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ゲラルトさんが酒場のオヤジから学んだこと
『ウィッチャー3 ワイルドハント』の大人気カードゲームのスタンドアロン版『GWENT: The Witcher Card Game』のリリースが決定した。ゲラルトは先輩から何を学んだのだろうか?
Written by Dan Murphy
読み終わるまで:10分Published on
『ウィッチャー』シリーズのコスプレイヤーがプロモーションに起用されている
『ウィッチャー』シリーズのコスプレイヤーがプロモーションに起用されている© https://www.playgwent.com/en/media
ウィッチャー3 ワイルドハント』は誰もが認める2015年を代表するヒットタイトルの1本だった。壮大なアドベンチャーと無限に広がるクエスト、そして膨大なプレイ時間が用意されており、何百万ものプレイヤーたちがこの巨大なファンタジーの世界にのめりこんだ。そして、数多くのプレイヤーが予想以上に時間を費やしてしまったのが『グウェント』だったことを認めるだろう。
煙たい酒場の机や夕暮れ時のたき火を囲み、主人公ゲラルトが赤の他人や友人たちをはじめ、ゲーム内のどこの誰とでも好きなタイミングでプレイできたカードゲームが『グウェント』なのだが、これはシリを探す旅の中では問題になるときもあった。というのも、『グウェント』にのめり込んでしまえば、クエストを放棄してひたすらプレイしてしまうからだ。シンプルなルールながら非常に革新的な戦略性とアクションが盛り込まれていたこのカードゲームはすぐにカルト的な人気を獲得した。
そして先月開催されたE3 2016のMicrosoftのカンファレンスの中で、このセンセーショナルなミニゲームが含まれる『ウィッチャー3 ワイルドハント』を生み出したポーランドのデベロッパー CD Projekt Redが、ファンからのリクエストが異常なレベルにまで達したことを理由に『グウェント』のスタンドアロンバージョン『GWENT: The Witcher Card Game』のリリースを発表し、ファンを大いに喜ばせた(非常に残念ながら国内版は現時点では未定…)。
『ウィッチャー3』本編には巨大なファンベースが存在するが、『GWENT: The Witcher Card Game』は『マジック:ザ・ギャザリング』、『クラッシュ・ロワイヤル』、『The Elder Scrolls Legends』、そして『ハースストーン』など、熱心なファンを抱える新たなライバルたちと競い合いながら、インターネットの世界で自分たちが生き残れる環境を生み出す努力を重ねることになる。
そして、このゲームの開発は新たなチャレンジを生み出すことになる。ベッドルームという安全地帯から罵詈雑言を投げつけたり、負けを認める前に怒り狂ってログアウトしたりするプレイヤーたちに北方諸国の兵士たちは対抗策を持っていないからだ。しかし、カードバトルゲームのジャンルで一日の長があるBlizzardの『ハースストーン』がこのような問題に適切に対応している中、CD Project Redが後発の強みを活かして、先輩からヒントを得ながらより優れたゲームを生み出そうとしているのは明らかだ。今回は『グウェント』が『GWENT: The Witcher Card Game』としてリリースされるにあたり、ゲラルトが先輩から何を学んだのか、そしてどんなゲームになるのかを5つの点から紹介しよう。
1:フェアなゲーム
チート的な負けほど気分が悪いことはない。自分を完全に上回る対戦相手に負けたり、自分が致命的なミスをして負けたりした場合は、その敗戦を素直に認めることができるが、RNGを連発されての敗戦? こちらとしては怒りを爆発させるしかない。『ハースストーン』から学ぶべき最も重要なレッスンがこの公平性であり、これが『GWENT: The Witcher Card Game』としてヒットさせるための最大の要素になるだろう。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』の中の『グウェント』は基本的にはプレイヤーに勝利と喜びを与えるためにデザインされていた。もちろん、負けるときもあるが、シングルプレイヤーのゲームなので、対戦相手のことはあまり考慮されていない。よって、『グウェント』には簡単に勝てる方法が存在する。諜報員、おとり、回復を使ってできる限り自分の手札を大きくし、数的優位に持ち込めば良いのだ。
一方、『GWENT: The Witcher Card Game』は当然ながらマルチプレイヤーになるので、この点を調整しなければならない。そうしなければすぐに退屈なゲームになってしまうだろう。しかし、ありがたいことにCD Projekt Redはデッキ編成のルールの整備、弱いカードの能力追加、諜報員に寄りすぎていたニルフガード帝国の削除など、既にシステム全体に様々な変更を加えている。
何百万人のプレイヤーが『ハースストーン』をプレイしているのは、沢山のカードを所有しているプレイヤーや、新しいカードを持っているプレイヤーが圧倒的有利にならず、プレイヤーたちはデッキのクオリティではなく実力で勝利できるからなのだ(少なくとも『希望の終焉 ヨグ=サロン』がない場合)。
『GWENT: The Witcher Card Game』のゲーム画面
『GWENT: The Witcher Card Game』のゲーム画面© https://www.playgwent.com/en/media
2:キャッチーな音楽
デジタルカードゲームを何時間もプレイしたあとは、そのサウンドトラックがいかに大事な役目を担っているかにすぐに気付くことになる。デジタルカードゲームには、キャッチーで耳に残る音楽を用意する必要があるが、繰り返すばかりで鬱陶しいと感じさせないバランスに仕上げなければならない。さもなければ、プレイヤーたちは正気を失い、他のゲームに鞍替えしてしまうだろう。
『ハースストーン』のサウンドトラックは快活なアップビートのストリングスとムードを変えるメロウなホーン、そしてプレイのテンポを保ってくれる優れたリズムのバランスが上手く取れている。そして、『ウィッチャー3 ワイルドハント』本編も、10分もプレイすればサウンドトラックの圧倒的な素晴らしさが分かる。中世らしいマンドリンや美しいヴォーカルが実に壮大なムードを生み出しているのだ。ということで、『GWENT: The Witcher Card Game』のサウンドトラックが『ウィッチャー3』の半分程度のクオリティでも、最高のサウンドトラックを擁したデジタルカードゲームという称号を得て、『ハースストーン』と肩を並べることになるだろう。
3:奥深い世界観
『Warcraft』の世界を舞台にしたゲームをプレイした経験がなくても、その名前は知っているだろう。いくつかの派生ゲームと世界的大人気の『World of Warcraft』、ハリウッド映画に『ハースストーン』… 『Warcraft』はここ20年に渡りポップカルチャーの主軸であり続けてきた。このシリーズが様々なメディアに展開され、世界中に何千万もの熱心なファンを抱えている一番の理由は、多くの人たちがのめり込める奥深い世界観が用意されているからだ。
広大で魅力的な世界観を誇る『ウィッチャー』シリーズから派生した『GWENT: The Witcher Card Game』も、『ハースストーン』の奥深い世界観を倣った内容になるはずだ。ポーランド人の作家アンドレイ・サプコフスキによる4本の短編集と5本の長編によって支えられている『ウィッチャー』の世界は、「リヴィアのゲラルト」とその教え子シリ、度重なる外国の侵略によって崩壊した世界、緊迫した状況下での友情など、複雑に入り組んだストーリーによって事細かに描かれている。
何人もの魅力的なキャラクターが登場するその『ウィッチャー』の世界をベースにCD Projekt Redはこれまでに3本のゲームを開発している。その最新作が『ウィッチャー3 ワイルドハント』だ。彼らは原作のあとの世界を舞台に設定し、様々なストーリーを組み込んでいる。また、ゲームの他にも、コミック、ポーランド制作のTVドラマ、そして2017年公開予定の映画もある。このように『GWENT: The Witcher Card Game』には世間が興味を持てる広大で奥深い世界観が備わっており、大成功を収める可能性は高いと言えるだろう。尚、その奥深さは面白おかしい形でも表現される予定で、たとえば、今回追加される愛馬「ローチ」のカードはボード上のどの場所からでも召喚できるが、ゲーム内のあのバグとも言える神出鬼没ぶりが反映されており、このカードの配置場所はプレイヤーではなくローチが決定することになる。カードの絵柄も「屋根の上で困惑しているローチ」という実に凝った作りになっている。
『GWENT: The Witcher Card Game』のディクストラ
『GWENT: The Witcher Card Game』のディクストラ© https://www.playgwent.com/en/media
4:多種多様なカード
カード集めが嫌いな人などいない。誰もが一度はハマった経験があるはずだ。そして、ありがたいことに最近はデジタルカードゲームの登場によって仮想空間に保管しておける。また、『FIFA Ultimate Team』と『ハースストーン』の世界的な人気を見るだけでも、世間はカードを集めて他人と比較したり、自分のデッキを組み替えたりするのが大好きなのだということが改めて理解できるはずだ(ちなみに『FIFA Ultimate Team』はジョゼ・モウリーニョ監督の息子も楽しんでいる)。新しいパックを開けるときのあの感覚、そして光り輝くレアカードや、どういうわけか中々手に入らなかったカードが入っているのを確認したときのあの感覚はまさに恍惚感他ならない。
GWENT: The Witcher Card Game』がフレッシュな感覚を与えながら、このゲームにプレイヤーたちを引き寄せ続けるためには、定期的に新しいカードが追加される必要がある。そうならなければ、プレイヤーたちはすぐに飽きて消えてしまうだろう。ラッキーなことに、CD Projekt Redは『ハースストーン』がどうやって何百万人ものプレイヤーを惹きつけ続けてきたかを間近で見てきたため、先輩に倣ってカードやシステム、シングルプレイヤー/マルチプレイヤーモードを追加するはずだ。そして、彼らが「追加」に秀でていることは、昨年から今年にかけて『ウィッチャー3』本編に追加された2本のDLCによって証明されている。
新しいカードはメタを変えながらゲーム全体を循環させるため、カードゲームには必須と言えるが、『ウィッチャー』シリーズの世界には、『ウィッチャー3』に登場した血まみれ男爵や、原作で人気のLeo Bonhartなど、まだカード化されていないキャラクターが数多く存在しているため、『GWENT: The Witcher Card Game』に新しくて美しいカードが不足することはまずないだろう。
ゲーム開始前にカードを選択する
ゲーム開始前にカードを選択する© https://www.playgwent.com/en/media
5:充実したシングルプレイヤーモード
マルチプレイヤーモードは誰もが楽しめるものではない。他のプレイヤーと対戦するほどの実力がないと感じているプレイヤーがいれば、対戦相手を倒そうと躍起になるのではなく、リラックスしてプレイしたいと思うプレイヤーもいる。よって、『GWENT: The Witcher Card Game』にも世界各地のプレイヤーとの対戦ではなく、ひとりでのんびり楽しめるようなモードが用意されるべきだろう。『ハースストーン』にもソロアドベンチャーがいくつか用意されており、面白いストーリーが楽しめる。
ウィッチャー3』は多種多様なストーリーを提供することに注力しているゲームなので、『GWENT: The Witcher Card Game』にも世界の崩壊についてのバックストーリーや、各キャラクターのプライベートな部分が楽しめるショートストーリーなどが加えられても良いだろう。CD Projekt Redは北方諸国のストーリーを語るのが大好きなので、逆に『グウェント』にそれがなければおかしいというものだ。ありがたいことに、『GWENT: The Witcher Card Game』には『ウィッチャー3』の声優陣によるフルボイスのソロアドベンチャーが収録され、しかも10時間程度のプレイ時間になることが予定されている。ファンたちは間違いなく『グウェント』に再びのめり込むことになるだろう。
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