バレーボール
バレーボール西田有志|翔け上がるためのエナジー
思うようにいかない日があっても、人は前に進める。日本を代表するバレーボーラーの西田有志(にしだ・ゆうじ)も、不安や迷いを抱えながら歩んできた一人。その経験を通して紡がれた言葉は、挑戦の途中にいるすべての人の背中をそっと後押ししてくれる!
「メンタルが強い」「物怖じしない」。そんなイメージを持たれがちな西田有志選手だが、その裏側では常に不安や重圧と向き合ってきた。
キャプテンとして初めて迎えるシーズン、体調不良、理想と現実のギャップ、そして代表を1年離れるという決断。変えられない状況を受け入れながら、“今の自分にとっての100”を更新し続ける。
その姿勢は挑戦の途中にいるすべての人へ、きっとヒントを与えてくれるはず。
01
プレッシャーにはどう対処する?
不安は、練習で黙らせる
──西田選手といえば、過去のインタビューからも、すごく強気でポジティブな印象を受けます。とはいえ、やはり不安や重圧を感じる瞬間もありますか?
西田有志(以下:西田) もちろんあります。大事な試合や負けられない場面も普通に緊張しますし、特に今シーズンはキャプテンとしてチームをどういう方向に導くか、常に考えています。チームを勝たせる責任、その重圧は正直ありますね。
──キャプテンとしての責任が増えることで、緊張感や悩みの質もこれまでと変わりそうですね。
西田 プレッシャーは試合中よりも、日常の中で感じることの方が多くなったかもしれません。でも、それをネガティブには捉えてはいないんです。
緊張するということは、それだけ真剣に向き合っている証拠でもあると思うので。大切なのは、その緊張をどう受け止めるか。自分の場合は、やっぱり練習がすべてだと思っています。
──シンプルですが「練習がすべて」という言葉が印象的です。
西田 チームが負ける試合もあるし、自分のプレーがうまくいかない日もある。でも、やるべき練習をしっかり積み重ねていくこと。それさえ続けていけば、いずれ問題は改善されていくわけです。
それに、「できなかったらどうしよう」という不安も小さくなっていくんですよね。目の前の結果に一喜一憂しないで、目標の為に必要な練習を続けること。それによって、緊張の大きさも変わってくる感覚があります。
──体を動かし続けることで、心も整っていくんですね。
西田 心の状態は、体の準備とすごくリンクしている。だからこそ、常に練習を続ける。心を上げるために、まず体を動かし続ける。その繰り返しが、大事な場面でも自分を支えてくれると思います。
──キツい時こそ、動く! ですね
西田 そうですね。ネガティブに考えすぎずに行動する。気持ちを切り替えたいときは、レッドブルを飲みます。一回一回の練習が真剣勝負なので気合いを入れたいんですよね。
02
スランプを抜け出すにはどうする?
自分だけの100%を見つける
──これまでの競技人生の中で、特に精神的にきつかった時期はありましたか?
西田 2020年のシーズンですね。体調不良が続いて、練習がまともにできなかった。その状態で代表にも呼んでもらいましたが、当然うまくできなかった。
頭の中では「こうしたい」「こうあるべきだ」というイメージははっきりしている。でも、それに体が応えられない。「できていた自分」と「できない現実」のギャップが、何よりもしんどかったです。
──その苦しさの中で、何を一番考えていましたか? そこから抜け出すきっかけは?
西田 自分は今、どういう状態なのか。何ができていて、何ができていないのか。自分自身に問い続けていました。そして、基準を変えてみることにしたんです。
昔の自分の100点を、そのまま今に当てはめない。仮に昔が100で今が50なら、その中間の75を目指す。その“中間地点”を見つけることが、すごく大切でした。
──完璧を目指さないということですか?
西田 段階的に上げていくイメージですね。もし昔が100で今が50だとしたら、安定して75を出せればOK。そこから積み上げていくうちに、これまでの100が、新しい100になっていくんです。
できなくなったこともあるけど、新しくできるようになった部分が増えていることに気がつくはずです。同じ100にはもう絶対にならない。でも、それでいいと思えるようになりました。
──なるほど。スポーツに限らず仕事にも共通する、成長の捉え方ですね。冷静で長期的な視点が、すごくキャプテンらしいなと感じました。
西田 大人になったのかもしれないですね(笑)。
無理をしない判断も、かなり身につきました。80しか出せない状態で90や100を出そうとすると、その差で怪我をする。感覚も崩れて、戻らなくなることがある。
だから「これは無理だな」と思ったら、一度土台に戻る。そこからコツコツ積み上げ直した方が、結果的に心も体も上がると思います。
03
成長し続ける為に必要なことは?
世間の常識より、自分の選択を信じる
──立ち止まる重要性といえば、日本代表を一度離れるという選択もそうですよね。
西田 正直、かなり勇気が必要でした。今までそんな人は居なかったわけで、昔だったら通らなかったかもしれません。でも、自分には必要だと思ったんです。
そういう点でも、今の日本バレーは、選手の考えを尊重してくれる環境になってきているように思います。
──離れたことで、どんな気づきがありましたか?
西田 日本のバレーボールの見え方が変わりましたね。中にいるときと、外から見るときでは、同じ日本代表でも見える景色が違う。
正解か不正解かよりも、あえて代表を辞退した選手にしか見えない視点が生まれること。それが大切だと思いました。自分の競技人生にとって大きなプラスだったと思います。
──その選択は、多くの人にとって“常識外”に映ったと思います。「春高バレーに出場していないプロバレーボーラーであること」や、「オポジットとしては世界的に見て身長が高くないこと」など、西田選手が前例がないことに挑戦し続けるのはなぜですか?
西田 やってみないと分からないから、ですね。
常識って便利なものさしですが、それに縛られると進化は止まる。「今までこうだったから」という理由だけでは、新しい可能性は生まれない。
だから僕は、自分にとって必要だと思った道は、前例がなくても選ぶようにしています。必要だと思うことは何でもやる。それだけです。結果は後からついてくるので。
04
諦めてしまいそうな時どうする?
無理はしない。歩みは止めない
──今シーズン、西田選手が向き合っている挑戦はなんですか?
西田 このチームを優勝させることです。それは使命だと思っています。正直、レギュラーシーズンの順位は通過点にすぎません。それよりも最終的なゴールに向かうために、良い練習をするだけですね。
──練習が全てですね。目標を達成する為に、日々の練習ではどんなことを意識していますか?
西田 当たり前のことを当たり前にやる、ということですね。キャプテンとして、これをチームに最も強く伝えています。
例えば、試合の為に最高の練習をするなら、練習の準備も全力でやること。ウォーミングアップは練習にコミットするためのとても大切な時間です。
──目的意識を持つことが大切なんですね。
西田 そうです。その日が何の日で、何をするべき日なのか。ただのルーティーンとして流すのではなく、それにどんな意味があるのかを考えることです。
ただこなすのではなく、身にする。その積み重ねが大事な局面でのワンプレーにつながると思っています。
──最後に、新たな挑戦の途中で立ち止まってしまいそうな人へ、西田選手からメッセージをお願いします。
西田 一つの問題にとらわれすぎないことですね。結果だけを見ていても、根本が変わらなければ結果は同じままです。
無理はしなくていい。でも、止まらずに積み上げてほしい。結果よりも、自分だけの100%を見つけて、それを追い求めてください。そうすれば、心も体も、必ず上がっていくと思います。
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