Runners battle snow and mud early on with a 4.3-mile climb.
© Corinna Halloran
フィットネス

ランニング:100マイルレース基礎知識

日本でも緩やかに人気を集めている100マイル(160km)レースには睡眠不足や補給、トイレ以外にも様々な困難が待ち受けている。デビュー前に覚えておきたい基礎知識をリストアップしておく。
Written by Lisa Jackson
読み終わるまで:8分Published on
かつて、フルマラソン完走は限られたランナーだけに許された英雄的偉業と見られていた。しかし、近年では驚くほど多くの人が42.195kmを完走するようになっているため、より高難度で新鮮なチャレンジを探す人が増えているのは当然の流れと言えるだろう。
そのチャレンジのひとつが、多くの人が「ニューマラソン」と呼んでいる100マイル(160km)レースだ。

オリジナル缶

レッドブル エナジードリンク

Red Bull Energy Drink
フルマラソンの4倍近い160km を走破するこのレースの魅力について、UK AthleticsランニングコーチとChallenge Runningレースディレクターを兼任するリンドレー・チャンバースは次のように説明する。
「モチベーションが高く、意欲に満ちている人は、持久力やスピードの限界を見極めるために自分を追い込もうとします。彼らは失敗のリスクがあるチャレンジに挑戦したいんです。そうでなければ真のチャレンジにならないからです」

100マイルレースの内容

Western States 100を走るレッドブル・アスリートのトム・エヴァンス

Western States 100を走るレッドブル・アスリートのトム・エヴァンス

© Gary Wang

通常、100マイルレースでは28〜40時間かけて160kmをノンストップで走ることになる。また、多くのレースにカットオフ(足切り)が存在するため、ランナーたちは夜を徹して走り続ける必要がある。さらには、エイドステーションの間隔が離れているため、キット(防水ジャケット、スペアの防寒着など)や食料飲料携行する必要もある。
「簡単なコースレイアウトのレースもあれば、スマートウォッチやGPSデバイス、紙のマップとコンパスなどでナビゲーションをしていくレースもあります」とチャンバースは説明を続ける。

どんなランナーに向いている?

山岳を舞台とする米国Hardrock Endurance Runのスタートシーン

山岳を舞台とする米国Hardrock Endurance Runのスタートシーン

© Matt Trappe

「多くのランナーが、フルマラソン完走を目標に少しずつトレーニングを重ねたあと、もっと新しいチャレンジが欲しい、またはフルマラソン自己ベスト更新のトレーニングが辛いので距離を変えようと考えるようになり、ウルトラマラソンという名の “ダークサイド” へ堕ちています」とチャンバースは語る。
一方、フルマラソン完走402回・100マイルレース完走34回以上を経験しているトラビス・ウィルコックスは次のように語る。
「100マイルレースはメンタルとフィジカルの両面で過酷だ。苦痛は避けられないし、ほぼ間違いなく途中で体調不良に陥る。100マイルレースでは少なくとも20%が完走できない。個人的には100マイルレースは通常のマラソンの16倍ハードだと思う」
「でも、100マイルレースではレース終了からしばらく続く大きな達成感を得ることができる。100マイルは長い。車を運転していると『車でも大変な距離なのに、自分は一体どうやって走りきったんだろう?』と不思議に思う時がある」

世界と日本の100マイルレース事情

英国では数多くの100マイルレースが開催されている。
舗装路限定(この種のレースでは反復性ストレイン損傷という問題に直面することが度々ある)やトレイル限定(木の根に躓いたり、泥に足を取られたりする危険が潜む)があり、さらにはCenturion Runningが主催するThames Path 100のような平坦な高速レースやLakeland 100のようなアップダウンの激しいレースもある。
A地点からB地点を目指して走り、スタート / フィニッシュ地点までバスで移動するポイント・トゥ・ポイント形式のレースは長時間になり、ロジスティックも大変だが、トラビスは次のように語っている。
「ポイント・トゥ・ポイント形式のレースはひとつの壮大な旅のような感覚なんだ。折り返し形式周回形式のレースはロジスティックがシンプルだが、一番楽なのは短距離の周回形式だ。ナビゲーションが問題にならないし、エイドステーションも簡単かつ定期的に使用できる」
日本でもトレイルランニング人気の高まりと共に100マイルレースが各地で開催されるようになっている。
毎年4月下旬に開催されている富士山の裾野をほぼ1周する『UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)』をはじめ、Patagoniaが協賛する『信越五岳トレイルランニングレース 〜パタゴニアCUP~』(2019年は9月中旬開催)など、トレイル中心のイベントが複数開催されている。
Quotation
モチベーションが高く、意欲に満ちている人は、持久力やスピードの限界を見極めるために自分を追い込もうとします
リンドレー・チャンバース(ランニングコーチ)

100マイルレースはどんな雰囲気?

The atmosphere is always  supportive, says Tinu Ogundari

The atmosphere is always supportive, says Tinu Ogundari

© Stuart March Photography / Centurion Running

「100マイルレースの雰囲気は最高で、活気互助精神に溢れているわ」と語るのは、100マイルレースに過去2回挑戦し、2016年のCenturion Autumn 100で初完走を記録した女子アマチュアランナーのティヌ・オグンダリだ。
South Downs Way 100Smaphire 100などに参加し、4回目の100マイルレースで初完走を記録したエマ・ルイスもティヌの意見に同意しつつ、次のように語る。
「スタートラインは静かな期待に満ちています。全ランナーがこれから立ち向かうタスクについて考えているからです。ウルトラランニングのコミュニティは比較的小規模なので、知り合いに会う機会も多いですね」

どんなトレーニングが必要?

トレーニングでは連日のロングランが必要

トレーニングでは連日のロングランが必要

© Miles Holden / Red Bull Content Pool

100マイルは途方もなく長いので、言うまでもなくフルマラソンを完走できるフィットネスが備わっていれば役に立つ。チャンバースは次のように説明する。
「フルマラソンから100マイルレースへのコンバートには、最短でも6〜9カ月のトレーニングが必要になりますが、これは順位より完走を目標にした場合です。速いタイムを目指すなら、12〜18カ月のトレーニングが必要になります」
「100マイルレースにはただの参加意欲ではなく、コミットメントが必要になる」と語るのはトラビスだ。そのため、当然ながらトレーニングは非常に厳しく、週4〜6回のランニングセッションをこなすことになる。
チャンバースが次のように説明する。
「100マイルレースのトレーニングはロングラン(2日連続セッションを含む)と様々な距離のスピードランヒルランテンポランを組み合わせていく必要があります。ロングランの距離を徐々に延ばし、50kmか100kmのトレーニングランかレースを数回こなしましょう」
Quotation
フルマラソンから100マイルレースへのコンバートには、最短でも6〜9カ月のトレーニングが必要になりますが、これは順位より完走を目標にした場合です
リンドレー・チャンバース
インターネット上には様々なトレーニングプランがあるので、日常生活に合ったプランやオンラインフォーラムで推薦されているプランを探して検討してみよう。ウルトラランニング専門コーチも有益なアドバイスを授けてくれる。

トレーニング中の怪我を防ぐには

トレーニング中に不調を感じたらすぐにフィジオに診察してもらおう

トレーニング中に不調を感じたらすぐにフィジオに診察してもらおう

© Mats Grimsæth / Red Bull Content Pool

チャンバースが説明する。
休息は極めて重要です。がむしゃらに走り続けるのはNGです。週1〜2日は完全に休みましょう。ペース / 距離 / 週合計距離の増加率は週10%程度で揃え、合計距離を減らすイージーな週を月1回は設けてください」
「怪我や不調でストレッチやマッサージ、フィジオの診察が必要なら、必ずそれらを受けてください」

レースの進め方

レース当日を迎えたら、以下のポイントを考慮して長距離に挑もう。
《ペース設定》
エマはペース設定が極めて重要だとしている。
スローペースでスタートして、自分のレースプラン通りに走りましょう。スタートから飛ばそうとする他のランナーに惑わされないようにしてください」
一部のレースではペースセッターの参加が認められている。ペースセッターは非常に大きな助けになる。ティヌが次のように付け加える。
「Centurion Autumn 100では途中までペースセッターに引っ張ってもらった。彼はタフなランナーだったし、わたしにはそういう存在が必要だった。彼がいなければ完走は無理だった」
《補給》
定期的な補給でエナジーレベルを保つ

定期的な補給でエナジーレベルを保つ

© Ian Corless / Red Bull Content Pool

「補給食とドリンクを定期的に少量摂りましょう。ビニール袋を携行しておけばエイドステーションで補給食を詰められる。あと、歩きながら補給すれば貴重なタイムをセーブできる」とエマはアドバイスしている。
《ドロップバッグ》
補給食やドリンク、各種ギア、着替えのウェアなどを詰めたドロップバッグはレースの成功を左右する重要なアイテムだ。エマが次のように説明する。
「ドロップバッグはコンパクトにまとめ、整頓しておくべき。レース中にレッドブル・エナジードリンク缶を探して、持ってくるのを忘れていたことに気づけば、かなり落ち込むわ」
「わたしはラミネートカードにレース中にするべきことや携行するアイテムのリストをまとめたメモを入れてあるから、グローブやヘッドライトを忘れることはないの」
《マインドセット》
完走する自分をビジュアライズしてマインドセットを持続させる

完走する自分をビジュアライズしてマインドセットを持続させる

© Dee Rand

レース中のマインドセットについて、エマは経験に基づいて次のようにアドバイスする。
「前に進むのが苦しい時は、繰り返し100までカウントしたり、完走する自分を想像したりしている。ほとんどの場合、30分も経てば元気を取り戻せるの」