レーシングサーキットという場所は極めて単純だが実に魅力的だ。広大な土地に敷かれた高速走行用のアスファルト周回路で、あらゆるコンペティターたちの決意とスキル、度胸が試されることになる。
モータースポーツの世界には、モンツァや鈴鹿、ブランズハッチ、ラグナセカなど伝説的なステータスを獲得した名サーキットがいくつか存在する。では、世界で最も標高の高いサーキットや、最も高低差の激しいサーキットはどこだろうか? 最も高額な総工費のサーキット、最も危険だということがデータで実証されているサーキットは? 今回は、そんなエクストリームな特徴を持つ世界の常設レーシングサーキットを9カ所紹介しよう。
世界最長:ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(ドイツ)
この手のリストにおいてニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(=北コース)が登場しないケースはまずないが、ドイツのアイフェル山脈に広がるこの全長20.832kmのコースは世界最長距離を持つ常設サーキットだ。実は、年に1度開催される伝統のニュル24時間レースではGPサーキットとノルドシュライフェを全て繋げたレイアウトが用いられており、その総距離は実に25km近くにも及ぶのだが、GPサーキットとノルドシュライフェは別のサーキットなので、世界最長にはカウントされない。
世界最高度:アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲス(メキシコ)
2015シーズンのF1カレンダー復帰に合わせて再改修されたメキシコシティのアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスは標高2,285mという高地に位置し、ドライバーたちは酸素の薄い環境下でのレースを強いられる。
高低差世界一:ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(ドイツ)
山岳サーキットと聞いてまず思い浮かぶのは、カリフォルニアのラグナセカやオーストラリアのマウント・パノラマ(バサースト12時間レースの開催地として有名)などだが、その中でもずば抜けて激しい高低差を持つサーキットこそノルドシュライフェだ。ノルドシュライフェの最低地点の海抜は320mだが、最高地点の海抜は620mもあり、ドライバーたちは実に300mもの高低差を1ラップのうちに体験することになる。ちなみに、あの壮大なマウント・パノラマでさえ高低差は174mであり、強烈なコークスクリュー・コーナーを有するラグナセカのサーキット全体での高低差も55mしかない。
世界初レース専用サーキット:ブルックランズ(英国)
1907年に完成した全長4.43kmのバンク付きコース、ブルックランズは世界初のレース専用サーキットとして知られている。ブルックランズ建造前、黎明期の自動車レースは、都市間を結ぶ一般道(有名なものは1894年のパリ-ルーアン間レース)などで開催されるのが一般的だった。残念なことに、ブルックランズの遺構の一部は数年前にスーパーマーケットの駐車場建設のために取り壊されてしまった。なんとも無粋なことをするものだ。
世界最北端サーキット:アークティック・サークル・レースウェイ(ノルウェー)
北極圏までわずか30.5kmの位置に存在するノルウェーのアークティック・サークル・レースウェイ(アークティック・サークル=北極圏)は、世界最北端サーキットだ。全長3.749kmを持つこのサーキットはノルウェー国内最大級で、ずっと陽が沈まない環境で24時間レースを開催したいなら、白夜を迎えた夏のアークティック・サークル・レースウェイこそ最適のロケーションだろう。
アークティック・サークル・レースウェイのバイクオンボード映像をチェック!
世界最南端サーキット:アウトドローモ・カルロス・ロメロ(アルゼンチン)
南米大陸最南端、アルゼンチン・トルウインの町外れにあるアウトドローモ・カルロス・ロメロは南緯54度線に位置する世界最南端サーキットだ。かつて、ニュージーランドのテレトンガ・パークが世界最南端サーキットとして名乗りを上げたこともあったが、こちらは南緯46度線に位置しており、アウトドローモ・カルロス・ロメロとは勝負にならなかった。
総工費世界一:ヤス・マリーナ・サーキット(アブダビ)
サーキットの総工費が公開されるケースは稀だが、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットの総工費は概算で実に8億ポンド(約1兆1267億6000万円)に上ると言われている。もちろん、これにはサーキットの上にまるで巨大な白鯨のごとく跨がる豪華ホテルをはじめ、ヨットマリーナやサーキットのアスファルト敷設のための費用が含まれている。また、このサーキットの路面に使用されているアスファルトは、英国シュロップシャー州の採石場からはるばる運ばれたものだ。
危険度世界一:ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(ドイツ)
すでにこのリストに「世界最長」、「世界最大高低差」の2項目で登場済みのニュルブルクリンク・ノルドシュライフェは、世界で最も危険なサーキットでもある。現在まで、このサーキットを走行中に命を落とした犠牲者の数は68名にも上り、次点となるインディアナポリス・モータースピードウェイの56名を大きく引き離している。また、常設サーキットではないが、マン島TTレースが行われるマン島周回路(正式名称はスネーフェル・マウンテン・コース)では1908年のTTレース初開催以来実に242名ものライダーたちが命を落としてきた。
懐かしい1970年代のニュルブルクリンクでのクラッシュ映像集をチェック!(もちろん、死亡事故は含まれていないのでご安心を!)
世界最大収容人数:インディアナポリス・モータースピードウェイ(米国)
ルマン24時間レースの舞台となるサルテ・サーキットは実に263,500人もの観客を収容することができるが、半公道・半常設のコースを組み合わせたサルテ・サーキットは完全な常設サーキットとは呼べないので、残念ながらこのリストからは除外する。よって、サルテ・サーキットに匹敵する257,325人もの観客収容数を持つインディアナポリス・モータースピードウェイが世界最大の観客収容数を有するサーキットになる。
世界各地のエクストリームなサーキットを数字で見る:
最長距離:20.832km / ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(ドイツ)
最高度:2,285m / アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲス(メキシコ)
最大高低差:300m / ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(ドイツ)
世界初レース専用サーキット:1907年 / ブルックランズ(英国)
世界最北端:アークティック・サークル・レースウェイ(ノルウェー)
世界最南端:アウトドローモ・カルロス・ロメロ(アルゼンチン)
総工費最高額:約1兆1267億6000万円/ ヤス・マリーナ・サーキット(アブダビ)
最多死亡者数:68名 / ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(ドイツ)
最大収容人数:257,325名 / インディアナポリス・モータースピードウェイ(米国)






