Dani Román performs an exhilarating wingsuit flight at Red Bull’s Aerial Performance Camp.
© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool
ウイングスーツ

【ウイングスーツとは?】リアル鳥人間の基礎知識を学ぶ

モモンガに触発されて誕生した“ウイングスーツ” は、どのような仕組みで空を飛んでいるのか? その誕生の背景も含めて詳しく解説する。
Written by Jeremías San Martín / Clemens Burghofer
読み終わるまで:7分Published on
ウイングスーツフライトは最高難度の人類の飛行方法に含まれる。腕と脚の間に張られた翼が伸縮する専用スーツ(この特徴から “ムササビスーツ” とも呼ばれる)を着用したパイロットたちは、垂直自由落下を空中滑降に変化させて、時速250km以上の高速で大空を飛び抜けていく。
そして、スカイダイビングと航空の中間に位置するこのスポーツでは、かなりの距離を移動したあとパラシュートを展開して着地する。
モンブランはウイングスーツフライトに最適なロケーション

モンブランはウイングスーツフライトに最適なロケーション

© Dom Daher/Red Bull Content Pool

山岳地帯での飛行、あるいは開けた土地の上でのフォーメーション飛行を問わず、ウイングスーツフライトではかなりの距離を移動したあとパラシュートを展開して着地する。

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しかし、このスポーツの詳細を知っている人は少ない。ウイングスーツがどのようなもので、どのように機能するのか、誰が発明したのか、ムササビのように滑空できるのはどうしてなのか? 本記事ではこのような疑問に回答していく。
3つの世界記録を更新したセバスティアン・アルバレス

3つの世界記録を更新したセバスティアン・アルバレス

© Scott Palmer/Red Bull Content Pool

01

ウイングスーツの仕組み

ウイングスーツフライトには2つの基本要素が必要になる。ウイングスーツパラシュートだ。
ウイングスーツの目的は垂直方向の自由落下を水平方向の滑空に転換することにあり、ジャンプ後半で登場するパラシュートは安全に地上へ着地するために使用される。
ギザの大ピラミッド上空を滑空するセドリック・デュモン

ギザの大ピラミッド上空を滑空するセドリック・デュモン

© Noah Bahnson/Red Bull Content Pool

ウイングスーツには多種多様なデザインが存在するが、それらはすべて一連の原則に準拠している。ジャンプスーツはナイロン製(あるいはそれに準ずる高耐久性素材)で計3枚のウイングを備えている。ウイング2枚は腕と胴体の間に張られ、残り1枚は両脚の間に張られている。
ウイングスーツの基本原理は揚力の発生と垂直落下から水平移動への転換だ。ウイングスーツの形状とデザインは強大な揚力の発生を可能にしており、降下速度を落として水平方向の滑空運動に転換する。ウイングスーツパイロットはウイングスーツのアングルと形状を変化させて滑空の方向とスピードをコントロールする。
しかし、留意すべき重要な点は、ウイングスーツには飛行機のように上昇できる揚力が備わっていないことだ。その代わり、パイロットは水平方向に高速滑空できる。安全に地上へ着地するためにはパラシュートが必要だ。
地上への着地にはパラシュートが必要

地上への着地にはパラシュートが必要

© Michael Clark / Red Bull Content Pool

02

ウイングスーツフライトとスカイダイビングの違い

ウイングスーツとスカイダイビングの大きな違いは、ウイングスーツは落下ではなく滑空するところにある。伝統的なスカイダイビングは垂直落下したあとパラシュートを展開するが、ウイングスーツは前進しながら落下していく。

5分

夜のサンパウロをウイングスーツフライト!

03

ウイングスーツの歴史

ウイングスーツの歴史は20世紀初頭まで遡ることができる。1912年にフランスの仕立て職人フランツ・ライヒェルトが自ら考案したパラシュートとウイングを組み合わせた外套でエッフェル塔からのジャンプを試みた。結果は失敗に終わったが、これが人類最初の飛行実験のひとつとされている。
その後、他の発明家たちがウイングスーツの様々なデザインを試していき、1930年代に入ると、米国人発明家のレックス・G・フィニークレム・ソンがキャンバス地とセイルクロスを使用したスーツを開発し、1950年代にはフランス人スカイダイバーのレオ・ヴァランタンが滑空性能を向上させる木製翼を開発した。このような初期バージョンは非常に危険で、制御するのが難しかった。
その後、1990年にフランス人スカイダイバーのパトリック・ドゥ・ガヤルドンがより安全性を高めたメンブレイン(膜)構造のウイングスーツを考案。ウイングスイーツは大きな飛躍を遂げた。このデザインの登場によって、自由落下中の推進力が向上した。
1999年、世界初の市販用ウイングスーツを開発したのはフィンランド人ヤリ・クオスマとクロアチア人ロバート・ペツニクで、これがスポーツとしてのウイングスーツの実質的な誕生となった。クオスマとペツニクはウイングスーツの訓練プログラムも手がけ、それまでの「ウイングスーツ=危険」というイメージを変えるためのキャンペーンを展開した。

2分

ウイングスーツでロンドン・タワーブリッジを世界初通過!

マルコ・フュルストとマルコ・ヴァルテンシュピールが、ロンドンの観光名所タワーブリッジをウイングスーツで世界初通過!

ポルトガル語

04

ウイングスーツフライトの4ステップ

ウイングスーツフライトは4ステップに分けることができる。計画 / 準備・ジャンプ・滑空・着地だ。各ステップでは正確さと慎重な判断が必要になる。

《計画・準備》

計画と準備はウイングスーツフライトにおいて最も重要なステップだ。天候条件、風向き、高度、地形のすべてが安全確保とパフォーマンスに大きく影響するため、多くのパイロットがテイクオフ前に詳細な計画を立てており、ジャンプの高度や滑空ルート垂直下降距離パラシュートの展開タイミングなどを事前に決めている。
万全な計画を立てることがウイングスーツフライトには不可欠

万全な計画を立てることがウイングスーツフライトには不可欠

© Ivaylo Donchev / Red Bull Content Pool

《ジャンプ》

ウイングスーツフライトでテイクオフできるロケーションには以下の3つの候補がある。
  • 定置物からのテイクオフ:山岳や建造物など
  • 航空機からのテイクオフ:飛行機・熱気球・ヘリコプターなど
  • ベースジャンプ:建造物・橋梁あるいは同様の構造物

3分

エジプトのピラミッドでウイングスーツフライト!

フライトのロケーションによって、パイロットはジャンプの瞬間から様々なテクニックを駆使しなければならない。パーフェクトなフライトを実現するには、あらゆるフライトテクニックのマスターが不可欠だ。
ジャンプのあとは自由落下が始まる。飛行機から、または固定されている場所からのジャンプを問わず、パイロットはジャンプ直後からウイングスーツが正しく風を受けられるように身体を安定させて、正しい滑空ルートを取っていく必要がある。
ウイングスーツフライトに備えるダニ・ロマン

ウイングスーツフライトに備えるダニ・ロマン

© Red Bull Staff

《フライト》

ウイングスーツの機能は、身体の表面積を最大化して垂直落下への抗力を増加させつつ大きな水平変位を可能にすることにある。ウイングスーツフライトでは、背中、肩、臀部、両腕を含む全身の精確な協調が要求される。経験豊富なウイングスーツパイトットなら垂直落下1mごとに水平方向へ最長3m進むことができる。
ザルツマンの真横を飛行するドローン

ザルツマンの真横を飛行するドローン

© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool

《着地》

ウイングスーツだけで減速して着地することはできない。そのため、パイロットたちは地面に降り立つ前にパラシュートを展開し、滑空速度を上手く制御して目標地点に安全に着地する。
ウイングスーツフライトを終えたパイロットたち

ウイングスーツフライトを終えたパイロットたち

© Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

05

ウイングスーツフライトの主な記録

ウイングスーツフライトは今も成長を続けており、近年もスピード、距離、飛行時間の新記録が生まれている。
その中で最も大きな功績のひとつが2025年に記録された。チリ人ウイングスーツパイロットのセバスティアン・アルバレスの高高度ウイングスーツフライトだった。アルバレスはジェット気流に乗り時速550km11分以上滑空して53km以上を移動し、ウイングスーツフライト1回における速度・時間・距離の最高・最長記録を塗り替えた。

8分

Sebastián Álvarez's volcano flight

Watch the full story of wingsuit pilot Sebastián Álvarez's flight in and out of an active volcano in Chile.

ロシア語 +1

同年、オーストリア人ウイングスーツパイロットのペーター・ザルツマン標高3,713mからジャンプして時速347kmを記録し、ベースジャンプ世界最高速度を7km更新した。ザルツマンはこの挑戦のためにデザインした特製ウイングスーツを着用した。ちなみに、レッドブル・リンクでのF1マシンのトップスピードは時速約320kmだ。
世界記録更新を喜ぶペーター・ザルツマン

世界記録更新を喜ぶペーター・ザルツマン

© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool

編隊フライトもウイングスーツフライトでは重要なマイルストーンのひとつで、複数のウイングスーツパイロットが距離とタイミング、高度をシンクロさせながら同時に飛行する。
その中で特に素晴らしいフライトが、フレッド・フーゲンとウイングスーツパイロット7人によるモンブラン上空での編隊フライトで、一糸乱れぬ編隊飛行を披露したあと、二手に分かれて谷底で着地した。
また、女子パイロットも活躍しており、英国人ウイングスーツパイロットのアンバー・フォルテ女子ウイングスーツ最速記録を保持している。
アンバー・フォルテ

アンバー・フォルテ

© Dan Griffiths / Red Bull Content Pool

  • 世界最高・最速速度・距離・飛行時間記録:セバスティアン・アルバレスがジェット気流を活用した高高度ウイングスーツフライトで時速550km・飛行時間11分以上・移動距離53km以上を記録。
  • 世界最長フォーメーションフライト:モンブラン上空でフレッド・フーゲンとウイングスーツパイロット7名が1列の編隊飛行を記録。
  • ベースジャンプ世界最高速度:ペーター・ザルツマンが特製スーツで標高3,713kmからジャンプして時速347kmを記録。
  • 女子ウイングスーツ最速記録:2017年に米国・ネバダ州で開催されたウイングスーツフライトワールドカップでアンバー・フォルテが283.7kmを記録。
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