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小林陵侑が話す、291mジャンプの舞台裏と次なる目的地!

驚異の291m大ジャンプを成功させた小林陵侑に当日の舞台裏を訊ねた。スキージャンプ史上に残るこのチャレンジは、彼の今後の競技人生にどんな成長をもたらしたのか?  インタビュー中に決行した“とある”サプライズ&陵侑のリアクションと共にお楽しみください!
Written by Red Bull Japan
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・人間の限界を越えてほぼ鳥になった『RYOYU'S WORLD RECORD JUMP』の詳細はこちら!
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初めて語る291m世界記録樹立の舞台裏!

スキージャンプのゴールドメダリスト、ワールドカップ日本人男子最多の32勝、グランドスラム達成など、様々なタイトルを欲しいままにしてきた世界王者の小林陵侑(こばやし・りょうゆう)。
そんな彼が、全人未踏の291m大ジャンプで史上最長記録を大幅に更新した!
まずは記事を読み進める前に、もう一度、チャレンジの動画をチェックしてもらいたい⇩⇩⇩
本作の中で飛び出した、“This is skyflying”という言葉の通り、小林陵侑はスキージャンプという競技の枠も、人間の限界も、軽々と飛び越えていく。誰もが一度は想像する、空を飛びたいという願望、そんな、みんなの夢を現実にしてくれた!
改めてこの動画でチャレンジを振り返った陵侑は、難関ポイントだった点について、天候、体調、メンタルなど、全ての条件が揃わないと、そもそもトライできないことだったと語る。
「一度目のチャレンジは、雪が降りすぎて、挑戦できないまま一時帰国することになったんです。命がけの覚悟で臨んでいるので、いつ飛べるかが分からないのは精神的にかなりキツかった……。“もしも万が一”があった時の為に、日本を出る前に大切な人に会ってきたし、後ろの予定は入れていませんでした。それくらいの覚悟で挑んだプロジェクトです」

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舞台となったアイスランドは、例年以上の豪雪に見舞われ、チャレンジは一時断念。そして再び訪れた本番日は、晴天となったものの、今度は雪が溶け始めタイムリミットが迫る。
というのも、今回は通常のジャンプ台とは異なり、山の斜面と積雪を利用することで実現した完全DIYスタイルの超巨大な特設ステージ。自然の影響を大きく受けるからだ。

© Predrag Vuckovic / Red Bull Content Pool

「普通のスキージャンプとは全くの別物だと思ってください。滑走路はプラスチックのレールみたいに均等じゃないので、踏み切りまでの調整が難しかったです。100km以上のスピードが出ていて、コースからはみ出してもおかしくないような揺れを制御する為に、繊細なバランスが必要でした。フライトしてからも桁違いの風圧を感じて、そのハンドリングにも苦労しましたね」

© Predrag Vuckovic / Red Bull Content Pool

そう淡々と話すが、このバランス感覚にこそ彼の凄まじさがある。今回のチャレンジは未だかつて誰も経験したことがないのだから、もちろんデータもなにもない。頼れるのは長年で積み重ねたテクニックと勘のみ。踏切位置、飛行姿勢、着地。これら全てにおいて、シビアなミリ単位の調整に人生を捧げてきた百戦錬磨の経験があったからこそ、安全に飛ぶことができるのだ。

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「ラスト2本は結構危なかったですね。滑走路が壊れ始めてて、コースからはみ出しそうになって焦りました。最後に最高記録が出て、みんな大喜びしてくれていたんですが、着地して止まる時には足がもう限界で、それどころじゃありませんでしたよ(笑)」
 

© Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

そんな肉体的にも精神的にもギリギリの状態ながらも、飛距離291mの偉大な新記録が歴史に刻まれた。フライト時間約8秒、人類が初めて鳥になる体験をした陵侑にその時の心境を尋ねてみると、
「鳥になってみた気持ちですか? もちろん、そんな時間も余裕もなかったですよ(笑)。ただただ上手く進むように、板の操作と姿勢を保つことだけを考えていました」
流石に彼ほどのトップアスリートでも、アイスランドのアークレイリに広がる大自然の絶景を楽しむ余裕まではなかったようだ。
Ryoyu Kobayashi of Japan seen in Akureyri, Iceland on April, 23, 2024

© Dominik Angerer/Red Bull Content Pool

こうして、様々なドラマを生みながら、無事に幕を閉じたRYOYU'S WORLD RECORD JUMPのプロジェクトだったが、チャレンジ後には世界中のスキージャンパー仲間たちから、“自分も飛びたかった”と羨望のメッセージが数多く寄せられたらしい。
だが、当の本人はと言うと、多くを語らず、まるで昔の出来事のように至って冷静に当時を振り返るのみ。彼の中ではもうすでに次なる新たな挑戦に意識が向いているのかもしれない。

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02

スペシャルサプライズ🎉

実は今回のインタビュー中にちょっとしたサプライズを設けていた!
 

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11月より数量限定で小林陵侑の写真が入ったデザイン缶の発売が決定。その情報を本人はまだ知らないということで、完成した缶を撮影中に手渡したら、いつ気がつくのか! というプチドッキリを敢行。
最初はなかなか気が付かなかったが、レッドブルを飲むカットをお願いすると……、
「え?」
缶の自分と目があったようだ。驚いた途端にすかさずクラッカーと拍手でお祝い。いつもはクールな彼のとびっきりの笑顔をキャッチすることに成功した。

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「信じられないというか。まだ実感が湧かないですね。グレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリアのスキージャンプ選手)が缶になっているのを見ていて、いつか自分もと思ってました。レッドブル・アスリートになる前からの夢が叶って嬉しいです」

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グレゴア・シュリーレンツァウアー選手

グレゴア・シュリーレンツァウアー選手

© GEPA pictures/Red Bull Content Pool

念願のデザイン缶を眺めながら喜びを噛み締めていた。文句なしの競技成績もさることながら、プライベートではヒップホップに精通し、ストリートからハイブランドのウェアを着こなすファッションアイコンとしての一面を持つ彼は、日本のかっこいいアスリート像を象徴する新たなヒーローでもある。今回のチャレンジとスペシャルな缶の発売によって、若者に夢を与えながら、より一層存在感を増していくだろう。
「自分の顔が販売店に並ぶのも嬉しいし、クラブで遊んでる時にアーティストやお客さんたちが、“陵侑だ! ” って反応してくれたら光栄ですね。缶をギュッと強く握りしめて顔が潰れてるのを見るのは悲しいから、取り扱い注意でお願いします(笑)」

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せっかくなのでこのタイミングに、おすすめのレッドブルの飲み方も聞いてみよう。例えば、“試合の何分前に飲む”だとか、トップアスリートならではといえるとっておきの方法があるはずだ。そしてそのレクチャーは、私たちの普段の生活にも役立つアドバイスになるに違いない。
しかし「常に身近にあるんで、楽しい時とかに飲みます。昔から試合前のルーティンとかないんですよね。もっと詳しいアドバイスですか……、あっても覚えてないんですよね、忘れっぽい性格なので(笑)」と、冗談半分におどけて答えてくれた。実際のところ、特別なことはしない、平常心で心を乱さない、そんな自然体の魅力こそが、彼の強さの秘訣なのかもしれない。
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今後の展望とスキージャンプの未来

20年近いスキージャンプ歴があっても、シーズンに入って最初にジャンプ台に上がった時は恐怖を感じると語っていた彼だが、今回のビッグチャレンジを経たことで、もはや普段の大会では怖いもの無しなのではないだろうか。多くの人が感じているであろう疑問を投げかけてみると、
「全くそれはないですよ。チャレンジで巨大ジャンプ台を飛んだ3週間後にノーマルヒルを飛んだとき、普通に怖かったですからね」

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想定外の返答だが、これもきっと、ある種のプロ意識と言える。慢心せず、毎回のジャンプに真剣に向き合っていることの表れ。そんな彼のジャンプを間近で見られる機会が、2月に北海道で行われるワールドカップだ。
「TVで見るのもいいけど、どうせなら現場に来て欲しいです。一度でも生で見たらほんとに価値観変わると思いますよ。この競技は海外に比べると日本での認知度はまだまだ低いと感じています。自分が活躍することで国内のノルディックスポーツの注目度をもっと高めていきたいです」

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世界に目を向けるとヨーロッパでは、ノルディックスポーツが一つのカルチャーとして確立していて、試合会場では日本以上に大勢の観客がお祭り騒ぎで熱狂している。もし、あなたもジャンプ台の高さ、滑走するスピード感や現場の緊張感、これらをリアルに感じることができたなら、映像とは桁違いの迫力を味わうことができるはずだ。そして、その興奮を伝えることが選手たちの力になる。
「これからまた新しいシーズンが始まっていきます。この缶を持って観戦してくれている人がいると思うとパフォーマンスがグッと上がるので、是非そんな応援の仕方をお願いします。デザイン缶に恥じないように、これからも挑戦を続けていきます」
最後に2026年のミラノ大会への意気込みを尋ねると、王者の貫禄と余裕を感じる返答が
「特にまだ特別な準備はしていません。開催前にイタリアでの試合がないので、ぶっつけ本番になりますが、今回もそうだったし、いつものことです。心配はないですね。楽しみにしていてください」
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・様々な視点から最強ジャンパーについて紐解いた小林陵侑の人物紹介ページは【こちら!】
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史上最長291mのジャンプで世界を驚かせた最強スキージャンパー

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