フォーミュラレーシング
SUPER FORMULA完全ガイド:戦略編
レーシングドライバーの岩佐歩夢、レッドブル、Motorsport.comがタッグを組んで届けるSUPER FORMULA完全ガイド。ルール、マシン、戦略、ドライバーの見どころを基礎から分かりやすく解説。
日本最高峰のフォーミュラカーレース『SUPER FORMULA(スーパーフォーミュラ)』。ここで勝つためにはただクルマを速く走らせるだけではなく、様々な戦略を駆使して戦う必要がある。2025年のスーパーフォーミュラ年間チャンピオン岩佐歩夢の解説も交えながら、レース戦略について紐解いていく。
01
記事内容まとめ
Q&A
02
スーパーフォーミュラの戦略には、どういった要素がある?
ドライバーたちはレース中、少しでも上のポジションを狙うべく、前を走るドライバーを追い抜き、逆に後ろを走るドライバーからの追い抜きを阻止しなければいけません。そのための重要なツールとして、彼らはオーバーテイクシステム(OTS)と呼ばれるパワーブーストを活用します。
ただ、ライバルとのバトルに夢中になっていると、思わぬ落とし穴が。それがタイヤの消耗です。
もし追い抜きを仕掛けたり、追い抜きを阻止したりする過程で無理なドライビングをすると、タイヤを“いじめて”しまい、グリップ性能が落ちる大きな原因になります。
そしてさらに重要なのが、レース中に1回は行う必要があるピットストップ。このピットストップを何周目に行うのか、そしてメカニックによるタイヤ交換がスムーズに完了するかは、レースの順位に大きな影響を与えます。
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03
オーバーテイクシステムとは?
オーバーテイクシステムは、ステアリング(ハンドル)のボタンを押すことで作動するブーストシステムで、作動させている間は通常よりも大きなエンジンパワー(+50〜60馬力ほど)を得られます。
ただ1レースあたりの合計使用時間は200秒と定められているため、1周目からOTSを攻守に使いまくってしまうと、レース後半で不利になることも。また、一度OTSのブーストを切ると、そこから一定時間は使用不可能となるため、その隙を突いてきた相手に仕掛けられるかも……。ドライバーはレース展開を読み、OTSを賢く使いこなす必要があります。
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タイヤマネジメントとは?
タイヤの路面と接する部分(トレッド面)のゴムは、走行するにつれてすり減っていきます。この摩耗自体はある程度は避けられないものですが、タイヤに優しくない走り方をしてしまうと、他よりも摩耗が進行してしまいます。
また、タイヤが過熱しすぎることでグリップ性能の低下に繋がってしまうこともがあります。レース中のドライバーは、速く走ること、ライバルを追い抜くことと並行して、タイヤを痛めない丁寧な走りをすることが求められます。
なお、タイヤマネジメントはドライバーの技術だけではなく、マシンの調整(セッティング)の良し悪しも大きく関わってきます。セッティングがうまくいかず、タイヤが路面をうまく捉えられないマシンでは、やはりタイヤを痛めてしまいがちです。
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05
ピットストップのタイミングはなぜ重要?
スーパーフォーミュラはコース上での追い抜きが簡単ではありません。そのため、ピットストップのタイミングの違いを利用することも、順位を上げるための効果的な策となります。
ドライバーとチームがライバルを出し抜くために考えるのが、「アンダーカット」や「オーバーカット」といった戦術の遂行です。どちらも、競っている相手に対してピットストップの周回をずらすことでレースを有利に進めようとする戦略です。
06
アンダーカットとは?
アンダーカットは、ライバルより先にピットに入ることによって順位を上げようとする作戦です。
例えば、明らかにペースは自分の方が優っているけど、前を走るドライバーをなかなか抜けない……そういう時は、相手よりも先にピットインをしてタイヤを交換し、コースに戻ってからできる限りハイペースで飛ばします。
そうしてライバルが数周後にタイヤ交換してコースに戻ってきた時に自分が前に立つことができれば、アンダーカット成功です。
ただ、ライバルより先にピットインすることが必ずしも優位になるとは限りません。例えばピットでの作業を終えてコースに戻った後、遅いマシンに詰まってしまうことがあっては意味がありません。また、早めにピットに入ってタイヤ交換をするということは、それだけ残りの周回が多いということなので、大事なレース終盤にタイヤが消耗してペースが落ちてしまうリスクもあります。
07
オーバーカットとは?
オーバーカットはアンダーカットの逆で、相手よりも後にピットインして順位を上げようとする作戦です。
オーバーカットが有効なのは、例えば前を行くライバルがピットインした後、自分の前が開け、ハイペースで飛ばせる状況な時。ペースの速さに自信があれば、ライバルが前からいなくなった時から何周か猛プッシュしてタイムを稼ぎ、ピットに入れば、コースに出る頃にはライバルの前に立てていることでしょう。
このように、コース上では抜きにくい相手でも、レースの状況に応じてピットインのタイミングをずらすことによって逆転することが可能なのです。
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レース戦略はドライバーが全て決めている?
実際にマシンに乗って戦っているドライバーはレースの全体像を把握しづらいですが、彼らはひとりではありません。レース中はチームのエンジニアらが映像やデータを解析しながら、最適なレース戦略を常に考えています。
例えば、直接争っているライバルのオーバーテイクシステム残量があと何秒で、今使っているのか、使える状態なのかは、チームがアプリを通じて確認。無線を通して必要な情報を適宜ドライバーに伝えます。
そして重要なピットストップについては、レースの状況を俯瞰できるエンジニアらがドライバーの要望も聞きつつ、最適なタイミングを探っていきます。効率と正確性を上げるため、戦略判断用の専用ソフトウェアをPCにインストールしているチームもあります。
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監修/協力
岩佐歩夢: 世界を舞台に活躍するレーシングドライバー。2020年にフランスF4選手権を制し、翌2021年にレッドブル・ジュニアチームに加入。FIA F3、FIA F2を経て、2024年からスーパーフォーミュラに参戦。2025年にはシリーズチャンピオンに輝いた。F1のリザーブドライバーとしても経験を積み、さらなる高みを目指して挑戦を続けている。
Motorsport.com 日本版: 世界規模で展開するモータースポーツ専門メディアの日本版(2016年配信開始)。F1をはじめ、MotoGP、スーパーGT、スーパーフォーミュラ、WECなど、国内外のさまざまなレースカテゴリーを網羅。世界各地のジャーナリストによる現地取材や独自の分析を通じて、最新ニュースからレース解説、ドライバーインタビューまで、モータースポーツの魅力を幅広く発信している。