Daniel Ricciardo takes the chequered flag during the Grand Prix of Austria at the Red Bull Ring on July 9, 2017.
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F1

F1基礎知識 Pt.2

ニューマシン製作に必要な期間とは? 現代のテクノロジーでも解析不可能なタイヤの謎とは? 知っているようで意外と知らないF1マシンの真実を解き明かす。
Written by Matt Youson
読み終わるまで:8分Published on
Red Bull TVがF1にまつわるあらゆる魅力を分かりやすく網羅した『ABC of Formula One』を公開した。
これを記念して、F1関連のいくつかの驚くべき事実を解説すると同時に、いくつかの俗説の誤りを正していく記事を2パートに分けて用意した。

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『ABC of Formula One』をRed Bull TVでチェックしつつ、以下の記事を読み進めてもらいたい

27分

フォーミュラ1 ABC

あらすじ: モータースポーツの一つであり、世界選手権もある“F1”。この動画では、F1の専門用語やルール、歴史やトップドライバーなど、全貌を徹底解説する。【過酷なスポーツの基本(シーズン1/日本語字幕)】

ニューマシン製作には18カ月を要する

多くの人は、F1チームが1年のうち約9カ月をかけて1シーズンを戦い、残り3カ月で翌年に使用するニューマシンの設計と製作を行うものと考えがちだ。
しかし、それは実態とは全く異なる。F1チームのファクトリーは決して止まらない
F1ファクトリーは、大量の予算と才能が一方からインプットされると、もう一方から新たなコンポーネントがアウトプットされる巨大機械のようなものだ。
F1では2週間のサマーブレイクを取ることが義務付けられているが、これは各チームのファクトリーの稼働を強制的に停止させるために他ならない。
F1チームのファクトリーは、マシンをさらに速くするためにあらゆる時間を惜しんでフル稼働している。ルールで強制的に稼働を停止させない限り、彼らが休むことはないのだ。
ニューマシン1台を製作するためのリードタイムは約18カ月と言われている。つまり、2018シーズンを戦っているマシンは、2017シーズン型マシンが一般公開される数カ月前の段階で設計がスタートしていたことになる
ニューマシンが完成する1年半前、まずごく数人のスタッフが基本コンセプトに取り組み、チームのリソースや人員が現行マシンから移行されるにしたがって、ニューマシンのデザインチームはゆっくりと規模を拡大していく。
旧マシンからニューマシンにそのまま引き継がれるデザインは実質上皆無だ。また、シーズン中もあらゆるアップデートパーツが継続的に投入されるため、マシンはレースごとに異なる仕様となる
F1マシンは日々進歩が宿命づけられている存在で、セッションの合間に進化することさえある。
2月のバルセロナでシェイクダウンされたニューマシンを年末の12月に再びバルセロナでテストする際、チームは1周約2秒のパフォーマンスゲインを期待している。

強烈なダウンフォース

F1マシンのダウンフォースは、トンネルの天井に張り付いて走れるほど強いと言われている。
これは事実だ。それどころか、発生するダウンフォース量だけで言えば、ほとんど苦もなくやってのけるだろう。約800kgと超軽量なF1マシンは、時速約100km/hを超えた時点ですでに車重を上回るダウンフォースを発生する
では、本当にF1マシンはトンネルの天井に張り付いて走れるのか?
残念ながら、実際は不可能だろう。飛行機用のエンジンとは異なり、F1エンジンは天地が逆になった状態での使用を想定した設計にはなっていないからだ。各種ポンプ類やオイル循環経路などが正常に機能するには、適切な重力状態が前提となっている

1,000馬力を生み出す驚異の高効率パワーユニット

F1マシンが搭載するハイブリッドパワーユニットは、一体どれほどの馬力を発生するのだろう?
エンジン設計陣は明確な数値については固く口を閉ざしており、具体的な性能数値はトップシークレットのままだ。
しかしながら、通説では現代のF1パワーユニットは1,000馬力到達間近と言われており、一部のメーカーはすでにその大台を突破していると考えられている
1980年代には現代よりもさらにパワフルなエンジンが存在したが、その信頼性は乏しく、レース完走率は低かった。
当時 “グレネード(手榴弾)” というニックネームさえ付けられた1980年代ターボ時代の予選用エンジンは、過給圧を極端に上げると1〜2周程度しか持たず、それ以上走るとその名の通り “爆発” していた。レース用の設定では過給圧が下げられ、約700馬力〜800馬力前後で使用されていた。
一方、現代のF1パワーユニットはフルパワー状態で4,000km以上を走破できるよう設計されている
世間は馬力と燃費の話題に集中しがちだが、エンジン設計者の間では熱効率が目下の話題だ。熱効率とは、簡単に説明すると、燃料が保有するエネルギーからどれだけのパワーを引き出せるかを示す指標だ。
一般的な乗用車の熱効率は28%〜29%前後で、この水準は過去数十年間に渡って変化しておらず、2013シーズンまでのF1で使用された自然吸気V8エンジンも、ほぼ同様の熱効率値を示していた。
2014シーズンからのハイブリッドターボ開発にあたり、エンジニアたちは前代未聞の40%を超える熱効率実現を目標に据えた。そして現在、彼らは実に50%を超える驚異的な熱効率を現実にしている。
効率性ばかりが開発の主眼となっていることについては賛否が分かれているが、現代のF1パワーユニットが驚くべき技術のたまものであるのは間違いはない。

カーボンブレーキが生み出す強烈なストッピングパワー

どれほど馬力があっても、マシンに制動力がなければ意味がない。
モンツァの第1シケインをはじめとしたF1カレンダー中でも最もヘビーなブレーキングゾーンでは、マシンは約3秒・150m以内で350km/hから80km/hまで減速する。ドライバーたちは、この時に感じる減速Gを「レンガの壁に向かって突っ込むようなもの」と主張する。
F1マシンに使用されるブレーキは、カーボンディスク&カーボンパッドで構成されている。市販車にこれらが採用されない理由は、カーボンブレーキが正常に機能するには高い温度が絶対条件になるためだ。
カーボンブレーキは、真冬のスーパーマーケット駐車場のような場所では役に立たない。
使用するタイヤコンパウンドの種類によって条件は異なるが、F1マシンで使用されるカーボンブレーキは約200°C〜300°Cにならないと制動力を発揮しはじめず、約500°C前後でピークパフォーマンスに達する。
カーボンブレーキの表面温度が1,000°Cを超えることは滅多にないが、ドライバーたちはこれらのピーク温度をコントロールすることで磨耗率をケアしている。
また、カーボンブレーキはあっという間に冷えてしまう。レース中、セーフティカー退去後のリスタートに注目が集まるのはこのためだ。
ドライバーたちは、彼らのマシンがどれだけのブレーキパフォーマンスを持っているか分からないままの状態で最初のコーナーに飛び込まなければならないのだ。
現代のF1マシンでは、ブレーキは制動以外の目的にも活用されている
繊細な造形を持つ冷却ダクトは、ホイールハブ周辺から空気を排出して渦流の発生を抑えたり、マシン後半部の空気の流れを整えたりとエアロダイナミクス面でのゲインを得るためにも活用されている。
ブレーキが発生する高熱もタイヤを温めるために活用される。ブレーキに熱入れし、ホイールを経由してその熱を伝導させれば、タイヤのウォームアップに好都合というわけだ。

現代の技術でも解き明かせないタイヤの謎

タイヤは依然としてF1の中で謎めいた存在であり続けている。F1がどれほどのテクノロジーを駆使してタイヤの習性を理解しようとしても、どうしても解明しきれない部分があるのだ。
F1タイヤの作動温度領域(ワーキングウインドウ)はごく狭い範囲に限定されており、しかもそれはコンパウンドごとに変動する。
ピンク色のマーキングを施された最も柔らかいハイパーソフトタイヤは85°C〜105°C前後でグリップを発揮しはじめ、オレンジ色のマーキングを施されたスーパーハードタイヤは120°C〜145°C前後で機能しはじめる。
ガレージでタイヤを温める方法は、パンを焼く過程に少し似ている。タイヤは電熱線を組み込んだタイヤウォーマーに包まれている。通常は、初期段階として30°Cまで余熱され、その後メインの加熱段階で80°Cまで温められる。
そしてマシンに装着される直前、タイヤは “ブースト” と称する最終的な高熱・短時間のウォームアップを施される。チームは様々な状況に応じて調整すべく電子タイマーを活用している。
そのため、予選Q1で使用されるタイヤはセッション開始20分前には準備が整えられ、それ以降のセッションで使用するタイヤも順次準備が進められる。
加熱時間が長すぎた場合、あるいは再加熱の必要がある場合、タイヤの性能は劣化してしまう。
タイヤウォーマーが外された瞬間からタイヤ温度は低下をはじめる。
そこで、ドライバーたちはピットアウト直後の周回ではバーンアウト(意図的なホイールスピン)でリアに熱を入れ、またハードブレーキングとウィービング(マシンを左右に振ること)を繰り返してフロントに熱を入れたりしながら、タイヤを作動温度領域に入れる作業に集中する。
ひとたびタイヤが作動温度領域に入れば、タイヤは周回を重ねるたびに熱を蓄積し、やがて作動温度領域の上限を超えはじめる。タイヤが熱を持ちすぎてしまうとパフォーマンスが低下しはじめ(いわゆるデグラデーション)、タイヤ交換の必要性が生じる。
ドライバーがタイヤをうまく管理すれば、タイヤのライフは延びる。最大限のペースからわずか0.1秒落とすだけでも、1ストップ戦略で十分にレースを完走できるほどライフを延ばせる場合もある。
常に全開でレースを戦うマシンの姿を見たいファンにとって、これは大いに悩ましいところだ。

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