Lil Soft Tennis
© Yusuke Kashiwazaki
ミュージック

Lil Soft Tennisインタビュー『自分の音楽性は90〜00年代のオルタナロックと地続き』

Red Bullがキュレートするマイクリレー《RASEN》EP11 参加ラッパーたちのプロファイル ②
Written by Keita Takahashi
読み終わるまで:5分公開日:
今回のサイファーを振り返ってみていかがでしたか?
楽しかったです、思ったより。撮影はポジティブなバイブスがあるやろなって想定やったんですけど、それがリアルに体感できたので楽しくなっちゃったっていうか。“デカい仕事やん。がんばらな”って思ってたんが、現場の空気感ですごくリラックスしながらできたっていうか。
今回は自分の曲ではあまりやらないテンション……自己紹介的な意味合いのリリックだったり、影響受けたもんの名前もたくさんタグしたし、サンプリングしたフロウもあったり、でも後半は自分のアイコンであるポップスっぽいメロディーの動かし方が見せられたかなって。スーパーカーのフレーズをサンプリングしたんも、自分自身の音楽性は90年代から00年代のオルタナティブロックと地続きだと思っているから、そこへのリスペクトを表現したかったんですよね。
RASEN EP11

RASEN EP11

© Yusuke Kashiwazaki

ビートに関しては、なかなかキーが合わなくて試行錯誤しましたね。でもそういう制限があることで普段自分がやらないような作り方ができたんじゃないかな。
NENEさんも森さんも初対面だったんですけど、現場はすごくいいバイブスで。ふたりともオルタナティブやし、かといって3人の方向性が一緒じゃない感じもおもしろかったなと。
Lil Soft Tennis

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ラップをはじめたきっかけを教えてください。
音楽はもともと好きで、高校くらいからはトラップも好きだったんだけど、自分でやろうとは思ってなかったかも。聴いてた曲のアウトロで鼻歌で歌ったりはしてた気がするけど。で、大学入学くらいの時期にDAWを買って自分で作ってくうちにだんだん自信が持てたのかな。Lil Soft Tennisは最初はギターを使ったドリームポップみたいなんを作るっていうプロジェクトで。自分はもともとアメリカのビルボードチャートを見るんが好きやったんですよ。いわゆるアメリカンポップスもトラップもEDMもその流れで並列で好きなんですよね。だから自分もオルタナティブな流れのアーティストって思われがちやけど、自分としてはそういうものから影響を受けたポップスだったりロックをやってるつもりというか。
RASEN EP11

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自身のラップスタイルの特徴はどんなところですか?
うーん……ラップする気ないっていうのが最大の特徴かな。というのも、こないだ出したアルバム『Bedroom Rockstar Confused』も半分くらいはヒップホップじゃない音楽なので。そんな人あんまりいないような気がしてて。
自分はDominic Fikeにすごく共感していて、オルタナティブの音像とヒップホップのグルーヴを合わせるとこんなことが起きるんだっていうことに共鳴して作ったのがこないだのアルバムだった。
でもあえてラッパーとしての特徴を挙げるなら、聴いたことのない手触りのリリックではあると思いますね。あとは皮肉っぽくならんようにオルタナティブなことをやるってことですかね。
Lil Soft Tennis

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これまで発表した楽曲で、自身の代表曲を挙げるなら?
こないだ出したアルバムの表題曲“Bedroom Rockstar Confused”ですかね。この曲は去年出した“Season”って曲とおなじアイデアで作ったもの。自分としては“Season”のミクスチャーなノリをアップデートできると思って作ったし、更新できたと思います。自分としてはひとつの楽曲で複合的な要素を持った曲ってあまり作ってきてなくて。どの曲もひとつのことしかやってないんですよ。でもそれが作品集になってるからミクスチャーとして捉えられると思うんですけど、その意味でいったらこの曲は1曲でミクスチャー的なことができてるんじゃないかなと思って気に入ってます。
影響を受けた人物は?
Kanye WestとLe Makeupですね。Kanye Westは音楽の力がすごすぎて、自分にとってのロックは“Power”やし、自分にとってのヒップホップは“All Falls Down”やし、オールタイムフェイバリットは『Ye』。自分の音楽にとってほんまに大きな存在で。彼のテクスチャーとアイデアがすごく好きなんです。
Le Makeupは自分がシンプルにフォロワーなんですよ。去年の自分のアルバムは彼の『微熱』がなかったら全然違うテンションのものになってたと思うし。音楽のみならずたくさん影響を受けてるんじゃないかなって。現在の自分の活動はLe Makeupの音楽の波及した先にあるもんだと思ってます、勝手に。
RASEN EP11

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© Yusuke Kashiwazaki

今後の予定と将来の展望について教えてください。
リリースがひと段落ついたので、今年いっぱいはライブとMVに力を入れていきたいなと思ってます。もちろん個人のリリースはあると思うし、自分が所属しているHeavenっていうクルーの作品集が年内には出る予定です。
アルバムを出してからいろんな人としゃべるようになったし、海外の自分が聴いてたアーティストからもリアクションがもらえるようになったので、そういうDIYでやってるアーティストとのコミュニティーを広げられたらいいなと思ってます。
現時点で自分ががんばりさえすれば、そのシーンができるかもしれないし、海外のアーティストとも共闘できるかもしれない。で、自分も音楽だけで生活できるし、ぼくの真似する人もメシ食えるようになるかもしらんし、ぼくのことをキライなひとも別の音楽作って生活できるようになるかもしれないじゃないですか。そういう広い視点を持って鋭く動いていければいいなって感じです。
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