A photo of the playing stage at The International 2018
© Valve
eスポーツ

世界的に有名なesportsのライバル関係

esportsの歴史の中には数々の名勝負が存在するが、名勝負だけがシーンを盛り上げてきたわけではない。プレイヤーやチーム間の激しいライバル関係をいくつか紹介しよう。
Written by Phil Brown
読み終わるまで:10分Published on
esportsシーンのグラッジマッチ(grudge match / 遺恨試合)ほどスペシャルなものはない。
プロスポーツに勝るとも劣らない億単位の賞金とシーン最大級のトロフィーだけでも十分なモチベーションになるが、対戦台やステージの反対側に座っている人物との長い歴史はそれらを上回るモチベーションになる。
ビーフ個人的敵対心裏切りなどからesportsシーンには様々なライバル関係が生まれてきたが、その端緒が何であれ、ライバルマッチの観戦は何の歴史も存在しない2チーム・2人の対戦の観戦とは比べものにならないほど魅力的だ。
esportsの長い歴史の中には数多の印象的なライバル関係が存在する。プレイヤーとプレイヤーのライバル関係があれば、チームとチームのライバル関係もあり、さらには複数のタイトルにまたがる組織と組織のライバル関係もある。
esportsは伝統的なスポーツよりもロースターの入れ替わりやチームの昇格と降格のペースが早いため、時間の流れの中で目立たなくなっていくライバル関係も少なくないが、名勝負と共に記憶の中には永遠に残り続けるだろう。

Natus Vincere vs. Alliance:『Dota 2』

Natus Vincere

Natus Vincere

© Valve

『Dota 2』シーン最大のライバル関係はNatus Vincere(ウクライナ)とAlliance(スウェーデン)だ。TI3以前から世界を代表する強豪同士として数回対戦していたが、TI3が現在のライバル関係を生み出すきっかけとなった。
今もまだ『Dota 2』ベストバウトとして多くの人に評価されているTI3グランドファイナルで実現したこのカードは、Gustav “s4” Magnussonの “Million Dollar Dream Coil(ミリオンダラー・ドリームコイル)” が決め手となり、AllianceがNaViを3-2で下した。アンビリーバブルな形でビッグマッチを落としたNaViは当然ながら悔しさを募らせた。
TI3後しばらくは誰もが2チームのさらなる対戦を望むようになり、実際に複数回対戦が実現し、そのすべてが両チームの優れた能力を証明する互角の名勝負になった。この頃の《Natus Vincere vs. Alliance》は常に大接戦になったため、レアル・マドリッドとバルセロナの試合になぞらえて "『Dota 2』のエル・クラシコ" と呼ぶファンもいた。
やがて、ロースターの変更に伴って両チーム共にTI優勝候補から外れるようになったが、それでも《Natus Vincere vs. Alliance》はスペシャルマッチとして今も注目されている。優勝は逃したものの揃ってTI9に出場した両チームが再び最高の舞台で熱い戦いを見せてくれる可能性はゼロではない。

Mang0 vs. Armada:『スマブラDX』

ファンの間で高い人気を誇るMang0

ファンの間で高い人気を誇るMang0

© Long Nguyen/Red Bull Content Pool

『スマブラDX』シーンでは、 “スマブラ五神” 同士の激しい戦いが幾度となく繰り返されてきたが、Adam “Armada” Lindgren(スウェーデン)とJoseph “Mang0” Marquez(米国)の対戦ほど激しく火花が散る対戦はない。
2人のライバル関係は、ヨーロッパで圧倒的な強さを見せていたArmadaの米国デビュー戦となった第1回GENESIS(2009年)から始まった。
ウィナーズファイナルで初対戦はArmadaが接戦をものにし、Mang0をルーザーズへ落としたが、Mang0がそこからグランドファイナルへ進出して再戦が実現した。2勝しなければならなかったMang0が逆転優勝を果たしたこの対戦はすぐにクラシックマッチの仲間入りを果たし、同時にesports史上最強のライバル関係のひとつを生み出した。
長年に渡り2人は幾度となく対戦を繰り返し、そのすべてが素晴らしい内容となったが、最大の舞台となったのが数万人が観戦したEVO 2017のグランドファイナルで、この日はArmadaが難なく勝利を収めた。
しかし、翌年のEVO 2018でも2人の対戦が実現した。同年限りで『スマブラDX』のトーナメントシーンからの引退を発表していたArmadaはEVO 2018のルーザーズファイナルでMang0を再び下し、このライバル関係を勝利と共に終えた。

Flash vs. Jaedong:『StarCraft』

JaedongとFlashは激しいバトルを繰り返した

JaedongとFlashは激しいバトルを繰り返した

© Cameron Baird/Red Bull Content Pool

多くのファンがesports最大のライバル関係としているこの2人を取り上げずにesportsのライバル関係を語ることはできない。
Lee "Flash" Young HoLee "Jaedong" Jae Dongは共に韓国出身の『StarCraft: Broodwar』プロプレイヤーで、複数年に渡り何回も記録されてきた2人の激戦のいくつかは『StarCraft』ベストバウトとしてesportsの歴史に残り続けている。
当時若き天才としてトップレベルで活躍していたFlashとこちらもまだ若かったJaedongが初対戦した2007年以降、2人は素晴らしい接戦を積み重ねていった。
当時のJaedongは誰が相手でも勝利できる実力を備えていたが、FlashはそのJaedongを常に限界まで追い込み、さらには定期的に勝利も収めていた。
韓国の『StarCraft』シーンの構造上、2人は1ヶ月で複数回対戦していたが、どちらの実力が上なのかは最後まで分からなかった。どちらかがボロ負けすれば、次の対戦でリベンジが確認できた。
彼らの対戦はすべてが観戦に値するクオリティで、書き切れないほど多くのクラシックマッチが生み出された。esportsの頂点に位置するライバル関係という意味では、この2人に匹敵する関係は存在しないと言っても良いだろう。

ウメハラ vs. Justin Wong:『ストリートファイター』シリーズ

EVO 2004で記録された《EVO Moment #37》(日本では “背水の逆転劇” とも呼ばれる)はesports史上最大の逆転劇だ。
体力ゲージが1ドットまで追い詰められたウメハラJustin Wongの “スーパーアーツ” (必殺技)を連続ブロックして大逆転勝利を収めたこのプレイは単純に常識を超越している。
そして素晴らしいことに、これは格闘ゲームのトッププレイヤーとしてすでに世界的に有名だった2人の初対戦だった。ここから『ストリートファイター』シリーズで活躍を続ける2人のライバル関係が生まれたのだ。しかし、2人の関係はこの対戦だけで語りきれるものではない。
その後も、2人は『ストリートファイター』シリーズを通じて何回も対戦を繰り返してきた。世界最大・最高の舞台で激しくしのぎを削ってきた2人は、どちらかがどちらかを大きく上回る時期もいくつかあったにせよ、互角であり続けている。
EVO 2009のグランドファイナルでの対決(ウメハラが勝利)も非常に素晴らしく、この熱戦は『ストリートファイターIV』でesportsへ再進出したばかりだったカプコンにとって最高のプレゼントになった。
《EVO Moment #37》レベルのスペシャルな瞬間を2人が再び生み出す確率は低く、2人の対戦がもう二度と実現しない可能性もあるが、《EVO Moment #37》には、これだけで2人をesports史上最大のライバル関係のひとつに押し上げられるインパクトが備わっている。

FaZe Clan vs. OpTic Gaming:『コール オブ デューティ』

esportsシーンには複数のタイトルにまたがる組織同士のライバル関係が存在するが、《FaZe Clan vs. OpTic Gaming》はesportsタイトルではなく、黎明期のYouTubeから始まったことで知られている。
YouTube上で『コール オブ デューティ』のゲームプレイ動画のコミュニティが巨大化し、素晴らしいスナイプやショット、キルのシーンを編集した動画 “モンタージュ(Montage / フラグムービーの1種)” が次々と公開されるようになると、モンタージュ制作のトップチームとしてFaZe ClanとOpTic Gamingが有名になり、ファンの数視聴回数で激しく競い合うようになった。
そして、共にチームの規模が大きくなり、『コール オブ デューティ』のプロトーナメントシーンに参加するようになると、ライバル関係はさらに激しくなっていった。
当時の『コール オブ デューティ』のトーナメント会場を訪れていたファンの多くはYouTube時代からFaZeとOpTicを良く知っており、大半がどちらかを応援していたため、2チームの対戦は毎回素晴らしい雰囲気となった。
また、ロースターの入れ替えやグランドファイナルでの対戦を繰り返していた彼らは『コール オブ デューティ』の初期トーナメントシーンの人気拡大にも貢献した。
近年は両チームがそれぞれ異なる理由で苦しんでいることからライバル関係は沈静化している。
もちろん、《FaZe Clan vs. OpTic Gaming》は今も多くの人が興奮を覚えるカードだが、現在のOpTic GamingがImmortalsの傘下だということもあり、来シーズン以降、このライバル関係は徐々に消えていくのではないかと噂されている。
今のうちに楽しんでおきたい。

SK Telecom T1 vs. KT Rolster:『StarCraft』&『League of Legends』

SK Telecom T1の成功は激しいライバル関係の結果と言える

SK Telecom T1の成功は激しいライバル関係の結果と言える

© Riot Games

韓国のesportsシーン最大のライバル関係と言えるのが、複数のタイトルに渡って続いている通信企業を母体に持つ2チームの関係だ。
SK TelecomKT(旧国営企業 “韓国通信”)は共に韓国を代表する通信企業で、共にesportsを長年支えてきた。両社は通信企業としてだけではなく、esportsチームとしてもライバル関係にあるため、どちらが上なのかは常に世間の話題になってきた。
両社のライバル関係は『StarCraft』時代に始まったが、韓国のesportsシーンの動向に合わせて『StarCraft』から『League of Legends』へシフト。やがて韓国はもとより、世界的に有名なトップチームとしてシーンに君臨することになった。
esportsファンなら良く知っていることだが、SK Telecom T1はThe Worldsを3回制した経験を持つ史上唯一の『LoL』チームで、『LoL』シーン最大の成功を収めたチームとして有名だが、彼らが存在しなければ、KT Rolsterが同レベルの成功を収めていただろうと言われている。
もちろん、収めてきた成功のスケールはSK Telecom T1がKT Rolsterを上回っているが、KT Rolsterも実力は十分に備えており、ライバルに続く好成績を収めることも少なくない。
2019シーズンは両チームにとって理想とは言えない状況なので、ライバル関係が取り上げられることも少ないが、LCK 2019 Summer SplitではSK Telecom T1が2勝している。
Twitterアカウント@RedBullGamingJPFacebookページをフォローして、ビデオゲームやesportsの最新情報をゲットしよう!