【Red Bull Bridge Bars】に挑むトーマス・ヴァン・トンダー
© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool
クライミング

【世界初】全長280m・全600本のうんていでアーチ橋を横断!

OCRワールドチャンピオンが地上216mに架けられたアーチ橋を全600本のうんていを使って横断!? 前代未聞のチャレンジのすべてを動画とテキストでチェック!
Written by Jazz Kuschke
読み終わるまで:9分Updated on
南アフリカ出身のオブスタクル・コース・レーシング(OCR)ワールドチャンピオン、トーマス・ヴァン・トンダーが母国のブルークランズ橋を訪れ、アーチリブ(アーチ状の支え)に設置された600本のうんていだけを使い、この橋を47分37秒で渡り切った。
2026年10月26日、ヴァン・トンダーは全長約280m・地上216m・最大傾斜45度の世界最長うんてい(モンキーバー)を両手だけ渡り、一大プロジェクト【Red Bull Bridge Bars】を完了させた。
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【Red Bull Bridge Bars】概要

離れた場所から見るとヴァン・トンダーの偉業の大きさが分かる

離れた場所から見るとヴァン・トンダーの偉業の大きさが分かる

© Wayne Reiche/Red Bull Content Pool

  • アスリート:トーマス・ヴァン・トンダー(Thomas van Tonder)
  • ロケーション:ブルークランズ橋(南アフリカ)
  • 内容:アーチ橋をうんていで横断
  • うんていの握り棒の数:600本
  • うんていの全長:280m
  • 最大地上高:216m
  • 最大傾斜:45度
  • 時間:47分37秒
【Red Bull Bridge Bars】はビッグプロジェクトだったにもかかわらず、本人も認めているが、ヴァン・トンダーはやや自信過剰でブルークランズ橋に到着していた。しかし、その自信はブルークランズ橋によって早々に崩された…。
「ブルークランズ橋に自信をある程度崩されましたね。生意気にも、現地を訪れる前の私は自信がありましたが、傾斜を見て自分が間違っていたことに気付きました」
ヴァン・トンダーがこのような発言をするのは珍しい。彼はOCRワールドチャンピオンであり、ぶら下げられている全長90mのロープを完登してギネス世界記録を樹立した人物でもある。つまり、“ぶら下がる” は彼の仕事なのだ。しかし、ブルークランズ橋では、彼はうんていのすべての握り棒でしっかりと仕事しなければならなかった。
「ここ2年における最大の目標のひとつをクリアできました」とプロジェクト完了後にヴァン・トンダーは語った。「すべてに感謝しています。渡り切ることができました」

ヴァン・トンダーの【Red Bull Bridge Bars】を動画でチェック!

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ブルークランズ橋という難関

ヴァン・トンダーにとってキャリア最大の挑戦のひとつとなった

ヴァン・トンダーにとってキャリア最大の挑戦のひとつとなった

© Craig Kolesky/Red Bull Content Pool

ブルークランズ橋は、かなり前からヴァン・トンダーが意識していた橋だった。
ヴァン・トンダーが初めてこの橋の下に立つと、アーチが写真よりもかなり大きく見えた。「巨大なビルの下に立ったような感覚でした。“どういうことだ?” と思いましたね」
ヴァン・トンダーには、橋の上部にうんていを直線に配置するという楽なやり方も残されていた。しかし、彼は橋の下部(アーチリブ)を選択した。なぜなら、できるかどうか分からなかったからだ。「できるという確信はありません。だからこそこれは正しいチャレンジなのです」と挑戦前に彼は語った。
自宅で傾斜付きのうんていを初めて試したとき、ヴァン・トンダーが移動できたのはわずか6mだった。そしてそれから半年後 − 山間に今回専用のうんていを設置し、腱炎に悩まされ、手の皮が何回もむけたあと – ヴァン・トンダーは現物を目の前にしたのだった。
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後ろ向きの難しさ

“できて当然” からは程遠いプロジェクトとなった

“できて当然” からは程遠いプロジェクトとなった

© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool

現地時間午前10時21分。弱風の中、スタッフ全員が深呼吸をして挑戦が始まった。「あとはうんていを渡るだけです」とヴァン・トンダーは語った。
ブルークランズ橋はいきなり難題を突きつけた。傾斜角45度の最初のセクションは、あまりにも急角度なためヴァン・トンダーは前を向けなかったのだ。そこで彼は後ろ向きになり、橋の高度が上がっていく中、自分を引き上げて次の握り棒を掴むという作業を繰り返していった。
Quotation
握り棒だけに集中していました。小さなことをひとつずつ進めていったのです
トーマス・ヴァン・トンダー
天候は不穏で、心拍はすでに150に達していた。スタートから5分で、彼の両手はこれらを感じ取っていた。午前10時34分、ヴァン・トンダーは叫んだ。
「両手の感覚がよくないです!」
ヴァン・トンダーは序盤の “上り” が最難関になることを分かっていたが、実際は自分の想定を遙かに上回る難度だった。「想定の倍は難しかったですね」と彼は振り返る。「シミュレーションをして、できる限りのトレーニングを積んでいましたが、傾斜が同じ筋肉群に繰り返し与える負荷は、他に類を見ないものでした」
「あそこがメインミッションでしたね」と彼は続ける。「握り棒だけに集中していました。小さなことをひとつずつ進めていったのです」
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メンタルが最大のチャレンジ

ミドルセクションはメンタルとの戦い

ミドルセクションはメンタルとの戦い

© Wayne Reiche/Red Bull Content Pool

アーチリブの頂点に達するとうんていが平坦になり、作戦を変える必要が出てきた。ヴァン・トンダーが振り返る。
「メンタル的には中盤が一番キツかったですね。想定していたよりも疲れている状態でミドルセクションに突入しました。ですので、リズムを生み出せなくて苦労しましたね。両手が自分の思いどおりに動かせませんでした。両手を身体に近づけるだけでも相当苦労しました」
ヴァン・トンダーがいつも通りのリズムで渡れる部分が少しだけあったが、そこでも握り棒が小さめだったため、上手く身体を振ることができなかった。
前を向いていることが状況をさらに難しくした。「先に見えるゴール地点はとんでもなく遠くに思えましたし、自分とのゴールの間には無数の握り棒が設置されていました。不可能に思えましたね」
ブルークランズ橋の最大傾斜は45度

ブルークランズ橋の最大傾斜は45度

© Wayne Reiche/Red Bull Content Pool

Quotation
姿勢を元に戻そうとしましたが、両手で自分を支えられるかどうかが分かりませんでした
トーマス・ヴァン・トンダー
そこで、ヴァン・トンダーはゴール地点を意識するのをやめた。全コースを細分化し、プロジェクトの設営・安全関連を統括するリチャード・リーヴァートに無線経由で次の目標地点を伝えた。「プロジェクト全体が楽になりましたし、メンタルも対応できるようになりました」とヴァン・トンダーは振り返る。
ミドルセクションの中盤、ヴァン・トンダーの身体が警告を発し始めた。「逆さま状態で頭がズキズキと痛んだときがありました」と彼は振り返る。「姿勢を戻す必要がありました。そのままだと気を失ってしまいますから」
問題は両手だった。「姿勢を元に戻そうとしましたが、両手で自分を支えられるかどうかが分かりませんでした」と続けるヴァン・トンダーは自信を持つ必要があった。「自分を信じるしかありませんでしたが、上手く支えることができました」
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すべての握り棒との戦い

平坦なミドルセクションを抜けて下りセクションに入ると、重力が身体を引っ張り始めたため、ヴァン・トンダーはそれに逆らわなければならなかった。ゆっくり1本ずつ握り棒を掴み、重力によるスピードアップで両手に過剰な負荷がかかるのを防ごうとした。下りセクションは序盤の上りセクションの鏡映しで、0度から45度まで傾斜が徐々に大きくなっていった。
「下りセクションに入った直後からリズムを得られるようになりました。ですが、疲労は想定を遙かに上回っていました」
このように振り返るヴァン・トンダーから疑念が消えることはなかった。「ミドルセクション以降、自分がゴールできるかどうか分からない状態でした。脚を上げられるかどうかがギリギリだった瞬間が何回もありました。“ゴールできて当然” からは程遠かったのです」
先の長さに気が滅入ったと振り返るヴァン・トンダー

先の長さに気が滅入ったと振り返るヴァン・トンダー

© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool

中盤以降はゴールできるか分からなかった

中盤以降はゴールできるか分からなかった

© Moegammad Abrahams/Red Bull Content Pool

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自分を信じられた瞬間

「ゴールできるという感覚が得られたのは、最後の40mですね」とヴァン・トンダーは振り返る。最後の4分の1、彼が目指していた次のセクションは、ゴールそのものだった。ここに到達して初めて、彼は完了できるという感覚を得られたのだ。
「あとは戦いでした」

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ラスト20mになると、彼の頭の中では同じ言葉が繰り返されていた。「頭の中では、“握り棒1本ずつを確実に、確実に、確実に” という言葉が繰り返されていました。手が滑ったり、問題が発生したり、握り損ねたりすることを心底恐れていました。ですので、最後の1本まで高い集中を保とうとしていました。身体はボロボロでしたから」
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挑戦のコスト

ヴァン・トンダーの両手

ヴァン・トンダーの両手

© Craig Kolesky/Red Bull Content Pool

ヴァン・トンダーの両手がすべてを物語っている。指に巻かれたテープはすべてボロボロに破れている。
両手は本人の想定よりも耐えてくれた。「両手が完全にダメになることを想定して少し過剰に準備していたことが、ある意味助けになりました」とヴァン・トンダーは振り返る。本人曰く、手の平は「驚くほど大丈夫だった」。
「閉じたり開いたりはできますね。もちろん、痛いですが」
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偉業達成を支えたチーム

ヴァン・トンダーは今回のプロジェクトをひとりで完了させたわけではない。本人もこの点についてすぐに言及している。
ブルークランズ橋の使用には条件があった。ボルトやドリルを使用することができなかったのだ。Vertical Safety Systemsで設営・安全関連を統括するリチャード・リーヴァートは、ヴァン・トンダーのジム仲間としてこのプロジェクトに加わると、彼のチームとともにコース上に2ヵ所の安全ポイントを設置した。また、彼らは完全に固定できる固定具はひとつも使用しなかった。
リチャード・リーヴァートはヴァン・トンダーのジム仲間

リチャード・リーヴァートはヴァン・トンダーのジム仲間

© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool

レジェンドクライマーのシュテファン・グロワツが準備を手伝った

レジェンドクライマーのシュテファン・グロワツが準備を手伝った

© Wayne Reiche/Red Bull Content Pool

「最大の問題はボルトが使用できないことでした」と挑戦前にリーヴァートは語っていた。
ヴァン・トンダーにとって、チームが今回のプロジェクトのすべてだった。
「今日私が挑戦できるように夜通しで橋の準備を進めてくれたスタッフがいました。しかも、その準備のあとも、挑戦中の私の安全を確保してくれました。今回の挑戦は私を含むチーム全員をコンフォートゾーンの外側に追いやるものでしたので、私を支えてくれたチームがすべてだったということを世界に向けて伝えたいと思います」
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人間としての学び

ヴァン・トンダーの中では、父親になったことが今回のプロジェクトに挑んだ大きな理由だった。「自分を尊敬している人たちは、自分の言葉よりも自分の行動から遙かに多くのことを学びます」と挑戦前に彼は語っていた。
ヴァン・トンダーはブルークランズ橋のアーチリブをうんていで渡った世界初の人物となった。
「“誰もやったことがないこと” はそこまで多く残っていないので、このようなことを世界で初めてやった人物になれたというのは、クールなことだと思います。ですが、何よりも嬉しいのは、自分が始めたことをやり遂げられたことです。クレイジーで大きな目標を定め、それをクリアできました」
「私にとって今日という日は1年間の努力、半年間の献身、そしてここに集まってくれた人たちの結晶です。少し信じられない気持ちですね」
「1年間の努力の結晶」と振り返ったトーマス・ヴァン・トンダー

「1年間の努力の結晶」と振り返ったトーマス・ヴァン・トンダー

© Joerg Mitter/Red Bull Content Pool

そして、ブルークランズ橋はひとつの学びを教えてくれた。ヴァン・トンダーは次のように締め括る。
「このようなプロジェクトには、謙虚な姿勢で挑む必要があります」
【Red Bull Bridge Bars】のフルリプレイはRed Bull TVで視聴可能。
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Red Bull Bridge Bars

High above the river of South Africa’s highest bridge, Thomas van Tonder faces an extraordinary test of strength and endurance as he takes on the challenge of conquering 600 monkey bars.

South Africa

トーマス・ヴァン・トンダー

数々のメジャータイトル、表彰台、そしてギネス世界記録とともにOCR(障害物競走)と驚異的な持久系プロジェクトのキャリアを築いてきた南アフリカ共和国出身アスリート

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