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フランスのKylotonn / KT Racingは2015年からFIA世界ラリー選手権(WRC)の公式ライセンスを保有してきたが、来年からはCodemastersが保有する。近年、KT RacingによるWRC公式ビデオゲームは毎年順調に改良を重ねてきたが、最新作『WRCジェネレーションズ / WRC Generations』は過去最高傑作であり、KT Racing時代の最後に相応しい作品となっている。
01
ハイブリッド時代へ
シリーズ前作『WRC10』は驚きのクオリティを誇っており、収録されているヒストリーモードはオフロードモータースポーツの昔と今を繋ぐことに成功していた。
そのため、今作『WRCジェネレーションズ』の開発におけるメインフォーカスは微調整だった。最も大きな変化はWRCのハイブリッドマシン “Rally1 / ラリー1” だろう。WRC最高峰カテゴリーでは2022シーズンからハイブリッドエンジンが採用されている。
今シーズンからWRCには伝統的な内燃エンジンに100キロワットを発生するハイブリッドドライブが追加された。この影響で、『WRCジェネレーションズ』にはこれまでなかった戦術的側面が追加されている。プレイヤーは様々なカーブや路面をマスターするだけではなく、バッテリーを賢く充電・使用する方法もマスターしなければならないのだ。
02
バッテリーのチャージ
WRCカテゴリーのRally1マシンの新しいハイブリッドエンジンは、プレイヤーにフレッシュなフィーリングを与えてくれる。なぜなら、各ステージ前に3種類のエンジンセッティングからひとつ選ぶようになっているからだ。言うまでもなく、それぞれがステージの異なるエリアに合わせて調整されている。
瞬間的にハイパワーを得たいのか、それとも継続的にアドバンテージとして活かしたいのか、それとも全体のバランスを重視したいのかなど、どのような戦い方を望むのかによって選択が変わってくる。
また、スタート前に天候と路面状況を踏まえてルートを設定する必要がある。これがRally1のレースをさらにエキサイティングにしている。『WRCジェネレーションズ』のハイブリッドパワーは、スタートでの加速やタイトなコーナーの出口などで自動的にオンになるが、バッテリーにエネルギーを供給するためにはかなりのハードワークが必要だ。
なぜなら、バッテリーの充電にはブレーキングのエネルギーが使用されるのだが、ブレーキペダルを踏み込むことでしか作用しないからだ。ハンドブレーキでのドリフトではバッテリーの充電はできない。
『WRCジェネレーションズ』のハイブリッドエンジンは素晴らしいフィーリングで、追加されたパワーをプレイスタート直後から感じることができる。同時に、このエンジンはゲームの難度を高めている。エイドをすべてオフにしているときは特にそう感じるだろう。たとえば、加速をするときはこれまで以上に丁寧なペダルワークをしなければすぐにホイールスピンを喫してしまう。
03
シリーズ最高傑作
新しいハイブリッドエンジンはRally1に限定されており、WRC2とWRC3ではよりクラシックなラリーが展開されるが、この違いは、開発チームがこれまでの課題をクリアして、ドライビングエクスペリエンスを向上させたことの証明とも言える。
また、スケールも向上している。今作はとにかく巨大なのだ。『WRCジェネレーションズ』というタイトルからも分かる通り、歴史を楽しめる部分は『WRC10』よりもさらに大きくなった。
2022シーズンのすべてのラウンド、ステージ、チーム、ドライバーに加え、マシンとステージの両方が大幅に拡充された。今作には50年のWRCの歴史から合計85台のラリーマシンと22カ国の165ステージが収録されている。
また、現行カレンダーには含まれていないアイコニックなラリーイベントも収録されている。ラリー・ドイチェラントやラリー・GBなどは、クラシックラリーの美しい記憶を呼び覚ましてくれる。今作でバラエティに不足することはない。
04
多様なモード
『WRCジェネレーションズ』でシングルプレイヤーの中心に位置するのはキャリアモードだが、このモードは前作までをプレイしていたプレイヤーなら良く知っているはずだ。今作でもラリーチームを管理し、イベントでカレンダーを埋めたり、マシンの開発を進めたり、新しいスタッフを雇い入れたりしなければならない。
この点においては、今作では追加らしい追加は行われていない。キャリアの構築はこれまでと同様にエキサイティングなので、追加する必要がないのだ。しかし、マルチプレイヤーモードに追加された機能は非常に興味深い。
まず、『WRCジェネレーションズ』は不完全ながらクロスプレイ対応になっており、ランキング、クラブ、リーグなどで他のプラットフォームでプレイしているラリーファンたちと競い合える。マルチプレイヤーロビーとコ・ドライバーモードだけだがクロスプレイ非対応だ。
リーグモードはレーシングゲーム全体にとってのエキサイティングなイノベーションだ。このマルチプレイヤーモードでは、他のプレイヤーまたはチームと複数シーズンに渡ってWRCで競い合うことができる。
リーグは6カテゴリーに分かれており、各カテゴリーは30人・8チームで競い合える。シーズンは週で区切られており、1週間の予選期間と10週分のレース、さらにはデイリー&ウィークリーチャレンジが含まれている。
シーズンを完了すればコスメティックアイテムが獲得できるが、ドライバーおよびチームのトップ3は殿堂入りも果たせる。リーグモードは現行のプレシーズンからすでに盛り上がりを見せているが、長期に渡って人気を獲得するはずだ。ファーストシーズンは11月28日にスタートする。
05
優れた操作性
『WRCジェネレーションズ』のゲームプレイはこれまで通り洗練されているため、多くの新規プレイヤーを引きつけるだろう。特に魅力的なのはRally1だが、幸運なことに、今作ではステアリングがより直感的になっている。しかも、ステアリングコントローラーだけではなく、ゲームパッドでもそうなのだ。
テストプレイで使用した『WRCジェネレーションズ』のPS5バージョンには、いくつかのエキサイティングなイノベーションが追加されている。たとえば、デュアルセンスコントローラーの機能をフル活用しているため、ハプティックフィードバックによってグラベル、ターマック、雪などをリアルに感じ取ることができる。
また、アダプティブトリガーも活用されているため、ラリー・スウェーデンの凍結した路面でハードブレーキングをすればロックして動かなくなってしまう。さらには、コントローラー側のスピーカーから小石が跳ねる音も聞こえてくる。プレイ自体にはほとんど影響がないが、没入感を高めてくれる嬉しい配慮だ。
技術的な部分に目を向けると、『WRCジェネレーションズ』は特に抜き出てはいないが、美しい反射、クールなライティングエフェクト、魅力的な景色は高く評価できる。また、PS5バージョンでは解像度を4K・30fpsか2K・60fpsで選べるようになっている。
06
相応しいフィナーレ
まとめると、『WRCジェネレーションズ』はKT Racingのラリーゲームの流れを見事に引き継いでいる作品だ。すべての部分で前作の『WRC10』を上回っており、ハイブリッドラリーマシンがフレッシュなゲーミングエクスペリエンスを提供してくれている。
スケールも大きくなった『WRCジェネレーションズ』はラリーファンとラリーファンになりたい新規プレイヤーたちのための作品だ。KT Racing時代に相応しいフィナーレであり、マルチプレイヤーモードを中心に長く楽しめるだろう。
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