握力は自分が考えているよりも自分について教えてくれる。
定期的にトレーニングを積んでいる人なら、プルアップやファーマーズキャリー、ベントオーバーロー、そして複合系の頂点、デッドリフトのようなエクササイズにおいて握力が不可欠なことを知っているだろう。しかし、握り続ける時間と発生する力で構成される握力は、ただの筋力指標ではないことを知っているだろうか? 実は、握力は健康状態と寿命の重要な指標でもあるのだ。
14万人を対象にした研究の結果、握力は血圧を含む伝統的な生体指標の多くよりも精確に寿命を予測できる数値であることが明らかになった。そして、この研究をさらに進めると握力が強いほど100歳を超えて生きる可能性が大きく高まることも明らかになり、この説の信憑性をさらに高めた。最終的に、この研究では、100歳以上の高齢者は握力が2倍以上高い人が多いことが判明した。 というわけで、長生きがしたいなら、(HYROXや【Red Bull Gym Clash】の貴重なタイムの短縮に役立つことも加えて)、雑にトレーニングを進めるよりも握力を意識したトレーニングに時間を割く方が良いだろう。
握力が強いほど健康という学説が存在
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デンマーク出身のHYROX / OCR(オブスタクルコースレーシング)のアスリートで、これまで100回以上表彰台を経験してきたイダ・マチルデ・スティーンガードは「握力とは “手と上腕で掴み、制御して、力を発生させる能力” を意味します。疲労下のキャリーやハング、プル、リフトのようなエクササイズで非常に重要です」と説明する。
浅層・深層指屈筋、長母指屈筋、母指球筋群・小指球筋群、手首屈筋群・伸筋群を含む手と上腕の筋肉から生み出される力である握力は、プルアップやチンアップ、ファーマーズキャリーのような “握る・絞る” が関連する動作に不可欠だ。
OCRの経験が豊富なイダ・マチルデ・スティーンガードは強い握力を誇る
© Jesper Gronnemark/Red Bull Content Pool
しかし、一般的なイメージとは異なり、機能的な握力の獲得が意味するのは、握力計を壊せるようになったり、オフィスで力強い握手を交わせるようになったり、重いデッドリフト10レップ3セットをこなせるようになったりすることだけではない。
強い握力があれば、ケトルボールスウィングのようなエクササイズでの脳と筋肉の連携を向上(および上腕の筋力と片手状態での安定力の向上)させられるようになるのだ。同時に、研究では、握力が弱いほど骨密度の低下、栄養不良、認知機能障害、うつ症状と関連性が高いことも判明している。
そこで、自宅で簡単に自分の握力を確認する方法があるので紹介しておく。テニスボール、ストレスボール、または水筒を数秒間全力で握りしめるだけだ。基本的には「最大握力で30秒間」を目指すことが握力の良い指標になる。
HYROXエリート15で活躍しているイダ・マチルデ・スティーンガード
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ほとんどの人は、リフティングで握力を受動的に鍛えているだけです。手と前腕の両方の筋力を鍛えられる様々な握力トレーニングを取り入れることが理想的です
イダ・マチルデ・スティーンガードはデンマーク出身のフィットネスアスリート / OCR世界王者で、現在はHYROXエリート15のアスリートとしてい世界を転戦している。World’s Toughest Playgroundと呼ばれるエクストリームなオブスタクルコースの考案者として知られるスティーンガードにとって、握力はHYROXとOCRに向けたトレーニングで重要な役割を担っている。エリート15で活躍する彼女の成功は握力と上腕の持久力によってもたらされており、これらのおかげでテクニカルな障害物や重量級のキャリー、複雑なリフトを乗り越えているのだ。スティーンガードはこの2つをパフォーマンスと選手寿命の両方において不可欠としている。
スティーンガードは、「ローデッドキャリー / デッドハング / ローププル / 異なるグリップでのデッドハング / 重量級プル」の組み合わせが、OCRおよびHYROXに向けた握力強化に役立っているとしており、このようなエクササイズは障害物やスレッド、ファンクショナルリフトに直接役立つと続けている。
スティーンガードは、トレーニングの目標が握力の鍛え方を決めるとし、次のように説明している。「OCRに向けたトレーニングなら、ハング系での持久力強化や、ロープやリグでの握力強化にフォーカスします。これらはテクニックが重要ですし、手や指の特定の筋力が必要とされます。HYROXなら、持続的なファーマーズキャリーや心拍数が上がった状態での握力維持が重要になります」
また、スティーンガードは上半身を鍛えたあとに特定の握力系エクササイズにも取り組んでおり、「上腕のパワーと持久力を維持するために強度を循環させています」と説明している。
ハング系は握力強化に最適
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ファーマーズキャリーも握力強化に適している
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− 握力とは何でしょう? なぜ必要なのでしょう?
イダ・マチルデ・スティーンガード: イダ・マチルデ・スティーンガード:握力とは “手と上腕で掴み、コントロールし、力を発生させる能力” を意味します。疲労下のキャリーやハング、プル、リフトのようなエクササイズで非常に重要になります。
− 握力強化のカギになるエクササイズまたはテクニックを教えてください。また、それらが効果的な理由も教えてください。
私はクライミングジムでのローデッドボルダリング(重しをつけた状態でのボルダリング)を重点的に行っています。通常のジムでは、キャリー(ケトルベル / プレート / バー)やデッドハング、タオル / ローププル、異なるグリップでのハング、重量級プル / グリップに取り組んで、OCRやスレッド、ファンクショナルリフトに直接役立てています。
− OCRやHYROX、その他のファンクショナルフィットネスイベントなどの競技に合わせて握力トレーニングをどのように調整しているのでしょう?
OCRに向けたトレーニングなら、ハング系での持久力強化や、ロープやリグでの握力強化にフォーカスします。これらはテクニックが重要ですし、手や指の特定の筋力が必要とされます。HYROXなら、持続的なファーマーズキャリーや心拍数が上がった状態での握力の維持が重要になります。
− 握力トレーニングで犯しがちなミスとその回避方法を教えてください。
ほとんどの人は、リフティングのついでに握力を受動的に鍛えているだけです。手と前腕の筋力、持久力を鍛えられる多様なグリップトレーニングを組み合わせつつ、強靭な前腕と手を獲得するための段階的な専用トレーニングを取り入れることが重要です。
2025年のHYROX世界選手権に出場したイダ・マチルデ・スティーンガード
© Christian Pondella/Red Bull Content Pool
握力とは “手と上腕で掴み、コントロールし、力を発生させる能力” を意味します。疲労下のキャリーやハング、プル、リフトのようなエクササイズで非常に重要です
− 手と上腕のオーバートレーニングを回避しつつ、トレーニングプログラム全体に握力系エクササイズを追加する方法を教えてください。
私はHYROX用の主要トレーニングのあとに握力に特化したエクササイズに取り組んでいます。また、上半身を鍛える日はトレーニング量を絞りつつ強度を循環させることで、上腕のパワーと持久力を維持しています。2週間ごとにクライミングにも取り組んでいます。とても楽しいですよ!
− ファンクショナルフィットネスに取り組んでいるアスリートが意外に思うような、一風変わった握力強化エクササイズがあれば教えてください。
ボルダリング、タオルプルアップ、プルアップ間のシンプルなデッドハングがおすすめです。また、本番のウエイトを使用したファーマーズキャリーや長距離のスレッドプルも良いでしょう。
当然ながら、人によって握力は異なる。スティーンガードは次のように説明する。「ほとんどの人はリフティングで握力を受動的に鍛えているだけです。手と前腕の筋力、持久力を鍛えられる多様なグリップトレーニングを組み合わせつつ、強靭な前腕と手を獲得するための段階的な専用トレーニングを取り入れることが重要です」
エリートレベル以外のアスリートでも、シンプルかつ実用的なエクササイズ(ファーマーズキャリー30〜60秒 / リストカールまたはリバースカール12〜15レップ / ストレスボール15〜20レップ)で強靭な手と上腕を手に入れることができる。これらのエクササイズは握力とその持久力を強化すると同時に、怪我やオーバートレーニングの予防に役立つ他、リフティングやスポーツの効果的なウォームアップにもなる。
ロープクライミングのテクニックを伝授するイダ・マチルデ・スティーンガード
© Davide Spiridione/Red Bull Content Pool
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イダ・マチルデ・スティーンガード推奨握力強化エクササイズ
身長よりも高い頑丈なバーを用意し、肩幅に開いた順手で握る。
両腕を伸ばして両足を床から浮かせる。
頭を肩の間で下げる代わりに、肩を耳から離すように意識して肩に刺激を入れる。
胸を張り、両肩を背中側に引いて立ち、重めのダンベルまたはケトルベルを片手に1個ずつ持つ。
コントロールされた短い歩幅で直線を歩く。体幹に力を入れて、ウエイトが揺れないようにする。
背筋が曲がらないようにしっかり握り続ける。時間が過ぎたら臀部を下げてウエイトを置く。
HYROXのファーマーズキャリー
© Jesper Gronnemark/Red Bull Content Pool
タオルプルアップ:8〜12レップまたは20〜30秒ハング
タオル2本をプルアップバーにかけて、片手に1本ずつ縦に握る。
タオルをできる限り強く握り、肘をしめたまま、胸をバーに近づけていく。
完全なプルアップが難しい場合は、タオルを握った状態でデッドハングを行い、手に刺激を入れる。