中田ヤスタカが考える“J-POP”
——あらゆるジャンルの音楽が交錯するフェス「Red Bull Music Festival Tokyo 2017」に出演するわけだけど、そもそも“音楽ジャンル”という枠組みについて、何か思うところはある?
例えば、EDMのアーティストの中にはEDMって言われるために音楽活動してる人もいるし、自分ではEDMとはちょっと違うと思いながらもEDMのフェスに出てる人達もいるよね。
でも“EDMのフェスに出てるんだけどEDMって呼ばれたくない”っていうのはすごくよく分かる。“きゃりーぱみゅぱみゅはアイドルじゃない”って本人は言ってると思うんだけど、別に本当はアイドルでもいいはずなのね。要は“アイドル”という言葉をどうとらえてるかっていう話だと思ってて。
——最近、ソロワークスの発表が活発になっているけど、例えば中田さんの音楽がJ-POPと呼ばれることについてはどう思う?
仮に僕が「J-POPのアルバムを出します」って言うと、曲を聞いて「これJ-POPじゃないじゃん」って否定する人と、「今のJ-POPってこうなんだ」って受け入れる人に分かれると思うんだよね。言葉で音楽を規定する精度には限界がある。
ただ、今のJ-POPシーンの中に僕の作品が混ざった時に、「もうこれがJ-POPってことでよくない?」って思う人が増えたら面白いなと思ってる。
僕の感覚だと、日本に住んでないと作ることが出来ないであろう音楽で、且つ、商業的に成功した音楽が“J-POP”なんだと思う。だから売れなかったらいろんな名前を付けて呼べばいいし、売れたら全部J-POPになっちゃう。だから「売れないポップス」という言葉は無いと思ってる。「売れないアイドル」という言葉と一緒で。人気のある人のことをアイドルと呼ぶはずだから、本当は。だから売れなかったらJ-POPにはなれないんだろうね。
——最近のソロワークスを聴いて印象的だったこととして、チップチューン(※旧来のゲーム機から出る音、いわゆる「ピコピコ音」のような音色を用いた音楽)的な要素を積極的に取り入れてたね。
チップチューン自体は昔からずっとやってることで、同時に僕からすると打ち込みで音楽を作ること自体が、ゲームをやってるみたいな感覚なんだけどね。
そうやって出来た作品が、例えば生音しか聞かないような人にも「これだったら聞ける」って思ってもらえるといいなと思う。
チップチューンに限らず、そうやって僕の作品をキッカケにあたらしい入口が見えた、っていうものを作りたいなってずっと思ってて。そういう入口として、8ビット・16ビット・32ビットぐらいの感覚の音を敢えてたくさん使ったね。
街のカルチャーは案外“オタク”がつくってる。
——チップチューンやゲーム音楽というと、いわゆるオタクカルチャーっぽい印象がある人も多いと思うけど、中田さんの場合それと同時に原宿のエッジーなファッションカルチャーなんかが両立できていたりするよね。
でも実はそのふたつのカルチャーは、リアルな東京の街ではそんなに交わっていないんじゃないか、という気も。
秋葉原とか渋谷とか原宿とか、カルチャー的にキーになる街は、それぞれ交わらない別ものだと思っている人も多いけど、僕はそこに共通点もあると思う。
確かに“秋葉原に行く人”と“原宿に行く人”みたいに、その街を訪れる人を見るとあまり共通点はないんだけど、でも街で物を提供してる側の気持ちになると、街同士に共通点があると思ってて。
秋葉原は僕も本当によく行くんですけど、「すっごい少量しかないけどこれ欲しい人いるでしょ」ってすごく少ない物を売る店があったりとかして、そういうのって原宿のマンションの一室で作ってるすっごいトガった服屋さんと同じ考え方だと思うんだよね。誰かに認められるためとか需要のためっていうより、むしろ自分がそれを見たくて物を作り出していて、そこに少数だけどすごく大好きな人がついて来る、という構図。
それぞれの街は、表面上は違うんだけど、街のカルチャーを作っている人たちの感覚は、やっぱりどれも“オタク”だと思うんだよね。僕は渋谷には音楽オタクとして行ってるし、秋葉原に行くのは機材のオタクとしてであったり、原宿ならファッションオタクとして。「ファッション好き」っていうレベルじゃなくて、オタクのレベルまで突き抜ける、そういう価値観が楽しくて。
じゃあ、渋谷、原宿、秋葉原へ行く中田ヤスタカに、ついてってみよう。
それぞれの街に、それぞれのオタクとして訪れると語る中田。今回は普段の中田が行く街、行く店を普段どおり辿ってもらい、そこについていってみることに——
渋谷|Rock oN Company
ここは、渋谷にある「Rock oN Company」という楽器屋さん? なのかな? まぁ間違いなく楽器屋さんではあるんだけど、ギターとかドラムとかバイオリンとか、そういう楽器とは全然違って、ご覧の通りスタジオ用品の店。
でも、いま音楽を作っている人たちにとってはこういう店も普通に“楽器屋さん”って思えるのかな。
自分で音楽作りをする人のための店で、結構プロもよく使ってて、居心地はいい。新しいものを試せるから。
原宿|竹下通り
原宿の近くに引っ越したのが19歳くらい。それから十年間住んでたんだけど、原宿には自転車で毎日通ってて。原宿に自転車で行けるってカッコいいだろ、みたいな気持ちを出しながらペダルを漕いでたんだけど(笑)。
あの頃できたファッション業界の友達とか、当時はまだ店頭でレジ打ってたような人達が、いまではそれぞれ立場も変わって、いろんなことがやれるようになったてて、そういう繋がりをいまも大事にしてる。僕の原点だね。
アソビシステム(※中田の所属事務所)の社長だって、僕が出会ったときは古着屋やってたからね。古着屋やりながらイベントもやってる頃に知り合って、いつの間にか会社になって、僕もそこに所属するようになったけど。
やっぱりそういうストリート感というか、自分が自転車漕ぎながら巡ってたいろんな場所で出会った人たちの輪の中で今も活動できてるのが、すごい楽しい。
秋葉原|スーパーポテト
秋葉原の「スーパーポテト」。ちっちゃい頃に感じた「ゲームが欲しい」っていうワクワク感とか、手に入れたワクワク感とか、そういうワクワクを思い出す楽しみが、いま、ここに来るとある。
そうやってあの頃の感覚を取り戻しに来てるっていう部分もあるんだけど、実際にいっぱい買って集めるのもすごい好き。それはそのゲームが「遊んで面白い」っていうこととは別の話で、その物自体の形だったり色だったりも含めて、手に取りたくなる。そういう出会いを求めて、ここによく来る。
「街」を好きになる / 街が「好き」を許容する
僕は金沢で生まれ育ったんだけど、東京という場所に来て好きなものを見つけたというよりは、好きなものがあるから東京に来たっていう感じ。
だから渋谷も原宿も秋葉原も、本当に毎日行っても全然楽しい。やっぱり日々変化するし、道を歩いていても「お前よくそんなことしたな!」って思うような面白い人がいっぱいいるから。
おかげで“自分が好きなものに正直でいていいんだな”っていう感覚になれる。そうやってみんなが、“好きなものを好きでいていい”っていう自信が持てるのが、良い街だと思うな。うん。