Sorato Anraku
© Suguru Saito
クライミング
銀メダリストのクライマー、安楽 宙斗(あんらく・そらと)がすごい理由!
2024年に最も覚えておきたい名前がある。それが“アンラク・ソラト”。スポーツクライミングで世界ランクトップの選手だ。現在、Z世代の彼の能力はまだまだ伸び盛り。安楽宙斗を応援する為に知っておきたい5つのこと!
Written by alex shu nissen Edit by Hisanori Kato
読み終わるまで:8分Updated on
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レッドブル・アスリートに堀米雄斗が加入!
スペシャルインタビューは【こちら
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1位じゃなくて最強になりたい!
安楽宙斗
01

小2でクライミングの道へ! 理由は父のダイエットのため…!?

《衝撃の17歳!》 《最強高校生!》 《進学校に通う金メダル候補!》 スポーツ紙の見出しにはそんな言葉が並ぶ。
2024年からレッドブル・アスリートに仲間入りしたスポーツクライミングの新星、安楽宙斗(あんらく・そらと)選手とはどんな人なんだろう?
   
彼の素顔を知る為に、千葉県のジムへと向かった。
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平日の夕方、夢中で壁を登る小学生キッズたちの中に、世界ランキング1位(ボルダー&リード)の安楽選手の姿が。彼がクライミングを始めたのも小学2年生の頃、その理由はちょっと意外なものだった。
 
「家の近所にクライミングジムができて、お父さんのダイエットがてら一緒に行ってみたのがきっかけです。最初の一回で完全にハマりました。夏休みに入ったら毎日ジムで休憩なしで登り続けていて。とにかく登るのが好きだったので、難易度関係なくひたすら登りまくってましたね」
えっ、ダイエットのため?
減量が成功したかはさておき、未来のメダリスト候補誕生のきっかけを作ったお父さん、ナイスです!
そんな安楽少年、実は幼少期から生粋のクライマーだったそう。
「クライミングという競技の存在は知らなかったんですけど、もともと“登る”という運動は幼少期から好きでした。保育園でもよく木登りをしてて、いろんな角度から何回も登って遊んでましたね」
02

得意科目は数学。問題を解くのはクライミングに似ている?

高校3年生の安楽選手が通うのは千葉県立八千代高校。国立大学への進学も多いバリバリの進学校だ。
  
決めた理由は、家が近かったから。それに、体育科もある中、彼は普通科に通っている。なんでも、かなり勉強熱心で数学が大得意なんだとか。
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「数学は面白いです。テスト勉強も全く苦痛じゃありません。むしろ熱中して問題を解いてたら、いつの間にか2時間経ってるような感じ。自分で手を動かして、どう解こうかなと考えるのが楽しい。逆に暗記はめっちゃ嫌いですけど(苦笑)」
全国で見たら全然ですけど、と謙遜するが、数学の成績は学年トップクラス。論理的な思考で課題と向き合うという点で、数学とクライミングには共通する醍醐味もあるようだ。
「自分は好きなこと・頑張ろうと決めた事は頑張れる性格。数学もクライミングも、どちらも経験の積み重ねが大切ですよね。過去のものと似ている課題が出ることもあるし、上手くいかない時は、アプローチを見直すことも重要だと思います」
まさに文武両道とはこのこと。
   
勉強も競技も、努力を努力と思わず楽しんでいる姿は、純粋にかっこいい!
03

アスリートらしいストイックな学生生活

クライミングでは圧倒的な結果を出し、学校でも成績優秀。そんな安楽選手だって、ひとりの高校生。きっと、オフにはそれなりに息抜きだってしているはず!
    
最近は学生の間で何が流行ってるんだろう?
  
そんな軽い気持ちで、遊ぶ時はどんなことをしているのかを質問してみる。
 
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「いや、息抜きの時間が本当になくて。平日は基本的に毎日登って、登らない日は筋トレして、休日は1日中ジムに居るので、1日かけて遊ぶってことはないですね。強いて言うなら、最近は時間が空いたら英語の勉強をしています。世界で戦う為には、英語が理解できないと不利な場面もあるので」
   

oh my God!

     
まだ知られていない“実は普通の男子高生らしい一面”を引き出そうと思ったら、逆にストイックなアスリートのプロ意識を垣間見える返答が……。
まぁ、想定とは違ったが、これだけ真摯に競技に向き合う姿勢を知ると、もっともっと応援したくなってくる。日常のほとんどの時間をクライミングに費やすことで、課題であったフィジカル面も徐々に成長してきた。
「筋力トレーニングは、例えば、10kgのウェイトを加重した懸垂を8回、休憩1分、3セットとか。初めはキツくて全然できなかったけど、2年ぐらい継続してきて、10kgの重さにも慣れてきました。大会でも力負けする場面が少なくなってきましたね」
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読者の皆さんも一度、自重でいいので懸垂に挑戦してみてほしい。
  
すぐにこのメニューの大変さが分かるはずだ。身体の成長は未だ発展途上。伸び代を残した状態で世界ランクのトップに位置しているのだから、これからの進化が楽しみで仕方がない。
04

苦手克服より、好き・得意を伸ばしていく

安楽選手のクライミングの特徴としてよく言われているキーワードは“脱力”。
他の選手が力を使って辛そうに登る場面でも、ヒョイっ! と簡単そうに課題をクリアしてしまう。
    
「自分は身体の使い方の上手さで勝負してきました。ユースの頃からプッシュっていう、力を使って押し上げるムーブがキツいから嫌いだったんです。そういう課題を避けて、自分が得意な課題ばかり取り組んでいたんですよ。それが逆に良かったのかもしれません」
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これは筋力が備わる前の子ども時代の登り方がベースになっているようだ。大人になるにつれて本来できなくなっていく動きなのだが、彼は完全に自分のものにしている。できないことは、違うやり方で解決する工夫をする。目の前の壁を越えることに集中する。
それが彼の強さだ。
   
「先のことを考えるのが苦手なんですよね。いつも、直近で出る大会に集中して、それが終わったら次の大会に向けて頑張るっていうやり方。自分がプロになる実感が湧いたのも去年ぐらいで。だからまだ、卒業後の進路についても、手が付けられてないんですよ」
05

最強になって、スポーツクライミングを盛り上げたい

2024年の国際大会で、安楽選手は金メダルを有望視されている。高校生以下の男子メダリストは、日本では歴代でわずか4選手。実現すれば、なんと92年ぶりの快挙!
    
しかし、意外なことに、彼はメダルにこだわっているわけではなかった。
   
「スポーツクライミングはリード(ロープをつけて高度を競う)もボルダー(ロープをつけず、課題の完投数を競う)も面白いから、パリの大会も皆さんに是非見て欲しいです。自分の登りをきっかけに、クライミング人口を増やすことができれば嬉しい。
ただ、その点を除けば、メダルを絶対取りたいという気持ちは、正直そこまで大きくありません。もちろん、良い結果を出したい気持ちはあります。でも、それより自分は、強くなりたい。1位になりたいというより、最強になりたいんです」
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過去のインタビューで彼は、クライミングは孤独なスポーツだと語っていた。立ちはだかる壁に対峙し、自分自身の力のみで、より高い場所へと登っていく。己と向き合い成長していくことが本質であり、他者との比較はそこまで重要ではないということだろう。世界で活躍するアスリートをよくサムライと表現するが、文字通り侍のような精神だ。
  
……かっこ良すぎる!
  
きっとこういう選手が、スポーツシーンに良い影響を与えるんだろう。
「日本のスポーツクライミングは、これから下の世代がどんどん出てくるはずです。今は自分が小学生の頃じゃ考えられないぐらい強いユースたちがいっぱいいる。今後は、きっと今の僕よりも若い年齢でワールドカップに行くのが当たり前になっていくと思います。その道を切り拓いていけるように、これからも頑張っていきたいです」
  
06

パリの激闘を終えた安楽宙斗にインタビュー

  
初めての大舞台、ここに標準を合わせて本気で取り組んできました。ボルダーは満足のいく結果でしたが、リードの最後で自分の力を思う存分、発揮することができなかったことには悔いが残っています。
自分はどちらかというとスイスイと登るタイプ。でもあそこは、ゆっくりと登らないといけない場所だったんです。まだ余力はあったし、理解はできてたんですけど、上手く調整することができませんでした。そこが弱点になることを理解はしていたので、大会前までに調整して上手くいくように鍛えていたんです。
ただ、やはりあれだけの大会になると緊張で思うように行かなくて……。そういったメンタリティの部分を学べたことが大きな財産になりました。
どんな時でも自分のパフォーマンスを最大限に発揮するために必要なこと、それは、クセは治すのではなく体に染み付くまで練習しなければいけないということ。
そのためには、これまで以上にメリハリのある練習をして、大舞台はもちろんですが、それ以外の大会でもきちんと結果を残していくことが大切だと思っています。経験を重ねれば必ず結果がついてくる。近い将来の夢は、まだ経験したことのない世界選手権での優勝です。
そして、目指すは1位じゃなくて最強のクライマー! そのためには、日々の練習でもっともって自分の弱いところを見つけたい。応援よろしくお願いします!
  
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安楽選手の活躍でこの競技に興味を持ったアナタ、世界トップレベルのクライマーによるアドバイス記事でスポーツクライミングにチャレンジしてみませんか!? 
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