Gordon Benson
© Olaf Pignataro/Red Bull Content Pool
ランニング

プロアスリートがStravaを使う理由

大量のトレーニングメソッドと広大なグローバルネットワークを誇るフィットネスアプリStravaはアマだけではなくプロも積極的に活用している。
Written by Isaac Williams
読み終わるまで:9分Published on
フィットネス用アプリは、Stravaがひとり勝ちを続けている。2017年12月までにこのアプリ上には10億回を超えるアクティビティがアップロードされており、新規ユーザーも40日に100万人のペースで増え続けている。
これまでプロフェッショナルアスリートしかアクセスできなかったフィットネスデータを一般人もアクセスできるようにすることで人気を獲得したこのアプリは、上記のような素晴らしい数字を残しているが、アマチュアアスリートだけではなく、プロフェッショナルアスリートも使用している。
その理由は、拡大を続けるネットワーク、データ分析を可能にするユニークな機能の数々、そして自分と同じくフィットネスを愛する人たちで構成されるコミュニティとの交流にある。

進捗を記録する

テクニカルなトレーニング分析機能以外で、プロアスリートがStravaを使用している大きな理由のひとつとして挙げられるのが、進捗をトラッキングできる機能だ。Stravaでは、自分が設定した目標に対する自分の進捗を週・月単位で追うことができる。20年前のプロアスリートはハードカバーのトレーニングダイアリーを使っていたが、今はStravaを使っているのだ。
2018年のUTMB:CCCを制したレッドブルアスリート、トム・エヴァンスは「Stravaを使ってハードなワークアウトの比較と評価をしています。1年を通じて自分の調子がどのように変化しているのか、どのように進歩しているのかが把握できるんです」と語っている。
パフォーマンスの評価に活用できる

パフォーマンスの評価に活用できる

© Leo Francis/Red Bull Content Pool

トライアスロン英国代表選手で、同じくレッドブルアスリートのゴードン・ベンソンは「10週間など、様々な期間で自分の進捗が確認できる点が気に入っている。週ごとの走行距離に差がないかどうかを確かめている。グラフ表示されるから、自分がどれだけやれているのかを簡単にチェックできる点もいいね」とコメントしている。
また、プロサイクリストのリジー・バンクスは、進捗をトラッキングできる機能がトレーニングに目に見える進化をもたらしたと考えている。
「レース生活を始めた最初の年は、Stravaの記録がわたしを大きくプッシュしてくれましたね。わたしの地元はシェフィールドで、家の近所にはピーク・ディストリクト国立公園があります。ですので、Stravaを使って複数の登坂セクションのタイムを楽しみながら記録していました。また、フィットネスを高めるのにも非常に効果的だということが分かりました」
また、バンクスは、最近の自分のトレーニング自体はその頃よりもシステム化されているが、今もトレーニングセッションのひとつにStravaの "区間" を組み込む時があるとしている。
「トレーニングセッションが面白くなりますし、モチベーションも多少高めてくれます。1位になるともらえる “王冠マーク” も嬉しいですよね」

プロとアマの垣根を取り除く

バンクスが言っている通り、Stravaがトレーニングを面白くしてくれる理由のひとつは、区間を活用すればプロアスリートがアマランナーやサイクリストと交流できる点にある。プロスポーツ全盛の今、これは非常に楽しい息抜きになる。
バンクスは「アマアスリートにはいつも自分より早いタイムを出されていますよ! また、特定の区間のプロのタイムを確認して、そのタイムを上回るようにプッシュできるというのは素晴らしい機能だと思います」と語っている。
エリートアスリートと競い合えるのも魅力のひとつ

エリートアスリートと競い合えるのも魅力のひとつ

© Leo Francis/Red Bull Content Pool

国際舞台で活躍するマラソンランナー、アリー・ディクソンも、区間をそのようなフレンドリーな競争として使用することに賛成している。
ローカルランナーたちはわたしから王冠を奪うことを楽しんでいます。この前も、わたしの妹が王冠をひとつ奪ったのですが、しばらくその喜びを味わってもらってから奪い返しました(笑)」
「わたしが設定している区間は他のアスリートにとって良いモチベーションになると思いますし、他のアスリートが設定している区間でわたしが王冠を奪えば、それをまた奪い返そうという新しいモチベーションを生み出しますよね」
また、Stravaは価値のあるソーシャルメディアプラットフォームとしても活用できる。プロアスリートは、アスリートとしての自分に興味を持っているフォロワーを増やすことができるのだ。ベンソンは次のように説明している。
Stravaはフォロワーを増やすための優秀なプラットフォームだ。たとえば、Instagramのフォロワーは、自分のトレーニングの内容に興味を持っている人なのか、旅先の美しい写真に興味があるだけの人なのかが分からないところがある。一方、Stravaはスポーツとの関連性が高い。フォロワーは僕がやっていることに興味を持っている人たち、僕に似ている人たちなんだ」
同じように、ベンソンのようなプロアスリートも、自分がフォローしているアスリートのトレーニング内容をチェックすることができる。ベンソンが続ける。
Stravaのもうひとつのメリットは、同級生や幼なじみがどんな運動をしているのか確認できる点だ。たとえば、僕の友人がトレーニングをしているのが確認できれば、“これから一緒に走らないか?” とメッセージを送ることができる。仲間と連絡を取り合うのにも向いているんだ」

“プロアスリート” の差別化

Stravaはプロ・アマ両方が利用できるプラットフォームだが、2012年から導入されている「プロアスリート」制度が、プロアスリート、そして通常以上の努力を重ねている人たちの価値をきちんと認めている。バンクスは次のように語っている。
「“プロアスリート” はとても良い制度だと思います。ハードワークとランクアップを重ねることによって得られるステータスですし、トップレベルのアスリートが何をしているのか、どんなトレーニングを組んでいるのかをファンが簡単に確認できる点も評価できます」
エヴァンスは「こんなのがあるなんて知りませんでした」とコメントしているが、ディクソンはアスリートにとっての “ボーナス” のようなものと考えている。「名前入りゼッケンのようなものですね。自分のパフォーマンスレベルを正当化してくれるものです」
また、「プロアスリート」制度は有料サービスStrava Summitの無料使用も可能になる。
Strava Summitは3つの機能別パックに分けられており、その中には、自分がライディング / ランニングしたルートをカラー表示しつつ、詳細データも確認できるパーソナルヒートマップ(セーフティパック収録)や、現在位置を身近な人と共有できるBeacon(セーフティパック収録)などの機能が含まれている。

トレーニング内容の公開

これまで、Stravaはプロ・アマ両方が様々な機能から恩恵を受けることができるアプリだということを説明してきたが、アマがプロと競い合ったり、トレーニングメソッドを取り入れたりして恩恵を得られるなら、プロの同業者、つまり、ライバルのプロアスリートも恩恵を得られるのではないだろうか?
わたしのトレーニングはわたしだけに効果があります。とてもパーソナルなものです」と回答しているディクソンは、他のプロアスリートが自分のトレーニングを参考にしても構わないとし、次のように続ける。
「今のトレーニングの量と強度をこなせるようになるまでに、わたしは長い間努力を重ねてきました。ですので、真似してみようと思う人がいても、“どうぞご自由に” という感じです(笑)」
「わたしのライバルたちは、わたしが公開しているトレーニングが、わたしを速くすることがなければ、遅くすることもないというのを分かっているはずですし、見てもらうのは全く構いませんね」
トレーニングの進捗を記録しよう

トレーニングの進捗を記録しよう

© Philipp Schuster for Wings for Life World Run

エヴァンスも似たような考えを持っている。
ランニングは個人スポーツですし、ランナーひとりひとりトレーニングの効果は異なります。僕のライバルが僕のワークアウトを真似しても、僕は気にしません。僕のトレーニングは他のウルトラランナーのトレーニングと大きく異なっていますし、全てをStravaにアップロードしているわけでもありません
この発言は非常に重要だ。Stravaを使えばプロアスリートのトレーニングメソッドを確認できるが、それはあくまで一部にしか過ぎない。非常に細分化されているトレーニングや、アスリートに合わせたスペシャルセッションは、画面には表示されない可能性が高い。
ベンソンは「特に秘密はないよ。ハードにトレーニングを積んでいるだけだ」としているが、Stravaにアップロードしているトレーニングの大半は、会話ができるペースでのライディングやランニングだとしている。「ハードなトレーニングセッションはStravaにはアップロードしていない
バンクスも、特定のデータを公開していないアスリートがいることを知っている。
心拍数やパワーデータを公開しないアスリートはかなり多いですよ。ですが、わたしは別に自分のトレーニングを見られても気にしません」と語るバンクスは、たとえ全てのセッションをStravaにアップロードしたとしても、それらはトレーニングの一部でしかないと強調する。
「ジムワークや休息、ストレッチ、栄養管理などもプロアスリートにとっては重要です。Stravaのプロフィールだけではその人のトレーニング全てを知ることはできません
つまり、世間のイメージに反して(一般人はあらためて気を引き締める必要があるが)、Stravaにアップロードされていないトレーニングは世の中に山ほど存在するのだ。
とはいえ、Stravaで確認できる情報は、エリートスポーツマン&スポーツウーマンにとって非常に有益だ。データ分析機能が優れているのはもちろんだが、独自のソーシャルネットワークとしても台頭しつつある。Stravaは、お互いを支え合い、お互いに刺激を与えながら、それぞれのスポーツでの成功を目指していくプロアスリートたちの有益なコミュニティとして機能している。