F1

デイモン・ヒルが語る長距離移動の過ごし方

F1引退後もSky Sports解説者として世界を飛び回る1996年ワールドチャンピオンが快適な旅のためのヒントを明かす。
Written by James Roberts
読み終わるまで:5分公開日:
引退後もSky Sportsの解説者として多忙な日々を送るデイモン

引退後もSky Sportsの解説者として多忙な日々を送るデイモン

© Press

1996年のF1ワールドチャンピオン、デイモン・ヒルは現役時にWilliams/Arrows/Jordanといったチームを渡り歩きながら通算22勝を挙げた。デイモンは90年代の大半においてミハエル・シューマッハの好敵手として目まぐるしくも充実したF1キャリアを過ごしたあと、1999年に現役を引退している。
しかし、F1引退後も彼にとって世界中を旅する日常は大きく変わってはいない。現在、デイモンは同じ英国出身の元F1ドライバーであるジョニー・ハーバートやマーティン・ブランドルと共にSky SportsのF1解説チームの一員として各GPの現場に姿を現している。つまり、彼にとっては今もアブダビやシンガポール、サンパウロやソチなど、世界中のGP開催地を飛行機や列車、車で移動することが日常生活の大部分を占めているのだ。
そんなデイモンは長距離移動をスマートかつ快適に過ごすためにどんなアイディアを用いているのだろうか? 自叙伝『Watching the Wheel』を上梓したばかりのデイモンにインタビューを試みた。
デイモン、まずはあなたにとっての旅の必需品を教えてください。
今はスマートフォンだね。ちょっと前は、パスポートやクレジットカードがあれば何でもできると思っていた。もちろん、銀行にお金があるのが前提だけど。あとはジーンズにTシャツ、それに快適なシューズといったところかな。以前、息子のジョシュがニュージーランドでレース活動していた時代は、必ずPatagonia製のパーカを携行していた。暖かい上に防水性も高いから、長年重宝していたよ。
ファーストクラスに乗って旅をしたことはありますか?
ファーストクラスに乗ったことはあるけれど、あれは分不相応なお金の浪費としか思えないね。というのも、快適性という意味ではクラブクラス(編注:British Airwaysが長距離便に用意しているビジネスクラス相当のシート)がほぼ完ぺきだからさ。でも、自分が超有名人でプライバシーを確保する必要があるのなら、ファーストクラスはその出費に見合う価値があるだろうね。ゆっくり休息をとりたいのに、他の乗客からひっきりなしにサインをせがまれて困っているのなら、ファーストクラスへ行けばひとりになれる。とはいえ、客室乗務員からサインをせがまれることからは逃れられないけどね!
ファーストクラスは分不相応なお金の浪費としか思えないが、プライバシーを確保する必要があるのならその出費に見合う価値はあるだろう
デイモン・ヒル
これまで様々な国を訪れたわけですが、最も思い出深い旅は?
真っ先に僕が思い浮かべるのは、東京をはじめとした日本各地を移動したことかな。アジアでは、かつてマカオのF3レースにも出たことがあるし、香港あたりも行ったことがある。あと忘れられないのは、キャリア初期によく訪ねたスコットランドのノックヒル。F3やF3000で駆け出しの時代は、それこそ英国全土のあらゆる場所に行ったんじゃないかな。他には、ブラジルやインドのような国に行けたのも良かった。こういう土地を訪ねると、それまでの価値観が覆されるし、やはり他の国を訪ねて異文化を実際に経験することは重要だと思うね。自分の心を広げてくれる、というか。
デイモンは日本を愛し、鈴鹿でのレースを愛した

デイモンは日本を愛し、鈴鹿でのレースを愛した

© Williams

これまでで最も美味しかった食べ物は?
今の僕はベジタリアンなんだけど、以前に日本で寿司を食べたことがある。寿司は本当に素晴らしい料理だね。インド料理も好きだよ。世界中のいろんな場所で現地の人々が普段食べているものと同じ食事を摂ってきた経験は、僕の人生のハイライトだね。
機内でUSオープンを題材にしたドキュメンタリーを見て号泣してしまったんだ。あれはみっともなかったね!
デイモン・ヒル
ロングフライトの時間の潰し方は?
僕は主に読書をして過ごしているね。たまに映画を観る時もあるけど、観るものは主にスポーツ系のドキュメンタリーと決めている。スポーツを題材に取扱ったドキュメンタリーは非常に心動かされるし、感動的だ。以前、機内でUSオープンの歴史を扱ったドキュメンタリーを見て号泣してしまったことがある。あれはみっともなかったね! あとは、マン島TTレースを題材にした『Closer to the Edge』は機内で2度も観たことがあるし、サーフィンをテーマに据えた映画も好きだね。
快適な移動を過ごすためのヒントはありますか?
飛行機の移動はどうしても待ち時間が増えてしまうので、本は1冊持っていくことをおすすめするよ。待ち時間に何もやることがないのは最悪だからね。長いディレイで待機しなければならない場面は多々あるし、そういう時に本があると助かる。空港の待合所ではスマートフォンを充電できるスポットがない場合もあるし、本はエッセンシャルだね。
あとは、周囲の雑音から解放されるためにイヤープラグ(耳栓)も欠かせない。空気で膨らませるネックピローとアイマスクも忘れてはいけないね。
デイモンは幼少期から父グレアムと共に旅を重ねてきた

デイモンは幼少期から父グレアムと共に旅を重ねてきた

© Williams

最後の質問ですが、これまであなたは世界各地で様々なレンタカーに乗ってきたと思います。あなたは「レンタカーほど運転しにくい車はない」という意見を支持しますか?
昔だったら「イエス」と答えていたところだけど… 今はそうとは言えないね。僕が思うに、レンタカーもかなり進歩しているよ! モータースポーツ界では長らくレンタカーは皮肉の対象だったけれど、レンタカー会社もただその状況に甘んじていたわけじゃないってことだね。
デイモン・ヒルの自叙伝『Watching the Wheels』は現在発売中。