがコールされ、デュースからゲームを取るためには2ポイント連続で取得する必要がある。近年のプロレベルでは、40-40からはゴールデンポイント制が採用されている。
ゲームが奇数になるたびに、選手たちはコートチェンジを行う。
パデルの得点方法はテニスに似ている
© Óscar Carrascosa/Red Bull Content Pool
サーブはアンダーアームで、サーブする選手の対角線上に位置する相手コートへ打ち込む。サーブする選手は、サービスライン後方でボールを1回バウンスさせてから、腰から下の位置でボールを打つ必要がある。
サーブされたボールは、相手コートのサービスボックス内で1回バウンスさせなければならない。バウンスしたボールがフェンスに当たった場合はフォルトになるが、ウォールに当たった場合はインプレーとなる。
サーブを受けた選手またはチームは、ボールが1回バウンスしたあとに打ち返して相手コートにボールを戻す。ボールがウォールかフェンスで跳ね返ったあとも2回目のバウンス前に打ち返すことができる。ボレーも認められているが、ボレーしたボールがウォール / フェンスに直接当たった場合はミスとなる。
選手は自分側のコートのウォールにはボールを当てて良いが、フェンスに当てることはできない。
コートに入出用ゲートが設置されている場合、選手はゲートの外に出てボールを打つことができる。このルールが適用されるのは、相手コートでボールがバウンスしたあと、ウォール / フェンスを越えてしまった場合だ。この場合、コートの外までボールを追いかけて、2回目のバウンスをする前にボールを打って相手コートへ入れることができる。
パデルとテニスは似て非なり
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パデルは 誰でもすぐに楽しめるスポーツ だが、実際は非常に奥深く、 様々な戦術やショット が存在する。以下に初心者のためのアドバイスをいくつか用意したので、参考にしてもらいたい。
ウォール: パデルは風防ガラス製ウォールの活用が非常に重要だ。ウォールを味方として捉えて、積極的に使っていこう。たとえば、ボールがウォールでバウンスすると球速が落ちるので、コートでバウンスしたあとに打ち返すより時間をかけて自分のショットの選択肢を考えることができる。
ポジショニング: ダブルスでコート後方に下がるときは、パートナーと横並びになるようにポジションを取ろう。理想のポジションは、サービスラインの1歩後ろ、サイドラインから2歩内側だ。前に出るときはネットに近寄りすぎないように注意したい。ネットから2〜3歩下がったポジションに立とう。
パワーコントロール: 最初はボールを相手コートへ返すことだけを意識するようにしよう。こうすることで、ラケットでボールをコントロールする方法が理解できるようになる。パデルはプロレベルでもパワー重視ではない。
シューズ: テニスシューズを使用している選手が多いが、パデルはアキレス腱に大きな負荷がかかるスポーツなので、著名ブランドのパデル専用シューズを選択したい。このような専用シューズは、パデル選手にかかる負荷に対応したクッション性能を備えている。
リターンに強くなれば状況突破が楽になる
© Sergi Penalba
プレミアパデル(Premier Padel) がプロ選手のメインツアーだ。2024シーズンから、それまでライバル同士だったプレミアパデルとワールドパデルツアー(World Padel Tour)が、国際パデル連盟が管理するひとつのプロサーキットに統合され、プレミアパデルが統合後の名称として残った。
プレミアパデルのシーズンは、 メジャー・P1・P2・ツアーファイナルズの4種類のトーナメント で構成されている。メジャーからP1、P2の順でランク分けされている。ツアーファイナルズはシーズン最終戦で、シーズン総合トップ8の男女ペアが出場する。 Red Bull TV ではシーズン全戦の準決勝以降を配信する。 プレミアパデルの2025シーズンは2月10日のリヤド(P1)で開幕した。そして3月にマイアミとカンクンでの初開催後、ヨーロッパのベルギーとスペインを挟んで5月にはパラグアイとアルゼンチンの南米開催が待っている。
2025シーズンは4つのメジャーが設定されており、カタール(4月14日〜19日)、イタリア(6月9日〜15日)、フランス(9月8日〜14日)、メキシコ(11月24日〜30日)が予定されている。
メジャー優勝者には2,000ポイントが与えられる。また、P1優勝者には1,000ポイント、P2優勝者には500ポイントが与えられる。各トーナメントの進出ラウンドに応じて全選手にポイントが振り分けられる。
ツアーファイナルズの優勝者には1,500ポイントが追加で与えられる。
パデルの起源の影響で、パデルのトップレベルの多くを スペイン人 と アルゼンチン人 が占めている。特に注目すべきは以下の3選手だ。