A sunlit landscape from Minecraft.
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ゲーム

『Minecraft』の歴史

『マイクラ』の名前は誰もが知っているが、その成り立ちを知っている人は少ない。世界で最も高い人気を誇るビデオゲームの歴史を簡単に振り返っていこう。
Written by Jon Partridge
読み終わるまで:9分Published on
『Minecraft』(以下『マイクラ』)は世界最大とは言わずとも、世界最大級のビデオゲームのひとつだ。たったひとりのデザイナーによって資金ゼロから開発された小さなインディータイトルは、どのようにして今のような社会現象になったのだろうか? その歴史を振り返っていこう。
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どんなゲームなのか?

『マイクラ』を熱心にプレイしているプレイヤー、またはこのゲームに関する知識を持ち合わせている人は、この章を読み飛ばしてもOKだ。ここでは、歴史を本格的に振り返る前にどのような作品なのかを簡単に説明していく。
『マイクラ』は世界で最も大きな影響力を備えているサンドボックスタイトルと言ってよいだろう。プレイヤーはランダム生成されたオープンワールド(実際の広さは無限)に放り込まれる。そこには山や森、洞窟、草原、海などのバイオームが存在するが、特定のゴールや目標は存在しない。ゲームがどの程度進行しているのかは実績でのみ確認できるようになっている。
ブロックを集めて配置するシンプルさがヒットの秘訣

ブロックを集めて配置するシンプルさがヒットの秘訣

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『マイクラ』はグラフィックもユニーク

『マイクラ』はグラフィックもユニーク

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ゲーム内世界はプレイヤーが破壊・移動・建造・置換できるブロックで構成されており、昼夜の概念も実装されている。難易度の設定次第では、プレイヤーは食事を摂ったり、夜間にモブから身を守ったりする必要も生じてくる。
ゲームスタート時に選択できる複数のゲームモードを通じて、プレイヤーは多様なアドベンチャーを楽しめる。ひたすら建造を楽しみたいなら【クリエイティブ】モードを選択すべきで、アドベンチャーを楽しみたいなら【アドベンチャー】モードがおすすめだ。そして、メインモードと言える【サバイバル】モードは、その名の通りサバイバルしなければならない。
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はじまり

さて、ここからは『マイクラ』の歴史のはじまりを振り返っていく。『マイクラ』の生みの親はスウェーデン人プログラマーの “Notch” ことマルクス・ペルソン で、ビデオゲーム開発会社King(その後jAlbum)でデベロッパー・プログラマーとして働いていた。
Notchは『マイクラ』の開発に取り組む前から、プライベートな時間を利用して当時人気だったタイトルに触発された作品をいくつか開発していた。そのうちのひとつが基地建設タイトル『RubyDung』とブロック採掘タイトル『Infiniminer』で、この2本が『マイクラ』のベースになった。
『マイクラ』の最初のバージョン(いわゆるJava版)は2009年5月初頭の週末にNotchによって開発されたあと、同年5月17日にインディーゲーム開発者たちのフォーラムTIGSourceで発表された。このときのフィードバックを元にアップデートしたバージョンがリリースされたあと、数ヶ月間でさらに複数のアップデート(Indev / Infdev)が行われ、2010年6月30日Alpha版がリリースされた。
シンプルさが人気の秘密

シンプルさが人気の秘密

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Alpha版のリリース後、Notchは『マイクラ』の開発に専念するため企業勤めを止めた。そして、このバージョンの売り上げを元手に元同僚のカール・マネーヤコブ・ポーシェルと組んでビデオゲーム開発企業Mojangを創業した。
創業以降、『マイクラ』には定期的なアップデートが加えられるようになり、新しいアイテムやブロック、敵、リソース、システム、さらには【サバイバル】モードが実装されたあと、2010年12月にBeta版へ移行した。プレイヤー数が急増していく中、Mojangは正規版リリースへ向けて次々とスタッフを増員していった。
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正規版リリース

『マイクラ』の正規版が2011年11月18日にリリースされると、瞬く間にビッグヒットとなり、ここから成長の一途を辿っていくことになった。Notchは全体のディレクションに専念するためにイェンス・バーゲンステンにデザイン面・クリエイティブ面を任せることを決定した。
プレイヤー数の増加に合わせてMojangも巨大化していった。『マイクラ』の限界を引き上げるために、より多くのパートナー企業やデベロッパーたちと契約を結ぶ必要が生じたのだ。そして数年で【アドベンチャー】モード “プリティー・スケアリー・アップデート”“世界を変えたアップデート” を含む複数の新しいバージョンとアップデートがリリースされ、デザインがより洗練され、バイオームやモブ、目標、アイテム、システムが追加された。
『マイクラ』最大の魅力のひとつが、このような定期的なアップデートと調整で、プレイヤーたちが楽しめる要素は今も増え続けている。
Minecraft title screen

明るい世界も暗い世界も作ることができる

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『マイクラ』が大成功を収めて多くのプレイヤーに大きなインパクトを与えると、2017年にマイクロソフトがMojangおよび『マイクラ』の知的財産権を25億ドルで買収した。この買収はNotchがTwitterで自分の持ち株を買収してくれる人を希望したことが発端になったとされている。
この買収後も『マイクラ』の開発は続けられ、ありとあらゆる機能が追加されていった。ボス戦や地下を含む新しいエリアが実装されると、新世代のコンソールやプラットフォームに対応したバージョンがリリースされ、Xbox、PlayStation、Nintendo Switch、スマートフォン、さらにはVRのバージョンが世に放たれていった。何かしらのメディアデバイスを所有している人なら誰もが『マイクラ』をプレイできるという状況になったのだ。
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ゲームモードとスピンオフ

『マイクラ』の世界的人気を受けて、リプレイ性新鮮さを維持するべく様々なゲームモードやスピンオフが開発された。プレイヤーが『マイクラ』をプレイする理由は様々で、それぞれが異なった目標やゴールを設定している。
【クリエイティブ】モードでエッフェル塔タージマハル(どちらも実際に建造された)のような壮大な建築物を建造することにフォーカスしているプレイヤーがいれば、【サバイバル】モードや【ハードコア】モードでできる限り長く生き残ることを目指しているプレイヤーもいる。
好きなようにプレイできる

好きなようにプレイできる

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『マイクラ』は広大だ

『マイクラ』は広大だ

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また、裏ワザやイースターエッグの解明に全力を注いでいるプレイヤーがいれば、【アドベンチャー】モードでストーリーを重視したアドベンチャーを楽しんでいるプレイヤーもいる。『マイクラ』では実に多くのことができるのだ。『マイクラ』はカスタマイズできる幅も広く、MODコミュニティが多様なマップやモブ、アイテムを作り出している。
そして『マイクラ』のもうひとつの魅力がマルチプレイヤーで、複数のプレイヤーで同じ世界を楽しむことができる。モブを一緒に倒したり、巨大な建築物を一緒に建造したりするのは最高に面白い。
『マイクラ』に刺激されたスピンオフタイトルの数も多い。その中で最も有名なタイトルのひとつが『マインクラフト:ストーリーモード』だ。これはTelletale GamesとMojangが開発したストーリーを重視したスタンドアロンタイトルだ。
また、ダンジョン探索と最大4人までのマルチプレイヤーにフォーカスした『Minecraft Dungeons』や、ARと位置情報を活用した『Minecraft Earth』もリリースされた。Mojangとマイクロソフトは『マイクラ』をフレッシュに保つ方法を知っている。
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継続的進化

『マイクラ』の文化的影響の大きさを予想できた人はいなかった。このスピードで成長を遂げたゲームはほとんど存在しない。しかし、それよりも素晴らしいのはリリース直後からの継続的な進化だ。
『マイクラ』とそのスピンオフ群は今も積極的にプレイされており、アップデートによってフレッシュな状態を維持している。『マイクラ』はこれまでにいくつもの賞を獲得しており、主要メディアから幾度となく「過去10年で最も重要なビデオゲームの1本」と評価されてきた。
ビデオゲームの枠を超えた人気を誇る『マイクラ』

ビデオゲームの枠を超えた人気を誇る『マイクラ』

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批評家たちはそのブロック体のグラフィックスプレイヤーが望んだ通りにプレイできる自由度の高さ広大なオープンワールド定期的なアップデート・MOD・調整を称賛しているが、もちろん、複雑なクラフトシステム全年齢対象のアクセシビリティの高さアプリ・コンソール・VRへの展開、そしてアドベンチャーとサンドボックスの美しい融合も称賛の対象だ。
『マイクラ』はこれまでに2億本を売り上げており、毎月1億2,500万人がプレイしていると言われているが、これは凄い数字だ。
初期の資金調達源が主にプレイヤーだった『マイクラ』は、YouTubeをはじめとするインターネットメディアを活用して成功を収めた初めてのインディータイトルのひとつで、近年のゲーミング系インフルエンサーの多くは『マイクラ』で自分たちのチャンネルにファンを集め、規模を拡大・維持していった。『マイクラ』はゲーミングシーンにおけるシナジー効果の好例だ。
近年の『マイクラ』はビデオゲームを超越していると言ってもよいだろう。私たちの社会への影響力と人気の高さにより、この作品は映画やドキュメンタリー、小説、グッズ、音楽へと姿を変えている。また、教育、インフラ計画、居住環境研究にも採用されている。もはやどこを向いても、『マイクラ』印が目に入ってくるのだ。では、この『マイクラ』現象はどこへ向かっていくのだろうか?
子どもだけではなく大人も楽しめる

子どもだけではなく大人も楽しめる

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『マイクラ』はスマッシュヒット映画『マインクラフト / ザ・ムービー』でハリウッドを席巻し、すでに続編の噂も出ているが、ビデオゲーム本体は休むことなく新規アップデートを続けている。ゲームドロップ【スプリング・トゥ・ライフ】は、その名の通りオーバーワールドに新しい環境下のモブや、落ち葉や砂の囁きのような環境音などが新たに加えられている。
ビジュアルも【バイブラントビジュアルズ】という新しいアップデートが加えられている。ピクセル化された影、改良された水の表現、木漏れ日やカボチャの反射などが、ポリューメトリック・ライティングなどによってよりブロックらしさとリアリズムを両立した『マイクラ』らしい形で実現されている。
プレイヤーが自分だけの世界を作成・シェアしている中で、『マイクラ』がその歩みを止める兆候は一切見られない。リリースからすでに15年が経過しているこの作品には間違いなく次の15年がやってくるはずだ。
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