Torey Pudwill poses for a portrait at Red Bull Hartlines in Hart Plaza in Detroit, MI on May 12, 2017.
© Ryan Taylor/Red Bull Content Pool
スケートボード

史上最長のバックテールをメイクしたトリー・パッドウィルの正体!

近年SNSで大きな話題となった“世界最長バックサイド・テールスライド映像”でもお馴染みのスケーター、トリー・パッドウィルについて。
Written by Matsui Hiroki
読み終わるまで:8分公開日:

インドアパークでスキルを磨いたアマチュア時代

2021年現在31歳のトリー・パッドウィルは、アメリカ合衆国カリフォルニア州シミバレー出身のプロスケーター。7歳の時にスケートを始めた彼は、日々、自宅の周りで練習をするごく普通のスケートキッズだった。しかし、あるスケートパークに通い詰めたことがきっかけとなり、そこからわずか数年後にはシーンで注目されるスキルフルなスケーターへと進化を遂げた。
Torey Pudwill

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© Seu Trinh / Red Bull Content Pool

彼を鍛え上げたパークとは、シミバレーにあったインドアスケートパークの"SKATELAB(残念ながら現在はクローズとなってしまった)”。スケートに夢中になっていたトリーは、1997年のSKATELABのグランドオープンから連日パークに通い詰め、時には時間を忘れ朝の10時から夜10時まで集中して練習をし続けたこともあったという。
そしてSKATELABでのライディングを十分に身につけた2002年、SKATELABで開催された世界規模のアマチュア・スケートコンテストDAMN AMで見事ゴールドメダルを獲得。異常なまでの集中力でスケートと向き合って磨き続けたスキルを世界に証明することに成功した。

早熟の天才としてShorty'sへ加入

DAMN AMでのゴールドメダル獲得により一躍スケート界の注目の的となった彼は、同年12歳の時に自身初のスポンサーとして、スケートボード・ハードウェアブランド、Shorty’sからのサポートが決定する。Shorty’sはShorty’s skate Parkというプライベートウェアハウスの鍵をトリーに渡し、自由に滑ることができるよう手配。SKATELABとShorty’s skate Parkという最高のインドアスケート環境を手に入れたトリーは、さらにライディングの完成度を高めていった。
『Torey Pudwill - Shorty's How to go pro』
  • トリーが15歳の時に発表されたShorty’sのアマ・スケーターをフィーチャーしたビデオ。ほぼ全てのセクションでフリップインのトリックが使われたテクニカルなレッジのラインは必見!!

Almost Skateboardsで掴んだプロキャリア

当時大人気スケートブランドであったShorty’sのアップカマーとして活躍していたトリーだったが、別の環境で自分を試すためShorty’sを離れ、新たなステージへと進むことを決意。その後、Alien Workshop(※1)やChocolate Skateboards(※2)からのデッキサポート期間を経験する。
Almost Skateboards

Almost Skateboards

© Almost Skateboards

そして2007年、Almost Skateboards(※3)の設立者の一人であるデーウォン・ソン(※4)にフックアップされる形でAlmost Skateboardsにアマ・ライダーとして加入。そして翌年2008年には念願のプロモデルが発表された。着実に築き上げてきたキャリアが実を結び、ついにトリーはプロスケーターとしての活動を開始した。

オリジナルブランドGrizzly Griptapeをスタート

トリーのスケートキャリアを語る上で欠かせないのが自身で立ち上げたブランド、Grizzly Griptapeの存在。2010年にDIAMOND Supply Co.(※5)の姉妹ブランドとして設立されたGrizzly Griptapeは、今や世界の名だたるトップスケーターをチームに抱えるデッキテープブランドにまで成長した。
Grizzly Griptape

Grizzly Griptape

© Grizzly Griptape

Grizzly Griptapeというブランドの原型は、彼が12歳だった2008年にまで遡る。当時からオリジナルデザインのデッキテープカスタムやTシャツ制作が好きだったトリーは、プロになってからもDIYプロダクトの制作を続けていた。それを見たDIAMOND Supply Co.のCEOがトリーのオリジナルアイテムを気に入りブランド化を持ちかけた。立ち上げ当初はトリー自らデッキテープをカスタムして販売するDIYスモールブランドであったが、2015年からは単独ブランドとして独立するほどに規模を拡大。
Lil Wayne and Torey Pudwill

Lil Wayne and Torey Pudwill

© Tom Curran

現在はデッキテープだけでなく多くのブランドやアーティストとのコラボアイテムをリリースするなど、異業界からも注目されるビッグブランドとなっている。

スケート界のスーパーチームPLAN Bへ移籍

2011年、トリーはAlmost Skateboardsを離れ、ダニー・ウェイ(※6)率いるスケートカンパニー"PLAN B"へと移籍。家族のような関係性を築いていたAlmost Skateboardsを去るという決断は人生で一番難しい決断だったが、Almost Skateboardsの設立者の1人であるロドニー・ミューレンの「自分が楽しめることを全力でやるべき」という言葉を受け、スケート界のスーパースター・チームの一員となるべくPlanBへの移籍を決めた。周囲の期待に応えるように、同年発表された映像がこちら。
『Torey Pudwill's Big Bang』
  • 再生回数580万回を誇るトリーのフルパート映像。2:39~3:55~のバックサイドテールスライドの完成度の高さはさすがの一言。

史上最長のバックテール映像は必見!

トリーはAlmost SkateboardsやシューズブランドDVSのチームメイトとして親交のあるデーウォン・ソンと2018年に再びチームアップし、新たなデッキブランドThank You Skateboardsを立ち上げた
ビッグカンパニーであるPlanBを離れたトリー。そして、28年間在籍してきたスケートカンパニーを去るデーウォン。
世界トップクラスのテクニカルスケーター2人がタッグを組み新ブランドを立ち上げたとなれば、当然ドロップされる映像には並々ならぬ期待が寄せられることが避けられない。結果から言ってしまえば、世界中のスケーターから寄せられる大きすぎる期待は良い方に裏切られた。それが下で紹介する、スケートシーンの話題をかっさらったThank You Skateboardsのプロモ映像第1弾だ。
デーウォンの超絶マニュアルコンボだけでもお釣りが来るほど見どころ満載だが、本映像の白眉はやはりラストのトリーの世界最長記録のバックサイド・テールスライド。スライドさせた長さはなんと84フィート(約25m)! 普段は8インチのデッキに乗るトリーだが、この撮影の時は8.25インチまでデッキをサイズアップし、スライド時にデッキに乗れる幅を広く取る為テールとノーズを逆にして挑んだという逸話がある。もともとテクニカルなレッジトリックに定評のあるトリーではあるが、この規格外のテールスライドには今後のさらなる進化を感じさせるに足る映像的説得力がある。
常に自分の意思で時代を切り拓いゆく彼からドロップされる次なるニュースが待ち遠しい。
(※1)Alien Workshop
90年にアメリカ合衆国オハイオ州デイトンで、クリス・カーターとマイク・ヒルによって設立されたスケートデッキ・ブランド。
(※2)Chocolate Skateboards
1994年にGIRL Skateboardsの姉妹ブランドとして誕生したデッキブランド。
(※3)Almost Skateboards
フリースタイルのレジェンド、ロドニー・ミューレンとデーウォン・ソングが2003年に立ち上げたスケートデッキブランド。
(※4)デーウォン・ソン
2006年にスラッシャー・マガジンが選出するスケーター・オブ・ザ・イヤーを獲得したプロスケーター。テクニカルなライディングで世界中のスケーターに多大な影響を与えた。超絶マニュアルトリックは必見。
(※5)DIAMOND Supply Co.
サンフランシスコ出身のスケーター、ニコラス・ターシーにより、90年代後半に発足したハードウェアブランド。
(※6)ダニー・ウェイ
91年にスラッシャー・マガジンが選出するスケーター・オブ・ザ・イヤーを獲得したカリフォルニアのプロスケーター。ヘリコプター・ドロップや万里の長城超えのb/s 360など、世界中に衝撃を与えるビッグトリックを成し遂げたスケート界のレジェンド。
(了)
◆Information
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