Alexander Titarenko performs during the photo shoot of Red Bull Art of Motion in Matera, Italy on August 23, 2019.
© Mauro Puccini/Red Bull Content Pool
フリーランニング
フリーランニングとパルクールの違いを知る
Red Bull Art of Motionのスポーツディレクターが長年の疑問に答えてくれた。
Written by Matthew Ogborn
読み終わるまで:5分Published on
フリーランニングと呼ぶべきなのか? パルクールと呼ぶべきなのか? この2つは別物なのだろうか? それとも同じなのだろうか?
高層ビルやマンションの屋根の上を走り抜けるアスリートたちの姿を捉えた動画や飛行機に乗り遅れないようにミュンヘン空港を走り回るアスリートを追った動画などがバイラルヒットになったこともあり、フリーランニングとパルクールはここ20年で大きく成長した。
初心者にはフリーランニングとパルクールは同じスポーツに思えるだろう。しかし、実際は細かい違いがいくつか存在する。
Red Bull Art of Motionのスポーツディレクターを担当しているニコ・ウルチェクはその違いを訊ねるのに最適な人物だ。ウルチェクは9年前からこのイベントを手がけながら、数多くのアスリートのキャリアを築き上げてきた。
今回はRed Bull Art of Motion 2019を終えたウルチェクに両者の違い歴史などについて話してもらった。
- パルクールは軍事訓練から派生したスポーツですが、すでにそのルーツを大きく超えた存在になっています。
色々な意味でルーツを超えた存在になっていますね。軍もまだ取り入れていますし、世界各地の特殊部隊や警察がワークショップを積極的に行っています。ですが、パルクールは今やスポーツカルチャーアートへ進化しています。
パルクールという単語はわたしたちの生活の中に浸透していて、多くの人がフリーランニングとパルクールを同一のものとして考えるようになるほど広まっています。
Red Bull Art Of Motion 2019
Red Bull Art Of Motion 2019© Mauro Puccini/Red Bull Content Pool
— フリーランニングがパルクールに含まれるようになった経緯を教えてください。
自分たちのスポーツのルーツがどこにあるのか、またダヴィッド・ベル(David Belle)がパルクールをどのように世界へ広めていったのかを調べていくと、パルクールはA地点からB地点までを効率良く移動するための手段だったということが分かります。
かつてのパルクールはスピード効率が重視されていて、「走る・跳ぶ・登る」が主体でしたが、そのような方向性のパルクールが推し進められていくと、当然の結果として、それとは違う方向性のパルクールも生まれてきます。
セバスティアン・フーカン(Sébastien Foucan)がよりインターナショナルな存在になることを目指して “フリーランニング” と名付けたパルクールがそれです。
フーカンはクリエイティビティの要素を強めたパルクールを提唱しました。あらゆるムーブが取り入れられるようになり、フリップをメイクするアスリートが出てきました。すぐにツイストも追加されました。全員が誰もメイクしたことがないトリックについて考えるようになりました。
Red Bull Art of Motionはそのようなクリエイティビティを発揮するためのイベントです。フリーランニングイベントなのです。
- 今もフリースタイルとパルクールの間には大きな違いがあると思いますか?
5年前まではありましたが、今はほぼ同じものになっています。総称としてはパルクールが使われていますね。スノーボードは雪山を滑り下りてもパークでトリックメイクをしてもスノーボードと呼ばれますが、個人的にはパルクールとフリーランニングもひとつのスポーツになることを願っています。
分裂すべきではなかったですね。まとめてどう呼ぶべきなのかというのはまた別の問題ですので何とも言えませんが、ひとつのカルチャーとして世の中に広まっていくことが重要です。
ドミニク・ディトマソ
ドミニク・ディトマソ© Mauro Puccini/Red Bull Content Pool
— フリーランニングの方がよりしなやかでスピリチュアルなカテゴリーなのでしょうか?
個人的には “よりスピリチュアル” とは思いません。パルクールのアスリートにも違ったスピリチュアリティが感じられます。
パルクールのトップアスリートたちは数え切れないほど多くの時間をトレーニングに費やしてますし、命を落とすかもしれない高い建物の上でパフォーマンスをしています。僕に言わせれば、彼らも素晴らしくスピリチュアルなんです。
ですが、命を賭けているからスピリチュアルなのではありません。自分たちの限界を知っているという点がスピリチュアルなのです。この点についてはフリーランナーも同じです。
フリーランニングとパルクールの違いはスタイルにあると思います。パルクールと比較すると、フリーランニングはトリックムーブクリエイティビティを重視しています。一方、パルクールは効率性スピードテクニックを重視しています。
フリーランニングは自由なフロウを楽しむアートフォームです。ムーブとムーブをどう繋げるかが大切です。移動距離や移動時間だけではなく、ルックス空中でのフィーリングも重視されています。ここが大きな違いです。
- Red Bull Art of Motionはどのように進化していますか?
今年からロケーションをギリシャ・サントリーニ島からイタリア・マテーラに変更し、コースとフォーマットも変更しました。
女子の出場枠を6に増やし、男子2ヒート、女子1ヒートを開催したあと、男女混合のファイナルを開催しました。女子と男子は同レベルで競い合えると思っていますし、今年のフォーマットは未来への第一歩というところですね。
すでに14歳、15歳の女子アスリートがビッグムーブをメイクするようになっていますので、彼女たちが出場年齢に達するのを楽しみにしているところです。アスリートたちは急成長していますし、シーンは世界に広がっています。
日本モロッコタイロシアからもアスリートが参加していますし、トップアスリートと互角に渡り合えるヤングタレントも出てきています。
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