【コラム】FESN森田貴宏の少し長いが聞いてくれ。 《礼儀》の話!
© Junpei Ishikawa
スケートボード

【コラム Vol 3】FESN森田貴宏の少し長いが聞いてくれ。 《礼儀》の話!

一生涯スケートボーダーのFESN森田貴宏が、最近身近で起こった考え深い出来事を長く、熱く綴るスケートボードコラム【Vol 3】
Written by Takahiro Morita
読み終わるまで:9分Updated on
「礼儀」:社会のきまりにかなう、人の行動・作法。そのような敬意の表し方。
今日はスケーターである僕が思う、僕なりのスケーターとしての礼儀作法について皆さんにお伝えしようと思います。というのもここ最近(まあ正確に言えば昔からずっとなのだが)スケーターのマナーが悪いだとか、通行人に対してスケーターが威圧的だとか、ゴミを捨てずに街を汚すだとかのクレームが色々と入ってきていると聞く。
まあ僕もそこからの同じ穴の狢だが、こういった問題には自分なりにはっきりと考えを持っている。何だか長くなりそうだな?っていう人や、スケボー野郎が何言ってやがる!っという人ほど知って頂きたいと思いますので、、、最後までお付き合い頂ければ幸いでございます。
僕はこの場を借りて何度かお伝えしたことがあるのですが、僕のパフォーマンスフィールドはストリートです。街のあらゆる場面をスケートボードのパフォーマンスフィールドにしてしまう。それが僕の流儀です。
その上での僕なりの「礼儀」について。
まず街で滑るということ。ここに必ず必要な礼儀作法があります。その礼儀とは、、、人に「不快感」を与えないということです。「街でスケボーしてる奴がいる時点で不快感だよ!」っていう人も居られること、僕も自覚しております。
スケボーはうるさいし、危ないし、まあ人によってはとても目障りだと思う気持ちも分かります。なのでまずストリートスケーター達は社会からこの客観的な視線に晒されていることに気付かなければいけません。
君がどう思おうと、残念だが万人全てがスケボー良いね!なんて思ってくれないのが現実なのだよスケボー諸君!って感じなのでございます。
僕を含めた全世界、街で滑る多くのスケーターにとって、街はステージであり、最高の晴れ舞台。とても気持ちよく滑ることを心がけながら、何よりもそのステージでは最大限に自分を良く見せようと努力して格好を付けているのです。
この「最大限に格好を付ける」というのが実はストリートスケーターの中で最も重要な事柄なのです。街で滑るスケーターでいう「格好を付ける」ということを簡単に説明すると、以下のようになります。
「格好良い服を着て、格好良いボードに乗り、格好良い滑りをして、格好良く立ち振る舞う」ということです。
最初の二つ「格好良い服を着て、格好良いボードに乗り、、、」というのがスケーターのファーストステップ。
まあ一番簡単なスケーターの格好の付け方です。割と誰にでも出来る。1番マスな部分とでもいうのでしょうか。
昔、「POSER FUCK OFF」と落書きされたスケートスポットは世界中にゴマンとありましたが、この「POSER」の意味こそ、この誰でも出来るスケーターの格好の付け方初級編のみを意識したスケーターのことです。
しかし、それ以降が重要です。「格好良い滑りをして、、、」これにはとてつもない努力と労力、そして残酷にもセンスが伴います。苦労してやっと身に付けた滑りの技術をもってしても、そのスケーターが持つセンス次第で、、、ということになり兼ねないのです。
上手いけどダサい、、、1番残酷な言葉の響き。これには困った。
そして運良くなかなか良いセンスを身に付けながら、技術を持ち合わせたスケーターが、前出の「格好良い服を着て、格好良いボードに乗り、、、」という2つに合い重なってさらにそのスケーターの格好を良くしていくのです。
そして最後が1番大変です。
「格好良く立ち振る舞う」これはどういうことか?
「格好良い服を着て、格好良いボードに乗り、格好良い滑りが出来たスケーター」を待ち受ける最大の難関。そしてここに今回のコラムのテーマである「礼儀」が鎮座しているのです。
先にも書いたように僕が思うストリートスケーターに必要な「礼儀」とは、、、まず人に不快感を与えないということです。これは本当に難しい。
それは「街でスケボーしてる奴がいる時点で不快感だよ!」という層が社会に居られる以上、ストリートスケーターサイドから社会に向けた「脱不快感」は最大の難関なのです。
ここでは僕がその社会に向け「脱不快感」の為に行っているスケーターとしての礼儀作法をお教え致します。同業種の方々の反論、反発などあるかと思いますが、自粛期間の暇つぶし位に笑って読んで頂ければ幸いでございます。
まず何故スケーターは一般的に「不快感を与えてしまっているか?」を知らなければいけません。僕がリサーチしたところ最大の原因が「音」です。
ライディング時のウィールの騒音、オーリーヒットの騒音を始めとする様々なスケートトリックがもとで起きる騒音。いきなりスケーターにとって最大の行動規制が掛かって一気に自粛モードとなりましたが、ポジティブな僕はこのように考えました。
  • 騒音の原因であるウィールの硬度を柔らかいものに取り替えて、振動とノイズを軽減。これで約50%の騒音を改善。
  • オーリーヒットを始めとする様々なトリックがもとで起きる騒音については、従来の騒音系トリックを一気に辞め、騒音しない系トリックを模索。これで30%の騒音を改善。
以上の2つの事柄を改善することで、スケーターが世間様に与える不快感第一事項を約80%もカット出来ました。今では僕の柔らかソフトウィールセッティングのせいでお巡りさんの背後をスケボーで通過しても注意すらされません。←これ本当。
それでは一般の方々が街で滑るスケーターに対して「不快感」を露にするもう一つの原因について。
「スケボーは危険だ!」
スケボーは確かに危険です。
自分は覚えているだけで13回骨折しています。いや、、、たぶんもっとしています。今までやったスケボーでの怪我を1回のアクシデントとしてまとめたとしたら、、、僕の体はあまりの衝撃で36等分くらいに細かく吹き飛んでいるかと思います。
しかし僕の怪我は全て単一の自爆系。僕が1人で痛い思いをしただけです。一度も誰かを巻き込んだことはありません。だけども、やはりスケボーは危険だ!ということは認めます。
では街行く一般の方々がストリートスケーターに対して「不快感」を露にする原因「危険性」について。
街行く一般の方々はスケーターに対して「痛そうだから辞めてよ〜!」と慈悲深くなって「不快感」を持っておられるのだろうか?
もしくは親御さんの気持ちになって「せめてヘルメットくらいしなさいよ〜!」と心配して「不快感」を持っておられるのか?いや、それらはともに断じて違うと思います。
正解はこうです。
「スケボー、こっち飛んできたらどうすんだよ!危ね〜だろ!」が正解。
「そんなもんが勢い良く俺の踝に突っ込んできたら危ねーだろ!」が正解。
「踵のアキレス腱にお前の擦り切ってカッターみたいになってるテールが突っ込んできたらどうすんだよ!」も正解。
ということは「不快感」の原因はこちらに向かってくるかもしれない「危険」予測としての不安です。ではその対処としてさらにポジティブな僕はこのように考えました。
  • 歩行者のいる歩道は滑らない。これによって大多数の歩行者さまへの危険は回避出来ます。
  • 車道を十分気をつけて滑る。スケボーは超軽量。車やバイクなどエンジンを要する車両との事故の場合ほぼ100%の確立でこちらのダメージの方が大きいです。
以上の2つの事柄を行うことで、一般的な歩行者との不快感は軽減されますが、今度は新たに車やバイク、自転車の運転をしている方々に「不快感」を与えることになります。
なのでさらに以下のような対処法を僕は実践しています。
  • 夜はスケボーの前後にライトを付けて、ドライバーやライダー達に自分の存在を知らせる努力。それで危険性は自転車程度に軽減される。
  • 車道を走るときは、手信号や口語を使って自らの走行意思を他のドライバーやライダーに伝える努力を行います。無駄なトラブルを回避する目的。
  • 手信号を使って「ありがとう」と「ごめんなさい」を必ずドライバーやライダーに伝える努力を行います。気持ちの良い一日をみんなとシェア。
僕は以上の3つをしっかりやることで、車やバイク、または自転車からの嫌がらせや、クラクションも全く鳴らされないようになりました。
その代わり僕のスケボーのスタイルやアプローチは以前と比べると相当に変化してしまいました。
東京の街という環境に僕自身のスケートボードを行う姿勢と趣向を合わせた結果、今の僕のスケートボードへのアプローチになったと思います。
僕は今、、、フリップもやらないし、オーリーもしない。オーリーをやらないから縁石もレールもやらない。もちろんステアーもやらないし、究極パークにもほとんど行かない。
じゃあ何やるんだよ!?スケーターのくせに!っと怒られそうですが、僕のスケートに対する熱は昔より遥かに上がっています。
ストリートで滑る上で「他人に不快感を与えない」という最大のミッションを実現する為に多くの自分のスケートボードの要素を封印してきました。
ただ今の僕にとってそうやって自己規制をして、自分の楽しみに敢えて制限を加えることでまた新たな楽しみを探す遊びにも繋がっているのです。
ストリートスケーターが最大限に自分を良く見せようと努力して格好を付ける為の最大のミッションこそが、ストリートにおいて「格好良く立ち振る舞う」姿勢であり、そしてそれは「礼儀」へと繋がっていくのだと思います。
日本人が昔から重んじてきたこの素晴らしき「礼儀」という思いやり。
社会のきまりにかなう、人の行動・作法。そのような敬意の表し方を僕達スケーターも大切にしていきたいと思うのです。
📚FESN森田貴宏コラムの【まとめ】はこちらをクリック👉【コラム・まとめ】FESN森田貴宏がスケートボードについて長く熱く綴る!
(了)
◆information
・日本人スケートボーダーの生き様に迫る>>森田貴宏というオトコの半生
・スケーターならではの面白いクリエイティビティに注目した連載企画を不定期で配信中 >> スケーターが紡ぐもう一つの物語【The Another Story】