フィットネス
プロアスリートに学ぶ "強靭なメンタル" の入手方法・鍛え方
「気概」「忍耐力」「情熱」「長期的な目標設定」を学び、プレッシャーを克服できる強靭なメンタル aka メンタルタフネスを身につける方法を学ぼう!
強靭なメンタル(日本では "メンタルが強い" や "メンタルオバケ" などと表現されるときもある)は、高いプレッシャーがかかる状況で成功と失敗を分ける要因になるときが少なくない。屋根から屋根へ飛び越えてキャリアを積み上げてきたフリーランナーのハザール・ネヒールの能力の80%は、このメンタルだ。
メンタルタフネスとも言われる強靭なメンタルは、高いレベルで一貫したパフォーマンスを発揮したい全員にとって重要なスキルだ。また、トップアスリートに役立つメンタルタフネスの習慣は、あらゆる人の目標達成に役立つ。
スポーツにおけるメンタルタフネスの概念が初めて提唱されたのは、米国の心理学者ノーマン・トリプレットが、サイクリストが陸上競技場でライバルたちと競っているときの方がひとりより速く走れることに気づいた1898年で、この発見は、脳がパフォーマンスに影響を与えることを証明した。
この発見から60年後、スポーツ心理学はプロコーチやプロアスリートたちの間で大いに活用されるツールへと成長した。そして、今やメンタルタフネスは主流の概念となっている。プロスポーツの領域をはるかに超えて広まっており、プレッシャー下でパフォーマンスを発揮できる能力を指すようになった。では、強靭なメンタルの構成要素とは一体どのようなものなのだろうか?
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強靭なメンタルの構成要素
1:気概
気概を持ち合わせていなければ、強靭なメンタルを身につけることはできない。気概とは、心の中に「諦めることが選択肢にない」状態、つまり、困難になることが分かっていても、やり抜く気持ちだ。
スペイン・イビサ島をリレー水泳で一周したナタリー・ポール、あるいは肋骨骨折と鎖骨骨折から復帰して【Red Bull Joyride】で優勝したエミール・ヨハンソンがその好例だ。
2:忍耐力
定義によれば、忍耐力とは、障害に関係なく長期間に渡りひとつの目標を継続的に追求する行為を指す。
ルーシー・チャールズ=バークレーは、怪我や身近な人との死別という困難に見舞われたあとで迎えた2025年のアイアンマン世界選手権を完走できなかったが、シーズンを諦めることはなかった。彼女は自分を奮い立たせ、アイアンマン70.3世界選手権という次なる目標に集中し、見事に優勝を飾った。彼女の忍耐力が報われたのだ。
リンゼイ・ボンは、忍耐力のもうひとつのケーススタディだ。アルペンスキーレジェンドの彼女は、度重なる膝の怪我を経て2019年に引退を強いられたが、チタンプレートを埋め込んだ膝と薄れぬ競争心と共に5年ぶりにワールドカップのスロープへ復帰し、新記録を打ち立てた。
3:情熱
当たり前のように聞こえてしまうかもしれないが、何よりも勝ちたいという気持ちを持たなければならない。スポーツ心理学では、最高峰レベルの競技では、フィジカルトレーニングだけが勝因にはならないとされている。トップレベルでは情熱、言い換えれば “さらなる高みを目指す気持ち” もしばしば重要なのだ。
その好例を探すなら、Red Bull TVで視聴できるミニシリーズ『This and Nothing Else』をチェックしてみよう。このシリーズでは、家族を支えるために仕事を続けながらトレーニングとサーフィンに取り組む消防士や漁師、会社員たちのストーリーを伝えている。
4:長期的な目標設定
「人生はスプリントではなく、マラソンである」というフレーズもあるが、強靭なメンタルの最重要要素は長期的な目標設定で、目標達成に向けた現実的なタイムラインを理解することだ。
短期的な目標をクリアしながら長期的な目標へ向かっていくという現実に即したプランを立てることが、頼れる成功プロセスだ。
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強靭なメンタルを身につける方法
強靭なメンタルが生まれながらに備わっていることはまずない。強靭なメンタルは、誰もが日常生活で実践できる規律のある習慣によって作り上げられる。では、強靭なメンタルの構成要素はどのようなものだろうか? 強靭なメンタルはパフォーマンスにどのように役立つことが示されているのだろうか?
強靭なメンタルを備えている人は、チャレンジや挫折を「これまでよりも努力するチャンス」として捉えており、以下の習慣を身に付けることがこの視点の獲得に役立つ。
①ストイックの真の意味を知る
ストア哲学(ストイシズム)は古代ギリシャの哲学学派で、日本語では “ストイック” が一番馴染み深い派生表現だ。ストア哲学とは「人生は操ることができないため、すべてを思いのままにしたいという願望は手放すべき」という考えで、転じて「自分が操作できる部分を特定し、そこだけに専心すること」の重要性を説いている。メンタルタフネスの獲得にはこの実践が重要になる。
②行動を自制する
私たちが自分たちの人生を完全に操ることはできない。そして想定外の出来事が起きる可能性は常にある。ここでカギになるのは、自分ができることを冷静にやることだ。つまり、特定の分野でトップに立ちたいなら、自制した行動をしなければならない。
これはまた、自分の行動に責任を持ち、長期的な目標に沿った行動だけを心がけることを意味する。
③ミスを引きずらない
断固たる決意で長期的な目標を見据えているなら、ミスはつきもので、最初は特に多くなる。成功を得る秘訣は、失敗に目をむけるのではなく、前に進むことだ。
④勝利の美酒はほどほどに
ミスを引きずらないことが重要であるのと同様に、勝利に自惚れないことも重要だ。自己満足は成功の最大の敵だ。勝利を収めたあとでも、それまでと変わらぬ懸命さで努力を続けることが不可欠だ。
⑤不平不満を口にしない
達成したい目標が何であれ、自分のためにやっていることをと強く意識するべきだ。これはつまり、過程がどれほど厳しくても、どんな問題に直面しても不平不満を言わないことを意味する。なぜなら、「自分で受け入れたこと」だからだ。成功に必要な努力に責任を持てば、言い訳をしなくなる。
⑥自分の中にモチベーションを見つける
自立と内在モチベーションは、強靭なメンタルを成長させるための不可欠な習慣だ。他人をモチベーションの源にしていると、その人物のレベルまでしか成長できない。簡単に言えば、自分だけの目標を設定し、自分を最高のサポーターにするべきなのだ。
⑦ネバーギブアップ
長期的な目標に向かって努力するときは、ギブアップしたくなってしまうときがあることを理解しておく必要がある。成功を手にできる人とできない人の大きな違いのひとつは、「前者は努力を止めない」だ。止まってしまえば、失敗に終わってしまう。
⑧ポジティブな姿勢を保つ
ポジティブなセルフトーク(自己への語りかけ)とポジティブなビジュアライゼーション(視覚化・イメージトレーニング)は、スポーツ心理学の基本だ。自分を信じ、目標までの長い道を歩んでいる自分を思いやるべきだ。もちろん、規律を守り、言い訳もしてはならないが、自己批判が過ぎると自信が傷つき、ベストパフォーマンスを発揮できなくなる。
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最後に
メンタルタフネスは単なるトレンドワードではない。個人のパフォーマンスにおいて、フィジカルと同等に重要なファクターだ。ありがたいことに、自分にはメンタルタフネスの資質がないと思っている人でも、強靭なメンタルについて学び、メンタルを成長させれば、目標達成の助けにすることができる。
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