セルビア人アスリートのルカ・ジュキッチは、世界を旅して競技フィットネスのエリートたちと実力を競い合うことに長年を費やしてきた。ベルグラードからマイアミビーチ、そしてコペンハーゲンまでを巡ってきたジュキッチは経験豊富で、その経歴は実に素晴らしい。
しかし、2024年末のDubai Fitness Championship(ドバイフィットネス選手権)で優勝した直後のシーズン、ジュキッチは満足できない日々を過ごした。ジュキッチはどのイベントでも、世界最強と競い合って表彰台に登ることを目標にしていたが、理想と現実が異なるようになっていた。出場して参加するだけでは不十分だったのだ。
そして、誰もが羨むWorld Fitness Projectのプロカードを保持していたデュキッチは、デンマーク・コペンハーゲンで開催されたWorld Fitness Project Finalsに出場。しかし、29人が出場したこのレースを、デュキッチは24位で終えた。この結果は、彼が次のシーズンもプロカードを保持できることを意味していたが、本人はまったく満足できていなかった。
そこで、2026年初頭、ジュキッチはそれまでのトレーニングキャンプとコーチから離れ、環境のリセットを試みた。ジュキッチが振り返る。
「数ヶ月オフを取り、2〜3ヶ月自分でトレーニングプログラムを組みました。ですが、心の中ではフレイジャー・マッケンジー(Fraser McKenzie)コーチと仕事をしたいと思っていました。またコーチと組むときは、彼に連絡を取ろうと決めていたのです」
01
変化1:正しいコーチとトレーニング環境を手に入れる
フィットネスファンなら、フレイジャー・マッケンジーという名前を聞いたことがある人もいるだろう。トレーニングキャンプBruteでマッケンジーと仕事をするエリートアスリートたちは日々増えており、その中にはエイミー・クリングル、アニオル・エカイ、ジャック・ファーローなど、World Fitness Project 2026プロカードホルダーたちも含まれる。
イベントの翌日にミーティングをしました。そこからすべてが始まりました
ジュキッチは2026年初頭にマッケンジーに連絡を取り、タイムラインの設定に取り掛かった。
「London Proの直後から仕事を始めました。イベントの翌日にミーティングをしました。そこからすべてが始まりましたね。トレーニングプランを立てていったのです」
ジュキッチはセルビア、マッケンジーは英国に拠点を置いているため、2人はリモートで仕事をするときが少なくなかったが、マッケンジーのトレーニングキャンプBruteに加わったことで、ジュキッチはマッケンジーだけではなく、Bruteの仲間たちとも仕事ができるようになった。
こうしてジュキッチはエリート集団の一部となり、世界最高のアスリートたちとスコアを比較したり、フィードバックをシェアしたりしながら、ともに学び成長できるようになった。
02
変化2:より高い目標とより少ないトレーニングを設定する
非常に短時間で、ジュキッチはフィットネスを大きく向上させると、ツアー第2戦、Grand Park Proに臨んだ。
「4ヶ月で起きた最も大きな変化は、筋力を維持しながら体重を大幅に減量したことです。ツアー第1戦から第2戦の間に、約5kgも落としました」
もうひとつのゲームチェンジャーは、完全に新しいトレーニングシステムだった。ジュキッチがジムで過ごす時間は短くなったが、トレーニングの強度は上がり、目標も高くなった。
ジュキッチはコンジュゲート・メソッド(Conjugate Method)のストレングスサイクルを取り入れ、アクセサリーワークアウト(補助系ワークアウト)を増やしていった。
「コンジュゲート・メソッドのストレングスサイクルを初めて取り入れました。バンデッド・バックスクワットやルーマニアン・デッドリフト、ピンプレスなどは初めてでしたが、身体が良好に反応してくれました」
03
変化3:弱点克服の新しい方法を見つける
新しいアプローチはハードワークがすべてではなかった。ジュキッチとマッケンジーは、ジュキッチが悩まされていた弱点に異なる視点から取り組む方法を模索し始めた。
「それまでは、ハンドスタンド・プッシュアップを伸ばしたいなら、ハンドスタンド・プッシュアップに取り組むだけでした。ですが、フレイジャーと私は、他の方法で弱点を克服する方法を発見したのです。アクセサリーワークアウト、姿勢維持、各ムーブメントに役立つ専用ストレングスワークに取り組むようになったのです」
苦手なムーブメントを繰り返す代わりに、ジュキッチはそのムーブメントに必要な筋肉群を強化するようになった。このアプローチは彼のフィジカルだけではなくメンタルにも好影響を与えた。
「以前は苦手なムーブをできる限り避けていましたが、今は楽しみになっています。取り組み方に大きな違いが生まれたのです」
一方で、ジュキッチとマッケンジーは弱点の克服のために元々得意としていた部分を犠牲にするつもりもなかった。
「私たちは得意としてきた筋力をさらに伸ばそうとしています。ですので、ランニングではライバルたちに “ルカは最高のランナーのひとりだ” と思われることを目指しています」
04
変化4:弱点を武器に変える
Grand Park Proで、ジュキッチはついに新しいトレーニングアプローチを実戦に持ち込むチャンスを得た。
あの初日に自分たちが正しいことを確認できました。50人中20位でフィニッシュできたのです
初日、ジュキッチは40ヤードスプリントのような爆発力が問われるワークアウトと、パラレット・ハンドスタンド・プッシュアップを含むハイレベルなスキル系ワークアウトに取り組んだ。それまでのジュキッチなら、どちらも下位に沈んでいた。
「初日の目標は中位につけることでした。それまでは最下位付近をうろついていました。私の爆発力はトップレベルではないですし、パラレット・ハンドスタンド・プッシュアップのようなワークアウトは大の苦手でした。ですが、これらのワークアウトを終えたあと、私は20位につけることができました。“好位置につけることができた” と思いました」
ファンなら不安に思っていたかもしれないスタートが、大きく異なる結果で終わったのだ。ジュキッチは狙い通りの位置につけられたという実感を得ていた。
「あの初日に自分たちが正しいことを確認できました。なぜなら、前年のコペンハーゲンでもパラレット・ハンドスタンド・プッシュアップに取り組みましたが、そのときは30人中29位でした。ですが、今日は50人中20位でフィニッシュできたのです」
努力が報われたと実感できた瞬間だった。
05
変化5:包括的なフィットネスを手に入れる
翌日は究極のチャレンジが待っていた。10kmランと1レップ・マックスベンチプレスだ。この2つを両立させられるアスリートはいなかった。ジュキッチを除いて…。
ジュキッチは10kmランを3位(38分59秒)でフィニッシュし、1レップ・マックスベンチプレスでは、156kgを記録して5位でフィニッシュした。
「私は両種目でトップ5に入れた唯一のアスリートでした」とジュキッチは振り返る。この結果は、非常に短時間でジュキッチが優れたオールラウンダーに成長したことの真の証明と言える。
結局、トップ10フィニッシュを4回記録したジュキッチは、2位からわずか9ポイント差の3位でこのイベントを終えた。これは大幅な進化であると同時に、より大きな何かの始まりでもあった。
それから数週間後、ジュキッチはスペイン・バルセロナで開催されたWodcelonaで優勝し、新体制移行後初勝利を挙げた。
現在、World Fitness Project 2026で総合11位につけているジュキッチは、12月に開催されているWorld Fitness Project Finalsとその表彰台に向けてハードワークを重ねている。
▶︎RedBull.comでは世界から発信される記事を毎週更新中! トップページからチェック!